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第五章 2年目前半
第277話 証拠を探れ
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私が立ち会う中、テールに対する事情聴取が行われる。ただ、テールもかなり今回の事にはショックを受けているので、やり過ぎないようにするために私もこうやって立ち会ってるってわけ。時々子ども相手でもやり過ぎちゃう憲兵っているからね。さすがに王子の婚約者の居る前でやらかしはしないでしょう。
テールは取り調べにはものすごくおとなしく応じていた。ある程度は聞いていたけれど、さすがに取り調べとあってより詳しくテールは話していた。
あの日は寝たあたりからはまったく記憶にないらしい。となると、あのタイミングでブローチの宝石に仕掛けられた魔法が時限的に発動したと見た方がいい事になる。
何にしてもこのテールの証言で、ブローチそのもの、もしくは宝石が魔道具だったと思われる。そこに加えて、私はブローチが浄化に反発して、周りを巻き込んで自爆しようとした事も付け加えて報告しておいた。私が気が付いて咄嗟に防護魔法を使わなかったら、おそらく大惨事になっていたのは間違いないはずだもの。だからこそ、呪いの魔道具、呪具というわけである。
(あの時砕け散った呪具はミズーナ王女が回収して、今は城の中で保管してあるはず。……テールの事情聴取を終えたら見に行ってみましょうかね)
私はこんな事を考えながら、テールの事情聴取をじっと見守り続けたのだった。
結局は新しい情報は、あの事件の際にブローチが時限的に発動したという事くらいだった。それ以外は先に家でテールから聞いた事ばかりだった。入手先としてロートント男爵の名前が出ているので、こうなると次は呪具であるブローチを調べる必要がありそうだった。
ロートント男爵を問い詰めるには、もっと証拠を固めなければならないというわけである。
まったく、夏合宿の時のあの一件は、国家反逆だけでは済まないとんでもない事件だったのだから、そりゃもう、責任の所在をはっきりさせて追及しないとね?
私は楽しいはずの夏休みをめちゃくちゃにされて、今さらながらにふつふつと怒りが湧いてきていた。やってくれた連中には制裁を加えなきゃねぇ?
「えっと、アンマリア……様?」
私の表情を見てテールが顔を引きつらせて怯えている。
「うん? テール様、どうかされましたか?」
「あ、いえ……。すごく怖い顔で笑ってられたので、つい……」
「あら、そんなに出ちゃってましたか。ごめんなさい」
いけないいけない。ちょっとばかり感情が表に出過ぎてしまったみたいね。反省、反省。
私はじっくりと顔をほぐしていく。怖い表情してちゃダメよね、貴族令嬢なんだから。
とりあえず事情聴取を終えた私は、テールを連れてミズーナ王女の部屋へと向かった。一応場所を知っているから、私は迷う事なく到着できた。
「あら、アンマリア。城に来てましたのね」
扉をノックすると、すんなりとミズーナ王女は部屋へと入れてくれた。
「テールはすっかり体はよくなったようですね。回復魔法を使ったかいがあるというものですわ」
ミズーナ王女はにこにこしているけれど、私はすぐさま本題をぶち込む事にした。
「ミズーナ王女殿下、回収したブローチの欠片はどちらにございますでしょうか」
私からぶつけられた質問に、ミズーナ王女は目を丸くしていた。いきなりこの話題になるとは思ってなかったようだった。
「それでしたら、ご案内致しますわ」
咳払いをひとつしたミズーナ王女は、にこりと微笑んで私たちを見ながら部屋を出ていく。
私たちが動かないでいるとミズーナ王女は待っていたので、私とテールは顔をつい見合わせてしまう。そして、もう一度ミズーナ王女の方を見ると黙ってついて行く事にしたのだった。
「失礼致しますよ」
「こ、これはミズーナ・ベジタリウス王女。一体どうされたのですか?」
ミズーナ王女が声を掛けてから入った部屋の中では、数名の魔法使いと思しき人物たちが真剣な表情で何かに取り組んでいた。その中の一人がミズーナ王女に応対している。
「エスカと私とで集めた破片について、その分析状況を確認しに参りました」
にこりと微笑むミズーナ王女だが、その笑顔がまたちょっと怖い。対応している人物は、どう反応していいのかちょっと困っているようだった。
「とりあえず、ここまでの分析結果をお聞かせ願えますかしら」
ちょっと顔に血管が浮かびそうな状態のミズーナ王女。王女に凄まれてしまえば、魔法使いたちは声を上げながら怯えていた。もう少し堂々としていてもいいのではないのだろうかと思うが、他国とはいえ王女相手だから仕方ないのかも知れない。
慌てた魔法使いたちは、とりあえずここまでの分析結果をミズーナ王女と私に伝えてきた。あれから数日が経つのだから、多少なりと結果は出ているはずである。
ところが、予想に反してまったく結果は出ていなかった。魔法使いたちが言うには、砕けた状態でありながら妨害魔法が残っており、それによって分析がままならいというわけらしい。
この呪具、この状態になっても抗おうとしているらしい。
「このままでは埒が明きませんね。アンマリア」
様子を見かねたミズーナ王女は私の手を取る。
「こうなったら、私たち二人でやってしまいますわよ。コントロールは任せて下さいね」
ミズーナ王女は私の手を引いて、砕けた呪具の元へと駆け寄ったのだった。
テールは取り調べにはものすごくおとなしく応じていた。ある程度は聞いていたけれど、さすがに取り調べとあってより詳しくテールは話していた。
あの日は寝たあたりからはまったく記憶にないらしい。となると、あのタイミングでブローチの宝石に仕掛けられた魔法が時限的に発動したと見た方がいい事になる。
何にしてもこのテールの証言で、ブローチそのもの、もしくは宝石が魔道具だったと思われる。そこに加えて、私はブローチが浄化に反発して、周りを巻き込んで自爆しようとした事も付け加えて報告しておいた。私が気が付いて咄嗟に防護魔法を使わなかったら、おそらく大惨事になっていたのは間違いないはずだもの。だからこそ、呪いの魔道具、呪具というわけである。
(あの時砕け散った呪具はミズーナ王女が回収して、今は城の中で保管してあるはず。……テールの事情聴取を終えたら見に行ってみましょうかね)
私はこんな事を考えながら、テールの事情聴取をじっと見守り続けたのだった。
結局は新しい情報は、あの事件の際にブローチが時限的に発動したという事くらいだった。それ以外は先に家でテールから聞いた事ばかりだった。入手先としてロートント男爵の名前が出ているので、こうなると次は呪具であるブローチを調べる必要がありそうだった。
ロートント男爵を問い詰めるには、もっと証拠を固めなければならないというわけである。
まったく、夏合宿の時のあの一件は、国家反逆だけでは済まないとんでもない事件だったのだから、そりゃもう、責任の所在をはっきりさせて追及しないとね?
私は楽しいはずの夏休みをめちゃくちゃにされて、今さらながらにふつふつと怒りが湧いてきていた。やってくれた連中には制裁を加えなきゃねぇ?
「えっと、アンマリア……様?」
私の表情を見てテールが顔を引きつらせて怯えている。
「うん? テール様、どうかされましたか?」
「あ、いえ……。すごく怖い顔で笑ってられたので、つい……」
「あら、そんなに出ちゃってましたか。ごめんなさい」
いけないいけない。ちょっとばかり感情が表に出過ぎてしまったみたいね。反省、反省。
私はじっくりと顔をほぐしていく。怖い表情してちゃダメよね、貴族令嬢なんだから。
とりあえず事情聴取を終えた私は、テールを連れてミズーナ王女の部屋へと向かった。一応場所を知っているから、私は迷う事なく到着できた。
「あら、アンマリア。城に来てましたのね」
扉をノックすると、すんなりとミズーナ王女は部屋へと入れてくれた。
「テールはすっかり体はよくなったようですね。回復魔法を使ったかいがあるというものですわ」
ミズーナ王女はにこにこしているけれど、私はすぐさま本題をぶち込む事にした。
「ミズーナ王女殿下、回収したブローチの欠片はどちらにございますでしょうか」
私からぶつけられた質問に、ミズーナ王女は目を丸くしていた。いきなりこの話題になるとは思ってなかったようだった。
「それでしたら、ご案内致しますわ」
咳払いをひとつしたミズーナ王女は、にこりと微笑んで私たちを見ながら部屋を出ていく。
私たちが動かないでいるとミズーナ王女は待っていたので、私とテールは顔をつい見合わせてしまう。そして、もう一度ミズーナ王女の方を見ると黙ってついて行く事にしたのだった。
「失礼致しますよ」
「こ、これはミズーナ・ベジタリウス王女。一体どうされたのですか?」
ミズーナ王女が声を掛けてから入った部屋の中では、数名の魔法使いと思しき人物たちが真剣な表情で何かに取り組んでいた。その中の一人がミズーナ王女に応対している。
「エスカと私とで集めた破片について、その分析状況を確認しに参りました」
にこりと微笑むミズーナ王女だが、その笑顔がまたちょっと怖い。対応している人物は、どう反応していいのかちょっと困っているようだった。
「とりあえず、ここまでの分析結果をお聞かせ願えますかしら」
ちょっと顔に血管が浮かびそうな状態のミズーナ王女。王女に凄まれてしまえば、魔法使いたちは声を上げながら怯えていた。もう少し堂々としていてもいいのではないのだろうかと思うが、他国とはいえ王女相手だから仕方ないのかも知れない。
慌てた魔法使いたちは、とりあえずここまでの分析結果をミズーナ王女と私に伝えてきた。あれから数日が経つのだから、多少なりと結果は出ているはずである。
ところが、予想に反してまったく結果は出ていなかった。魔法使いたちが言うには、砕けた状態でありながら妨害魔法が残っており、それによって分析がままならいというわけらしい。
この呪具、この状態になっても抗おうとしているらしい。
「このままでは埒が明きませんね。アンマリア」
様子を見かねたミズーナ王女は私の手を取る。
「こうなったら、私たち二人でやってしまいますわよ。コントロールは任せて下さいね」
ミズーナ王女は私の手を引いて、砕けた呪具の元へと駆け寄ったのだった。
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