206 / 497
第四章 学園編・1年後半
第206話 転生者、集う
しおりを挟む
城の中に用意された留学中のミズーナ王女の私室。そこは諸外国の来賓用に用意された部屋の一室だった。アーサリーが国内来賓用の部屋なので、地味に待遇が上だった。
「片付けはこれからですが、お話するだけなら問題ないかと思います。ささっ、どうぞお掛けになって下さい」
ミズーナ王女は部屋の来客用のテーブルを指してこう言っている。私たちの侍女も一応同席しているが、すぐにミズーナ王女によって席を外させられた。
「ちょっと大事なお話ですので、すみませんね」
「いえ、王女殿下には逆らえませんので」
ミズーナの謝罪の言葉に、スーラはおとなしく従っていた。そして、パリーセを連れて城の案内をすると言って出ていった。
これで部屋の中には、私、エスカ、ミズーナ王女というヒロイン二人とお邪魔虫が揃った。
「さて、部屋に案内したのはいいですけれど、何からお話しましょうかね」
ミズーナ王女は考え込む仕草をする。まあ、会ったばかりだからそういう話になるでしょうね。
「それにしても、おかしいですわね。この時期だとまだ相手が決まっていませんから、王妃教育とかそんな話が出るわけありませんのに……」
ぶつぶつと独り言ちるミズーナ王女。すると、これにエスカが反応していた。
「ちょっと待って。この時期だとまだ相手が決まっていないってどういう事なのかしら」
ミズーナ王女へと質問をぶつけるエスカ。そう言われて私もはたっと気が付く。
確かにそうだ。ゲームでは攻略2年目を目の前にしたこの時期、確かにまだ相手は誰か分からない時期だ。それを知っているという事は、もしかするとミズーナ王女は……。
「えっ、私何かおかしな事を言いましたか?」
とぼけた反応を見せるミズーナ王女。
「そんな事を確定的に言えるのは、ここが『アンマリアの恋愛ダイエット大作戦』の中だって知ってなければ言えた事じゃないわ。もしかして、ミズーナ王女も転生者?」
エスカがびしっと指摘していた。これに驚いた顔をするミズーナ王女。
「『も』って事は、もしかしてお二人ともそうなのですか?」
目をぱちぱちとしながら確認するように問い掛けるミズーナ王女。それに対して私たちはこくりと頷いた。私たちの反応を見て、ミズーナ王女は驚きを隠しきれないようだった。
「驚きましたわね。まさか初期主人公と追加ライバルが転生者だなんて思いもしませんでしたわ。でも、少し安心しましたわね」
ミズーナ王女は本当にほっとしたような様子を見せていた。なまじ前世の記憶があるからこそ起こってしまう現象でしょうね。私も身に覚えがありますもの。
「アンマリアはどうだったのですか? 太っちょヒロインだと知った時のショックたるや、言葉にならなかったでしょう?」
ミズーナ王女はこう言っているという事は、間違いなく本人はそうなったという事だろう。
「そうですね。洗礼式で見た自分の恩恵を確認した時は、それはショックでしたよ。学園に入る時に120kgが確定だなんて、何の拷問かと……」
私は当時を思い出しながらそう話すと、ミズーナ王女も強く頷いていた。やっぱりそうなのね。一人だけ普通の体型なエスカだけは首を傾げていた。
「失礼とは存じますが、ミズーナ王女殿下も、やっぱり120kgなのでしょうか」
私がドストレートに問い掛けると、ミズーナ王女は無言で頷いた。やっぱり拡張版も同じ仕様なのか。人の心とかないんか、開発の人たち……。
実際にミズーナ王女もかなりでっぷりとしている。さっきの謁見の間で初めて姿を見た人たちが言葉を失うくらいである。私という先例がありながらも驚いてしまうのは、ミズーナ王女が一国の王女だからなのだろう。
「でも、安心しました。私一人ではない上に、アンマリアがずいぶんと1年間で痩せていますので。私も頑張れば痩せられるんだって希望が持てました」
ミズーナ王女が笑顔を見せている。元の素材がいいからだろうか、これだけ太っていても美人に見えるのはすごいわね。
とりあえず、こうやってお互いに転生者だという事を確認した上で、この乙女ゲームの事でしばらく盛り上がっていた。
しかし、それもあまり長くは続かなかった。
「アンマリアお嬢様、王妃教育の時間でございます。このままですと遅れてしまいます」
スーラが私を呼びにやって来たのだ。
「あっちゃあ……。もっと話していたかったんだけどね。仕方ない、私は行くわね」
「はい、アンマリア。またお話しましょう」
こうして私はミズーナ王女と別れて王妃教育へと向かったのだった。部屋に残ったのはミール王国のエスカとベジタリウス王国のミズーナ王女の二人である。あとでエスカから確認した話だけど、拡張版の簡単なストーリーと学園生活に対して思う事などを話していたいそうな。二人とも来年から学園に通うものね。私の方でも気になる事はあるから、またミズーナ王女とはお話がしたいものだわ。
そういうわけで、私の学園生活2年目は、転生者が三人というとんでもない状況の中で始まる事になったのだった。
「片付けはこれからですが、お話するだけなら問題ないかと思います。ささっ、どうぞお掛けになって下さい」
ミズーナ王女は部屋の来客用のテーブルを指してこう言っている。私たちの侍女も一応同席しているが、すぐにミズーナ王女によって席を外させられた。
「ちょっと大事なお話ですので、すみませんね」
「いえ、王女殿下には逆らえませんので」
ミズーナの謝罪の言葉に、スーラはおとなしく従っていた。そして、パリーセを連れて城の案内をすると言って出ていった。
これで部屋の中には、私、エスカ、ミズーナ王女というヒロイン二人とお邪魔虫が揃った。
「さて、部屋に案内したのはいいですけれど、何からお話しましょうかね」
ミズーナ王女は考え込む仕草をする。まあ、会ったばかりだからそういう話になるでしょうね。
「それにしても、おかしいですわね。この時期だとまだ相手が決まっていませんから、王妃教育とかそんな話が出るわけありませんのに……」
ぶつぶつと独り言ちるミズーナ王女。すると、これにエスカが反応していた。
「ちょっと待って。この時期だとまだ相手が決まっていないってどういう事なのかしら」
ミズーナ王女へと質問をぶつけるエスカ。そう言われて私もはたっと気が付く。
確かにそうだ。ゲームでは攻略2年目を目の前にしたこの時期、確かにまだ相手は誰か分からない時期だ。それを知っているという事は、もしかするとミズーナ王女は……。
「えっ、私何かおかしな事を言いましたか?」
とぼけた反応を見せるミズーナ王女。
「そんな事を確定的に言えるのは、ここが『アンマリアの恋愛ダイエット大作戦』の中だって知ってなければ言えた事じゃないわ。もしかして、ミズーナ王女も転生者?」
エスカがびしっと指摘していた。これに驚いた顔をするミズーナ王女。
「『も』って事は、もしかしてお二人ともそうなのですか?」
目をぱちぱちとしながら確認するように問い掛けるミズーナ王女。それに対して私たちはこくりと頷いた。私たちの反応を見て、ミズーナ王女は驚きを隠しきれないようだった。
「驚きましたわね。まさか初期主人公と追加ライバルが転生者だなんて思いもしませんでしたわ。でも、少し安心しましたわね」
ミズーナ王女は本当にほっとしたような様子を見せていた。なまじ前世の記憶があるからこそ起こってしまう現象でしょうね。私も身に覚えがありますもの。
「アンマリアはどうだったのですか? 太っちょヒロインだと知った時のショックたるや、言葉にならなかったでしょう?」
ミズーナ王女はこう言っているという事は、間違いなく本人はそうなったという事だろう。
「そうですね。洗礼式で見た自分の恩恵を確認した時は、それはショックでしたよ。学園に入る時に120kgが確定だなんて、何の拷問かと……」
私は当時を思い出しながらそう話すと、ミズーナ王女も強く頷いていた。やっぱりそうなのね。一人だけ普通の体型なエスカだけは首を傾げていた。
「失礼とは存じますが、ミズーナ王女殿下も、やっぱり120kgなのでしょうか」
私がドストレートに問い掛けると、ミズーナ王女は無言で頷いた。やっぱり拡張版も同じ仕様なのか。人の心とかないんか、開発の人たち……。
実際にミズーナ王女もかなりでっぷりとしている。さっきの謁見の間で初めて姿を見た人たちが言葉を失うくらいである。私という先例がありながらも驚いてしまうのは、ミズーナ王女が一国の王女だからなのだろう。
「でも、安心しました。私一人ではない上に、アンマリアがずいぶんと1年間で痩せていますので。私も頑張れば痩せられるんだって希望が持てました」
ミズーナ王女が笑顔を見せている。元の素材がいいからだろうか、これだけ太っていても美人に見えるのはすごいわね。
とりあえず、こうやってお互いに転生者だという事を確認した上で、この乙女ゲームの事でしばらく盛り上がっていた。
しかし、それもあまり長くは続かなかった。
「アンマリアお嬢様、王妃教育の時間でございます。このままですと遅れてしまいます」
スーラが私を呼びにやって来たのだ。
「あっちゃあ……。もっと話していたかったんだけどね。仕方ない、私は行くわね」
「はい、アンマリア。またお話しましょう」
こうして私はミズーナ王女と別れて王妃教育へと向かったのだった。部屋に残ったのはミール王国のエスカとベジタリウス王国のミズーナ王女の二人である。あとでエスカから確認した話だけど、拡張版の簡単なストーリーと学園生活に対して思う事などを話していたいそうな。二人とも来年から学園に通うものね。私の方でも気になる事はあるから、またミズーナ王女とはお話がしたいものだわ。
そういうわけで、私の学園生活2年目は、転生者が三人というとんでもない状況の中で始まる事になったのだった。
6
お気に入りに追加
251
あなたにおすすめの小説
婚約破棄にも寝過ごした
シアノ
恋愛
悪役令嬢なんて面倒くさい。
とにかくひたすら寝ていたい。
三度の飯より睡眠が好きな私、エルミーヌ・バタンテールはある朝不意に、この世界が前世にあったドキラブ夢なんちゃらという乙女ゲームによく似ているなーと気が付いたのだった。
そして私は、悪役令嬢と呼ばれるライバルポジションで、最終的に断罪されて塔に幽閉されて一生を送ることになるらしい。
それって──最高じゃない?
ひたすら寝て過ごすためなら努力も惜しまない!まずは寝るけど!おやすみなさい!
10/25 続きました。3はライオール視点、4はエルミーヌ視点です。
これで完結となります。ありがとうございました!
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
とある公爵令嬢の復讐劇~婚約破棄の代償は高いですよ?~
tartan321
恋愛
「王子様、婚約破棄するのですか?ええ、私は大丈夫ですよ。ですが……覚悟はできているんですね?」
私はちゃんと忠告しました。だから、悪くないもん!復讐します!
【完結】死がふたりを分かつとも
杜野秋人
恋愛
「捕らえよ!この女は地下牢へでも入れておけ!」
私の命を受けて会場警護の任に就いていた騎士たちが動き出し、またたく間に驚く女を取り押さえる。そうして引っ立てられ連れ出される姿を見ながら、私は心の中だけでそっと安堵の息を吐く。
ああ、やった。
とうとうやり遂げた。
これでもう、彼女を脅かす悪役はいない。
私は晴れて、彼女を輝かしい未来へ進ませることができるんだ。
自分が前世で大ヒットしてTVアニメ化もされた、乙女ゲームの世界に転生していると気づいたのは6歳の時。以来、前世での最推しだった悪役令嬢を救うことが人生の指針になった。
彼女は、悪役令嬢は私の婚約者となる。そして学園の卒業パーティーで断罪され、どのルートを辿っても悲惨な最期を迎えてしまう。
それを回避する方法はただひとつ。本来なら初回クリア後でなければ解放されない“悪役令嬢ルート”に進んで、“逆ざまあ”でクリアするしかない。
やれるかどうか何とも言えない。
だがやらなければ彼女に待っているのは“死”だ。
だから彼女は、メイン攻略対象者の私が、必ず救う⸺!
◆男性(王子)主人公の乙女ゲーもの。主人公は転生者です。
詳しく設定を作ってないので、固有名詞はありません。
◆全10話で完結予定。毎日1話ずつ投稿します。
1話あたり2000字〜3000字程度でサラッと読めます。
◆公開初日から恋愛ランキング入りしました!ありがとうございます!
◆この物語は小説家になろうでも同時投稿します。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
婚約破棄イベントが壊れた!
秋月一花
恋愛
学園の卒業パーティー。たった一人で姿を現した私、カリスタ。会場内はざわつき、私へと一斉に視線が集まる。
――卒業パーティーで、私は婚約破棄を宣言される。長かった。とっても長かった。ヒロイン、頑張って王子様と一緒に国を持ち上げてね!
……って思ったら、これ私の知っている婚約破棄イベントじゃない!
「カリスタ、どうして先に行ってしまったんだい?」
おかしい、おかしい。絶対におかしい!
国外追放されて平民として生きるつもりだったのに! このままだと私が王妃になってしまう! どうしてそうなった、ヒロイン王太子狙いだったじゃん!
2021/07/04 カクヨム様にも投稿しました。
よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………
naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話………
でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ?
まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら?
少女はパタンッと本を閉じる。
そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて──
アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな!
くははははっ!!!
静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる