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第五章 2年目前半
第231話 国王からの報告と依頼
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サクラの誕生日パーティーの翌日、私はまたお城に呼ばれた。ちなみにエスカも同席している。エスカはお城が苦手なのか露骨に嫌な顔をしていた。
国王たちと顔を合わせる私とエスカ。
話の内容としては、先日の痩せる呪いについての調査経過の話だった。本当は昨日のあの場で済ませたかったらしいのだが、貴族たちがかなり群がってしまい、やむなく今日に引き延ばしたというわけである。
そんなわけで、私たちはこうやって城に呼び出されたわけだった。
「よく来てくれたな、アンマリア、エスカ」
やって来たのは国王の執務室だった。その国王の前には膨大な量の書類が積み上がっている。まったく、国王というのも忙しい職業である。玉座で踏ん反りがえっているイメージがあったのだけど、改めなきゃいけないわよね。
「ご機嫌麗しゅうございます、国王陛下」
私とエスカは揃ってカーテシーをする。
「うむ、体格の割には相変わらず美しい所作よな」
国王、体格の話はしないで下さいな。それよりも本題プリーズ。
「今回呼んだのは、すでに知らせた通り、平民街で起きた食堂に掛けられた呪いの一件だ」
国王は単刀直入に話を始める。
そして、この調査の結論から言うと、具体的な成果は得られなかったらしい。
サキによって呪いは完全に解けていたし、魔法の痕跡を追おうとしても、どうやらかなり複雑なものだったらしくて追跡不可能だったようなのだ。
それ以外にも食堂やその周辺に聞き込みも行ったらしいのだが、その線からも情報はまったく得られなかった。
そんなわけで、王国としてはもうお手上げ状態だったらしい。
「そうですか……。それは残念でございますね」
「そうですわね。私たちの魔法で気付けなかったわけですし、サキの聖女としての力がなければ看破は難しかったですものね」
私もエスカも、肩を落としてしまう。
「そう、聖女の力を使ってはどうかという意見も出たんだがな。あの一件で体調を著しく崩してしまった以上、無茶はさせられまいて。その意見はやむなく却下したのだよ」
「賢明かと存じます。せっかく現れた聖女なのですから、簡単に失いたくはございませんもの」
国王の判断を支持する私。
「これだけの時間が経っている以上、犯人は既に王都に居ないかも知れん。危険かも知れないが、これ以上の調査は不可能と判断させてもらった。二人はこれで構わないかね」
「問題ございません。もし何かあれば、私たち自身で解決してみせます」
国も忙しいだろうから、これ以上手を煩わせるのはよくないという判断である。これもまあ仕方のない話だった。
「そうか、すまなかったな。力不足がために不安を解消できなかった事を謝罪しよう」
頭は下げないが、まさかの謝罪の言葉である。私たちはものすごく驚いてしまう。
「いえいえ、とんでもございません、陛下」
「そ、そうですよ。このアンマリアの魔法でも無理なのですから、そこまで卑下にならないで下さいませ」
必死にフォローしようとするものの、もうめちゃくちゃであった。そのせいか、国王がついぞ笑い始めてしまった。あーあ、やっちゃったなこれ。
「ふふっ、実に面白い子たちだ」
はい、面白い子頂きましたー。
「それはそうと、突然話を変えるが……」
調査結果で終わりだと思ったら、国王は何か別の話題を切り出してきた。今度は何よ。
「ミスミ・バッサーシから聞いたが、面白いものを作ったそうだな。見せてもらっても構わないか?」
国王の切り出した話題に、私たちは口をパクパクさせている。口外するなと言ったじゃないですかー?
「実はその光景を見てしまってな。私としてもものすごく興味を持ったのだよ。ミスミ・バッサーシからは無理やり聞き出したから、彼女は責めないでくれ」
「むぅ……」
国王にこう言われてしまえば、私たちは黙るしかなかった。てか、あの時のやり取りを国王に見られてたのか……。これは他の貴族にも見られた可能性があるわね。
私は素直に反省した。
反省を終えると、他言無用でお願いしますと私はエスカから送られた木の棒を取り出した。
「ふむ、ただの棒切れだな。これがその面白いものなのか?」
「左様でございます。魔力を籠める事で形を変えられるトレント木材を使った一品となります。エスカ王女殿下の努力の末誕生した、魔力で何回も形を変える棒でございます」
「ほう、それはすごいな!」
国王の食いつきが凄かった。
国王からの要望に応えて、私は棒切れを何種類もの姿に変化させていた。杖に剣にハリセンに鞭に、それはもう元の形に戻らないんじゃないかというくらい変形させてみた。ところが、それでも棒切れは最終的に棒切れの姿に戻っていた。驚くべき形状記憶木材。エスカの発想の恐ろしさであった。
「これは間違いなくほしいところだな。護衛騎士が付くとはいっても、いざという時に間に合わない可能性がある。そういう時に手持ちを装備に変えられるのなら素早い対応ができそうだな」
確かにそうだ。王族は命を狙われる可能性を持っているのだ。だから、いざというための護身のための技術を身に付けている。だが、武器などがなければそれも無駄になる可能性がある。そういう時にいち早く手にできる装備品というのは切なるものなのだった。
「……承知致しました。自分のを含めて、王族の方々の分はなんとかしてみましょう」
エスカはやむなくその依頼を引き受けたのだった。
国王たちと顔を合わせる私とエスカ。
話の内容としては、先日の痩せる呪いについての調査経過の話だった。本当は昨日のあの場で済ませたかったらしいのだが、貴族たちがかなり群がってしまい、やむなく今日に引き延ばしたというわけである。
そんなわけで、私たちはこうやって城に呼び出されたわけだった。
「よく来てくれたな、アンマリア、エスカ」
やって来たのは国王の執務室だった。その国王の前には膨大な量の書類が積み上がっている。まったく、国王というのも忙しい職業である。玉座で踏ん反りがえっているイメージがあったのだけど、改めなきゃいけないわよね。
「ご機嫌麗しゅうございます、国王陛下」
私とエスカは揃ってカーテシーをする。
「うむ、体格の割には相変わらず美しい所作よな」
国王、体格の話はしないで下さいな。それよりも本題プリーズ。
「今回呼んだのは、すでに知らせた通り、平民街で起きた食堂に掛けられた呪いの一件だ」
国王は単刀直入に話を始める。
そして、この調査の結論から言うと、具体的な成果は得られなかったらしい。
サキによって呪いは完全に解けていたし、魔法の痕跡を追おうとしても、どうやらかなり複雑なものだったらしくて追跡不可能だったようなのだ。
それ以外にも食堂やその周辺に聞き込みも行ったらしいのだが、その線からも情報はまったく得られなかった。
そんなわけで、王国としてはもうお手上げ状態だったらしい。
「そうですか……。それは残念でございますね」
「そうですわね。私たちの魔法で気付けなかったわけですし、サキの聖女としての力がなければ看破は難しかったですものね」
私もエスカも、肩を落としてしまう。
「そう、聖女の力を使ってはどうかという意見も出たんだがな。あの一件で体調を著しく崩してしまった以上、無茶はさせられまいて。その意見はやむなく却下したのだよ」
「賢明かと存じます。せっかく現れた聖女なのですから、簡単に失いたくはございませんもの」
国王の判断を支持する私。
「これだけの時間が経っている以上、犯人は既に王都に居ないかも知れん。危険かも知れないが、これ以上の調査は不可能と判断させてもらった。二人はこれで構わないかね」
「問題ございません。もし何かあれば、私たち自身で解決してみせます」
国も忙しいだろうから、これ以上手を煩わせるのはよくないという判断である。これもまあ仕方のない話だった。
「そうか、すまなかったな。力不足がために不安を解消できなかった事を謝罪しよう」
頭は下げないが、まさかの謝罪の言葉である。私たちはものすごく驚いてしまう。
「いえいえ、とんでもございません、陛下」
「そ、そうですよ。このアンマリアの魔法でも無理なのですから、そこまで卑下にならないで下さいませ」
必死にフォローしようとするものの、もうめちゃくちゃであった。そのせいか、国王がついぞ笑い始めてしまった。あーあ、やっちゃったなこれ。
「ふふっ、実に面白い子たちだ」
はい、面白い子頂きましたー。
「それはそうと、突然話を変えるが……」
調査結果で終わりだと思ったら、国王は何か別の話題を切り出してきた。今度は何よ。
「ミスミ・バッサーシから聞いたが、面白いものを作ったそうだな。見せてもらっても構わないか?」
国王の切り出した話題に、私たちは口をパクパクさせている。口外するなと言ったじゃないですかー?
「実はその光景を見てしまってな。私としてもものすごく興味を持ったのだよ。ミスミ・バッサーシからは無理やり聞き出したから、彼女は責めないでくれ」
「むぅ……」
国王にこう言われてしまえば、私たちは黙るしかなかった。てか、あの時のやり取りを国王に見られてたのか……。これは他の貴族にも見られた可能性があるわね。
私は素直に反省した。
反省を終えると、他言無用でお願いしますと私はエスカから送られた木の棒を取り出した。
「ふむ、ただの棒切れだな。これがその面白いものなのか?」
「左様でございます。魔力を籠める事で形を変えられるトレント木材を使った一品となります。エスカ王女殿下の努力の末誕生した、魔力で何回も形を変える棒でございます」
「ほう、それはすごいな!」
国王の食いつきが凄かった。
国王からの要望に応えて、私は棒切れを何種類もの姿に変化させていた。杖に剣にハリセンに鞭に、それはもう元の形に戻らないんじゃないかというくらい変形させてみた。ところが、それでも棒切れは最終的に棒切れの姿に戻っていた。驚くべき形状記憶木材。エスカの発想の恐ろしさであった。
「これは間違いなくほしいところだな。護衛騎士が付くとはいっても、いざという時に間に合わない可能性がある。そういう時に手持ちを装備に変えられるのなら素早い対応ができそうだな」
確かにそうだ。王族は命を狙われる可能性を持っているのだ。だから、いざというための護身のための技術を身に付けている。だが、武器などがなければそれも無駄になる可能性がある。そういう時にいち早く手にできる装備品というのは切なるものなのだった。
「……承知致しました。自分のを含めて、王族の方々の分はなんとかしてみましょう」
エスカはやむなくその依頼を引き受けたのだった。
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