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第五章 2年目前半
第228話 変形アイテムって夢なんです
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「それで、サクラ様への誕生日プレゼントは防具にしようと思うのよ」
家に帰った私は、エスカとモモを前にそんな事を言い出していた。
こうなったのにも理由はある。
まず、バッサーシ辺境伯領は、とにかく魔物との戦いの絶えない場所である事が挙げられる。ちょっとした油断が即死に繋がりかねない場所なのだから、防具だって重要な要素のはずである。
もう一つとしては、去年に魔石剣をプレゼントした事よ。武器があるなら防具もよね、そういうのが私の考えというわけだった。
「まったく、お姉様。防具を贈ろうだなんて、なんて事を言うのですか!」
モモは怒っている。だが、エスカの方は少し考えているようだ。
「いえ、サクラの家は、北西のバッサーシ領ですよね? だとしたら、防具という選択肢はありだと思います。ミール王国も沿岸部では海の魔物との戦いがたまに起きますもの。攻める武器も重要ですが、もし攻撃を受けた時に防ぐ防具というのは重要なものだと考えます」
さすがは私と同じ転生者といったところだ。こういうところに共感してもらえるあたり、私として嬉しいものよ。
「うーん、エスカ王女殿下がそう仰られるのでしたら、私も賛成致します……」
エスカが賛成に回った事で、モモもさすがに抵抗する気がなくなったようである。
というわけで、今年の私からサクラへの誕生日プレゼントは防具という事に決定したのだった。
ただ、防具といってもどういったものにするのかは悩みどころである。普段身に着けていても邪魔にならず、それでいていざという時に役に立つ。
こうなってくると、適役となる素材は1つしかなかった。
そう、私が護身用として考えたトレント木材である。魔石剣のように魔石を使ってもいいんだけど、それだと装飾品への加工が難しかった。だけど、トレント木材ならエスカの編み出した技術を使って、魔力さえあればいくらでもどんな形にだって変化させられる。
そこで私が考え出したのがトレント木材によるブレスレットだった。普段は装飾品として身に着けておき、いざとなったら魔力で籠手や盾に変化させる。その気になれば鎧にだってできるんじゃないかしらね。
……、これってなんか少年漫画でなかったっけ?
まあいいや。方向性が決まった事で、エスカとモモにも手伝ってもらう。材料となるトレント木材はたくさんあるもの。学生になったからといっても、狩場までは瞬間移動魔法で一瞬だから、まったく関係ないものね。隙間時間でトレント狩り、いいわねこれ。
あれやこれやと悪戦苦闘した結果、装飾を施したブレスレットを完成させる事ができた。武術型のサクラでも扱えるように、少量の魔力でもうまく作動させられるようにした改良版である。
「あ、アンマリア……。結局頑張ったのって、ほとんど私じゃないのよ……」
「ごめんなさいね、エスカ。この間の約束のフルーツタルトに加えて、他にもお菓子を追加して準備してあげるから」
「や、約束だからね……」
完成した時にはエスカは疲労困憊だった。なにせ、この魔力で変形を繰り返せるトレント木材の作り方は、実質エスカの専売特許だからだもの。だから、ほとんどがエスカの作業だったのよ。私がしたのは材料のトレント木材の提供と、ブレスレットとしての装飾の提案くらいかしらね。うん、お疲れ様。
とりあえずは、これで意気揚々とサクラに報告ができるというものである。
誕生日を近くに控えたサクラに、この日もミスミ教官の講義に参加してその事を伝える。
「まあ、素敵なものができたのですね」
にこやかに私がプレゼントが完成した事を伝えると、サクラは満面の笑みを浮かべていた。
「はい。どんなものができたかは当日のお楽しみという事で、ここではでき上がったという事だけをお伝えしておきます」
「分かりました。楽しみにさせて頂きますね」
サクラは両手を合わせて本当に嬉しそうにしていた。
「ふむ、サクラにプレゼントか。興味があるわね」
そこへやって来たのは、講義を終えたばかりのミスミ教官だった。
「サクラ、誕生日パーティーの席でしっかりその贈り物を見せてもらうぞ」
「はい、おば様」
あまりの嬉しさのせいか、ミスミ教官からの要求をあっさりと了承してしまうサクラである。げげん、ミスミ教官の目に入ったら、どんな事を言われるのか……。ちょっと怖いわね。
魔石剣だったら私だけでもどうにかなるけど、今回のブレスレットに目をつけられたら、まーたエスカに迷惑が掛かっちゃうわね。うーん、どうしたものか。
悩ましいところだが、ミスミ教官もバッサーシの人間である。なので、サクラの誕生日となると確実に参加してきてしまう。去年は任務で不在だったから回避できたけど、今年はもう数日だものね。諦めるしかなさそうだった。
というわけで、去年とは違って、今年はかなり戦々恐々とした気持ちでサクラの誕生日パーティーに参加しなければならないようだった。ぶっちゃけちゃえば自業自得である。
それでも、友人は失いたくない気持ちが先立っての事なので、後悔はしていない私なのだった。
もうなるようになれーっ!
家に帰った私は、エスカとモモを前にそんな事を言い出していた。
こうなったのにも理由はある。
まず、バッサーシ辺境伯領は、とにかく魔物との戦いの絶えない場所である事が挙げられる。ちょっとした油断が即死に繋がりかねない場所なのだから、防具だって重要な要素のはずである。
もう一つとしては、去年に魔石剣をプレゼントした事よ。武器があるなら防具もよね、そういうのが私の考えというわけだった。
「まったく、お姉様。防具を贈ろうだなんて、なんて事を言うのですか!」
モモは怒っている。だが、エスカの方は少し考えているようだ。
「いえ、サクラの家は、北西のバッサーシ領ですよね? だとしたら、防具という選択肢はありだと思います。ミール王国も沿岸部では海の魔物との戦いがたまに起きますもの。攻める武器も重要ですが、もし攻撃を受けた時に防ぐ防具というのは重要なものだと考えます」
さすがは私と同じ転生者といったところだ。こういうところに共感してもらえるあたり、私として嬉しいものよ。
「うーん、エスカ王女殿下がそう仰られるのでしたら、私も賛成致します……」
エスカが賛成に回った事で、モモもさすがに抵抗する気がなくなったようである。
というわけで、今年の私からサクラへの誕生日プレゼントは防具という事に決定したのだった。
ただ、防具といってもどういったものにするのかは悩みどころである。普段身に着けていても邪魔にならず、それでいていざという時に役に立つ。
こうなってくると、適役となる素材は1つしかなかった。
そう、私が護身用として考えたトレント木材である。魔石剣のように魔石を使ってもいいんだけど、それだと装飾品への加工が難しかった。だけど、トレント木材ならエスカの編み出した技術を使って、魔力さえあればいくらでもどんな形にだって変化させられる。
そこで私が考え出したのがトレント木材によるブレスレットだった。普段は装飾品として身に着けておき、いざとなったら魔力で籠手や盾に変化させる。その気になれば鎧にだってできるんじゃないかしらね。
……、これってなんか少年漫画でなかったっけ?
まあいいや。方向性が決まった事で、エスカとモモにも手伝ってもらう。材料となるトレント木材はたくさんあるもの。学生になったからといっても、狩場までは瞬間移動魔法で一瞬だから、まったく関係ないものね。隙間時間でトレント狩り、いいわねこれ。
あれやこれやと悪戦苦闘した結果、装飾を施したブレスレットを完成させる事ができた。武術型のサクラでも扱えるように、少量の魔力でもうまく作動させられるようにした改良版である。
「あ、アンマリア……。結局頑張ったのって、ほとんど私じゃないのよ……」
「ごめんなさいね、エスカ。この間の約束のフルーツタルトに加えて、他にもお菓子を追加して準備してあげるから」
「や、約束だからね……」
完成した時にはエスカは疲労困憊だった。なにせ、この魔力で変形を繰り返せるトレント木材の作り方は、実質エスカの専売特許だからだもの。だから、ほとんどがエスカの作業だったのよ。私がしたのは材料のトレント木材の提供と、ブレスレットとしての装飾の提案くらいかしらね。うん、お疲れ様。
とりあえずは、これで意気揚々とサクラに報告ができるというものである。
誕生日を近くに控えたサクラに、この日もミスミ教官の講義に参加してその事を伝える。
「まあ、素敵なものができたのですね」
にこやかに私がプレゼントが完成した事を伝えると、サクラは満面の笑みを浮かべていた。
「はい。どんなものができたかは当日のお楽しみという事で、ここではでき上がったという事だけをお伝えしておきます」
「分かりました。楽しみにさせて頂きますね」
サクラは両手を合わせて本当に嬉しそうにしていた。
「ふむ、サクラにプレゼントか。興味があるわね」
そこへやって来たのは、講義を終えたばかりのミスミ教官だった。
「サクラ、誕生日パーティーの席でしっかりその贈り物を見せてもらうぞ」
「はい、おば様」
あまりの嬉しさのせいか、ミスミ教官からの要求をあっさりと了承してしまうサクラである。げげん、ミスミ教官の目に入ったら、どんな事を言われるのか……。ちょっと怖いわね。
魔石剣だったら私だけでもどうにかなるけど、今回のブレスレットに目をつけられたら、まーたエスカに迷惑が掛かっちゃうわね。うーん、どうしたものか。
悩ましいところだが、ミスミ教官もバッサーシの人間である。なので、サクラの誕生日となると確実に参加してきてしまう。去年は任務で不在だったから回避できたけど、今年はもう数日だものね。諦めるしかなさそうだった。
というわけで、去年とは違って、今年はかなり戦々恐々とした気持ちでサクラの誕生日パーティーに参加しなければならないようだった。ぶっちゃけちゃえば自業自得である。
それでも、友人は失いたくない気持ちが先立っての事なので、後悔はしていない私なのだった。
もうなるようになれーっ!
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