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第七章 3年目前半
第328話 3年目スタート
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いよいよ年が明ける。
乙女ゲーム最後の3年目がスタートした。
季節的には春になったものの、年末に降った雪が積もっていてまだまだ寒い日が続く。外に出てみれば吐く息が白くなっている。
「さて、ついに3年目が始まっちゃったわね……。結局不安要素が消え切らなかったから、ゲームとは関係なところで気を揉んじゃうわね」
外の空気を吸いながら庭を散歩していると、隣を歩くエスカが寒そうに震えていた。
「まったく……。去年も思ったけど、サーロインの土地って寒いわね。ミール王国は暖かいから、慣れないわ」
かなり着込んでいるというのに、この言い分である。よっぽど寒くてたまらないのだろう。
地理的に見てみても、ミール王国はかなり南に位置している。とはいっても、ミール王国の王都シャオンから、サーロイン王国の王都トーミまでの距離なんて、馬車で10日も程度の距離なので、気候的にそう変わるものかと思う。
そうは思ったものの、地球も南北移動ならそれなりに気候が変わったなと思ったので、私は言おうとした言葉をそのまま飲み込んだ。
「そういえば、モモたちは居ないわけ?」
「居るわよ。テールとタミールの相手をしているから、外に出てきていないだけでね」
「なによ。それってまるで私と話があるみたいな感じじゃないの」
「まあね」
ギロリと睨んでくるエスカの言葉を肯定すると、エスカはそのまま固まってしまった。
私はエスカの肩をポンと叩くと、そのまま雪化粧をした四阿へと連れて行く。そこに到着すると、魔法で雪を払った上で防護魔法をかけて、外部と遮断した。
「これで少しは寒さも和らぐでしょう」
私がエスカを見て微笑むと、
「ま、まあ、少しはね……」
どこかバツが悪そうな反応をしながら、エスカはおとなしく四阿の椅子に腰を掛けていた。
「それにしても、こんな場所に呼び出して、一体どうするのよ。ここは周りからよく見えるわよ?」
エスカが至極当然な事を言ってくる。だけど、私はそれにはまったく動揺しなかった。
「周りから見えるという事は、こちらからもよく見えるという事。そのために一番開けた場所の四阿を選んだんですもの」
「はあ?」
私の意図するところがよく分からないと言わんばかりに、エスカが表情を歪ませる。
(あなた王女よね?)
エスカの反応に、私は思わず真顔になってしまった。
するとエスカが今度は睨んできたので、私は咳払いひとつをして、気を取り直した。
「ベジタリウス王国の諜報部隊の事も問題だけど、とりあえずここで話をするのは、伯母さまと話をしていたハーブやアロマの件ね」
「ああ、その話ね?」
私が話を切り出すと、エスカはちょっと納得したような表情をしていた。
「あっちの話だったら、城の方に飛んでミズーナ王女も巻き込んだわ。でも、今回はこっちの話題だからここで話をしているのよ」
「なるほど、ここなら庭が見えるものね」
とりあえず私の意図をしっかりと理解してくれたので、私は話を続ける。
「ハーブとアロマをこちらの世界で定着させるのは大変じゃないかしらね」
「それは思うわよ、知識がないんだもの。でも、せっかく植物があるのに使わない手はないでしょう?」
「そりゃねぇ……」
私の指摘にも、エスカは強気である。逆に私が黙らされてしまった。
「アンマリアのおば様とは約束をさせて頂きましたからね。近日中には訪問させてもらうわよ」
「それはいいけど、一人で行こうなんてしないでよ?」
「まぁね、王女だから護衛くらいはつけるわよ」
強引に話を進めるエスカ。私が懸念を伝えると、私の肩に手を置いてにこりと微笑んでいる。
「護衛は頼むわよ?」
「えええ……」
やっぱりそうなるかと、私は露骨に嫌な顔をする。
「火の魔法が使えるモモと、もう一人くらいは連れて行きたいわね。アンマリアが居るんだから、四人で行く事ができるからね」
頬に人差し指を当てながら、見上げるような感じで考え込むエスカ。
「それだったら、サクラ様でも連れて行きましょうか。脳筋なバッサーシ辺境伯家の令嬢ですから、護衛には適していると思うわ」
「いいわね。そっちの説得は頼めるかしら」
「……やりますよーだ」
場所はこちらが誘導したのに、話は完全にエスカのペースだった。
話がまとまった事で、私たちはそれぞれに動く事になった。エスカがモモに、私がサクラに話をして、その後に手土産を持って城に居るミズーナ王女に面会をした。
「まあ、アンマリアのご両親の実家に行きますのね」
「ええ、エスカってばアロマを作るんだって意気込んでますから」
「アロマは、私もお世話になりましたね。両親からやっと解放された後もストレスが酷かったですから、よく使いましたよ」
アロマの話に、思いの外ミズーナ王女も食いついてきた。聞いてもいないのに昔語りをされたけど、ミズーナ王女もアロマのお世話にはなっていた様子。なるほど食いつくわけだ。
「こちらの事はお任せ下さい。情報はないとはいえど、今の平和な関係を壊されたくはありませんからね」
ミズーナ王女は微笑みを浮かべていた。エスカと比べれば、なんとも信用のできる微笑みである。
とりあえず転生者の間での話はついたので、エスカがミズーナ王女に手土産であるアロマキャンドルを渡して城を去ったのだった。
乙女ゲーム最後の3年目がスタートした。
季節的には春になったものの、年末に降った雪が積もっていてまだまだ寒い日が続く。外に出てみれば吐く息が白くなっている。
「さて、ついに3年目が始まっちゃったわね……。結局不安要素が消え切らなかったから、ゲームとは関係なところで気を揉んじゃうわね」
外の空気を吸いながら庭を散歩していると、隣を歩くエスカが寒そうに震えていた。
「まったく……。去年も思ったけど、サーロインの土地って寒いわね。ミール王国は暖かいから、慣れないわ」
かなり着込んでいるというのに、この言い分である。よっぽど寒くてたまらないのだろう。
地理的に見てみても、ミール王国はかなり南に位置している。とはいっても、ミール王国の王都シャオンから、サーロイン王国の王都トーミまでの距離なんて、馬車で10日も程度の距離なので、気候的にそう変わるものかと思う。
そうは思ったものの、地球も南北移動ならそれなりに気候が変わったなと思ったので、私は言おうとした言葉をそのまま飲み込んだ。
「そういえば、モモたちは居ないわけ?」
「居るわよ。テールとタミールの相手をしているから、外に出てきていないだけでね」
「なによ。それってまるで私と話があるみたいな感じじゃないの」
「まあね」
ギロリと睨んでくるエスカの言葉を肯定すると、エスカはそのまま固まってしまった。
私はエスカの肩をポンと叩くと、そのまま雪化粧をした四阿へと連れて行く。そこに到着すると、魔法で雪を払った上で防護魔法をかけて、外部と遮断した。
「これで少しは寒さも和らぐでしょう」
私がエスカを見て微笑むと、
「ま、まあ、少しはね……」
どこかバツが悪そうな反応をしながら、エスカはおとなしく四阿の椅子に腰を掛けていた。
「それにしても、こんな場所に呼び出して、一体どうするのよ。ここは周りからよく見えるわよ?」
エスカが至極当然な事を言ってくる。だけど、私はそれにはまったく動揺しなかった。
「周りから見えるという事は、こちらからもよく見えるという事。そのために一番開けた場所の四阿を選んだんですもの」
「はあ?」
私の意図するところがよく分からないと言わんばかりに、エスカが表情を歪ませる。
(あなた王女よね?)
エスカの反応に、私は思わず真顔になってしまった。
するとエスカが今度は睨んできたので、私は咳払いひとつをして、気を取り直した。
「ベジタリウス王国の諜報部隊の事も問題だけど、とりあえずここで話をするのは、伯母さまと話をしていたハーブやアロマの件ね」
「ああ、その話ね?」
私が話を切り出すと、エスカはちょっと納得したような表情をしていた。
「あっちの話だったら、城の方に飛んでミズーナ王女も巻き込んだわ。でも、今回はこっちの話題だからここで話をしているのよ」
「なるほど、ここなら庭が見えるものね」
とりあえず私の意図をしっかりと理解してくれたので、私は話を続ける。
「ハーブとアロマをこちらの世界で定着させるのは大変じゃないかしらね」
「それは思うわよ、知識がないんだもの。でも、せっかく植物があるのに使わない手はないでしょう?」
「そりゃねぇ……」
私の指摘にも、エスカは強気である。逆に私が黙らされてしまった。
「アンマリアのおば様とは約束をさせて頂きましたからね。近日中には訪問させてもらうわよ」
「それはいいけど、一人で行こうなんてしないでよ?」
「まぁね、王女だから護衛くらいはつけるわよ」
強引に話を進めるエスカ。私が懸念を伝えると、私の肩に手を置いてにこりと微笑んでいる。
「護衛は頼むわよ?」
「えええ……」
やっぱりそうなるかと、私は露骨に嫌な顔をする。
「火の魔法が使えるモモと、もう一人くらいは連れて行きたいわね。アンマリアが居るんだから、四人で行く事ができるからね」
頬に人差し指を当てながら、見上げるような感じで考え込むエスカ。
「それだったら、サクラ様でも連れて行きましょうか。脳筋なバッサーシ辺境伯家の令嬢ですから、護衛には適していると思うわ」
「いいわね。そっちの説得は頼めるかしら」
「……やりますよーだ」
場所はこちらが誘導したのに、話は完全にエスカのペースだった。
話がまとまった事で、私たちはそれぞれに動く事になった。エスカがモモに、私がサクラに話をして、その後に手土産を持って城に居るミズーナ王女に面会をした。
「まあ、アンマリアのご両親の実家に行きますのね」
「ええ、エスカってばアロマを作るんだって意気込んでますから」
「アロマは、私もお世話になりましたね。両親からやっと解放された後もストレスが酷かったですから、よく使いましたよ」
アロマの話に、思いの外ミズーナ王女も食いついてきた。聞いてもいないのに昔語りをされたけど、ミズーナ王女もアロマのお世話にはなっていた様子。なるほど食いつくわけだ。
「こちらの事はお任せ下さい。情報はないとはいえど、今の平和な関係を壊されたくはありませんからね」
ミズーナ王女は微笑みを浮かべていた。エスカと比べれば、なんとも信用のできる微笑みである。
とりあえず転生者の間での話はついたので、エスカがミズーナ王女に手土産であるアロマキャンドルを渡して城を去ったのだった。
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