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第五章 2年目前半
第285話 眠れる少年
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「ただいま戻りました」
私はタミールを抱えた状態で屋敷に戻ってきた。痩せてきたとはいっても、ここまで来るときちんと身に付けた筋力が仕事をしてくれている。タミールは魔力循環不全で少々こけているとはいえど、これだけしっかり支えられるとは思ってみなかった。なにせこの間は支えようとしてよろけていたんだもの。
「お帰りなさいませ、アンマリア嬢様」
私の声に最初に反応したのはスーラだった。さすが私の専属侍女だわ。
「アンマリアお嬢様、その方は?」
スーラが私に確認を取ってくる。そういえば、会った事なかったかな。
「この方はいとこのタミール・ファッティです。今年から学園に通う予定だったのですが、事情があってこの通り遅れてしまいました」
「そうだったのですね。では、どちらの部屋にお連れすれば?」
「空いている客間を使います。最終的な判断はお父様にお任せしますわ」
私がその様に伝えると、スーラは了承して男性の使用人を呼びに行った。
スーラが戻ってくるまでの間、私はしばらく玄関で待っている事にする。タミールを肩で支えている状態で待ちぼうけである。何にしても、部屋が決まらない事にはここから動けない。私はおとなしく待つ事にした。
「あら、アンマリアじゃありませんの。どこに行っていたのです?」
そこへエスカがテールを連れてやって来た。よく見ればモモまで居る。全員揃って何をしてたのかしらね。気になるけれどそれどころじゃないから、とりあえず適当に受け答えしておきますか。
「あれ、お姉様。その方はいとこのタミール様では?」
おっと、会った事のあるモモが思い出したようだわ。
「タミール?」
エスカとテールが誰の事か分からないので首を傾げている。ゲームの中では出てこなかったから、エスカが分からないのは無理もないわね。
「はい、私がいま支えているこちらの少年は、私の1つ下のいとこでして、タミール・ファッティと申します。魔力循環不全を患っていましたので、今はちょっと疲れて眠っている状態です」
隠す事もないだろうと、私は正直に答えておく。
「何なんですか、その魔力循環不全って……」
テールは病気の名前が気になった様子だわ。まあ、聞き慣れない言葉だから仕方ないかな。
「テール様は魔力の循環が体の中にある事はご存じで?」
説明するために、まずはテールに確認をする私。
「は、はい。私は養子で平民でしたけれど、一応その事は聞いています」
そういえば養子でしたっけね、テールって。
呪具にあれだけ魔力を吸われて生きていたんだから、テールが引き取られた理由って魔力量だったのかも知れないわね。
でも、本人を見ている限りは、そんな感じがほとんどしないのよね。本当にただの少女といった感じにしか思えなかった。
っと、話が脱線するところだったわね。
「体内をめぐる魔力の循環が狂う事。それによって引き起こされるのが魔力循環不全という病気です。倦怠感や無気力感などに襲われて、最悪の場合は死に至るという危険な病気なんですよ」
「まあ……!」
私の説明にテールはもちろんだけど、エスカも驚いていた。そりゃこの病気もゲームには出てこなかったものですからね。エスカが驚くのは当然かしらね。
「それで、私がタミールがこっちに来てない事を思い出して領地の屋敷を訪ねたら、魔力循環不全を患っていて危険な状態だったというわけなのですよ」
私が説明を終えると、エスカとテールは心配そうにタミールの事を見ていた。
そこへ、スーラが男性使用人を連れて戻ってきた。
「おや、みんなお揃いで」
スーラはびっくりして私たちに声を掛けている。
「スーラ、部屋の準備はできましたか?」
「はい、もちろんでございます」
私の質問に、スーラはすんなり答えた。そして、すぐさま男性の使用人を伴って、用意した客室へとタミールを案内というか運ぶ事になったのだった。
なんとか階段も無事に昇る事ができ、部屋のベッドにタミールを寝かしつけた私たち。結局この間、タミールは一切目を覚まさなかった。
「お父様が戻られましたら、対応を頼みませんとね」
「それよりも、タミール様がまったく目を覚まさないのが気になりますね」
確かに、スーラの指摘の通りだわね。向こうを発つ頃からタミールはずっと眠ったままなのである。はっきり言って心配になってしまう状態だった。
「一応、鑑定してみた結果は問題なしですね。ただ眠っているだけです」
ついて来ていたエスカがタミールに鑑定魔法を勝手に使っていた。まぁ助かるんだけど。眠っているのならそのうち目を覚ますだろうという事で、父親が戻ってくるまでの間、スーラに呼んでもらった使用人にタミールの事を見てもらう事にした。ついでに、目を覚ました時にはすぐ呼んでもらう事を追加で頼んでおいた。使用人はそれも含めてまとめて了承してくれた。うちの使用人は優秀だし、信頼できる。本当に立派なものだわ。
とりあえず、学園に入っているはずのいとこをようやく連れてきたけれど、前途多難っぽいわね。一体どうしたものやら……。
私はタミールを抱えた状態で屋敷に戻ってきた。痩せてきたとはいっても、ここまで来るときちんと身に付けた筋力が仕事をしてくれている。タミールは魔力循環不全で少々こけているとはいえど、これだけしっかり支えられるとは思ってみなかった。なにせこの間は支えようとしてよろけていたんだもの。
「お帰りなさいませ、アンマリア嬢様」
私の声に最初に反応したのはスーラだった。さすが私の専属侍女だわ。
「アンマリアお嬢様、その方は?」
スーラが私に確認を取ってくる。そういえば、会った事なかったかな。
「この方はいとこのタミール・ファッティです。今年から学園に通う予定だったのですが、事情があってこの通り遅れてしまいました」
「そうだったのですね。では、どちらの部屋にお連れすれば?」
「空いている客間を使います。最終的な判断はお父様にお任せしますわ」
私がその様に伝えると、スーラは了承して男性の使用人を呼びに行った。
スーラが戻ってくるまでの間、私はしばらく玄関で待っている事にする。タミールを肩で支えている状態で待ちぼうけである。何にしても、部屋が決まらない事にはここから動けない。私はおとなしく待つ事にした。
「あら、アンマリアじゃありませんの。どこに行っていたのです?」
そこへエスカがテールを連れてやって来た。よく見ればモモまで居る。全員揃って何をしてたのかしらね。気になるけれどそれどころじゃないから、とりあえず適当に受け答えしておきますか。
「あれ、お姉様。その方はいとこのタミール様では?」
おっと、会った事のあるモモが思い出したようだわ。
「タミール?」
エスカとテールが誰の事か分からないので首を傾げている。ゲームの中では出てこなかったから、エスカが分からないのは無理もないわね。
「はい、私がいま支えているこちらの少年は、私の1つ下のいとこでして、タミール・ファッティと申します。魔力循環不全を患っていましたので、今はちょっと疲れて眠っている状態です」
隠す事もないだろうと、私は正直に答えておく。
「何なんですか、その魔力循環不全って……」
テールは病気の名前が気になった様子だわ。まあ、聞き慣れない言葉だから仕方ないかな。
「テール様は魔力の循環が体の中にある事はご存じで?」
説明するために、まずはテールに確認をする私。
「は、はい。私は養子で平民でしたけれど、一応その事は聞いています」
そういえば養子でしたっけね、テールって。
呪具にあれだけ魔力を吸われて生きていたんだから、テールが引き取られた理由って魔力量だったのかも知れないわね。
でも、本人を見ている限りは、そんな感じがほとんどしないのよね。本当にただの少女といった感じにしか思えなかった。
っと、話が脱線するところだったわね。
「体内をめぐる魔力の循環が狂う事。それによって引き起こされるのが魔力循環不全という病気です。倦怠感や無気力感などに襲われて、最悪の場合は死に至るという危険な病気なんですよ」
「まあ……!」
私の説明にテールはもちろんだけど、エスカも驚いていた。そりゃこの病気もゲームには出てこなかったものですからね。エスカが驚くのは当然かしらね。
「それで、私がタミールがこっちに来てない事を思い出して領地の屋敷を訪ねたら、魔力循環不全を患っていて危険な状態だったというわけなのですよ」
私が説明を終えると、エスカとテールは心配そうにタミールの事を見ていた。
そこへ、スーラが男性使用人を連れて戻ってきた。
「おや、みんなお揃いで」
スーラはびっくりして私たちに声を掛けている。
「スーラ、部屋の準備はできましたか?」
「はい、もちろんでございます」
私の質問に、スーラはすんなり答えた。そして、すぐさま男性の使用人を伴って、用意した客室へとタミールを案内というか運ぶ事になったのだった。
なんとか階段も無事に昇る事ができ、部屋のベッドにタミールを寝かしつけた私たち。結局この間、タミールは一切目を覚まさなかった。
「お父様が戻られましたら、対応を頼みませんとね」
「それよりも、タミール様がまったく目を覚まさないのが気になりますね」
確かに、スーラの指摘の通りだわね。向こうを発つ頃からタミールはずっと眠ったままなのである。はっきり言って心配になってしまう状態だった。
「一応、鑑定してみた結果は問題なしですね。ただ眠っているだけです」
ついて来ていたエスカがタミールに鑑定魔法を勝手に使っていた。まぁ助かるんだけど。眠っているのならそのうち目を覚ますだろうという事で、父親が戻ってくるまでの間、スーラに呼んでもらった使用人にタミールの事を見てもらう事にした。ついでに、目を覚ました時にはすぐ呼んでもらう事を追加で頼んでおいた。使用人はそれも含めてまとめて了承してくれた。うちの使用人は優秀だし、信頼できる。本当に立派なものだわ。
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