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第五章 2年目前半
第245話 メイン会場へ
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特に問題もなく、建国祭のメインイベントが行われる港町クルスへと到着する。相変わらず街道には、国王一家をひと目見ようと多くの人たちが押しかけていた。
この様子を見る限りは、ミール王国においては国王たちの評判はとても良いようだった。慕われる国王というのはいいものよね。
無事にクルスに入り、この日の建国祭の最大の見せ場の準備に取り掛かる。
最大の見せ場というのは、クルスから少し外れた場所に砂浜があるのだが、そこで海の神に祈りと供物を捧げるというものだ。このために、クルスの街ではひと月前から準備を進めていたのである。
国王と王妃の到着で、その最後の仕上げが進められていった。
「はあ、今年も無事に見られるけれど、この場面は何度見ても感動するわ」
そんな風に語るのは、宿に到着して一緒の部屋を割り当てられた転生者組の一人、ミール王国王女のエスカだった。
エスカ・ミールは拡張版にのみ登場するキャラで、アーサリー攻略の際の最大の障害物となる人物である。唯一知るミズーナ王女の話では、エスカはこんな感じではなかったらしい。これが転生による影響なのである。
ただ、ゲームと目の前のエスカの共通点はあるにはあった。それは……。
「私はゲームのエスカ王女がどんな人物か知らないけれど、このエスカはおてんばでわがままだと思うわね」
「おてんばでわがままというのはゲームでも同じでしたね。でも、全体的に感じる人物像が、やはりゲームとは乖離しているんですよ」
ミズーナ王女の言い分はこうだった。なるほどな。
「本来のエスカ王女がどんな人物か興味がありますが、もうそろそろ準備しないといけないわ。建国祭のメインイベントまでもう少しですから」
エスカがこう言うと同時に、部屋の扉が叩かれる。
「王女殿下、間もなく出発の時間となります。準備はよろしいでしょうか」
エスカの侍女が呼びにやって来た。
「ええ、いつでもよろしいですわ」
エスカはその呼び掛けに答えると、私たちに対して視線を送ってきた。その時の表情は真剣だったので、私たちはただ頷く事しかできなかった。
陽が暮れ始め、辺りは段々と夕やみに染まり始める。
そんな暗くなりかけた中を、建国祭のメインのために歩いて移動する私たち。
クルスの街の宿泊場所から会場となる砂浜までは歩けば1時間くらいだった。その会場までの沿道には多くの見物客が集まっていて、迷う事なく私たちは会場へと向かっていた。
このメインとなるイベント。祈りは王妃が、供物は国王が捧げる事になっている。つまり、将来的にはアーサリーがこの行事を引き継ぐ可能性が大きいわけだ。それだというのにこの王子、去年は理由をつけて国に帰らなかったんだから困る。王子も王女もそれなりに問題のある人物なのである。ミール王国はこんなので大丈夫なのだろうか。
そんな私の気持ちなどまったく関係なく、私たちは建国祭のメインイベントの会場へと到達した。
そこには砂浜に祭壇が組み立てられており、その前にはちょっと広めの舞台が設置されていた。なるほど、これなら1か月ほど準備に取られてしまうの分かるというものだ。なにせ王族が使うのだから、万一があっちゃいけないわけだものね。これを担当した大工たちはさぞかし緊張した事でしょうね。
私たち国賓たちは、祭壇脇の特等席へと案内される。祭壇の右側がミール王国の重鎮たちとアーサリーとエスカ、反対側には私たちサーロイン王国の者とレッタス王子とミズーナ王女が座った。
辺りには魔石で作られた照明が取り付けられ、真っ暗な砂浜の中で、ここだけが煌々と明るく照らされていた。
これだけ明るいと魔物が現れる危険性があるのだが、これまでに魔物が現れた事は一度もないらしい。信じがたいが、本当にないらしい。
周りには警備にあたる兵士たちが多く配備されており、物々しさだけであれば相当なものだわね。
ちなみにこのメインイベントは一般客にも開放されているために、祭壇から陸側には相当の人が集まっていた。普通国家行事というのでここまで一般開放されているのはあまりないんじゃないのだろうか。そのくらいにこの建国祭というものは、ミール王国全体にとって特別視されているのだろう。
「アンマリア、ちょっといいかしら」
「何でしょうか、ミズーナ王女殿下」
隣同士に座るミズーナ王女が、私に声を掛けてきた。
「気が付いてる? 魔物の気配が近付いているわ」
「あっ、やっぱりなの?」
ミズーナ王女の告げてきた内容に、私は正直がっかりとした。なにせ、自分とまったく同じ事を感じていたからだ。
このままではそのうちにここは魔物の襲撃を受ける事になる。まったく、空気くらいは読んでもらいたいものだわ。
「王妃様、私、ちょっとお花摘みに行ってきますね」
「あらあら、これから始まるのにそれは仕方ないわね。早く戻ってきなさいよ」
サーロイン王妃に咎められながらも、私はミズーナ王女と一緒に席を外した。そして、ある程度離れた所で風魔法を使って空へと舞い上がると、改めて魔物の気配を探ったのだった。
この様子を見る限りは、ミール王国においては国王たちの評判はとても良いようだった。慕われる国王というのはいいものよね。
無事にクルスに入り、この日の建国祭の最大の見せ場の準備に取り掛かる。
最大の見せ場というのは、クルスから少し外れた場所に砂浜があるのだが、そこで海の神に祈りと供物を捧げるというものだ。このために、クルスの街ではひと月前から準備を進めていたのである。
国王と王妃の到着で、その最後の仕上げが進められていった。
「はあ、今年も無事に見られるけれど、この場面は何度見ても感動するわ」
そんな風に語るのは、宿に到着して一緒の部屋を割り当てられた転生者組の一人、ミール王国王女のエスカだった。
エスカ・ミールは拡張版にのみ登場するキャラで、アーサリー攻略の際の最大の障害物となる人物である。唯一知るミズーナ王女の話では、エスカはこんな感じではなかったらしい。これが転生による影響なのである。
ただ、ゲームと目の前のエスカの共通点はあるにはあった。それは……。
「私はゲームのエスカ王女がどんな人物か知らないけれど、このエスカはおてんばでわがままだと思うわね」
「おてんばでわがままというのはゲームでも同じでしたね。でも、全体的に感じる人物像が、やはりゲームとは乖離しているんですよ」
ミズーナ王女の言い分はこうだった。なるほどな。
「本来のエスカ王女がどんな人物か興味がありますが、もうそろそろ準備しないといけないわ。建国祭のメインイベントまでもう少しですから」
エスカがこう言うと同時に、部屋の扉が叩かれる。
「王女殿下、間もなく出発の時間となります。準備はよろしいでしょうか」
エスカの侍女が呼びにやって来た。
「ええ、いつでもよろしいですわ」
エスカはその呼び掛けに答えると、私たちに対して視線を送ってきた。その時の表情は真剣だったので、私たちはただ頷く事しかできなかった。
陽が暮れ始め、辺りは段々と夕やみに染まり始める。
そんな暗くなりかけた中を、建国祭のメインのために歩いて移動する私たち。
クルスの街の宿泊場所から会場となる砂浜までは歩けば1時間くらいだった。その会場までの沿道には多くの見物客が集まっていて、迷う事なく私たちは会場へと向かっていた。
このメインとなるイベント。祈りは王妃が、供物は国王が捧げる事になっている。つまり、将来的にはアーサリーがこの行事を引き継ぐ可能性が大きいわけだ。それだというのにこの王子、去年は理由をつけて国に帰らなかったんだから困る。王子も王女もそれなりに問題のある人物なのである。ミール王国はこんなので大丈夫なのだろうか。
そんな私の気持ちなどまったく関係なく、私たちは建国祭のメインイベントの会場へと到達した。
そこには砂浜に祭壇が組み立てられており、その前にはちょっと広めの舞台が設置されていた。なるほど、これなら1か月ほど準備に取られてしまうの分かるというものだ。なにせ王族が使うのだから、万一があっちゃいけないわけだものね。これを担当した大工たちはさぞかし緊張した事でしょうね。
私たち国賓たちは、祭壇脇の特等席へと案内される。祭壇の右側がミール王国の重鎮たちとアーサリーとエスカ、反対側には私たちサーロイン王国の者とレッタス王子とミズーナ王女が座った。
辺りには魔石で作られた照明が取り付けられ、真っ暗な砂浜の中で、ここだけが煌々と明るく照らされていた。
これだけ明るいと魔物が現れる危険性があるのだが、これまでに魔物が現れた事は一度もないらしい。信じがたいが、本当にないらしい。
周りには警備にあたる兵士たちが多く配備されており、物々しさだけであれば相当なものだわね。
ちなみにこのメインイベントは一般客にも開放されているために、祭壇から陸側には相当の人が集まっていた。普通国家行事というのでここまで一般開放されているのはあまりないんじゃないのだろうか。そのくらいにこの建国祭というものは、ミール王国全体にとって特別視されているのだろう。
「アンマリア、ちょっといいかしら」
「何でしょうか、ミズーナ王女殿下」
隣同士に座るミズーナ王女が、私に声を掛けてきた。
「気が付いてる? 魔物の気配が近付いているわ」
「あっ、やっぱりなの?」
ミズーナ王女の告げてきた内容に、私は正直がっかりとした。なにせ、自分とまったく同じ事を感じていたからだ。
このままではそのうちにここは魔物の襲撃を受ける事になる。まったく、空気くらいは読んでもらいたいものだわ。
「王妃様、私、ちょっとお花摘みに行ってきますね」
「あらあら、これから始まるのにそれは仕方ないわね。早く戻ってきなさいよ」
サーロイン王妃に咎められながらも、私はミズーナ王女と一緒に席を外した。そして、ある程度離れた所で風魔法を使って空へと舞い上がると、改めて魔物の気配を探ったのだった。
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