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第五章 2年目前半
第226話 特訓あるのみ
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王妃による王族に近しい者たちだけのお茶会は、最終的には和やかな雰囲気の中で終わる事ができた。その中で、エスカは王妃から城で過ごすように改めて諭されていたというのに、それを突っぱねて私の家で過ごすと言って聞かなかった。いくら王女だからといってもわがままが過ぎる。
いくらモモも慣れてきたとはいえ、あんたは王族なんだから、もうちょっと体裁とか考えてちょうだいよ。迷惑するのは私と家族なんだからね。
特定の貴族が他国の王族と親しくしていると、あらぬ噂を立てられてしまうものなのだ。貴族社会というのはそういうものなのよ。
だけど、もう今さら感が半端ないので、私も諦めている。父親ももう気にしていないみたいだし、もうこのままでいいわよね。将来的には私かサキが王妃になるわけだから、今から親交を築いているという風に押し通せるものね。はあ……。
さて、王都で起きた謎の痩せる呪いの事件の調査は、先日のお茶会で正式に国に任せる事になった。
あれから一週間経った今も、城の精鋭の魔法使いたちの手によって調査が進められている。調査の進行具合などは父親を通して私の耳にも入ってきている。それを聞く限りは、魔力の痕跡が複雑で追い切れないといった感じのようだった。現状では広く聞き込みを行っているという状況なのだそうだ。
さて、その同じ一週間の間だけど、私はサキの魔法の面倒を見ていた。そこにはモモも加わって、二人して悪戦苦闘中である。お茶会からまるっと一週間たった休みの日だというのに、サキは家まで押し掛けてきて私に教えもらおうとしていたのだ。
「はあ……。やっぱり難しいですね」
サキは相変わらず思うようにトレント木材の杖を変形できないでいた。
なんでも、武術型の講義棟にまで出向いて剣をじっくり見せてもらったのだとか。そこまでしたというのに、まったく成功しないのである。
「焦ってはいけませんよ、サキ様。焦りは余計に制御を乱します。一度そうなってしまいますと、なかなか失敗から抜け出せなくなってしまいます」
私はとにかくサキに落ち着くように言い聞かせる。ちなみにその目の前ではモモが同じように変形させる事に苦戦していた。エスカはうまくやっているだけに、ここにも転生者か否かという差が出ているのかも知れない。そう思うと、この世界の人物は想像力に乏しいのかも知れないわね。
「エスカ、やっぱりこれって……」
「ええ、転生者かどうか、それがはっきりに差として出ていますね」
こっそりエスカに確認してみたら、やはり同じような考えを持っていたようである。現実を見たらそう思っちゃうわよね。
「お姉様、一体どうしたらいいんですか~……」
私たちが話をしていると、モモが泣きそうな顔をしながら私に声を掛けてきた。
「やれやれ、仕方ありませんね。ちゃんと押しますから、見てて下さいね」
私はトレント木材の棒切れを取り出すと、二人の前にすっと差し出した。
「いいですか、とにかく頭に変形させるものを思い浮かべながら、この杖に魔力を通していくんです。モモも誕生日前倒しで杖をプレゼントしたんですからね、しっかりと使いこなせるようになって下さい」
「はい、お姉様」
しっかりと言い聞かせると、モモは真剣な表情で返事をしていた。気合いだけなら十分なんだけどね。この世界の住人たちはごく一部を除けば本当に要領が悪いというか何というか……。こういうのもこういう異世界転生ものの定番よね……。だけど、真剣な二人を前にため息を吐けるわけもなく、私は心の中で盛大にため息を吐いていた。一体、こういうため息を何回吐けばいいのかしらね。
そんなわけで、いろいろと難しいところもあるわけだけれど、モモとサキもこの日一日をかけて、ようやくなんとなくの要領を掴んできたようである。
さすがにまだ剣は無理ではあったものの、大きなペーパーナイフくらいになら変化できるようになってきていた。手紙ならそこそこの頻度で見る事があるから、手紙を開ける道具であるペーパーナイフはどうにか想像できたみたいだった。……ただ、大きさがかなり大きい。杖の元の大きさより小さくするのは無理なようだった。
「それだけできれば進展はあったという事で問題はありませんよ。慣れてくるとこういう連続変化もできるようになりますからね」
私はそう言いながら、棒切れを鞭にしたり、ハリセンにしたり、木剣にしたりと、トレント木材七変化を決めていた。この光景には、モモもサキも「おおっ!」と声を上げていた。
「さすがはお姉様ですわ!」
「むぅ、私も負けていられませんね」
それぞれに反応をする二人である。向上心がある事はいい事だ。
しかし、それもいつまでも続けているわけにはいかないわけで、すっかり辺りは夕暮れに包まれてきたために、この日はお開きとなってしまったのだった。
「それでは、私はサキ様を家まで送ってきますね」
「はい、お姉様。サキ様、また明日お会いしましょう」
モモはそう言って、エスカと一緒に屋敷の中へと入っていった。そして、私は瞬間移動魔法を使ってサキを家まで送り届けたのだった。
いくらモモも慣れてきたとはいえ、あんたは王族なんだから、もうちょっと体裁とか考えてちょうだいよ。迷惑するのは私と家族なんだからね。
特定の貴族が他国の王族と親しくしていると、あらぬ噂を立てられてしまうものなのだ。貴族社会というのはそういうものなのよ。
だけど、もう今さら感が半端ないので、私も諦めている。父親ももう気にしていないみたいだし、もうこのままでいいわよね。将来的には私かサキが王妃になるわけだから、今から親交を築いているという風に押し通せるものね。はあ……。
さて、王都で起きた謎の痩せる呪いの事件の調査は、先日のお茶会で正式に国に任せる事になった。
あれから一週間経った今も、城の精鋭の魔法使いたちの手によって調査が進められている。調査の進行具合などは父親を通して私の耳にも入ってきている。それを聞く限りは、魔力の痕跡が複雑で追い切れないといった感じのようだった。現状では広く聞き込みを行っているという状況なのだそうだ。
さて、その同じ一週間の間だけど、私はサキの魔法の面倒を見ていた。そこにはモモも加わって、二人して悪戦苦闘中である。お茶会からまるっと一週間たった休みの日だというのに、サキは家まで押し掛けてきて私に教えもらおうとしていたのだ。
「はあ……。やっぱり難しいですね」
サキは相変わらず思うようにトレント木材の杖を変形できないでいた。
なんでも、武術型の講義棟にまで出向いて剣をじっくり見せてもらったのだとか。そこまでしたというのに、まったく成功しないのである。
「焦ってはいけませんよ、サキ様。焦りは余計に制御を乱します。一度そうなってしまいますと、なかなか失敗から抜け出せなくなってしまいます」
私はとにかくサキに落ち着くように言い聞かせる。ちなみにその目の前ではモモが同じように変形させる事に苦戦していた。エスカはうまくやっているだけに、ここにも転生者か否かという差が出ているのかも知れない。そう思うと、この世界の人物は想像力に乏しいのかも知れないわね。
「エスカ、やっぱりこれって……」
「ええ、転生者かどうか、それがはっきりに差として出ていますね」
こっそりエスカに確認してみたら、やはり同じような考えを持っていたようである。現実を見たらそう思っちゃうわよね。
「お姉様、一体どうしたらいいんですか~……」
私たちが話をしていると、モモが泣きそうな顔をしながら私に声を掛けてきた。
「やれやれ、仕方ありませんね。ちゃんと押しますから、見てて下さいね」
私はトレント木材の棒切れを取り出すと、二人の前にすっと差し出した。
「いいですか、とにかく頭に変形させるものを思い浮かべながら、この杖に魔力を通していくんです。モモも誕生日前倒しで杖をプレゼントしたんですからね、しっかりと使いこなせるようになって下さい」
「はい、お姉様」
しっかりと言い聞かせると、モモは真剣な表情で返事をしていた。気合いだけなら十分なんだけどね。この世界の住人たちはごく一部を除けば本当に要領が悪いというか何というか……。こういうのもこういう異世界転生ものの定番よね……。だけど、真剣な二人を前にため息を吐けるわけもなく、私は心の中で盛大にため息を吐いていた。一体、こういうため息を何回吐けばいいのかしらね。
そんなわけで、いろいろと難しいところもあるわけだけれど、モモとサキもこの日一日をかけて、ようやくなんとなくの要領を掴んできたようである。
さすがにまだ剣は無理ではあったものの、大きなペーパーナイフくらいになら変化できるようになってきていた。手紙ならそこそこの頻度で見る事があるから、手紙を開ける道具であるペーパーナイフはどうにか想像できたみたいだった。……ただ、大きさがかなり大きい。杖の元の大きさより小さくするのは無理なようだった。
「それだけできれば進展はあったという事で問題はありませんよ。慣れてくるとこういう連続変化もできるようになりますからね」
私はそう言いながら、棒切れを鞭にしたり、ハリセンにしたり、木剣にしたりと、トレント木材七変化を決めていた。この光景には、モモもサキも「おおっ!」と声を上げていた。
「さすがはお姉様ですわ!」
「むぅ、私も負けていられませんね」
それぞれに反応をする二人である。向上心がある事はいい事だ。
しかし、それもいつまでも続けているわけにはいかないわけで、すっかり辺りは夕暮れに包まれてきたために、この日はお開きとなってしまったのだった。
「それでは、私はサキ様を家まで送ってきますね」
「はい、お姉様。サキ様、また明日お会いしましょう」
モモはそう言って、エスカと一緒に屋敷の中へと入っていった。そして、私は瞬間移動魔法を使ってサキを家まで送り届けたのだった。
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