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第七章 3年目前半
第383話 激戦を終えて
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最後の四天王サンカリーも敗れ去り、雷の結界が消えて地下室に静寂が戻る。
しかし、目の前に張り付けられたままのコール子爵夫妻はそのままだった。
「ふはぁ~……、疲れたわね」
ひとまず戦闘が終わった事で、私は気が抜けてその場に座り込んでしまう。
幼い頃から魔物氾濫だとかなんだと戦闘に巻き込まれてきたけれど、さすがにこういうのはもういいわ。
「アンマリア様、お疲れ様です」
サキが近寄ってきて、私を労ってくれる。
「サンカリーの魔力は完全に消えました。ひとまずは安心でしょう」
メチルも私と同じようにその場に座り込みながら、状況を確認していた。
「それにしても、アルーが私本人だっただなんて……。お父様たちは一体何をしたというのかしら」
ちらりとアルーに視線を向けたメチルは、その事を真剣に悩み始めた。
「今のメチルは私自身じゃないから、記憶が混乱しているみたいですね。……サンカリーを倒した事で、かなり記憶が鮮明になってきましたので、ここからは私が説明します」
アルーは真剣な表情で、私たちにコール家とメチル・コールの話を始めたのだった。
アルーの話によれば、コール家というのは魔王の封印を守るために遣わされた一族らしい。魔王の封印にも携わっていた魔法使いの血筋なのだそうだ。
これはアルーがまだメチルだった頃に、両親からよく聞かされていた話だったのだという。
小さい頃のアルーにしてみれば、両親との生活は普通の貴族と変わらないものだったそうだ。
「でも、それは突然崩れましたね」
先程までとアルーの表情が一変する。険しさが増したのだ。
「私、メチル・コール子爵令嬢は、実はベジタリウス王国の聖女でした」
「ええっ?!」
突如として行われたアルーの告白に、私たちは揃って驚く。って、なんでメチルまで驚いてるのよ。
「でも、ある時から両親の様子がおかしくなって、私はある日眠らされてしまったようなのです。そして、気が付いた時には、魔族と精霊という形に分離してしまったのです」
アルーの証言では、分離した時から両親はずっとはりつけになった状態だったのだそうだ。
「おそらく、魔族と精霊に分かれてしまったのは、聖女としてその時行われた儀式に反発した結果なのではないでしょうか。そして、魔族の体に魔力を、魔法の技術を精霊の体に分けることで、悪用されるのを防いだのでしょう」
「なるほどね……」
「それで、メチルの体が魔族化した理由として、サンカリーたちの話から察するに、私を生贄に捧げる事で魔王を復活させようとしたためでしょう。おそらく、その時に魔王の魔力を取り込んで魔族化したのだと思います」
「十分納得できる話ですね」
アルーの話を聞いて、ここまでのあれこれがいろいろと納得がいった私たち。だけど、まだ分からない点がたくさんある。
「でも、それって一体今からどのくらい前の話なのかしら」
「かなり前だと思いますよ。だって、王妃様も国王陛下も、私は知りませんから。でも……」
アルーは説明をしながら、はりつけ状態の続く両親へと視線を向ける。
「お父様とお母様なら、分かるかも知れませんね。私は見ての通り子どもでしたからね」
メチルにちらりと視線を送りながら、アルーは最後にそう締めくくった。
それにしても、思えば不思議な状況だった。
(あれだけサンカリーが雷の魔法を使っていたのに、メチルの両親は無傷? 一体どういう事なのかしらね)
そう、食らえば消し炭になりそうなくらい強力な魔法を使っていたというのに、確実に直撃していただろうメチルの両親にはまったくダメージがなかったのだ。
「どうなさったのですか、アンマリア様」
サキが私の様子が気になったのか、声を掛けてきた。
「ええ。メチルの両親が、あの魔法の中でまったく傷がないというのが気になったんですよ」
「そういえばそうね。部屋の中には間違いなく損傷があるんだから、まともに食らえば無事であるわけがないものね」
エスカも言われて初めてその違和感に気が付いたようだ。
「そもそも、お父様もお母様も若々しいという時点でおかしいんです。少なくとも魔族として活動してから何年も経つんですからね」
「という事は、メチルの両親は何らかの原因で時間が止まっているという事なのかしらね」
「そっか。時間が止まっていれば、傷つかないというのも理解できるわ」
アルーの疑問を聞いて、私とエスカがすぐさま納得する。
「でも、時間が止まっているからといって、傷がつかないっていうのはどうなのですかね」
それに反論したのは、もう一人の転生者のメチルだった。
「外部からの干渉を受け付けないタイプの時間停止なのよ。あったでしょう、そういうタイプの時間停止って」
「ま、まあ、確かにありましたね……」
私やエスカから意見を突きつけられると、メチルはたじろいでいた。
ひと通り話も終わって、これからどうしようかと考えていたその時だった。
「きゃっ、地震?!」
急にガタガタと部屋が激しく揺れ始めたのだった。一体何が起こったというのだろうか。
しかし、目の前に張り付けられたままのコール子爵夫妻はそのままだった。
「ふはぁ~……、疲れたわね」
ひとまず戦闘が終わった事で、私は気が抜けてその場に座り込んでしまう。
幼い頃から魔物氾濫だとかなんだと戦闘に巻き込まれてきたけれど、さすがにこういうのはもういいわ。
「アンマリア様、お疲れ様です」
サキが近寄ってきて、私を労ってくれる。
「サンカリーの魔力は完全に消えました。ひとまずは安心でしょう」
メチルも私と同じようにその場に座り込みながら、状況を確認していた。
「それにしても、アルーが私本人だっただなんて……。お父様たちは一体何をしたというのかしら」
ちらりとアルーに視線を向けたメチルは、その事を真剣に悩み始めた。
「今のメチルは私自身じゃないから、記憶が混乱しているみたいですね。……サンカリーを倒した事で、かなり記憶が鮮明になってきましたので、ここからは私が説明します」
アルーは真剣な表情で、私たちにコール家とメチル・コールの話を始めたのだった。
アルーの話によれば、コール家というのは魔王の封印を守るために遣わされた一族らしい。魔王の封印にも携わっていた魔法使いの血筋なのだそうだ。
これはアルーがまだメチルだった頃に、両親からよく聞かされていた話だったのだという。
小さい頃のアルーにしてみれば、両親との生活は普通の貴族と変わらないものだったそうだ。
「でも、それは突然崩れましたね」
先程までとアルーの表情が一変する。険しさが増したのだ。
「私、メチル・コール子爵令嬢は、実はベジタリウス王国の聖女でした」
「ええっ?!」
突如として行われたアルーの告白に、私たちは揃って驚く。って、なんでメチルまで驚いてるのよ。
「でも、ある時から両親の様子がおかしくなって、私はある日眠らされてしまったようなのです。そして、気が付いた時には、魔族と精霊という形に分離してしまったのです」
アルーの証言では、分離した時から両親はずっとはりつけになった状態だったのだそうだ。
「おそらく、魔族と精霊に分かれてしまったのは、聖女としてその時行われた儀式に反発した結果なのではないでしょうか。そして、魔族の体に魔力を、魔法の技術を精霊の体に分けることで、悪用されるのを防いだのでしょう」
「なるほどね……」
「それで、メチルの体が魔族化した理由として、サンカリーたちの話から察するに、私を生贄に捧げる事で魔王を復活させようとしたためでしょう。おそらく、その時に魔王の魔力を取り込んで魔族化したのだと思います」
「十分納得できる話ですね」
アルーの話を聞いて、ここまでのあれこれがいろいろと納得がいった私たち。だけど、まだ分からない点がたくさんある。
「でも、それって一体今からどのくらい前の話なのかしら」
「かなり前だと思いますよ。だって、王妃様も国王陛下も、私は知りませんから。でも……」
アルーは説明をしながら、はりつけ状態の続く両親へと視線を向ける。
「お父様とお母様なら、分かるかも知れませんね。私は見ての通り子どもでしたからね」
メチルにちらりと視線を送りながら、アルーは最後にそう締めくくった。
それにしても、思えば不思議な状況だった。
(あれだけサンカリーが雷の魔法を使っていたのに、メチルの両親は無傷? 一体どういう事なのかしらね)
そう、食らえば消し炭になりそうなくらい強力な魔法を使っていたというのに、確実に直撃していただろうメチルの両親にはまったくダメージがなかったのだ。
「どうなさったのですか、アンマリア様」
サキが私の様子が気になったのか、声を掛けてきた。
「ええ。メチルの両親が、あの魔法の中でまったく傷がないというのが気になったんですよ」
「そういえばそうね。部屋の中には間違いなく損傷があるんだから、まともに食らえば無事であるわけがないものね」
エスカも言われて初めてその違和感に気が付いたようだ。
「そもそも、お父様もお母様も若々しいという時点でおかしいんです。少なくとも魔族として活動してから何年も経つんですからね」
「という事は、メチルの両親は何らかの原因で時間が止まっているという事なのかしらね」
「そっか。時間が止まっていれば、傷つかないというのも理解できるわ」
アルーの疑問を聞いて、私とエスカがすぐさま納得する。
「でも、時間が止まっているからといって、傷がつかないっていうのはどうなのですかね」
それに反論したのは、もう一人の転生者のメチルだった。
「外部からの干渉を受け付けないタイプの時間停止なのよ。あったでしょう、そういうタイプの時間停止って」
「ま、まあ、確かにありましたね……」
私やエスカから意見を突きつけられると、メチルはたじろいでいた。
ひと通り話も終わって、これからどうしようかと考えていたその時だった。
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急にガタガタと部屋が激しく揺れ始めたのだった。一体何が起こったというのだろうか。
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