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第五章 2年目前半
第227話 誕プレって難しいんです
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さて、痩せる呪いの一件は進展がないまま1か月が過ぎた。
もう来月にはサクラの誕生日を迎える。去年は魔石剣をプレゼントしたけど、今年は何を贈ろうかしら。
私はこの日もミスミ・バッサーシ教官の講義を受けていた。この講義に参加すれば、ライバル令嬢の中では唯一の武術型であるサクラ・バッサーシと顔を合わせる事ができるのだ。
それにしても、2年生になってもミスミ教官の講義に耐えられるメンバーは私とサクラとタンだけである。他のみんなは死屍累々のごとく、講義が終わるとへばっていた。そこへ、この時間講義のないサキがやって来て回復魔法を施していくという循環がすでに出来上がっていた。
訓練のかいあってか、サキの回復魔法にかかる時間もだいぶ短くなっていた。使った後の疲労感もすっかり減っているようだし、成長を直に見られて私は満足げに笑っている。
「サクラ様、本日の昼食は久しぶりにご一緒はいかがでしょうか」
「アンマリア様、それはいいですね。ぜひともご一緒させて頂きます」
サキが回復魔法で頑張っている中、私とサクラは談笑をしていた。
「サクラ」
「なんでしょうか、おば様」
そこへミスミ教官がやって来た。
「来月に誕生日があるだろう。何か欲しいものはあるか?」
まさかの誕生日プレゼントの話だった。ちょっと、話題がかぶっちゃったじゃないのよ。
「ふふふ、おば様ったら、張り切らなくてもよろしいですのに。バッサーシたる者、欲望は己の強さだけですよ」
そしたら、サクラはこんな風に返していた。さすが魔物や隣国と戦う脳筋の一族。答えのレベルが違い過ぎる。
「はははははっ、それでこそサクラもバッサーシの人間だな。いいだろう。今度私と1対1で模擬戦でもしようじゃないか。現役騎士に直に訓練をつけてもらえるなど、まずありえる事ではないからな!」
「うふふふ、それは楽しみですね」
あはは、うふふと笑い合うミスミ教官とサクラである。これが……、これがバッサーシの人間なのか!
さすがの私でも、これにはついて行けそうになかった。何て言うかね、格が違い過ぎるのよ。
「あの……、回復無事に終わりました」
「うむ、サキ・テトリバー、ご苦労だったな。しかし、講義の度にこれでは大変であろう? 武術型であるがゆえ、自力で乗り越えねばならない。見たところ、かなり回復魔法の腕は上がっているからな、次回を最後に来なくても構わない。毎回回復されていては、こやつらのためにならんからな」
ミスミ教官は学生たちを睨み付ける。その視線に驚いた学生たちは、一斉に視線を下に向けていた。指摘の通り、甘えが出ていたのだろう。
「それもそうですね。サキも無理言って悪かったですね」
「いえ、アンマリア様のおかげで私もだいぶ魔法の腕を鍛えられたと思います。感謝をしても責めるつもりなんてまったくありません」
私が申し訳なさそうに言うと、サキは両手を左右に振って擁護してきた。本当にみんないい子で涙が出てきそうだわ。
「ははははっ、実に美しい友情ではないか。だが、そろそろ行かねば次の講義に間に合わない。お前たちもいつまでも座ってないでさっさと準備しなさい」
ミスミ教官がこう言うと、学生たちは嫌々ながらに立ち上がって移動を始めていた。
「では、諸君。また来週だな」
ミスミ教官もそう言って、訓練場を後にしていた。
「それでは、私たちも移動しましょうか」
「そうですね。それではまたお昼にお会いしましょう」
私たちもそう言って、訓練場から移動したのだった。
お昼休み。約束通り、サクラが私たちの所へやって来た。
「これはサクラ様、私たちとご一緒とは珍しいですね」
「そうですね。武術型と魔法型という違いのせいで、なかなか時間が合いませんでしたものね。本日はアンマリア様からお誘い頂いて、どうにか時間を合わせました」
サクラに話し掛けたラムが、私の方をちらっと見てくる。
「実はその通りなんです。来月には誕生日だからと思いまして、なかなか顔を合わせられないので、欲しいものとかないかなとお聞きしたくなってこうして誘った次第なんです」
私はにこっと微笑みながら事情を説明する。太っているとはいっても80kgを切ったので、どうにか見られる私の笑顔である。
「まあ、そうなのですね。そういえばもう3の月になりますものね。早いものですわね」
ラムは頬に手を当てながら、憂うように話していた。
「私がこうやって痩せていられるもの、サクラ様から教えて頂いた運動のおかげですものね。私も精一杯誕生日の贈り物をご用意させて頂きますわ」
「うふふ、それは楽しみですね」
ラムが気合いを入れながら言うと、サクラは困ったような顔で返していた。
この日は、ゲームのヒロインの私に加えて、ラム、サクラ、モモ、サキという通常版のライバル令嬢たちが一堂に会した賑やかな食事となった。普段は武術型のサクラだけが居ない事が多いので、この面々が揃って、私はどこかほっとしていた。
サクラの誕生日プレゼントの希望を聞こうとしたこの場だったのだが、なんだかんだで全員が欲しいものを挙げていくという思わぬ事態になったのだが、やはりみんな年相応の女子らしい発言ばかりだった。
やっぱり、こういう平和が一番いいわよね。
もう来月にはサクラの誕生日を迎える。去年は魔石剣をプレゼントしたけど、今年は何を贈ろうかしら。
私はこの日もミスミ・バッサーシ教官の講義を受けていた。この講義に参加すれば、ライバル令嬢の中では唯一の武術型であるサクラ・バッサーシと顔を合わせる事ができるのだ。
それにしても、2年生になってもミスミ教官の講義に耐えられるメンバーは私とサクラとタンだけである。他のみんなは死屍累々のごとく、講義が終わるとへばっていた。そこへ、この時間講義のないサキがやって来て回復魔法を施していくという循環がすでに出来上がっていた。
訓練のかいあってか、サキの回復魔法にかかる時間もだいぶ短くなっていた。使った後の疲労感もすっかり減っているようだし、成長を直に見られて私は満足げに笑っている。
「サクラ様、本日の昼食は久しぶりにご一緒はいかがでしょうか」
「アンマリア様、それはいいですね。ぜひともご一緒させて頂きます」
サキが回復魔法で頑張っている中、私とサクラは談笑をしていた。
「サクラ」
「なんでしょうか、おば様」
そこへミスミ教官がやって来た。
「来月に誕生日があるだろう。何か欲しいものはあるか?」
まさかの誕生日プレゼントの話だった。ちょっと、話題がかぶっちゃったじゃないのよ。
「ふふふ、おば様ったら、張り切らなくてもよろしいですのに。バッサーシたる者、欲望は己の強さだけですよ」
そしたら、サクラはこんな風に返していた。さすが魔物や隣国と戦う脳筋の一族。答えのレベルが違い過ぎる。
「はははははっ、それでこそサクラもバッサーシの人間だな。いいだろう。今度私と1対1で模擬戦でもしようじゃないか。現役騎士に直に訓練をつけてもらえるなど、まずありえる事ではないからな!」
「うふふふ、それは楽しみですね」
あはは、うふふと笑い合うミスミ教官とサクラである。これが……、これがバッサーシの人間なのか!
さすがの私でも、これにはついて行けそうになかった。何て言うかね、格が違い過ぎるのよ。
「あの……、回復無事に終わりました」
「うむ、サキ・テトリバー、ご苦労だったな。しかし、講義の度にこれでは大変であろう? 武術型であるがゆえ、自力で乗り越えねばならない。見たところ、かなり回復魔法の腕は上がっているからな、次回を最後に来なくても構わない。毎回回復されていては、こやつらのためにならんからな」
ミスミ教官は学生たちを睨み付ける。その視線に驚いた学生たちは、一斉に視線を下に向けていた。指摘の通り、甘えが出ていたのだろう。
「それもそうですね。サキも無理言って悪かったですね」
「いえ、アンマリア様のおかげで私もだいぶ魔法の腕を鍛えられたと思います。感謝をしても責めるつもりなんてまったくありません」
私が申し訳なさそうに言うと、サキは両手を左右に振って擁護してきた。本当にみんないい子で涙が出てきそうだわ。
「ははははっ、実に美しい友情ではないか。だが、そろそろ行かねば次の講義に間に合わない。お前たちもいつまでも座ってないでさっさと準備しなさい」
ミスミ教官がこう言うと、学生たちは嫌々ながらに立ち上がって移動を始めていた。
「では、諸君。また来週だな」
ミスミ教官もそう言って、訓練場を後にしていた。
「それでは、私たちも移動しましょうか」
「そうですね。それではまたお昼にお会いしましょう」
私たちもそう言って、訓練場から移動したのだった。
お昼休み。約束通り、サクラが私たちの所へやって来た。
「これはサクラ様、私たちとご一緒とは珍しいですね」
「そうですね。武術型と魔法型という違いのせいで、なかなか時間が合いませんでしたものね。本日はアンマリア様からお誘い頂いて、どうにか時間を合わせました」
サクラに話し掛けたラムが、私の方をちらっと見てくる。
「実はその通りなんです。来月には誕生日だからと思いまして、なかなか顔を合わせられないので、欲しいものとかないかなとお聞きしたくなってこうして誘った次第なんです」
私はにこっと微笑みながら事情を説明する。太っているとはいっても80kgを切ったので、どうにか見られる私の笑顔である。
「まあ、そうなのですね。そういえばもう3の月になりますものね。早いものですわね」
ラムは頬に手を当てながら、憂うように話していた。
「私がこうやって痩せていられるもの、サクラ様から教えて頂いた運動のおかげですものね。私も精一杯誕生日の贈り物をご用意させて頂きますわ」
「うふふ、それは楽しみですね」
ラムが気合いを入れながら言うと、サクラは困ったような顔で返していた。
この日は、ゲームのヒロインの私に加えて、ラム、サクラ、モモ、サキという通常版のライバル令嬢たちが一堂に会した賑やかな食事となった。普段は武術型のサクラだけが居ない事が多いので、この面々が揃って、私はどこかほっとしていた。
サクラの誕生日プレゼントの希望を聞こうとしたこの場だったのだが、なんだかんだで全員が欲しいものを挙げていくという思わぬ事態になったのだが、やはりみんな年相応の女子らしい発言ばかりだった。
やっぱり、こういう平和が一番いいわよね。
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