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第四章 学園編・1年後半
第209話 年末パーティーの席にて
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ベジタリウス王国の王子レッタスと王女ミズーナが到着してから1週間ほどが経過する。
いよいよ年末を迎え、年越しが目の前となったその日、お城では年末の盛大なパーティーが催されていた。
1年を無事に過ごし、そのすべてに感謝をするというパーティーである。この時ばかりは平民たちも揃ってお祭り騒ぎになる。実に平和なサーロイン王国なのである。
ここまでの大掛かりなパーティーというのはベジタリウス王国では考えられない事なのか、レッタス王子とミズーナ王女は驚いたらしい。一方のアーサリーやエスカの方はそういった様子はない。ミール王国の方も年末は大騒ぎをするようだ。さすがは元海賊の王家だわね……。
それはそれとして、今私はサキと一緒にフィレン王子とリブロ王子の隣に座っている。婚約者だからといっても、まさかこういうパーティーの席で隣に座らされるとは思っていなかった。ただでさえまだどちらがどちらの婚約者と決まっていないのに、どうして私はフィレン王子の隣に座らされているんですかね?
そんな中、私はちらりとエスカたちの方を見る。間にはリブロ王子とサキが挟まってはいるものの、近いのでその姿ははっきりと見える。
そこで見たエスカの姿は、アーサリーにいろいろと言われながらもそれをすました顔で平然と聞き流すエスカの姿だった。ずいぶんと神経の図太い王女よね。
そのさらに向こうには、レッタス王子とミズーナ王女が座っている。人の事は言えないけれど、太っているミズーナ王女の存在感がもの凄かった。
改めて思うけれど、ここはサーロイン王国なのよね。まさか、隣国の王子と王女が揃って年末パーティーに参加しているなんて思わないわよね。会場を見てみると、攻略対象たちもライバル令嬢たちも全員居るし、何気に『アンマリアの恋愛ダイエット大作戦』の通常版と拡張版の攻略対象とライバル令嬢が全員この会場に揃っているのよね。なかなかすごい話よね。
私がそうしんみりと思っている間、初めて見るベジタリウス王国の二人には貴族が代わる代わる挨拶にやって来ているようだった。従者たちがついて来ているとはいっても、まだ12歳の王子と王女には厳しいだろうな。
それとは対照的に、ミール王国の二人の前は実に平和だった。アーサリー自体は去年やってるし、エスカも何度かこっちに来ているので、目新しさがなかったのだろう。というか、なんでエスカはこっちを見てるんですかね。
私がエスカの視線にぎょっとしたのも束の間、エスカが席を立ってこっちに歩いてきた。一体何をするつもりなのよ。
「アンマリア、私と踊りなさい」
「はへ?」
私の前までやって来たエスカは、両手を腰に当ててすごい剣幕で見下ろしながらそんな事を言ってきた。完全に命令である。
私の隣に座るフィレン王子、そして、隣のテーブルで座るリブロ王子とサキが驚いている。しかし、さすがにエスカという王女を無視してはよろしくないので、
「承知致しました。謹んでお受け致します」
私はその申し出を受ける事にした。
エスカが突然こういう行動に出たのは、おそらく隣に座るレッタス王子とミズーナ王女への嫉妬だろう。同じように他国の王族でありながら、誰も挨拶に来ないものだから、早い話がふて腐れたのである。だから、会場で次に目立つ相手である私を相手取り、ダンスに誘って注目されようとしたのだ。子どもかな?
私としては正直どうでもいい話なんだけど、エスカの気持ちが分からなくはないし、一応他国の王女なのだからこれ以上恥をかかせるのもよくないものね。だから、同郷のよしみというのも手伝って、私はエスカの誘いを受けたのよ。
私たちがホールの中央に出てくると、楽団たちが一度曲を止める。そして、再び音楽を奏で始める。
ところが、踊り出して私は驚いた。なんと、エスカの方が男性パートで踊り出したのだ。ちょっと待って、大丈夫なわけ?
私が面食らうのも無理はない。男性パートはリードがメインで、場合によっては相方を持ち上げるというような動作だってある。それを普通の体型のエスカが、太った私を相手にやろうとしているのだから。
(これは、自棄になってるわね)
仕方ないので、魔法でフォローを入れながらエスカに付き合う事にした私。そういった事もあって、最後まで問題なく踊り通せたのだった。
(もう、勘弁してほしいわ……)
心の中で愚痴る私の前で、エスカはドヤ顔を決めていた。いや、あなたの実力ではないでしょうが。
だけども、私たちの心の内を知らない会場からは、大きな拍手が沸き起こっていた。その拍手に満足したエスカは、私に一礼をすると、そのままドカドカと自分の席まで歩いて戻っていった。まったく何だったのかしら。
「ふふっ、これは学園生活が楽しくなりそうですね、お兄様」
「そのようだな、ミズーナ」
ぼそぼそと何かを話し合うベジタリウス王国の二人。だが、私とエスカのダンスに気を取られて、その様子に気が付いた者など誰一人居なかった。
そんなトラブルめいた事があったものの、この年末パーティーは無事に終了する事ができたのだった。
このパーティーが終わると、いよいよ年明けである。『アンマリアの恋愛ダイエット大作戦』の拡張版のストーリーが始まる。
私が主人公の通常版と合わせて、一体どんな展開が待ち受けているのだろうか。もはやまったく想像ができなくなっていた私だった。
いよいよ年末を迎え、年越しが目の前となったその日、お城では年末の盛大なパーティーが催されていた。
1年を無事に過ごし、そのすべてに感謝をするというパーティーである。この時ばかりは平民たちも揃ってお祭り騒ぎになる。実に平和なサーロイン王国なのである。
ここまでの大掛かりなパーティーというのはベジタリウス王国では考えられない事なのか、レッタス王子とミズーナ王女は驚いたらしい。一方のアーサリーやエスカの方はそういった様子はない。ミール王国の方も年末は大騒ぎをするようだ。さすがは元海賊の王家だわね……。
それはそれとして、今私はサキと一緒にフィレン王子とリブロ王子の隣に座っている。婚約者だからといっても、まさかこういうパーティーの席で隣に座らされるとは思っていなかった。ただでさえまだどちらがどちらの婚約者と決まっていないのに、どうして私はフィレン王子の隣に座らされているんですかね?
そんな中、私はちらりとエスカたちの方を見る。間にはリブロ王子とサキが挟まってはいるものの、近いのでその姿ははっきりと見える。
そこで見たエスカの姿は、アーサリーにいろいろと言われながらもそれをすました顔で平然と聞き流すエスカの姿だった。ずいぶんと神経の図太い王女よね。
そのさらに向こうには、レッタス王子とミズーナ王女が座っている。人の事は言えないけれど、太っているミズーナ王女の存在感がもの凄かった。
改めて思うけれど、ここはサーロイン王国なのよね。まさか、隣国の王子と王女が揃って年末パーティーに参加しているなんて思わないわよね。会場を見てみると、攻略対象たちもライバル令嬢たちも全員居るし、何気に『アンマリアの恋愛ダイエット大作戦』の通常版と拡張版の攻略対象とライバル令嬢が全員この会場に揃っているのよね。なかなかすごい話よね。
私がそうしんみりと思っている間、初めて見るベジタリウス王国の二人には貴族が代わる代わる挨拶にやって来ているようだった。従者たちがついて来ているとはいっても、まだ12歳の王子と王女には厳しいだろうな。
それとは対照的に、ミール王国の二人の前は実に平和だった。アーサリー自体は去年やってるし、エスカも何度かこっちに来ているので、目新しさがなかったのだろう。というか、なんでエスカはこっちを見てるんですかね。
私がエスカの視線にぎょっとしたのも束の間、エスカが席を立ってこっちに歩いてきた。一体何をするつもりなのよ。
「アンマリア、私と踊りなさい」
「はへ?」
私の前までやって来たエスカは、両手を腰に当ててすごい剣幕で見下ろしながらそんな事を言ってきた。完全に命令である。
私の隣に座るフィレン王子、そして、隣のテーブルで座るリブロ王子とサキが驚いている。しかし、さすがにエスカという王女を無視してはよろしくないので、
「承知致しました。謹んでお受け致します」
私はその申し出を受ける事にした。
エスカが突然こういう行動に出たのは、おそらく隣に座るレッタス王子とミズーナ王女への嫉妬だろう。同じように他国の王族でありながら、誰も挨拶に来ないものだから、早い話がふて腐れたのである。だから、会場で次に目立つ相手である私を相手取り、ダンスに誘って注目されようとしたのだ。子どもかな?
私としては正直どうでもいい話なんだけど、エスカの気持ちが分からなくはないし、一応他国の王女なのだからこれ以上恥をかかせるのもよくないものね。だから、同郷のよしみというのも手伝って、私はエスカの誘いを受けたのよ。
私たちがホールの中央に出てくると、楽団たちが一度曲を止める。そして、再び音楽を奏で始める。
ところが、踊り出して私は驚いた。なんと、エスカの方が男性パートで踊り出したのだ。ちょっと待って、大丈夫なわけ?
私が面食らうのも無理はない。男性パートはリードがメインで、場合によっては相方を持ち上げるというような動作だってある。それを普通の体型のエスカが、太った私を相手にやろうとしているのだから。
(これは、自棄になってるわね)
仕方ないので、魔法でフォローを入れながらエスカに付き合う事にした私。そういった事もあって、最後まで問題なく踊り通せたのだった。
(もう、勘弁してほしいわ……)
心の中で愚痴る私の前で、エスカはドヤ顔を決めていた。いや、あなたの実力ではないでしょうが。
だけども、私たちの心の内を知らない会場からは、大きな拍手が沸き起こっていた。その拍手に満足したエスカは、私に一礼をすると、そのままドカドカと自分の席まで歩いて戻っていった。まったく何だったのかしら。
「ふふっ、これは学園生活が楽しくなりそうですね、お兄様」
「そのようだな、ミズーナ」
ぼそぼそと何かを話し合うベジタリウス王国の二人。だが、私とエスカのダンスに気を取られて、その様子に気が付いた者など誰一人居なかった。
そんなトラブルめいた事があったものの、この年末パーティーは無事に終了する事ができたのだった。
このパーティーが終わると、いよいよ年明けである。『アンマリアの恋愛ダイエット大作戦』の拡張版のストーリーが始まる。
私が主人公の通常版と合わせて、一体どんな展開が待ち受けているのだろうか。もはやまったく想像ができなくなっていた私だった。
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