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第七章 3年目前半
第374話 乱入者
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上昇気流が巻き起こる。
「ちょっ、何よこれ……」
必死に風に耐えるテリアだが、次の瞬間、急に体勢を崩した。
「げほっがはげほっ。うっ、気持ち悪~い!」
そう叫びながら、テリアは地面へと落下していった。自分が使おうとしていた魔法弾の追撃付きで。
落下の衝撃と魔法弾の衝撃で、辺り一帯に轟音が響き渡る。
「やったか?」
同行していた兵士の一人が叫ぶ。
はい、それフラグだからやめてちょうだい。
そのフラグの通り、地面に落ちたはずのテリアはちゃっかり立ち上がっていた。
しかし、着ている服のあちこちが破けているので、それなりに強いダメージを受けた事は間違いないようだった。
「まったく、最悪だわよ。あんたたちなんて、ぎったんぎったんに引き裂いて惨たらしく殺してやるんだから!」
テリアは怒髪天のようだ。
お嬢様系魔族としてのプライドがあるのだろうけれど、もうその可愛らしさはどこへやらという感じだった。
それにしても、あれだけの状況でまだ維持されているサイドテールが頑丈だわね。
「気持ち悪いにおいをたくさんぶつけてくれちゃって……、このお礼はしてやらなきゃダメよね。特にメチル、裏切者のあんたは絶対に許さないんだから!」
びしっとメチルを指差すテリア。
「目を覚まされちゃったけど、男はもう一回、あたしの虜にしてやるわよ。さあ、あたしの手駒として女どもをなぶっておしまい!」
テリアが両手を掲げて誘惑の魔法を使う。
「そうはいきません。聖女として、私の力でもって全力で阻止します!」
テリアに対抗すべく、サキが前面に出てきて防護魔法を展開する。
私やミズーナ王女には敵わないものの、サキだって魔法の腕前は大したものなのよね。
「ホーリーシェル!」
私たちを包み込むように、巨大な光の壁を展開するサキ。
その不意を突いた魔法は、テリアの魔法を弾き飛ばしてしまった。
「ちっ、あんたってば、噂に聞いてる聖女ってわけね。あたしの魔法を弾き返すなんて、許されないわよ!」
予想外な事をされたテリアがさらに激昂する。
それと同時に、サキが両膝をついて座り込んでしまった。
「キャハハ、どうやら力を使い過ぎたようね。でもね、あたしはまだ魔法を放てるのよ。二度目は防げるかしらねぇ~?」
言葉の通り、テリアはもう一度魔法を使おうとしている。
サキは今の一撃で疲弊しているし、私だって手厳しい。サクラは防御は苦手、エスカも魔法弾を潰すのに大技を使って疲れ切っている。
……万事休すかしら。
「アルー!」
そこで動いたのがメチルだった。
「はいですよ」
「めいっぱい、大きいの頼むわ」
「ご主人様の魔力を使えば、楽勝よ」
アルーが両手を突き出して魔法を使う。
「ホーリーシェル!」
サキが使ったものと同じものを、平然と使ってみせた。
「きぃ~~、雑魚のくせにいっちょ前にあたしの魔法を防ぐなんて!」
テリアは地団太を踏んでいる。
格下だと思っていたメチルに自分の魔法が防がれたのがよっぽど悔しいのでしょうね。実際、メチル自身もテリアの事を相当手強いって言ってるわけだものね。
「ぐぬぬぬ……、こうなったら一度引き下がるわよ。作戦の練り直しだわ」
思わぬ苦戦を強いられた事で、テリアが撤退しようとする。
だけどその時だった。
「きゃあああっ!」
テリア目がけて魔法の雷が落とされたのだ。
強力な魔法だったがために、さすがの私でも恐怖のあまりに震えてしまった。
「ふん、こんな雑魚どもに後れを取るなど、魔族の恥さらしよ。そうではないか?」
重苦しい声が聞こえてくる。その一言一言がお腹の底まで響いてくる。その重厚な響きゆえに、立っているのがとてもつらくなってくる。
「さ、サンカリー様……」
さすがはテリア。だてに四天王と言われているだけの事はある。あの雷を食らって生きているんだもの。
「だが、その程度の軍勢でやって来た事を褒めてやろう。それに敬意を表し、我が屋敷に招待しようではないか」
魔族四天王の大ボスたるサンカリーは余裕の表情である。
しかし、私たちはその言葉に強く警戒する。なにせ敵が自分の本拠地に招くというのだから、それは当然の反応といえる。
「ふん、どうした。怖気づいたか」
鼻で笑うサンカリー。
「荒野で野垂れ死ぬよりも、敵の本拠地で死んだ方が人間の評価は高かろう?」
にやにやと笑いを堪えるように話すサンカリー。
その威圧感の中、私たちはどうにか話し合いをする。そして、私たちの出した結論は……。
「いいでしょう。その招待を受けましょう」
私が代表してサンカリーの正体に応じる返答をする。
すると、サンカリーは満足したかのように口角を上げて笑っている。
「ふっ、ではお前の持っている地図とやらを出せ。そこに我の本拠地の場所を記してやろう」
今戦っても勝てる見込みがないので、私はおとなしく地図を広げる。
すると、サンカリーの指先から魔力がほとばしり、地図に目立つようにバツ印が刻み込まれた。
「では、待っているぞ。テリア、お前も歓迎の準備を手伝うのだ」
「わ、分かりました~」
びびった表情をしながらサンカリーの言葉に応じるテリア。つまり、テリアですら怯えるほどにサンカリーは強いという事なのね。
そして、サンカリーとテリアが姿を消すと、私たちは力が抜けたようにその場に座り込んでしまった。
「ちょっ、何よこれ……」
必死に風に耐えるテリアだが、次の瞬間、急に体勢を崩した。
「げほっがはげほっ。うっ、気持ち悪~い!」
そう叫びながら、テリアは地面へと落下していった。自分が使おうとしていた魔法弾の追撃付きで。
落下の衝撃と魔法弾の衝撃で、辺り一帯に轟音が響き渡る。
「やったか?」
同行していた兵士の一人が叫ぶ。
はい、それフラグだからやめてちょうだい。
そのフラグの通り、地面に落ちたはずのテリアはちゃっかり立ち上がっていた。
しかし、着ている服のあちこちが破けているので、それなりに強いダメージを受けた事は間違いないようだった。
「まったく、最悪だわよ。あんたたちなんて、ぎったんぎったんに引き裂いて惨たらしく殺してやるんだから!」
テリアは怒髪天のようだ。
お嬢様系魔族としてのプライドがあるのだろうけれど、もうその可愛らしさはどこへやらという感じだった。
それにしても、あれだけの状況でまだ維持されているサイドテールが頑丈だわね。
「気持ち悪いにおいをたくさんぶつけてくれちゃって……、このお礼はしてやらなきゃダメよね。特にメチル、裏切者のあんたは絶対に許さないんだから!」
びしっとメチルを指差すテリア。
「目を覚まされちゃったけど、男はもう一回、あたしの虜にしてやるわよ。さあ、あたしの手駒として女どもをなぶっておしまい!」
テリアが両手を掲げて誘惑の魔法を使う。
「そうはいきません。聖女として、私の力でもって全力で阻止します!」
テリアに対抗すべく、サキが前面に出てきて防護魔法を展開する。
私やミズーナ王女には敵わないものの、サキだって魔法の腕前は大したものなのよね。
「ホーリーシェル!」
私たちを包み込むように、巨大な光の壁を展開するサキ。
その不意を突いた魔法は、テリアの魔法を弾き飛ばしてしまった。
「ちっ、あんたってば、噂に聞いてる聖女ってわけね。あたしの魔法を弾き返すなんて、許されないわよ!」
予想外な事をされたテリアがさらに激昂する。
それと同時に、サキが両膝をついて座り込んでしまった。
「キャハハ、どうやら力を使い過ぎたようね。でもね、あたしはまだ魔法を放てるのよ。二度目は防げるかしらねぇ~?」
言葉の通り、テリアはもう一度魔法を使おうとしている。
サキは今の一撃で疲弊しているし、私だって手厳しい。サクラは防御は苦手、エスカも魔法弾を潰すのに大技を使って疲れ切っている。
……万事休すかしら。
「アルー!」
そこで動いたのがメチルだった。
「はいですよ」
「めいっぱい、大きいの頼むわ」
「ご主人様の魔力を使えば、楽勝よ」
アルーが両手を突き出して魔法を使う。
「ホーリーシェル!」
サキが使ったものと同じものを、平然と使ってみせた。
「きぃ~~、雑魚のくせにいっちょ前にあたしの魔法を防ぐなんて!」
テリアは地団太を踏んでいる。
格下だと思っていたメチルに自分の魔法が防がれたのがよっぽど悔しいのでしょうね。実際、メチル自身もテリアの事を相当手強いって言ってるわけだものね。
「ぐぬぬぬ……、こうなったら一度引き下がるわよ。作戦の練り直しだわ」
思わぬ苦戦を強いられた事で、テリアが撤退しようとする。
だけどその時だった。
「きゃあああっ!」
テリア目がけて魔法の雷が落とされたのだ。
強力な魔法だったがために、さすがの私でも恐怖のあまりに震えてしまった。
「ふん、こんな雑魚どもに後れを取るなど、魔族の恥さらしよ。そうではないか?」
重苦しい声が聞こえてくる。その一言一言がお腹の底まで響いてくる。その重厚な響きゆえに、立っているのがとてもつらくなってくる。
「さ、サンカリー様……」
さすがはテリア。だてに四天王と言われているだけの事はある。あの雷を食らって生きているんだもの。
「だが、その程度の軍勢でやって来た事を褒めてやろう。それに敬意を表し、我が屋敷に招待しようではないか」
魔族四天王の大ボスたるサンカリーは余裕の表情である。
しかし、私たちはその言葉に強く警戒する。なにせ敵が自分の本拠地に招くというのだから、それは当然の反応といえる。
「ふん、どうした。怖気づいたか」
鼻で笑うサンカリー。
「荒野で野垂れ死ぬよりも、敵の本拠地で死んだ方が人間の評価は高かろう?」
にやにやと笑いを堪えるように話すサンカリー。
その威圧感の中、私たちはどうにか話し合いをする。そして、私たちの出した結論は……。
「いいでしょう。その招待を受けましょう」
私が代表してサンカリーの正体に応じる返答をする。
すると、サンカリーは満足したかのように口角を上げて笑っている。
「ふっ、ではお前の持っている地図とやらを出せ。そこに我の本拠地の場所を記してやろう」
今戦っても勝てる見込みがないので、私はおとなしく地図を広げる。
すると、サンカリーの指先から魔力がほとばしり、地図に目立つようにバツ印が刻み込まれた。
「では、待っているぞ。テリア、お前も歓迎の準備を手伝うのだ」
「わ、分かりました~」
びびった表情をしながらサンカリーの言葉に応じるテリア。つまり、テリアですら怯えるほどにサンカリーは強いという事なのね。
そして、サンカリーとテリアが姿を消すと、私たちは力が抜けたようにその場に座り込んでしまった。
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