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第六章 2年目後半
第309話 成長して下さいな
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後期末の魔法実技試験の試験方法は、前期末と同じ、動く的を魔法で撃ち抜くというものになった。しかも、その的は不規則に動くので、より正確な魔法の制御が必要となる。
物としてはほとんど変わらないのだけれど、ここ半年で身につけた魔法制御が活かされているので、前期末よりは難易度が上がっているはずである。
「これだけのものを作ってしまうなんて、アンマリア様はさすがですね」
見学に回ったテールが褒めてくる。私としても会心のできである。
この試験装置、魔法で障害物も作ってあるので、見えているとはいってもなかなか当てるのは難しいし、私の魔力で作った障害物をぶち破ろうなんてエスカやミズーナ王女くらいしかできないだろう。
そういえば、ミズーナ王女もすっかり痩せちゃってたわね。恩恵が体型に影響しなくなったせいで一気に痩せてしまったそうな。いや、急激に体型が変わっちゃうといろいろ大変なんだけどなぁ……。
さて、しばらく待っていると、1年生たちがやって来た。
一年生という事は、エスカとミズーナ王女、それとレッタス王子が居る。レッタス王子は武術型ではあるものの、魔法も得意としているのでこちらの試験も受けに来たようだ。
「まあ、またこれなのね」
そんな事を言うのはエスカだった。悪かったわね、またこれで。エスカの時だけ難易度上げてあげようかしらね。まぁ全員に平等だからやめておいてあげるわ。
「エスカ、そんな事を言うのはやめなさい。これを作ったのはアンマリアよ? 自分の時だけ難易度上げられたいの?」
「はっ! それは嫌だわ!」
ミズーナ王女から窘められて、エスカはぶんぶんと首を横に振っていた。
とりあえず1年生が全員やって来たので、予定通り魔法実技試験が始められる。
今回用意した魔法実技試験の装置は、調整はしたものの難易度的には前期末のものとはそう変わらない。さて、どのくらいの結果を出してくれるのか楽しみね。
結果、ミズーナ王女が前回と同じ19個という結果が最高だった。
「はあ、ちょっと動きが不規則だったので、仕損じてしまいましたね。ぐぬぬぬ……」
全部の的を撃ち落せなかった事に、本気で悔しがっているミズーナ王女である。
「ふふん、今年こそは全部撃ち抜いてやるわよ」
代わりに意気込んで出てきたのがエスカだった。
「夏のようにはいかないからね。私だって腕を磨いてきたんだから」
ものすごい自信だわね。
魔法実技試験の装置に向かって仁王立ちをするエスカ。その表情は自信に満ちあふれている。
「さあ来なさい、アンマリア。あなたの自信作、この私が撃破してあげるわ!」
エスカは気合いたっぷりに試験装置へと向かう。
「はああっ!!」
王女だという忘れたかのような気合いの入れ方をするエスカ。さあ、結果はどうだったのか。
「はあはあ……。こ、このくらいにしてあげますわ」
負け惜しみなセリフを吐くエスカ。結果は20の的のうち14個を撃ち落しただけだった。それでも前期末に比べれば2個増えている。進歩しているといったら進歩しているようだった。
「もう、なんで当たらないのよ!」
エスカはじっと私の方を見てくる。そんなに睨まれても困るのよね。
「何もしてないですよ。難易度はミズーナ王女殿下の時と変わりませんから、単純にエスカ王女殿下の集中力の問題だと思われます」
淡々と対応する私。エスカはとても悔しそうに地団太を踏むと、おとなしく退いた。あれで転生者で王女なのよね?
とはいえ、エスカがおとなしく引き下がった事で、1年生の魔法実技試験は順調に進んでいった。全体の成績としては、前期末を少し超えるような平均になったようだった。
「1年生とはいっても、さすがですね。平均で10個を超えているのはすごいと思います」
テールがにこにこと喜びながら話している。それというのも、テールの前期末の成績は7個だったのだ。
少ないかも知れないが、テールは元々平民だ。魔法はそれほど得意ではないので、これくらいならよくやった方だと思われる。魔力量は多いけれど、本人の技術が追いついていなかったのである。
だからこそ、ベジタリウス王国の諜報部隊員であるイスンセの駒として狙われたのだろう。魔法が使えないのに魔力が多いというのは、それだけ魔力を消費しないという事。呪具に力を与えるには最適な器だったというわけね。
……まったく吐き気がするわ。
っと、テールと話をしていたらいろいろ思い出して腹が立ってきたわ。いけないいけない、試験に集中しないと。
私は顔をぶんぶんと横に振って落ち着こうとする。
「アンマリア様?」
私の急な行動に、テールがびっくりして声を掛けてきた。
「大丈夫よ。ちょっと嫌な事を思い出したけど、もう忘れたから」
「そ、そうですか」
私が答えると、テールはほっとした表情を見せていた。いけないわね、心配かけちゃうなんてね。
とりあえず1年生の試験が終わり、次は2年生が入ってくる。
さて、今回のみんなはどのくらいの的を撃ち落してくれるのかしらね。私はわくわくしながらみんなが入ってくる姿を眺めていた。
物としてはほとんど変わらないのだけれど、ここ半年で身につけた魔法制御が活かされているので、前期末よりは難易度が上がっているはずである。
「これだけのものを作ってしまうなんて、アンマリア様はさすがですね」
見学に回ったテールが褒めてくる。私としても会心のできである。
この試験装置、魔法で障害物も作ってあるので、見えているとはいってもなかなか当てるのは難しいし、私の魔力で作った障害物をぶち破ろうなんてエスカやミズーナ王女くらいしかできないだろう。
そういえば、ミズーナ王女もすっかり痩せちゃってたわね。恩恵が体型に影響しなくなったせいで一気に痩せてしまったそうな。いや、急激に体型が変わっちゃうといろいろ大変なんだけどなぁ……。
さて、しばらく待っていると、1年生たちがやって来た。
一年生という事は、エスカとミズーナ王女、それとレッタス王子が居る。レッタス王子は武術型ではあるものの、魔法も得意としているのでこちらの試験も受けに来たようだ。
「まあ、またこれなのね」
そんな事を言うのはエスカだった。悪かったわね、またこれで。エスカの時だけ難易度上げてあげようかしらね。まぁ全員に平等だからやめておいてあげるわ。
「エスカ、そんな事を言うのはやめなさい。これを作ったのはアンマリアよ? 自分の時だけ難易度上げられたいの?」
「はっ! それは嫌だわ!」
ミズーナ王女から窘められて、エスカはぶんぶんと首を横に振っていた。
とりあえず1年生が全員やって来たので、予定通り魔法実技試験が始められる。
今回用意した魔法実技試験の装置は、調整はしたものの難易度的には前期末のものとはそう変わらない。さて、どのくらいの結果を出してくれるのか楽しみね。
結果、ミズーナ王女が前回と同じ19個という結果が最高だった。
「はあ、ちょっと動きが不規則だったので、仕損じてしまいましたね。ぐぬぬぬ……」
全部の的を撃ち落せなかった事に、本気で悔しがっているミズーナ王女である。
「ふふん、今年こそは全部撃ち抜いてやるわよ」
代わりに意気込んで出てきたのがエスカだった。
「夏のようにはいかないからね。私だって腕を磨いてきたんだから」
ものすごい自信だわね。
魔法実技試験の装置に向かって仁王立ちをするエスカ。その表情は自信に満ちあふれている。
「さあ来なさい、アンマリア。あなたの自信作、この私が撃破してあげるわ!」
エスカは気合いたっぷりに試験装置へと向かう。
「はああっ!!」
王女だという忘れたかのような気合いの入れ方をするエスカ。さあ、結果はどうだったのか。
「はあはあ……。こ、このくらいにしてあげますわ」
負け惜しみなセリフを吐くエスカ。結果は20の的のうち14個を撃ち落しただけだった。それでも前期末に比べれば2個増えている。進歩しているといったら進歩しているようだった。
「もう、なんで当たらないのよ!」
エスカはじっと私の方を見てくる。そんなに睨まれても困るのよね。
「何もしてないですよ。難易度はミズーナ王女殿下の時と変わりませんから、単純にエスカ王女殿下の集中力の問題だと思われます」
淡々と対応する私。エスカはとても悔しそうに地団太を踏むと、おとなしく退いた。あれで転生者で王女なのよね?
とはいえ、エスカがおとなしく引き下がった事で、1年生の魔法実技試験は順調に進んでいった。全体の成績としては、前期末を少し超えるような平均になったようだった。
「1年生とはいっても、さすがですね。平均で10個を超えているのはすごいと思います」
テールがにこにこと喜びながら話している。それというのも、テールの前期末の成績は7個だったのだ。
少ないかも知れないが、テールは元々平民だ。魔法はそれほど得意ではないので、これくらいならよくやった方だと思われる。魔力量は多いけれど、本人の技術が追いついていなかったのである。
だからこそ、ベジタリウス王国の諜報部隊員であるイスンセの駒として狙われたのだろう。魔法が使えないのに魔力が多いというのは、それだけ魔力を消費しないという事。呪具に力を与えるには最適な器だったというわけね。
……まったく吐き気がするわ。
っと、テールと話をしていたらいろいろ思い出して腹が立ってきたわ。いけないいけない、試験に集中しないと。
私は顔をぶんぶんと横に振って落ち着こうとする。
「アンマリア様?」
私の急な行動に、テールがびっくりして声を掛けてきた。
「大丈夫よ。ちょっと嫌な事を思い出したけど、もう忘れたから」
「そ、そうですか」
私が答えると、テールはほっとした表情を見せていた。いけないわね、心配かけちゃうなんてね。
とりあえず1年生の試験が終わり、次は2年生が入ってくる。
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