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第六章 2年目後半
第297話 準備は整った
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私がベジタリウス王国に出む事が決まったものの、ミズーナ王女はやっぱり表情が優れなかった。どうも思い憂うところがあるのかも知れない。
だけど、あえて私たちはそこには触れずにいた。本人が話したくなったら聞く方向にしたのだ。
さて、ベジタリウスに向かう面々をどうするのか、それが最大の問題だった。
それというのも、私の瞬間移動魔法で移動できるのは私ともう一人だけだ。エスカに手伝ってもらってももう一人加わるくらいだけれど、移動先であるバッサーシ辺境伯領にエスカは行った事がない。つまり、結局は私ともう一人しか行く事ができないというわけである。
一体誰を連れて行くか。私はひと晩悩んだのだった。
翌日、学園に出向くと、昼の席でついそれをみんなに話してしまう。
すると、それに一人乗っかって来た令嬢が居た。
「アンマリア様、それでしたら私がお供を致します」
サクラ・バッサーシ辺境伯令嬢だった。
今回ベジタリウス王国へ出向くために、国境を接するバッサーシ辺境伯領へまず一度向かう事になる。だからこそ、辺境伯の娘であるサクラが名乗りを上げたというわけだった。
辺境伯の娘であるサクラが居るのならば、いろいろと話は早いだろう。ただ、今回のベジタリウス王国への訪問は、かなり危険が伴う可能性が高い。いくら辺境伯の娘だからといっても無理をさせられるかという問題はあった。
「アンマリア様、そんなに気になさるのでしたら、おば様のところへ参りましょう」
「ああ、ミスミ教官ですか……」
及び腰になっている私に対して、サクラは自信たっぷりな表情で申し出てくる。
確かにこういう任務であるなら、あの女傑たる教官に聞くのがいいのかも知れない。なんといっても、バッサーシ辺境伯の血筋だものね。
「アンマリア様、サクラ様、お気を付け下さいませ」
「そうですわよ、お姉様。あれだけの騒ぎを起こしてくれた国です、油断はできません」
「無事をお祈りしております、アンマリア様、サクラ様」
ラム、モモ、サキの三人が、それぞれに心配の声を掛けてくる。私はそれに対して笑顔で頷いて返した。
こういう時、ライバル令嬢たちは頼りになるわね。
心の中で感心しながら、私たちは昼食を済ませたのだった。
放課後にミスミ教官の部屋を訪ねる私とサクラ。すると、ミスミ教官はすんなりと私たちを出迎えてくれた。
「来るとは思っていたよ。ちょうど城から私のところに話が来たものだからな」
これには私たちは驚いた。昨日の話が既にミスミ教官の耳に届いていたらしい。
「行くんだったら私は止めはしない。なにせ国のためにやる事だ。私だって騎士だからな、国のために命を投げ出す覚悟はできている」
「おば様、騎士と私たちを同じように考えないで下さいませんか?!」
すかさずサクラからツッコミが入る。そりゃまぁ、王子の婚約者と騎士では国のために動くとはいっても立ち位置が違うものね。
「はははっ、すまないな。私はこういう考え方しかできないのだよ、悪いな、サクラ」
笑いながら弁解をするミスミ教官である。そして、それと同時に、私たちに対して何やら書簡を差し出してきた。
「兄上に会うのであれば、これを渡してほしい。今回の情報はまだあちらには届いていないだろうから、私がまとめておいたのだ」
「これは……助かります、おば様」
書簡を受け取りながら礼を言うサクラである。
「可愛い姪っ子のためだ。どうせこういう話になれば、名乗りを上げるのは分かっていたからな」
「お、おば様?!」
笑いながら話すミスミ教官に、思わず慌ててしまうサクラだった。さすがはバッサーシの血筋、お互いの事はしっかり分かってしまうようだった。
「それと、アンマリア・ファッティにもこれを渡しておこう」
ミスミ教官は私にも何やら紙を渡してきた。
「これは……?」
「私が調べた限りのベジタリウス王国の地図だ。バッサーシ邸にもあるとは思うが、去年までの任務で手に入れた情報だから、こっちの方が新しい。役に立つといいのだがな」
「それは、ありがたい限りです。ありがとうございます」
ミスミ教官から地図を受け取ると、私は勢いよく頭を下げてお礼を言う。すると、ミスミ教官は照れくさそうに笑っていた。
「まあなんだ。教え子たちが頑張ろうとしているのだからな。私たち大人が何もしないわけにはいくまい」
「おば様、ありがとうございます」
「いいって事だ。だが、本当のお礼というのは、無事にこちらに帰ってきてからにしてほしい」
「確かに、そうですね」
私たちはつい笑ってしまう。
「それで、いつ向かうつもりだ?」
「そうですね。明日にでも向かおうとかと思います。呪具が使われていた以上、看過はできませんからね」
ミスミ教官の質問に、私はすっぱりと答える。
「分かった。歯ごたえのある二人が居なくなるのは授業としてはつまらなくなるが、戻ってくるまでの間の事は任せておいてくれ」
「よろしくお願いします」
私とサクラは、ミスミ教官に深く頭を下げた。
これでベジタリウス王国へと向かう準備が整った。今起きている事はベジタリウス王国の意思なのか、はたまた内部の反乱なのか。それを確かめるための訪問である。
家に戻った私は、翌日に向けて早めに眠りに就いたのだった。
だけど、あえて私たちはそこには触れずにいた。本人が話したくなったら聞く方向にしたのだ。
さて、ベジタリウスに向かう面々をどうするのか、それが最大の問題だった。
それというのも、私の瞬間移動魔法で移動できるのは私ともう一人だけだ。エスカに手伝ってもらってももう一人加わるくらいだけれど、移動先であるバッサーシ辺境伯領にエスカは行った事がない。つまり、結局は私ともう一人しか行く事ができないというわけである。
一体誰を連れて行くか。私はひと晩悩んだのだった。
翌日、学園に出向くと、昼の席でついそれをみんなに話してしまう。
すると、それに一人乗っかって来た令嬢が居た。
「アンマリア様、それでしたら私がお供を致します」
サクラ・バッサーシ辺境伯令嬢だった。
今回ベジタリウス王国へ出向くために、国境を接するバッサーシ辺境伯領へまず一度向かう事になる。だからこそ、辺境伯の娘であるサクラが名乗りを上げたというわけだった。
辺境伯の娘であるサクラが居るのならば、いろいろと話は早いだろう。ただ、今回のベジタリウス王国への訪問は、かなり危険が伴う可能性が高い。いくら辺境伯の娘だからといっても無理をさせられるかという問題はあった。
「アンマリア様、そんなに気になさるのでしたら、おば様のところへ参りましょう」
「ああ、ミスミ教官ですか……」
及び腰になっている私に対して、サクラは自信たっぷりな表情で申し出てくる。
確かにこういう任務であるなら、あの女傑たる教官に聞くのがいいのかも知れない。なんといっても、バッサーシ辺境伯の血筋だものね。
「アンマリア様、サクラ様、お気を付け下さいませ」
「そうですわよ、お姉様。あれだけの騒ぎを起こしてくれた国です、油断はできません」
「無事をお祈りしております、アンマリア様、サクラ様」
ラム、モモ、サキの三人が、それぞれに心配の声を掛けてくる。私はそれに対して笑顔で頷いて返した。
こういう時、ライバル令嬢たちは頼りになるわね。
心の中で感心しながら、私たちは昼食を済ませたのだった。
放課後にミスミ教官の部屋を訪ねる私とサクラ。すると、ミスミ教官はすんなりと私たちを出迎えてくれた。
「来るとは思っていたよ。ちょうど城から私のところに話が来たものだからな」
これには私たちは驚いた。昨日の話が既にミスミ教官の耳に届いていたらしい。
「行くんだったら私は止めはしない。なにせ国のためにやる事だ。私だって騎士だからな、国のために命を投げ出す覚悟はできている」
「おば様、騎士と私たちを同じように考えないで下さいませんか?!」
すかさずサクラからツッコミが入る。そりゃまぁ、王子の婚約者と騎士では国のために動くとはいっても立ち位置が違うものね。
「はははっ、すまないな。私はこういう考え方しかできないのだよ、悪いな、サクラ」
笑いながら弁解をするミスミ教官である。そして、それと同時に、私たちに対して何やら書簡を差し出してきた。
「兄上に会うのであれば、これを渡してほしい。今回の情報はまだあちらには届いていないだろうから、私がまとめておいたのだ」
「これは……助かります、おば様」
書簡を受け取りながら礼を言うサクラである。
「可愛い姪っ子のためだ。どうせこういう話になれば、名乗りを上げるのは分かっていたからな」
「お、おば様?!」
笑いながら話すミスミ教官に、思わず慌ててしまうサクラだった。さすがはバッサーシの血筋、お互いの事はしっかり分かってしまうようだった。
「それと、アンマリア・ファッティにもこれを渡しておこう」
ミスミ教官は私にも何やら紙を渡してきた。
「これは……?」
「私が調べた限りのベジタリウス王国の地図だ。バッサーシ邸にもあるとは思うが、去年までの任務で手に入れた情報だから、こっちの方が新しい。役に立つといいのだがな」
「それは、ありがたい限りです。ありがとうございます」
ミスミ教官から地図を受け取ると、私は勢いよく頭を下げてお礼を言う。すると、ミスミ教官は照れくさそうに笑っていた。
「まあなんだ。教え子たちが頑張ろうとしているのだからな。私たち大人が何もしないわけにはいくまい」
「おば様、ありがとうございます」
「いいって事だ。だが、本当のお礼というのは、無事にこちらに帰ってきてからにしてほしい」
「確かに、そうですね」
私たちはつい笑ってしまう。
「それで、いつ向かうつもりだ?」
「そうですね。明日にでも向かおうとかと思います。呪具が使われていた以上、看過はできませんからね」
ミスミ教官の質問に、私はすっぱりと答える。
「分かった。歯ごたえのある二人が居なくなるのは授業としてはつまらなくなるが、戻ってくるまでの間の事は任せておいてくれ」
「よろしくお願いします」
私とサクラは、ミスミ教官に深く頭を下げた。
これでベジタリウス王国へと向かう準備が整った。今起きている事はベジタリウス王国の意思なのか、はたまた内部の反乱なのか。それを確かめるための訪問である。
家に戻った私は、翌日に向けて早めに眠りに就いたのだった。
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