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第五章 2年目前半

第212話 14歳になりました

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 私たちが怪しい薬に警戒する中、あっという間に私の誕生日が来てしまった。
 ゲームにおけるアンマリアの誕生日ってプレイヤーが勝手に決められたので、そのアンマリアになってしまった私は、私の前世での誕生日がそのまま適用されてしまったというわけなのよ。ちなみに私の前世の誕生日は1月10日よ。だから、1の月の10日目に誕生日が来てしまうの。ただ、この世界では平日に誕生日を祝う事がなくて、休みとなるターンの最終日にまとめてやってしまうのよね。なので、私の誕生日パーティーは、その直前の第一週か、直後の第二週の休日に行われるのよ。ちなみに去年は第二週の休日で、今年は直前の第一週の休日よ。去年は私とモモの両方が学園に入学したから、後ろにずらしたというわけ。今年は客人のエスカが居るとはいえど、特にこれといった理由もないので先に行ってしまう事になったのよ。
 しかし、今年の誕生日は戦々恐々として迎える事になってしまった。
 理由は言わずもがなエスカのせい。モモを唆して何か企んでいるみたいだからね、そりゃ警戒せざるを得ないというわけよ。うちの可愛い妹を巻き込むのはやめてもらえないかしらね。
 エスカはなんか自由奔放ではあるし、『教育ママゴン』とか私もちょっと覚えのない言葉を使っていたから、多分前世はそこそこ年齢いってた人だと思う。まっ、ゲームをするのに年齢なんて関係ないものね。
 それはそれとして、年齢のいった人物ならそこそこ信用できそうなんだけど、エスカの場合はうさん臭さしか感じられない。本当にこんな王女で大丈夫なのかしら、ミール王国は……。
 そんなこんなで、休日の夜に私たちは食堂に集まる。さすがに私の誕生日とあって、服装が普段と違う。
(ああ、モモってふわっとしたドレスが似合うわよね。……エスカ王女もね!)
 モモの可愛らしさに見惚れながら、私はエスカには辛辣な評価を下している。普段の行いって大事だと思うのよ。ただ、さすがは拡張版でライバル令嬢になっていただけに、本当に素材が良すぎるわ。
 一方の私は、年末パーティー絡みで3kgほど体重を戻してしまっていた。今は84kgよ。それでも、この日のためにせっかく用意してくれたドレスだ。無駄にするわけにはいかなかった。
 さて、そんなわけで、家族だけによるささやかな誕生日パーティーが始まろうとしたその時だった。
「失礼致します、旦那様。旦那様の兄でいらっしゃるデバラ様より荷物が届いております」
「ほう、兄上から物が届くとは珍しいな。一体何なのだ?」
 使用人の言葉に、父親が問い掛ける。
「はい、アンマリア様への贈り物だそうです。近々誕生日だとお伺いになられていたようでして、そこに合わせて送られてこられたようです」
「はて、兄上にはアンマリアの誕生日は知らせていなかったはずだが?」
 使用人の答えに父親は首を傾げている。
「お父様、去年の夏に私が伺った際に教えたのです。お父様ったら領地に全然行かれないですから、領地が気になった私が代わりに見てきたのですよ」
 なので、私が慌ててフォローを入れている。面倒な事になるよりはマシだわ。
「そうだったのか。娘にまで気を使われてしまうとは、ちょっと城の仕事に力を入れすぎたかも知れんな」
「あなた、城の仕事は大事ですよ」
 父親がはにかみながら言っていると、すぐに母親からツッコミが入った。本当に仲のいい両親で、私たちは恵まれているものだ。
「まあ何にしても私の領地だからな。そうだね、たまには気に掛けなければならないね」
 父親はそう言ってちょっと反省していた。
 そんなこんなで、私の誕生日パーティーが始まった。そしたらば、出てくる料理の量たるや。
(あっ、これ太るやつだ……)
 私はちょっと顔が青ざめてしまった。しかし、せっかく家族や使用人たちが用意してくれた料理なのだから、無駄にするわけにはいかないわね。私は覚悟を決めたのである。
「アンマリアも痩せようと頑張っているのに、こういう料理ですまないね。年に1回の誕生日だからと、つい張り切ってしまったよ」
 実に父親は申し訳なさそうに私の方を見ながら反省の弁を述べていた。こう言われてしまうと、私もさすがに文句は言えなかった。
「いえ、嬉しいですわ、お父様。みなさん、私のために頑張って用意して下さったんですもの。その気持ちはちゃんと受け取りませんとね」
 私はどうにか笑顔を浮かべて答えておく。その対面ではエスカが必死に笑いを堪えていた。うん、やっぱり殴ってやりたいわ、この王女。
 おじさんからの贈り物があったり、とんでもない量の料理が出されたりと、ちょっとしたハプニングはあったものの、無事に私の14歳の誕生日パーティーが始まった。
 ところが、私の気持ちはまだ落ち着かなかった。その理由はエスカがモモに持ちかけて準備していただろう誕生日プレゼントだ。あのとんでも王女様から、一体どんなプレゼントを渡されるのか。その得体の知れない恐怖に、私は笑顔をつい引きつらせてしまうのだった。
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