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第六章 2年目後半
第292話 呪いを解き終えて
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『さあ戻りなさい、私の愛し子たちよ。目を覚ましたら右手の甲を御覧なさい。あなたたちにしか見る事のできない紋様を、お詫びとして刻まさせて頂きます。詳しくは鑑定魔法で確認して下さい』
女神がそう言うと、白い世界に居る私たちの意識がふわりと揺らぎ始めた。
『あなたたちは今、会議室近くの応接室のソファーに寝かされています。起きても慌てないで下さいね』
状況を説明してくれる女神の声が段々と遠くなる。
私たちの意識は再びまどろみに落ちていったのだった。
しばらくして、私たちは意識を取り戻す。
確かに私たちは、女神の言った通りにソファーの上で寝かされており、ご丁寧にシーツまで掛けられていた。
「ああ、目覚めたかい、マリー」
意識を取り戻した私の目に飛び込んできたのは、まぎれもなく私の父親だった。
「お父……様?」
目を覚ましたばかりなので、確かめるように私は言葉を口にする。
「そうだよ、マリー」
はっきりとした言葉が返ってくる。
「ああ、いきなり気を失うから心配したんだよ」
父親の心配そうな声を聞きながら、私はゆっくりと体を起こす。少しふらふらするので、頭を手で押さえながらだった。
「……ロートント男爵は、どうなりましたか?」
まだ意識がもうろうとするので、発言するまでに時間がかかってしまった。それでも、どうしても気になるので私は父親に尋ねている。
「ロートント男爵なら別室で隔離されているよ。気を失って倒れたものだから、動かすのはよろしくないという事でな。ただ、しっかりと監視は付いているぞ」
「そう……ですか」
気を失ってという単語を聞いて、私は安心した。呪いが強力すぎた反動で大変な事になっていないか、最悪の事態すら想像したからだった。
私と父親が話している間に、サキたちも順番に目を覚ましていた。
寝ぼけた眼を擦りながら、辺りをきょろきょろと見回して自分の環境を必死に確認しているようだった。
私たちの方も全員無事と分かれば、いよいよ安心できるというものだ。
ところが、ここで私はとある事に気が付いて父親に尋ねる。
「お父様、殿下とモモとテール様を見ませんでしたか?」
そう、呪いを浄化する直前に部屋に飛び込んできた三人である。あれだけ強力な呪いの波動が荒れ狂う中だったのだ。思い出してしまえば気になるしかないのである。
私が取り乱したように確認をするので、父親はちょっと驚いていたようだ。それでもすぐに落ち着きを取り戻して、私の顔をじっくりと見ながら話し掛けてきた。
「殿下たちもすぐそこで休んでいるよ。大丈夫だ、みんな無事だよ」
「よかった……」
父親から返ってきた答えに、私は胸を撫で下ろしていた。懸念がすべて解決したので、とにかく安心しているのである。
正直、あの強力な呪いを相手にして、私たち全員が無事に済んだというのは奇跡と言ってもいいと思う。
とにかく、ロートント男爵の身を蝕んでいた呪いを解く事ができた事を素直に喜ぶ私たちだった。
その日、私たちは念のために城に泊まる事となってしまった。それというのも、揃いも揃って気を失ってしまう事態となったので、ひとところで経過を観察するためである。これならば、何かあってもすぐに対処ができるというわけだ。
正直言ってお城で一泊するなど緊張しかないのだけれども、王族の婚約者である以上、お城の空気に慣れておく必要があるだろうとやむを得ず受け入れた私である。
お城の客室でくつろぐ私は、ベッドの上で自分の右手の甲を見ていた。
(確かに、何かちらつくように不思議に光っているわね。これが女神様の仰られていた紋様ってやつかしら)
手の角度を変えると、いろいろと色を変えながら光っている。これだけ不思議な色を放つのであれば、私たち以外の誰かが気付きそうなものである。
ところが、女神の言っていた通り、私たち以外の誰もが気付く事はなかった。だって、手の甲をあれだけはっきり見ても気が付かなかったんだもの。信じるしかないわね。
私は手の甲の紋様に対して鑑定魔法を使う。
すると、手の甲の紋様に関しての詳細な情報が浮かび上がった。
『女神の加護
破邪の魔力を増加させ、毒や呪いなどのデバフに対しての耐性を大幅に強化する。
また、恩恵を溜め込む能力を増加させる働きを持ち、今までよりも効率的に恩恵を集める事ができる。
ただし、それによって体型に影響が出る事はない』
どうやら、強力なバフ効果をもたらす紋様のようだった。
何より喜ばしいのは、今までのように恩恵を溜め込んで太る事がなくなったという事だろう。女性としての悩みを理解してくれたようである。
(よかった……。恩恵を集めなきゃいけない事は分かったけれど、太るのだけは本気で勘弁願いたかったものね)
紋様の効果を確認した私は、その一点をものすごく喜んだ。
毒や呪いを受け付けにくくする効果もすごいのだけれども、太らなくて済む事の前にすっかりかすんでしまっていた。そのくらいに、太る事に関しては拒否感が強かったのである。
紋様を鑑定し終えた私は、いろいろあった疲れからかそのままぐっすりと眠りについたのだった。
女神がそう言うと、白い世界に居る私たちの意識がふわりと揺らぎ始めた。
『あなたたちは今、会議室近くの応接室のソファーに寝かされています。起きても慌てないで下さいね』
状況を説明してくれる女神の声が段々と遠くなる。
私たちの意識は再びまどろみに落ちていったのだった。
しばらくして、私たちは意識を取り戻す。
確かに私たちは、女神の言った通りにソファーの上で寝かされており、ご丁寧にシーツまで掛けられていた。
「ああ、目覚めたかい、マリー」
意識を取り戻した私の目に飛び込んできたのは、まぎれもなく私の父親だった。
「お父……様?」
目を覚ましたばかりなので、確かめるように私は言葉を口にする。
「そうだよ、マリー」
はっきりとした言葉が返ってくる。
「ああ、いきなり気を失うから心配したんだよ」
父親の心配そうな声を聞きながら、私はゆっくりと体を起こす。少しふらふらするので、頭を手で押さえながらだった。
「……ロートント男爵は、どうなりましたか?」
まだ意識がもうろうとするので、発言するまでに時間がかかってしまった。それでも、どうしても気になるので私は父親に尋ねている。
「ロートント男爵なら別室で隔離されているよ。気を失って倒れたものだから、動かすのはよろしくないという事でな。ただ、しっかりと監視は付いているぞ」
「そう……ですか」
気を失ってという単語を聞いて、私は安心した。呪いが強力すぎた反動で大変な事になっていないか、最悪の事態すら想像したからだった。
私と父親が話している間に、サキたちも順番に目を覚ましていた。
寝ぼけた眼を擦りながら、辺りをきょろきょろと見回して自分の環境を必死に確認しているようだった。
私たちの方も全員無事と分かれば、いよいよ安心できるというものだ。
ところが、ここで私はとある事に気が付いて父親に尋ねる。
「お父様、殿下とモモとテール様を見ませんでしたか?」
そう、呪いを浄化する直前に部屋に飛び込んできた三人である。あれだけ強力な呪いの波動が荒れ狂う中だったのだ。思い出してしまえば気になるしかないのである。
私が取り乱したように確認をするので、父親はちょっと驚いていたようだ。それでもすぐに落ち着きを取り戻して、私の顔をじっくりと見ながら話し掛けてきた。
「殿下たちもすぐそこで休んでいるよ。大丈夫だ、みんな無事だよ」
「よかった……」
父親から返ってきた答えに、私は胸を撫で下ろしていた。懸念がすべて解決したので、とにかく安心しているのである。
正直、あの強力な呪いを相手にして、私たち全員が無事に済んだというのは奇跡と言ってもいいと思う。
とにかく、ロートント男爵の身を蝕んでいた呪いを解く事ができた事を素直に喜ぶ私たちだった。
その日、私たちは念のために城に泊まる事となってしまった。それというのも、揃いも揃って気を失ってしまう事態となったので、ひとところで経過を観察するためである。これならば、何かあってもすぐに対処ができるというわけだ。
正直言ってお城で一泊するなど緊張しかないのだけれども、王族の婚約者である以上、お城の空気に慣れておく必要があるだろうとやむを得ず受け入れた私である。
お城の客室でくつろぐ私は、ベッドの上で自分の右手の甲を見ていた。
(確かに、何かちらつくように不思議に光っているわね。これが女神様の仰られていた紋様ってやつかしら)
手の角度を変えると、いろいろと色を変えながら光っている。これだけ不思議な色を放つのであれば、私たち以外の誰かが気付きそうなものである。
ところが、女神の言っていた通り、私たち以外の誰もが気付く事はなかった。だって、手の甲をあれだけはっきり見ても気が付かなかったんだもの。信じるしかないわね。
私は手の甲の紋様に対して鑑定魔法を使う。
すると、手の甲の紋様に関しての詳細な情報が浮かび上がった。
『女神の加護
破邪の魔力を増加させ、毒や呪いなどのデバフに対しての耐性を大幅に強化する。
また、恩恵を溜め込む能力を増加させる働きを持ち、今までよりも効率的に恩恵を集める事ができる。
ただし、それによって体型に影響が出る事はない』
どうやら、強力なバフ効果をもたらす紋様のようだった。
何より喜ばしいのは、今までのように恩恵を溜め込んで太る事がなくなったという事だろう。女性としての悩みを理解してくれたようである。
(よかった……。恩恵を集めなきゃいけない事は分かったけれど、太るのだけは本気で勘弁願いたかったものね)
紋様の効果を確認した私は、その一点をものすごく喜んだ。
毒や呪いを受け付けにくくする効果もすごいのだけれども、太らなくて済む事の前にすっかりかすんでしまっていた。そのくらいに、太る事に関しては拒否感が強かったのである。
紋様を鑑定し終えた私は、いろいろあった疲れからかそのままぐっすりと眠りについたのだった。
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