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第七章 3年目前半
第377話 再戦!テリア
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私たちはミズーナ王女たちと連絡を取り合った後も、順調に魔族の本拠地へと歩を進めていた。
その途中では、瞬間移動魔法での合流も検討されたのだけど、あの魔法はただでさえ消費魔力が大きすぎるし、いざという時までは封印しておきたいので却下となった。
うん、奥の手というのはギリギリまでというか極力隠しておきたいものね。
それに、瞬間移動魔法というのは移動先のイメージができない事には跳べない。下手に跳んだ場合、そこで行軍が一時的にストップしてしまう事になるもの。
そんなわけで、いろいろな観点から私たちは、少数精鋭の状態のまま進むしかなかった。
「そろそろ、あの魔族が示した場所に到着でございます」
斥候を務める兵士からの報告が入る。
もう少し進んだ場所に朽ち果てた洋館が建っているとの事だった。
周囲には街があるような様子はないので、おそらくは別荘か隠れ家か何かといったところなのでしょうね。
その建物が見えてきた時、メチルの様子がちょっとおかしい感じがした。
「メチル?」
メチルが震えている。
今は夏真っ只中なのだから、寒いという事はありえない。となると、メチルだけが感じる何かに怯えているということになる。
「どうしたの、メチル」
私が両肩をしっかりつかんで声を掛けると、メチルはハッとした表情で私の方を見た。
「えっと、アンマリア。何なのでしょうか」
「何なのって……。震えていたから心配になったのよ」
「あっ……」
私の言葉に、何かを思い出したかのような表情になるメチル。
「ごめんなさい。ここは私たち魔族の本拠地なんですけど、何か別なものを感じてしまったんです。……ご心配お掛けしました」
「そう……。でも、よかったわ。別に何か悪い事が起きたわけじゃなさそうで」
私はメチルにそう言うと、再び前をしっかりと見る。魔族との激突が始まるんだもの、気を抜いてなんかいられないわ。
そうやって建物までやって来た私たちは、空中に見た事のある人物を見つけた。
「キャハハハハ。本当にのこのこやって来たのね。人間って本当におバカさん」
テリアだった。ぼろぼろになっていた服と髪形をきれいに整えて、高飛車な態度を取っている。
「あの時は不覚を取ったけれど、今度はそうはいかないわよぉ。あたしの本気、見せてあげるわ!」
テリアは私たちを見つけるなり、魔力を爆発させてくる。その瞬間、辺りを強烈な風が走り抜けた。
(なんてこと、あの時よりパワーアップしてないかしら)
私は思わず青ざめてしまう。
「キャハハ、くっふぅ~。いいわねぇ、その顔~」
お腹を抱えながら笑うテリア。本当にいちいち癪に障るような言動が目立つけれど、魔力の強さのせいで黙って聞いているしかないのが悔しいわね。
「あんたたちなんて雑魚なんだから、サンカリーが手を下すまでもないわよ~。あ・た・し・が、ここで皆殺しにしてあげるわよ。キャハ」
不敵な笑みを浮かべながら私たちを見ているテリア。
「女なんてのは嫌いだから、全力で相手してあげる。さあ、最後くらい華麗に踊ってちょうだい」
頬をなぞった手を空高く掲げたテリアは、そこから小さな魔法弾を大量に発射してきた。大きな魔法弾は隙が大きいために、私たちの力を警戒して切り替えてきたようだ。
ギャル系かと思ったけれど、意外と頭を使っているみたいね。
女なんてと宣言した通り、私たち五人を集中的に狙ってきている。という事は、そこをうまく突けば勝機はありそうだ。
とはいっても、思ったよりも細かく撃ってくるので、これは躱すので精一杯といった感じだった。
ところが、これになぜか歓喜している者が約一名。
「数撃てばいいってもんじゃないのですよ。バッサーシ辺境伯の血筋、甘く見ないで下さいな」
そう、サクラ・バッサーシだった。
さっき柑橘魔石を打った快感が忘れられないのか、なんと、テリアの魔法弾を魔石剣で打ち返していた。そんなのありなわけ?!
「ちょっ、なんてありえない事やってくれてんのよ!」
打ち返された魔法弾は、的確にテリアに向かって飛んでいっている。それを躱すテリアも大した反射神経である。そして、躱しながらもテリアは魔法弾を放っている。
とはいえ、これはチャンスだわ。
サクラが常識はずれな事をしてくれているおかげで、私たちから意識が逸れている。
「サキ様、浄化の魔法の準備を。サクラ様が気を引いてくれていますので、どうにかできると思います。エスカは守ってあげて」
「はい」
「言われなくてもするわよ」
サキとエスカが返事をする。
そして、怯えるメチルもサキのところに預けると、私はこっそりと移動していく。
「兵士の皆さん、私が隙を作りますので、そこを狙ってテリアを討って下さい」
「わ、分かりましたが、一体どうやって……?」
私は収納魔法からじゃらじゃらとたくさんの魔石を取り出す。溜め込んできた柑橘魔石だ。
ただ、この後にサンカリー、最悪の場合魔王との戦いも控えているので、あまり消費はしたくない。
「さあ、役立たずの門番には、さっさと退場頂きましょう」
私はぎゅっと柑橘魔石を握りしめ、テリアの方へと顔を向けたのだった。
その途中では、瞬間移動魔法での合流も検討されたのだけど、あの魔法はただでさえ消費魔力が大きすぎるし、いざという時までは封印しておきたいので却下となった。
うん、奥の手というのはギリギリまでというか極力隠しておきたいものね。
それに、瞬間移動魔法というのは移動先のイメージができない事には跳べない。下手に跳んだ場合、そこで行軍が一時的にストップしてしまう事になるもの。
そんなわけで、いろいろな観点から私たちは、少数精鋭の状態のまま進むしかなかった。
「そろそろ、あの魔族が示した場所に到着でございます」
斥候を務める兵士からの報告が入る。
もう少し進んだ場所に朽ち果てた洋館が建っているとの事だった。
周囲には街があるような様子はないので、おそらくは別荘か隠れ家か何かといったところなのでしょうね。
その建物が見えてきた時、メチルの様子がちょっとおかしい感じがした。
「メチル?」
メチルが震えている。
今は夏真っ只中なのだから、寒いという事はありえない。となると、メチルだけが感じる何かに怯えているということになる。
「どうしたの、メチル」
私が両肩をしっかりつかんで声を掛けると、メチルはハッとした表情で私の方を見た。
「えっと、アンマリア。何なのでしょうか」
「何なのって……。震えていたから心配になったのよ」
「あっ……」
私の言葉に、何かを思い出したかのような表情になるメチル。
「ごめんなさい。ここは私たち魔族の本拠地なんですけど、何か別なものを感じてしまったんです。……ご心配お掛けしました」
「そう……。でも、よかったわ。別に何か悪い事が起きたわけじゃなさそうで」
私はメチルにそう言うと、再び前をしっかりと見る。魔族との激突が始まるんだもの、気を抜いてなんかいられないわ。
そうやって建物までやって来た私たちは、空中に見た事のある人物を見つけた。
「キャハハハハ。本当にのこのこやって来たのね。人間って本当におバカさん」
テリアだった。ぼろぼろになっていた服と髪形をきれいに整えて、高飛車な態度を取っている。
「あの時は不覚を取ったけれど、今度はそうはいかないわよぉ。あたしの本気、見せてあげるわ!」
テリアは私たちを見つけるなり、魔力を爆発させてくる。その瞬間、辺りを強烈な風が走り抜けた。
(なんてこと、あの時よりパワーアップしてないかしら)
私は思わず青ざめてしまう。
「キャハハ、くっふぅ~。いいわねぇ、その顔~」
お腹を抱えながら笑うテリア。本当にいちいち癪に障るような言動が目立つけれど、魔力の強さのせいで黙って聞いているしかないのが悔しいわね。
「あんたたちなんて雑魚なんだから、サンカリーが手を下すまでもないわよ~。あ・た・し・が、ここで皆殺しにしてあげるわよ。キャハ」
不敵な笑みを浮かべながら私たちを見ているテリア。
「女なんてのは嫌いだから、全力で相手してあげる。さあ、最後くらい華麗に踊ってちょうだい」
頬をなぞった手を空高く掲げたテリアは、そこから小さな魔法弾を大量に発射してきた。大きな魔法弾は隙が大きいために、私たちの力を警戒して切り替えてきたようだ。
ギャル系かと思ったけれど、意外と頭を使っているみたいね。
女なんてと宣言した通り、私たち五人を集中的に狙ってきている。という事は、そこをうまく突けば勝機はありそうだ。
とはいっても、思ったよりも細かく撃ってくるので、これは躱すので精一杯といった感じだった。
ところが、これになぜか歓喜している者が約一名。
「数撃てばいいってもんじゃないのですよ。バッサーシ辺境伯の血筋、甘く見ないで下さいな」
そう、サクラ・バッサーシだった。
さっき柑橘魔石を打った快感が忘れられないのか、なんと、テリアの魔法弾を魔石剣で打ち返していた。そんなのありなわけ?!
「ちょっ、なんてありえない事やってくれてんのよ!」
打ち返された魔法弾は、的確にテリアに向かって飛んでいっている。それを躱すテリアも大した反射神経である。そして、躱しながらもテリアは魔法弾を放っている。
とはいえ、これはチャンスだわ。
サクラが常識はずれな事をしてくれているおかげで、私たちから意識が逸れている。
「サキ様、浄化の魔法の準備を。サクラ様が気を引いてくれていますので、どうにかできると思います。エスカは守ってあげて」
「はい」
「言われなくてもするわよ」
サキとエスカが返事をする。
そして、怯えるメチルもサキのところに預けると、私はこっそりと移動していく。
「兵士の皆さん、私が隙を作りますので、そこを狙ってテリアを討って下さい」
「わ、分かりましたが、一体どうやって……?」
私は収納魔法からじゃらじゃらとたくさんの魔石を取り出す。溜め込んできた柑橘魔石だ。
ただ、この後にサンカリー、最悪の場合魔王との戦いも控えているので、あまり消費はしたくない。
「さあ、役立たずの門番には、さっさと退場頂きましょう」
私はぎゅっと柑橘魔石を握りしめ、テリアの方へと顔を向けたのだった。
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