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第七章 3年目前半
第332話 融かして混ぜて固めちゃえ
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しばらくの休憩の後、エスカはレモネの皮も同じように搾っていく。ただし、先程の反省から山を4個程度に分けて搾っていく。
宙に浮きあがり、そして圧縮されて油を搾り取られるレモネの皮。何度見ても圧巻の光景である。
「この魔法の使い方は、なるべく秘匿しなければなりません。なにせ、この通りぺしゃんこになってしまいますからね」
エスカの前には、闇魔法で圧縮されたレモネの皮の搾りかすが山積みにされている。それを見れば、誰もが納得してしまうというものだった。もしこれが人間だったらと思うと恐怖でしかない。
「ですから、この圧搾については、商会に頼んで専用の機械を作ってもらっています。油が搾り取れなければ意味がありませんから、しばらくかかるでしょうけれどね」
油を搾り終えて、ろうそくを融かすための準備を始めるエスカは苦笑いをしながら状況を説明していた。
搾油のための装置については、まずは小型のものからになるだろう。エスカと同じ規模の搾油が実行できるようになるには、相当の時間を要するのは間違いない話である。
さて、いよいよろうを融かす作業が始まる。とりあえずは集められた太めのろうそく10本くらいを融かす。
「ううっ、これだけの量となると、火加減が難しいです」
エスカが大量に出した湯煎用の水を火魔法で温めていくモモ。さすがに融かすろうそくが多いので、エスカが魔法で出した水の量も相当に多い。そうなると当然ながら、水を温めるための火魔法もそれなりに威力が求められる。
しかし、下手に火加減を間違えると桶だったりろうそくだったりを燃やしてしまう。モモには実に細やかな火力と範囲の調節が求められたのである。
どうにかこうにか苦戦しながらも、湯煎でろうそくを融かす事に成功したモモ。その達成感で、やり切った顔をしながら汗を拭っていた。
「ふぅ、魔法の扱いがうまくなった気がします」
「お疲れ様」
収納魔法からオランの果肉1個とコップ1つを取り出して、果汁を搾るエスカ。それを受け取ったモモは、
「ありがとうございます、エスカ王女殿下」
お礼を言いながら飲み干していた。
「うう、少し酸っぱい。でも、おいしい」
「果汁100%ですものね」
「ひゃく、ぱーせ……?」
エスカの言葉が理解できなかったのか、モモは思わず首を傾げてしまった。どうやらパーセントが通じなかったようである。
説明するのも面倒なのか、エスカはとりあえず笑ってごまかしていた。
「ろうそくも融けましたから、これをキャンドルにしていくだけですね」
そう言いながら融けたろうの中から芯を取り除いていくエスカ。それをミムクに渡して、3等分くらいに切ってもらう。
「事前にアンマリアにおねだりして作ってもらっていた器を出していきます。モモはろうの中にアロマオイルを流し込んでよくかき混ぜて下さい。そのろうの量なら、スープ用スプーン5杯もあれば十分でしょう」
「承知しました」
水魔法を取り除いたオランの油をスプーンですくうと、慎重にろうの中に流し込んでいく。それにしても、あの量の皮を搾ったのに、思ったより量が少ない。器を並べながら、エスカは残ったアロマオイルを回収していく。
サクラにはレモネの方の搾った油をモモと同じようにすくってろうに混ぜる。それらをよく混ぜ合わせて、エスカの取り出した器に流し込んでいく。さすがに一度作った事のあるモモの手際はよかった。ちなみにエスカはろうそくの芯を闇魔法で固定しているので手伝えていなかった。
ろうを注ぎ込み終わると、あとは固まるのを待つばかりである。
「まあまあ、結構大変ですのね」
ミムクはのんびりとした様子で話している。
「そうですね。皮を搾って油を採る作業が特に大変です。あとは普通のろうそくを作るのとあまり作業は変わらないと思いますので、慣れた方のお任せするのがよいかと思います」
「ええ、そうですね」
話しながら、闇魔法で芯を固定させ続け、水魔法でろうが固まるのを促進させているエスカ。なかなかに器用である。
こういう魔法の使い方をしても平気なあたり、さすがはエスカも転生者といったところである。
「二人ともご協力ありがとうございます。疲れたかと思いますので、今日のところはこれで作るのを終わりましょう」
「承知致しました」
エスカの言葉に、モモもサクラも頭を下げて返事をする。
結局、この日でき上がったアロマキャンドルは、20個ほどだった。元々のろうそくが太くて高さのあるものだったとはいえ、1本が2本にしかならなかったのだ。
「結構作るのが大変でしたね」
「ええ、手伝ってくれて助かりました。一人では到底無理でしたからね」
「えへへ」
エスカからお礼を言われると、モモは照れくさそうに笑っていた。
「大体作り方は分かりましたので、これは領地の事業として検討しておきますね」
「はい、本格的に始めるには時間がかかるでしょうけれども、捨てるだけだった皮が有効利用できますからね」
ミムクに前向きな返事がもらえると、エスカは満足そうに笑みを浮かべたのだった。
この日は夕食後にもアンマリアを巻き込んだ上でキャンドル作りをして、合計で60個ほどのアロマキャンドルを完成させたのだった。
宙に浮きあがり、そして圧縮されて油を搾り取られるレモネの皮。何度見ても圧巻の光景である。
「この魔法の使い方は、なるべく秘匿しなければなりません。なにせ、この通りぺしゃんこになってしまいますからね」
エスカの前には、闇魔法で圧縮されたレモネの皮の搾りかすが山積みにされている。それを見れば、誰もが納得してしまうというものだった。もしこれが人間だったらと思うと恐怖でしかない。
「ですから、この圧搾については、商会に頼んで専用の機械を作ってもらっています。油が搾り取れなければ意味がありませんから、しばらくかかるでしょうけれどね」
油を搾り終えて、ろうそくを融かすための準備を始めるエスカは苦笑いをしながら状況を説明していた。
搾油のための装置については、まずは小型のものからになるだろう。エスカと同じ規模の搾油が実行できるようになるには、相当の時間を要するのは間違いない話である。
さて、いよいよろうを融かす作業が始まる。とりあえずは集められた太めのろうそく10本くらいを融かす。
「ううっ、これだけの量となると、火加減が難しいです」
エスカが大量に出した湯煎用の水を火魔法で温めていくモモ。さすがに融かすろうそくが多いので、エスカが魔法で出した水の量も相当に多い。そうなると当然ながら、水を温めるための火魔法もそれなりに威力が求められる。
しかし、下手に火加減を間違えると桶だったりろうそくだったりを燃やしてしまう。モモには実に細やかな火力と範囲の調節が求められたのである。
どうにかこうにか苦戦しながらも、湯煎でろうそくを融かす事に成功したモモ。その達成感で、やり切った顔をしながら汗を拭っていた。
「ふぅ、魔法の扱いがうまくなった気がします」
「お疲れ様」
収納魔法からオランの果肉1個とコップ1つを取り出して、果汁を搾るエスカ。それを受け取ったモモは、
「ありがとうございます、エスカ王女殿下」
お礼を言いながら飲み干していた。
「うう、少し酸っぱい。でも、おいしい」
「果汁100%ですものね」
「ひゃく、ぱーせ……?」
エスカの言葉が理解できなかったのか、モモは思わず首を傾げてしまった。どうやらパーセントが通じなかったようである。
説明するのも面倒なのか、エスカはとりあえず笑ってごまかしていた。
「ろうそくも融けましたから、これをキャンドルにしていくだけですね」
そう言いながら融けたろうの中から芯を取り除いていくエスカ。それをミムクに渡して、3等分くらいに切ってもらう。
「事前にアンマリアにおねだりして作ってもらっていた器を出していきます。モモはろうの中にアロマオイルを流し込んでよくかき混ぜて下さい。そのろうの量なら、スープ用スプーン5杯もあれば十分でしょう」
「承知しました」
水魔法を取り除いたオランの油をスプーンですくうと、慎重にろうの中に流し込んでいく。それにしても、あの量の皮を搾ったのに、思ったより量が少ない。器を並べながら、エスカは残ったアロマオイルを回収していく。
サクラにはレモネの方の搾った油をモモと同じようにすくってろうに混ぜる。それらをよく混ぜ合わせて、エスカの取り出した器に流し込んでいく。さすがに一度作った事のあるモモの手際はよかった。ちなみにエスカはろうそくの芯を闇魔法で固定しているので手伝えていなかった。
ろうを注ぎ込み終わると、あとは固まるのを待つばかりである。
「まあまあ、結構大変ですのね」
ミムクはのんびりとした様子で話している。
「そうですね。皮を搾って油を採る作業が特に大変です。あとは普通のろうそくを作るのとあまり作業は変わらないと思いますので、慣れた方のお任せするのがよいかと思います」
「ええ、そうですね」
話しながら、闇魔法で芯を固定させ続け、水魔法でろうが固まるのを促進させているエスカ。なかなかに器用である。
こういう魔法の使い方をしても平気なあたり、さすがはエスカも転生者といったところである。
「二人ともご協力ありがとうございます。疲れたかと思いますので、今日のところはこれで作るのを終わりましょう」
「承知致しました」
エスカの言葉に、モモもサクラも頭を下げて返事をする。
結局、この日でき上がったアロマキャンドルは、20個ほどだった。元々のろうそくが太くて高さのあるものだったとはいえ、1本が2本にしかならなかったのだ。
「結構作るのが大変でしたね」
「ええ、手伝ってくれて助かりました。一人では到底無理でしたからね」
「えへへ」
エスカからお礼を言われると、モモは照れくさそうに笑っていた。
「大体作り方は分かりましたので、これは領地の事業として検討しておきますね」
「はい、本格的に始めるには時間がかかるでしょうけれども、捨てるだけだった皮が有効利用できますからね」
ミムクに前向きな返事がもらえると、エスカは満足そうに笑みを浮かべたのだった。
この日は夕食後にもアンマリアを巻き込んだ上でキャンドル作りをして、合計で60個ほどのアロマキャンドルを完成させたのだった。
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