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第五章 2年目前半
第253話 帰国でしてよ
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ようやく戻ってきたわね、サーロイン。
長かったミール王国での建国祭を終えて、私たちはついにサーロイン王国へと戻ってきた。魚を堪能出来て満足だったわ。ただ、ちょっと食べ過ぎちゃって太った気がしなくはないわね。その分どうにかしなくっちゃいけないわ。
それはともかくとして、無事にミール王国から戻って来れた事を喜ばなくっちゃね。
でも、明日からは2週間ぶりくらいの学園だから、途中抜けた分、気合い入れて臨まなくっちゃね。これでも王子の婚約者、未来の王妃候補なんですからね。
私はそう思って、馬車の中でふんと気合いを入れていた。その姿を見ていたエスカとミズーナ王女がおかしそうに笑っていたので、私はむくれた顔をしてそっぽを向いたのだった。
「お姉様ーっ!!」
ようやく家に戻った私を出迎えたのは、他ならぬモモだった。相変わらず私にべったりな困ったちゃんである。これでも将来は最少の息子であり、侯爵家令息のタカーの元に嫁ぐ予定である。いい加減、私から独り立ちをしてもらいたいものよ。
その私たちの様子を見ていたエスカが、またにやにやと笑っている。まったく、玄関先じゃなかったらグーパンしてたかもしれないわね……。どうしてこうもいちいち気に障ってくるのかしら……。でも、エスカはミール王国の王女なので、国際問題にはしたくないものね、我慢我慢。
家の中に入った私とエスカは、旅の疲れをしっかりと取る事にした。なにせ翌日から即学園ですからね。
お風呂に入ってすっきりした私たちの元に、再びモモが現れた。
「お姉様、こちら、ラム様からお預かりしたものです。私が本当は用意したかっただのですが、私ではギリギリで……、本当に申し訳ありません」
そう言ってモモが差し出したのは、ラムが用意しただろう授業の内容の書かれたノートだった。さすが公爵令嬢、ものすごく気が利くわね。
「モモ、気持ちだけで嬉しいわよ。自分の能力を見誤る事は、絶対に避けなさい。無茶はあなただけじゃなくて、周りも困らせる事になりますからね」
「は、はい!」
私はお礼を言いつつ、モモに軽く注意をしておいた。能力以上の事をやろうとすると、必ず自分が困る事になるんですからね。こればかりは前世でも散々経験した事だわ。何度迷惑を掛けられた事かしらね……。
前世の周りの人間に比べれば、モモはまだ聡い方。きっとこの程度の注意で踏みとどまってくれるはずよ。そのくらい、私はモモの事は買っていた。姉バカって呼ばれる事だって躊躇しないわよ。私から見れば、モモはやればできる子なんだから!
とはいえ、さすがに帰って来たばかりでまだ疲れているし、あまり甘やかすのもよくないから頭なでなではやめておいた。
「ねえ、ちょっといいかしら」
私たち姉妹がいい雰囲気にしていたら、エスカが口を挟んできた。
「私にはありませんの? 学校のノートって」
どうやら私がモモからラムのノートを渡されていた事に、軽く嫉妬しているようだった。
「あるわけないじゃないですか、エスカ王女殿下。私たちと殿下とは、学年が1つ違いますからね。渡せたとしても、私たちが勉強した去年の分になります」
私が当たり前の事だとエスカに言うと、
「ぐぬぬぬぬ……。だったら去年のでもいいわ。貸して下さらない?」
「私のでよければどうぞ」
そう言って、私は自分の部屋の本棚からノートを数冊引っ張り出してくる。
「これでよろしいかしら」
「ととっ、こんなにあるの?」
「はい、教科ごとですからね。同じ魔法型ですから、大して変わっていないはずですから対応できると思いますよ」
「嘘でしょ……」
私の部屋のテーブルの上に置かれたノート群を見て、エスカは危うく白目をむきそうになっていた。そのくらいにノートが積み上がっていたのだ。
「お姉様とラム様のノートは見やすくて有名ですから、エスカ王女殿下が羨ましいです」
すると、なぜかモモが羨ましがっていた。本当にどこまで私の事が好きなのよ、モモは。微笑ましいと思う一方、ちょっと怖くなっちゃうわ。
「はあ……。自国の記念行事から戻ってきたんだもの。もう1日くらいお休みしてから学園に戻りたかったわ」
エスカがテーブルに突っ伏して、現実逃避をしそうになっている。だけど、私はそれを逃す気はない。
「エスカ王女殿下? いくら自国の記念行事だからといっても、2週間穴が開いてしまいましたのよ? これ以上遅れを増やすと追いつくのが大変になります。ここは踏ん張って頑張りませんと、赤点を取りかねませんよ」
「ひっ! あ、赤点は嫌よ!」
私が脅しをかけると、エスカはぴょんと跳び上がって背筋を伸ばして立っていた。
「ががが、頑張らせて頂きますわ、おほほほほ……」
そう言いながら、エスカは私が渡したノートを持って部屋を出ていった。まったく、世話の焼ける王女様だこと。
エスカを見送った私は、ふとモモの方を見てみる。すると、そこには青ざめた顔のモモが立っていた。ああ、こっちもまた厳しそうなのか……。
「仕方ないわね。居なかった間の勉強をするから、モモも一緒にしましょう」
「はい、お姉様」
というわけで、私はしばらくの間モモと一緒に勉強をしたのだった。
これで明日から安心して学園に戻れそうだわ。
長かったミール王国での建国祭を終えて、私たちはついにサーロイン王国へと戻ってきた。魚を堪能出来て満足だったわ。ただ、ちょっと食べ過ぎちゃって太った気がしなくはないわね。その分どうにかしなくっちゃいけないわ。
それはともかくとして、無事にミール王国から戻って来れた事を喜ばなくっちゃね。
でも、明日からは2週間ぶりくらいの学園だから、途中抜けた分、気合い入れて臨まなくっちゃね。これでも王子の婚約者、未来の王妃候補なんですからね。
私はそう思って、馬車の中でふんと気合いを入れていた。その姿を見ていたエスカとミズーナ王女がおかしそうに笑っていたので、私はむくれた顔をしてそっぽを向いたのだった。
「お姉様ーっ!!」
ようやく家に戻った私を出迎えたのは、他ならぬモモだった。相変わらず私にべったりな困ったちゃんである。これでも将来は最少の息子であり、侯爵家令息のタカーの元に嫁ぐ予定である。いい加減、私から独り立ちをしてもらいたいものよ。
その私たちの様子を見ていたエスカが、またにやにやと笑っている。まったく、玄関先じゃなかったらグーパンしてたかもしれないわね……。どうしてこうもいちいち気に障ってくるのかしら……。でも、エスカはミール王国の王女なので、国際問題にはしたくないものね、我慢我慢。
家の中に入った私とエスカは、旅の疲れをしっかりと取る事にした。なにせ翌日から即学園ですからね。
お風呂に入ってすっきりした私たちの元に、再びモモが現れた。
「お姉様、こちら、ラム様からお預かりしたものです。私が本当は用意したかっただのですが、私ではギリギリで……、本当に申し訳ありません」
そう言ってモモが差し出したのは、ラムが用意しただろう授業の内容の書かれたノートだった。さすが公爵令嬢、ものすごく気が利くわね。
「モモ、気持ちだけで嬉しいわよ。自分の能力を見誤る事は、絶対に避けなさい。無茶はあなただけじゃなくて、周りも困らせる事になりますからね」
「は、はい!」
私はお礼を言いつつ、モモに軽く注意をしておいた。能力以上の事をやろうとすると、必ず自分が困る事になるんですからね。こればかりは前世でも散々経験した事だわ。何度迷惑を掛けられた事かしらね……。
前世の周りの人間に比べれば、モモはまだ聡い方。きっとこの程度の注意で踏みとどまってくれるはずよ。そのくらい、私はモモの事は買っていた。姉バカって呼ばれる事だって躊躇しないわよ。私から見れば、モモはやればできる子なんだから!
とはいえ、さすがに帰って来たばかりでまだ疲れているし、あまり甘やかすのもよくないから頭なでなではやめておいた。
「ねえ、ちょっといいかしら」
私たち姉妹がいい雰囲気にしていたら、エスカが口を挟んできた。
「私にはありませんの? 学校のノートって」
どうやら私がモモからラムのノートを渡されていた事に、軽く嫉妬しているようだった。
「あるわけないじゃないですか、エスカ王女殿下。私たちと殿下とは、学年が1つ違いますからね。渡せたとしても、私たちが勉強した去年の分になります」
私が当たり前の事だとエスカに言うと、
「ぐぬぬぬぬ……。だったら去年のでもいいわ。貸して下さらない?」
「私のでよければどうぞ」
そう言って、私は自分の部屋の本棚からノートを数冊引っ張り出してくる。
「これでよろしいかしら」
「ととっ、こんなにあるの?」
「はい、教科ごとですからね。同じ魔法型ですから、大して変わっていないはずですから対応できると思いますよ」
「嘘でしょ……」
私の部屋のテーブルの上に置かれたノート群を見て、エスカは危うく白目をむきそうになっていた。そのくらいにノートが積み上がっていたのだ。
「お姉様とラム様のノートは見やすくて有名ですから、エスカ王女殿下が羨ましいです」
すると、なぜかモモが羨ましがっていた。本当にどこまで私の事が好きなのよ、モモは。微笑ましいと思う一方、ちょっと怖くなっちゃうわ。
「はあ……。自国の記念行事から戻ってきたんだもの。もう1日くらいお休みしてから学園に戻りたかったわ」
エスカがテーブルに突っ伏して、現実逃避をしそうになっている。だけど、私はそれを逃す気はない。
「エスカ王女殿下? いくら自国の記念行事だからといっても、2週間穴が開いてしまいましたのよ? これ以上遅れを増やすと追いつくのが大変になります。ここは踏ん張って頑張りませんと、赤点を取りかねませんよ」
「ひっ! あ、赤点は嫌よ!」
私が脅しをかけると、エスカはぴょんと跳び上がって背筋を伸ばして立っていた。
「ががが、頑張らせて頂きますわ、おほほほほ……」
そう言いながら、エスカは私が渡したノートを持って部屋を出ていった。まったく、世話の焼ける王女様だこと。
エスカを見送った私は、ふとモモの方を見てみる。すると、そこには青ざめた顔のモモが立っていた。ああ、こっちもまた厳しそうなのか……。
「仕方ないわね。居なかった間の勉強をするから、モモも一緒にしましょう」
「はい、お姉様」
というわけで、私はしばらくの間モモと一緒に勉強をしたのだった。
これで明日から安心して学園に戻れそうだわ。
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