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第九章 拡張版ミズーナ編
第433話 隠された呪具
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翌朝のこと、サーロインの城に思わぬ人物たちがやって来ていた。
誰かと思えば、ベジタリウス王国の諜報の二人だった。
「イスンセとクガリでしたっけかね」
ミズーナ王女たちは冷静に反応していた。
「覚えて頂いていて光栄でございます。ほら、イスンセも挨拶なさい」
ミズーナ王女に頭を下げながら、イスンセを肘で小突くクガリである。
しかし、あまりにも想像していなかった人物たちがタイミングよく現れたので、心の奥底ではミズーナ王女やメチルはとても驚いていた。
「実は先日から陛下と王妃様から命を受けて、潜入していました」
「えっ、お父様とお母様から?」
クガリから衝撃的な事実を聞かされるミズーナ王女である。
「ああ、そうだ。サーロイン王国を信用してないわけじゃないが、去年の魔族の一件のせいかちょっと過保護が入っちまってな」
「それで、私たちに挽回の機会として王子と王女の密かな護衛を頼まれていたのよ」
「まあ、そうなのですね……」
イスンセとクガリの暴露に、思わずため息をついてしまうミズーナ王女である。
「だが、俺たちが気付く前に、既にトラブルに巻き込まれたようだな」
「本当、これじゃ護衛として失格だわね……」
勝手に話を進めていく二人。ここで言っているのは、おそらく瘴気の塊の事だろう。
この話をしているということは、二人も近くには居たということなのかもしれない。
「というわけで、挽回の機会を頂きたい」
跪いた状態でミズーナ王女に話し掛けるイスンセ。
その姿を見たミズーナ王女は、メチルの方を見る。
「分かりました。それでしたら、メチルに呪具の調査を依頼しましたので、手伝って頂けるでしょうか」
「そ、それは……」
ミズーナ王女から出た話に、クガリが思わず退いてしまう。だが、イスンセの方はそうではなかった。
「畏まりました。それでしたら俺が同行致しましょう。テトロに体と意識を乗っ取られていた関係で、呪具に対する耐性ができていますからね」
イスンセは自分のやらかしを帳消しにすべく、真剣な表情をミズーナ王女に向けている。
魔族に乗っ取られた挙句に、他国とはいえど国家転覆を企んでいたのだ。それを聞かされたら必死になるのも当然だろう。
「では、イスンセ、よろしくお願いします。メチルも気を付けて行ってきて下さい」
「ありがとうございます、王女殿下」
頭を深々と下げたメチルは、早速イスンセとともに呪具の調査へと出向いていった。
残ったクガリは継続してレッタス王子とミズーナ王女の護衛をしてもらうことになったのだが、一応その事はサーロインの国王と王妃には説明しておくことになったのだった。
「まったく、いくらお父様とお母様の命令とはいえ、肝心のサーロイン王国が認知していなければただの間者です。問題行為ですから今後はやめて下さい」
「はっ、失礼致しました」
ミズーナ王女がしっかりと怒ると、クガリは真剣に謝罪していた。
話がまとまったことで、ミズーナ王女はクガリを連れてサーロインの国王たちに会いに行くことにしたのだった。
―――
それから数日後のこと、イスンセはメチルとアルーの二人を連れて、サーロイン王国内のとある場所にたどり着いていた。
そこは、一度は調べられたはずの、イスンセたち諜報員たちの隠れ家となっていた建物だった。
「ここは、一度調べられたはずでは?」
メチルがイスンセに問い掛けている。
「あの時の俺は気を失っていたし、クガリが案内したって話だったよな。だとするなら、まだすべては調べられていないはずだ」
その問い掛けに、そのように説明するイスンセ。
「諜報員は、すべては簡単にさらけ出すものじゃないんだよ。ほら、ここだ」
イスンセが突然立ち止まる。そこから漏れ出している魔力に、思わずメチルは震えてしまう。
「なんて……瘴気に満ちた魔力なの……」
さすがは魔族である。漏れ出ている魔力にひしひしと反応していた。
「魔族って聞かされていたが、さすがだな。この奥に隠し通路があって、俺を乗っ取っていたテトロのやつは、その奥で呪具を管理していたんだ」
「用心深いですね……」
イスンセの証言に、思わず唸ってしまうメチルである。
かなり大雑把に見えていたテトロも、謀略策略の類を張り巡らせる立派な魔族だったのである。
イスンセが壁に手を当てると、ガタンと壁が動いて通路が現れる。その奥は真っ暗であり、何があるのかまったく分からない状況だった。
「あれから久しぶりに潜ることになる。何があるか分からないから、警戒していてくれ」
「分かりました。では、一応明かりだけでもつけておきましょう」
メチルはイスンセの注意に頷くと、光魔法で明かりをつける。
「その光は、光魔法か。魔族とはいっても使えるんだな」
「私は光魔法しか使えない魔族ですからね」
メチルは無表情でイスンセの反応に答えていた。
「とりあえず、何かあったら私に任せておいてね」
アルーはメチルの頭の上でどんと胸を叩いていた。
イスンセが案内する隠し通路。恐ろしいまでの瘴気に満ちたその空間では、一体何が待ち受けているのだろうか。
誰かと思えば、ベジタリウス王国の諜報の二人だった。
「イスンセとクガリでしたっけかね」
ミズーナ王女たちは冷静に反応していた。
「覚えて頂いていて光栄でございます。ほら、イスンセも挨拶なさい」
ミズーナ王女に頭を下げながら、イスンセを肘で小突くクガリである。
しかし、あまりにも想像していなかった人物たちがタイミングよく現れたので、心の奥底ではミズーナ王女やメチルはとても驚いていた。
「実は先日から陛下と王妃様から命を受けて、潜入していました」
「えっ、お父様とお母様から?」
クガリから衝撃的な事実を聞かされるミズーナ王女である。
「ああ、そうだ。サーロイン王国を信用してないわけじゃないが、去年の魔族の一件のせいかちょっと過保護が入っちまってな」
「それで、私たちに挽回の機会として王子と王女の密かな護衛を頼まれていたのよ」
「まあ、そうなのですね……」
イスンセとクガリの暴露に、思わずため息をついてしまうミズーナ王女である。
「だが、俺たちが気付く前に、既にトラブルに巻き込まれたようだな」
「本当、これじゃ護衛として失格だわね……」
勝手に話を進めていく二人。ここで言っているのは、おそらく瘴気の塊の事だろう。
この話をしているということは、二人も近くには居たということなのかもしれない。
「というわけで、挽回の機会を頂きたい」
跪いた状態でミズーナ王女に話し掛けるイスンセ。
その姿を見たミズーナ王女は、メチルの方を見る。
「分かりました。それでしたら、メチルに呪具の調査を依頼しましたので、手伝って頂けるでしょうか」
「そ、それは……」
ミズーナ王女から出た話に、クガリが思わず退いてしまう。だが、イスンセの方はそうではなかった。
「畏まりました。それでしたら俺が同行致しましょう。テトロに体と意識を乗っ取られていた関係で、呪具に対する耐性ができていますからね」
イスンセは自分のやらかしを帳消しにすべく、真剣な表情をミズーナ王女に向けている。
魔族に乗っ取られた挙句に、他国とはいえど国家転覆を企んでいたのだ。それを聞かされたら必死になるのも当然だろう。
「では、イスンセ、よろしくお願いします。メチルも気を付けて行ってきて下さい」
「ありがとうございます、王女殿下」
頭を深々と下げたメチルは、早速イスンセとともに呪具の調査へと出向いていった。
残ったクガリは継続してレッタス王子とミズーナ王女の護衛をしてもらうことになったのだが、一応その事はサーロインの国王と王妃には説明しておくことになったのだった。
「まったく、いくらお父様とお母様の命令とはいえ、肝心のサーロイン王国が認知していなければただの間者です。問題行為ですから今後はやめて下さい」
「はっ、失礼致しました」
ミズーナ王女がしっかりと怒ると、クガリは真剣に謝罪していた。
話がまとまったことで、ミズーナ王女はクガリを連れてサーロインの国王たちに会いに行くことにしたのだった。
―――
それから数日後のこと、イスンセはメチルとアルーの二人を連れて、サーロイン王国内のとある場所にたどり着いていた。
そこは、一度は調べられたはずの、イスンセたち諜報員たちの隠れ家となっていた建物だった。
「ここは、一度調べられたはずでは?」
メチルがイスンセに問い掛けている。
「あの時の俺は気を失っていたし、クガリが案内したって話だったよな。だとするなら、まだすべては調べられていないはずだ」
その問い掛けに、そのように説明するイスンセ。
「諜報員は、すべては簡単にさらけ出すものじゃないんだよ。ほら、ここだ」
イスンセが突然立ち止まる。そこから漏れ出している魔力に、思わずメチルは震えてしまう。
「なんて……瘴気に満ちた魔力なの……」
さすがは魔族である。漏れ出ている魔力にひしひしと反応していた。
「魔族って聞かされていたが、さすがだな。この奥に隠し通路があって、俺を乗っ取っていたテトロのやつは、その奥で呪具を管理していたんだ」
「用心深いですね……」
イスンセの証言に、思わず唸ってしまうメチルである。
かなり大雑把に見えていたテトロも、謀略策略の類を張り巡らせる立派な魔族だったのである。
イスンセが壁に手を当てると、ガタンと壁が動いて通路が現れる。その奥は真っ暗であり、何があるのかまったく分からない状況だった。
「あれから久しぶりに潜ることになる。何があるか分からないから、警戒していてくれ」
「分かりました。では、一応明かりだけでもつけておきましょう」
メチルはイスンセの注意に頷くと、光魔法で明かりをつける。
「その光は、光魔法か。魔族とはいっても使えるんだな」
「私は光魔法しか使えない魔族ですからね」
メチルは無表情でイスンセの反応に答えていた。
「とりあえず、何かあったら私に任せておいてね」
アルーはメチルの頭の上でどんと胸を叩いていた。
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