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第四章 学園編・1年後半

第205話 顔合わせ

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 エスカがやって来てから1週間後、私たちは揃ってお城に呼ばれていた。
 話を聞けば、どうやらベジタリウス王国の王子と王女が城に到着したようだった。なので、王家とはかかわりの深い我が家は家族そろって呼び出しを受けたのである。モモはガチガチに固まって緊張している。というか、なんでエスカまで緊張で固まってるんですかね。
 私たちファッティ家以外に呼ばれているのは、エスカとアーサリーのミール王国の二人、マートン公爵家、私と同じ王子の婚約者の立場に居るサキのテトリバー男爵家、それと宰相のブロック侯爵家にバッサーシ辺境伯家のミスミとサクラの二人である。この錚々たるメンバーの中ではサキの男爵家がもの凄く目立っていた。まあ、男爵家だものね。
 ちなみにこの場では、顔合わせとともに関係者のみによる交流会も行われる。それがゆえに私が着ている服もかなりいいものになっていた。私の体格に合わせて作るのは大変でしたでしょうにね。
 さて、そんな事をしていると、国王と王妃が謁見の間に姿を現した。
「皆のもの、本日はよく城に集まってくれた。年末の忙しい時期であろうが、その事に実に感謝する」
 国王の言葉に男女関係なく跪いて頭を下げる。国王たちってそういう存在だから仕方がない。それにこの国王たちはちゃんと政治してくれてるものね。
「本日集まってもらったのは、実は昨日の夜なのだが、来年より我が国の学園に留学する事になったベジタリウス王国の王子と王女が到着したのだ。そこのエスカ王女もだが、まさか隣国から同時に王子王女を招き入れる事になるとは思っていなかった。だが、これを機に我が国は両国ともよい関係を築いていきたいと思っている」
 国王はこのように仰っていた。
 南のミール王国にしても、北西のベジタリウス王国にしても、過去にはサーロイン王国の土地をめぐって争いになった過去がある。だが、その度にサーロイン王国は侵略を撥ね退けて国土を死守してきた。何回やっても何回やっても、サーロイン王国が倒せないのである。それがゆえに、両国ともかなり侵略をしようという空気は無くなってきているらしい。平和なのはいい事だ。
 まあ、その平和な空気の結果のひとつが、この王子王女のサーロイン王国への留学というわけなのよね。国の大事な跡取りを、過去の敵対国に送り込むんですもの。敵意がないという表れ他ならないのよ。
 国王たちの話が終わると、謁見の前にベジタリウス王国の王子と王女が入ってきた。それと同時にフィレン王子とリブロ王子も入場してきたようだ。
「みなさん、今紹介に預かりましたベジタリウス王国王子のレッタス・ベジタリウスです。来年から学園でお世話になりますので、よろしくお願いします」
「同じく王女のミズーナ・ベジタリウスです。初めての国外が学園生活と聞いて緊張しています。これから3年間、よろしくお願いします」
 そして、最後に二人揃って頭を軽く下げていた。うーん、なんとも謙虚なものだと私は思った。
 それにしても、さすがゲームタイトルに『恋愛ダイエット大作戦』と銘打たれているように、ミズーナ王女もかなり太……恵まれた体形のようだった。ちょうど1年前の自分を思い出すようなご立派な体である。私は40kg近くをどうにか落とせたけれど、彼女はどうなるのかしらね。実に興味深い話だわ。
 とりあえずひと通りの顔合わせが終わったところで、謁見の間から会食の会場となる食堂へと移動する。その移動の最中、私の隣を歩くエスカがこっそりと話し掛けてきた。
「アンマリア。ミズーナ王女のお姿見られました?」
「ええ、まるで去年の私のようでしたね。続編の主人公というだけであの体型にさせるあたり、製作陣の妙なこだわりを感じましたわ」
 ベジタリウス王家の二人は、淡い緑色の髪の毛と引き込まれそうな深い緑色の瞳が特徴である。さすが名前が野菜ベースなだけに、髪や瞳の色まで徹底的に野菜要素もりもりだった。ミール王国も海要素もりもりだったので、やっぱりこだわりというものがあるようだった。サーロイン王国はまとまりありませんのにね。
 エスカと話をしている間に、私たちは食堂へと移動してきた。一応テーブルが用意してあるようなので、ここでは席に着いて向かい合う状態での会食になるようだった。個人的なお話はできなさそうだ。うーん、残念。
 会食の場では、主に顔合わせが目的だった。自己紹介をしながらお互いの国の話とか家の近況だとかそういう話で時間が過ぎていった。
 ようやく会食が終わって解散となった時だった。私のところへとミズーナ王女がやって来たのである。
「アンマリア・ファッティと申されましたね。どうでしょうか、この後私と一緒にお話でもしませんか?」
 なんと、向こうから誘ってきたではないか。これには私はすぐに飛びついた。ちょうど私も話がしたいと思っていたのだから。
「はい、喜んで。今日は王妃教育もございますので、しばらくは城に滞在しております」
 私がこう答えると、ミズーナ王女は喜んだ表情を見せた。
「ちょっと待って下さらないかしら。私もご一緒して構いませんよね? 同じ王女として、ぜひとも話をしておきたいと思います」
 そこへエスカが割り込んできた。その行動に、ミズーナ王女の表情が少し曇った。これにはエスカが少し怒ったのか詰め寄ろうとしていた。
「まあまあ、エスカ王女殿下、堪えて下さい」
 それを私がどうにか制止する。
「ミズーナ王女殿下。エスカ王女殿下の仰られるように同じ王女という立場です。それに、同い年ではありませんか。お話をしておいて、損はないと思われます」
 私がこう伝えると、ミズーナ王女は渋々エスカの同席を容認したのだった。
 はてさて、ミズーナ王女はどういった思惑で私に声を掛けてきたのか、確かめてあげなくちゃね。というわけで、私たちはミズーナ王女が3年間過ごす事になる城の客間へと移動したのだった。
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