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第八章 3年生後半
第396話 3年目の学園祭対応は……
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婚約者問題はひとまず解決したとして、残りの学園生活をしっかり楽しみましょうかね。
ひと安心した私は、学園祭に向けての準備に取り掛かる。
学園ではみんなと話しながら、クラスの出し物を考えていた。強制というわけではないけれども、申請すればグループ単位での出し物ができるのよ。
魔法型クラスの3年生のみんなで、何かをやろうという私の提案はみんなも乗り気のようだった。しかし、私は剣術大会に出るために、公爵令嬢であるラムを中心として、サキやモモが補佐をするという形で進められることになった。
「へえ、3年生は何かやるつもりなのね」
そんな事を言うのは、我が家に居候をしているエスカだ。休みになるとふらっといなくなるのだけど、何をしているのやら。……想像はつくんだけどね。
「2年生は何かしないのかしら。王女が二人も居るんだし、遠慮しちゃってる?」
あえて鋭く話題に突っ込んでいく私。ふらっといなくなることには目をつむってあげる代わりである。
すると、エスカは唇に人差し指を当てている。
「ふふん、内緒よ、内緒。当日までのお楽しみなんだから」
そう言うと、うきうきにスキップしながら私の前から去っていった。まったく、何を企んでいるんだか……。
この辺りの国で学園を持っているのはサーロイン王国だけだものね。
実のところ、ミール王国もベジタリウス王国も学園はない。だから、こうやって王族をわざわざサーロインに送り込んでくる。この三国が平和的な状況にあるのも、この学園が大きな役割を果たしているみたいだった。
(まったく、エスカってば何を企んでいるんだか……。城に行くついでにミズーナ王女にでも聞いてみましょうか)
私は部屋に戻りながらそう考えたのだった。
翌日は久しぶりに王妃教育を受けに城に向かう。いろいろあったせいでしばらく受けられていなかったし、ミズーナ王女に用事があったのでそのついでというわけよ。
しかし、現実は甘くなかった。久しぶりということもあって、王妃教育の先生が張り切ってしまったのよ。おかげで、日が暮れる頃どころか、完全に暮れてしまっていた。
(はあ、すっかり遅くなっちゃったわね。今からでもミズーナ王女に会えるかしら)
少し厳しいと思いながらも、私はミズーナ王女の部屋へと向かった。
部屋の外にはベジタリウス王国から来た兵士が構えていたのだけど、顔がすっかり知られているおかげかすんなり通してもらえた。
「あら、アンマリアじゃありませんか。どうされたのですか、そろそろ夕食のお時間ですよ」
ミズーナ王女が王女モードで対応している。
「あんまり時間を取るつもりはないわ。学園祭についての話だからね」
「まぁ、学園祭の……。その様子ですと、エスカってば話していませんのね」
「ええ、ごまかしてばかり。何か企んでるんじゃないかって勘ぐってしまうわ」
私が困った表情をしているのに対し、ミズーナ王女はずっとにこやかだった。対照的過ぎる表情だわね。
「ふふっ、安心して下さい。私が居るんです。あの子の好きなようにはさせませんよ」
地味に怖い笑顔を見せるミズーナ王女。うん、これは逆らっちゃいけないやつだわ。
「え、ええ。そちらの制御は頼みますね。私の方は3年生の出し物の準備がありますし」
「ええ、お任せ下さい」
私がお願いすると、ミズーナ王女は快く了承していた。彼女に任せておけば、エスカが暴走する事はないだろう。私は安心して、短距離転移で家まで戻ったのだった。
家に戻った私はエスカの部屋へと向かうと、扉には『入るな』という貼り紙が貼られていた。どうやら昨日の事が影響したように思える。
(この分だと、相当とんでもない事をやらかしてくれそうね。前世の性格がどうだったか知らないけれど、今のエスカの性格はどちらかといえばわがままだものね……)
私はため息を吐くと、遅いながらにも食事を取るために食堂に向かうことにした。
食事を終えた私は、スーラに部屋の事を任せて、モモの部屋へと向かう。当然だけど、用事は学園祭についてよ。
モモは補佐を務めているから、どのくらいの状態なのか知っているはずだものね。
「お姉様はご心配なく。ラム様と私たちにお任せ下さい」
モモからはにこやかにこんな返答があった。
「あれ、私は関わらなくてよさそう?」
「はい、ラム様より、お姉様には剣術大会に集中して頂くように言われております。こちらの事はぜひとも私たちにお任せ下さい。もちろん最終的にはお姉様にも内容はお教え致しますのでご安心を」
力強く言うモモである。本当にずいぶんと頼もしい限りだわね。
「そう、分かったわ。その代わり、しっかり頼むわよ、モモ」
「お任せ下さい、お姉様」
私の声掛けに、むんと両手を握って気合いを入れるモモである。ああ、相変わらず可愛い妹だわ。
そんな可愛い妹の言うことだから、無下にはしたくない。というわけで、学園祭の出し物はモモやラムたちに任せることにして、私は剣術大会に専念して臨むことにしたのだった。
ひと安心した私は、学園祭に向けての準備に取り掛かる。
学園ではみんなと話しながら、クラスの出し物を考えていた。強制というわけではないけれども、申請すればグループ単位での出し物ができるのよ。
魔法型クラスの3年生のみんなで、何かをやろうという私の提案はみんなも乗り気のようだった。しかし、私は剣術大会に出るために、公爵令嬢であるラムを中心として、サキやモモが補佐をするという形で進められることになった。
「へえ、3年生は何かやるつもりなのね」
そんな事を言うのは、我が家に居候をしているエスカだ。休みになるとふらっといなくなるのだけど、何をしているのやら。……想像はつくんだけどね。
「2年生は何かしないのかしら。王女が二人も居るんだし、遠慮しちゃってる?」
あえて鋭く話題に突っ込んでいく私。ふらっといなくなることには目をつむってあげる代わりである。
すると、エスカは唇に人差し指を当てている。
「ふふん、内緒よ、内緒。当日までのお楽しみなんだから」
そう言うと、うきうきにスキップしながら私の前から去っていった。まったく、何を企んでいるんだか……。
この辺りの国で学園を持っているのはサーロイン王国だけだものね。
実のところ、ミール王国もベジタリウス王国も学園はない。だから、こうやって王族をわざわざサーロインに送り込んでくる。この三国が平和的な状況にあるのも、この学園が大きな役割を果たしているみたいだった。
(まったく、エスカってば何を企んでいるんだか……。城に行くついでにミズーナ王女にでも聞いてみましょうか)
私は部屋に戻りながらそう考えたのだった。
翌日は久しぶりに王妃教育を受けに城に向かう。いろいろあったせいでしばらく受けられていなかったし、ミズーナ王女に用事があったのでそのついでというわけよ。
しかし、現実は甘くなかった。久しぶりということもあって、王妃教育の先生が張り切ってしまったのよ。おかげで、日が暮れる頃どころか、完全に暮れてしまっていた。
(はあ、すっかり遅くなっちゃったわね。今からでもミズーナ王女に会えるかしら)
少し厳しいと思いながらも、私はミズーナ王女の部屋へと向かった。
部屋の外にはベジタリウス王国から来た兵士が構えていたのだけど、顔がすっかり知られているおかげかすんなり通してもらえた。
「あら、アンマリアじゃありませんか。どうされたのですか、そろそろ夕食のお時間ですよ」
ミズーナ王女が王女モードで対応している。
「あんまり時間を取るつもりはないわ。学園祭についての話だからね」
「まぁ、学園祭の……。その様子ですと、エスカってば話していませんのね」
「ええ、ごまかしてばかり。何か企んでるんじゃないかって勘ぐってしまうわ」
私が困った表情をしているのに対し、ミズーナ王女はずっとにこやかだった。対照的過ぎる表情だわね。
「ふふっ、安心して下さい。私が居るんです。あの子の好きなようにはさせませんよ」
地味に怖い笑顔を見せるミズーナ王女。うん、これは逆らっちゃいけないやつだわ。
「え、ええ。そちらの制御は頼みますね。私の方は3年生の出し物の準備がありますし」
「ええ、お任せ下さい」
私がお願いすると、ミズーナ王女は快く了承していた。彼女に任せておけば、エスカが暴走する事はないだろう。私は安心して、短距離転移で家まで戻ったのだった。
家に戻った私はエスカの部屋へと向かうと、扉には『入るな』という貼り紙が貼られていた。どうやら昨日の事が影響したように思える。
(この分だと、相当とんでもない事をやらかしてくれそうね。前世の性格がどうだったか知らないけれど、今のエスカの性格はどちらかといえばわがままだものね……)
私はため息を吐くと、遅いながらにも食事を取るために食堂に向かうことにした。
食事を終えた私は、スーラに部屋の事を任せて、モモの部屋へと向かう。当然だけど、用事は学園祭についてよ。
モモは補佐を務めているから、どのくらいの状態なのか知っているはずだものね。
「お姉様はご心配なく。ラム様と私たちにお任せ下さい」
モモからはにこやかにこんな返答があった。
「あれ、私は関わらなくてよさそう?」
「はい、ラム様より、お姉様には剣術大会に集中して頂くように言われております。こちらの事はぜひとも私たちにお任せ下さい。もちろん最終的にはお姉様にも内容はお教え致しますのでご安心を」
力強く言うモモである。本当にずいぶんと頼もしい限りだわね。
「そう、分かったわ。その代わり、しっかり頼むわよ、モモ」
「お任せ下さい、お姉様」
私の声掛けに、むんと両手を握って気合いを入れるモモである。ああ、相変わらず可愛い妹だわ。
そんな可愛い妹の言うことだから、無下にはしたくない。というわけで、学園祭の出し物はモモやラムたちに任せることにして、私は剣術大会に専念して臨むことにしたのだった。
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