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第七章 3年目前半
第370話 魔族討伐作戦会議
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ミズーナ王女が手紙を読み終えると、その場はさらに静まり返ってしまっていた。
そりゃまあ、魔王だとか魔族だとか、ベジタリウス王国の中でも知っている者は少ない。レッタス王子ですら知らないということが何よりの証拠だった。
「お母様の報告によれば、魔族のテリアの活動が確認できたみたいですからね。アンマリアが用意してくれた柑橘魔石が役に立っているみたいです」
私の方を見ながら、ミズーナ王女はにっこりと微笑んでいた。くすぐったくて、つい不自然な笑顔になってしまったわ。
手紙によれば、テリアは拠点を固定して人を集めているようで、かなりの規模になっているらしい。さすがにテトロを倒してから6週間という期間は、相当に長かったという事だ。
「とはいえ、この短期間とはいえど、私たちだって鍛えました。そこで、テリアの討伐をするためにも、いよいよ行動を起こそうと思うのです」
このミズーナ王女の一言で、私たちは息を飲んで真剣な表情になる。
何といってもテトロの一件で、魔族の力というのを見せつけられたからだ。
メチルの話では、残りの魔族はテトロよりも格上。実力は相当のものなのだという。
「そこで、行動は二手に分けようと思います。アンマリアとエスカの二人は瞬間移動魔法が使えますので、それに付き合えるのは二人。先んじてベジタリウス王国へ赴き、メチルと一緒にテリアの元へ向かいます」
無言のまま、こくりと頷く私とエスカ。
「そして、私と一緒に馬車で後追いをする面々です。最悪、王都イサヤでの決戦になる可能性もあり得ますので、それに備えるためです。なにせ、2週間も行動がずれますからね」
作戦実行に向けて、ミズーナ王女から淡々と説明が行われる。私たちはただそれをじっと聞いていた。
「では、ご質問はございますか?」
「あの……」
質問の受付を始めると、ラムが手を挙げた。
「はい、何でしょうか」
「ミズーナ王女殿下。お互いの連絡はどうなさるおつもりですか?」
当然そこは気になるだろう。行動が別ともなると相手の様子が分からない。早馬で連絡を取り合うにしても時間がかかってしまうのだ。
ところだが。確かに大問題にもかかわらず、ミズーナ王女はにっこりと微笑んでいた。
「連絡手段は……、実は問題ございません。ね、エスカ?」
ミズーナ王女から笑顔を向けられると、エスカはどういうわけか顔をふいっと背けていた。
「フィレン殿下、エスカから渡されたものは、今もお持ちですか?」
「何をでしょうか」
ミズーナ王女がフィレンに話を振ると、よく分からないといった感じの反応をする。思わず驚いてしまうミズーナ王女だったが、落ち着いて話をする。
「以前エスカがお誕生日に送っという、このくらいの薄い板の事です」
「ああ、あれか。持ってますよ」
ミズーナ王女が手でだいたいの大きさを示すと、なんとか思い出したようだった。するとフィレンは、使用人に声を掛けて持ってこさせる。すると、ミズーナ王女とエスカが思わずこけそうになっていた。
「フィレン殿下……、あれは携帯電話といいましてね、常に肌身離さず持っておくものなんですよ……」
頭の痛いミズーナ王女だった。
「そうなのか。それは悪い事をしたかな?」
「いえ、こちらの世界ではあまり使う事はありませんから仕方ありませんね」
頭を押さえて震えるミズーナ王女だった。
ミズーナ王女とエスカが立ち直る頃、フィレンの手に携帯電話もどきが渡る。そこで、改めてミズーナ王女から説明が始まった。
「連絡はその板を使って行います。相手を想像しながら魔力を流すと、その相手が持つ板が反応して通話ができるようになります。通話というのは、直接声のやり取りができる状態を言います」
「それに、その表面にある手紙のマークを相手を想像しながら押して頂くと、その相手に手紙も送れるんですよ」
「なるほど」
エスカが私に視線を向けてくるので、私は早速携帯電話もどきを使って手紙を出す。
手紙を送ると、フィレンの持つ板が私の髪色に光った。
「閉じた封筒の隣に開いた封筒の図柄が出ているはずですので、それに触れて下さい」
「こ、こうかな?」
フィレンがポンと指先を触れると、送られてきた手紙の一覧が出てくる。全然使っていない事が分かるくらいに、先程送った私の手紙しか出てこなかった。
「アンマリアから送られた手紙が出ていると思いますので、それに触れて下さい。文面が出てきます」
その言葉に従って、フィレンが表示されている文字に触れると、『テスト送信』と書かれた文面が出てきた。その予想外でシンプルな文面に、思わずフィレンは吹き出してしまっていた。
「おほん。そんなわけですので、アンマリアやエスカたちとは、この板を使って連絡を取ります。詳しい使い方は後ほど私の方で教えます。ひとまずは、アンマリアとエスカについて行く二人を決めませんとね」
このような言葉で、ミズーナ王女は作戦の説明を終えた。
こうして、ベジタリウス王国に存在する魔族を討つための作戦が動き始めた。ベジタリウス王国のみならず世界に脅威をもたらす魔族たちを、私たちは無事に討つ事ができるのだろうか。
緊張の夏休みになりそうだった。
そりゃまあ、魔王だとか魔族だとか、ベジタリウス王国の中でも知っている者は少ない。レッタス王子ですら知らないということが何よりの証拠だった。
「お母様の報告によれば、魔族のテリアの活動が確認できたみたいですからね。アンマリアが用意してくれた柑橘魔石が役に立っているみたいです」
私の方を見ながら、ミズーナ王女はにっこりと微笑んでいた。くすぐったくて、つい不自然な笑顔になってしまったわ。
手紙によれば、テリアは拠点を固定して人を集めているようで、かなりの規模になっているらしい。さすがにテトロを倒してから6週間という期間は、相当に長かったという事だ。
「とはいえ、この短期間とはいえど、私たちだって鍛えました。そこで、テリアの討伐をするためにも、いよいよ行動を起こそうと思うのです」
このミズーナ王女の一言で、私たちは息を飲んで真剣な表情になる。
何といってもテトロの一件で、魔族の力というのを見せつけられたからだ。
メチルの話では、残りの魔族はテトロよりも格上。実力は相当のものなのだという。
「そこで、行動は二手に分けようと思います。アンマリアとエスカの二人は瞬間移動魔法が使えますので、それに付き合えるのは二人。先んじてベジタリウス王国へ赴き、メチルと一緒にテリアの元へ向かいます」
無言のまま、こくりと頷く私とエスカ。
「そして、私と一緒に馬車で後追いをする面々です。最悪、王都イサヤでの決戦になる可能性もあり得ますので、それに備えるためです。なにせ、2週間も行動がずれますからね」
作戦実行に向けて、ミズーナ王女から淡々と説明が行われる。私たちはただそれをじっと聞いていた。
「では、ご質問はございますか?」
「あの……」
質問の受付を始めると、ラムが手を挙げた。
「はい、何でしょうか」
「ミズーナ王女殿下。お互いの連絡はどうなさるおつもりですか?」
当然そこは気になるだろう。行動が別ともなると相手の様子が分からない。早馬で連絡を取り合うにしても時間がかかってしまうのだ。
ところだが。確かに大問題にもかかわらず、ミズーナ王女はにっこりと微笑んでいた。
「連絡手段は……、実は問題ございません。ね、エスカ?」
ミズーナ王女から笑顔を向けられると、エスカはどういうわけか顔をふいっと背けていた。
「フィレン殿下、エスカから渡されたものは、今もお持ちですか?」
「何をでしょうか」
ミズーナ王女がフィレンに話を振ると、よく分からないといった感じの反応をする。思わず驚いてしまうミズーナ王女だったが、落ち着いて話をする。
「以前エスカがお誕生日に送っという、このくらいの薄い板の事です」
「ああ、あれか。持ってますよ」
ミズーナ王女が手でだいたいの大きさを示すと、なんとか思い出したようだった。するとフィレンは、使用人に声を掛けて持ってこさせる。すると、ミズーナ王女とエスカが思わずこけそうになっていた。
「フィレン殿下……、あれは携帯電話といいましてね、常に肌身離さず持っておくものなんですよ……」
頭の痛いミズーナ王女だった。
「そうなのか。それは悪い事をしたかな?」
「いえ、こちらの世界ではあまり使う事はありませんから仕方ありませんね」
頭を押さえて震えるミズーナ王女だった。
ミズーナ王女とエスカが立ち直る頃、フィレンの手に携帯電話もどきが渡る。そこで、改めてミズーナ王女から説明が始まった。
「連絡はその板を使って行います。相手を想像しながら魔力を流すと、その相手が持つ板が反応して通話ができるようになります。通話というのは、直接声のやり取りができる状態を言います」
「それに、その表面にある手紙のマークを相手を想像しながら押して頂くと、その相手に手紙も送れるんですよ」
「なるほど」
エスカが私に視線を向けてくるので、私は早速携帯電話もどきを使って手紙を出す。
手紙を送ると、フィレンの持つ板が私の髪色に光った。
「閉じた封筒の隣に開いた封筒の図柄が出ているはずですので、それに触れて下さい」
「こ、こうかな?」
フィレンがポンと指先を触れると、送られてきた手紙の一覧が出てくる。全然使っていない事が分かるくらいに、先程送った私の手紙しか出てこなかった。
「アンマリアから送られた手紙が出ていると思いますので、それに触れて下さい。文面が出てきます」
その言葉に従って、フィレンが表示されている文字に触れると、『テスト送信』と書かれた文面が出てきた。その予想外でシンプルな文面に、思わずフィレンは吹き出してしまっていた。
「おほん。そんなわけですので、アンマリアやエスカたちとは、この板を使って連絡を取ります。詳しい使い方は後ほど私の方で教えます。ひとまずは、アンマリアとエスカについて行く二人を決めませんとね」
このような言葉で、ミズーナ王女は作戦の説明を終えた。
こうして、ベジタリウス王国に存在する魔族を討つための作戦が動き始めた。ベジタリウス王国のみならず世界に脅威をもたらす魔族たちを、私たちは無事に討つ事ができるのだろうか。
緊張の夏休みになりそうだった。
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