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第四章 学園編・1年後半
第204話 どうしてこうなった
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ミズーナが気にしているなんて知らずに、私は今日も元気にエスカに絡まれていた。
「もう、お姫様がそんな風にべたべたくっ付くんじゃありません!!」
「いいではないですか。この3年間は家族なのですから。固い事を仰らないで下さい」
あまりにエスカが私にくっ付くので、モモが複雑な表情を浮かべてその様子を見ている。それは私の侍女のスーラも同じである。相手が一国の王女でなければ、多分二人とも殴るか叩くかしていたと思われる。そのくらいにエスカのべったり具合は酷かったのである。
「まったく、エスカ王女殿下。アンマリアお嬢様から離れて下さい。王族というものは、むやみやたらとスキンシップをしたりしないものですよ!」
スーラが本気で怒っている。それでもエスカの行為は止まる事がなかった。いい加減にしてくれないかしらね。
私はそこで考えた。手元にトレント木材を取り出すと、魔力で変形させていく。その変形させたものを手に、私はエスカへと思い切り振り抜いた。
スパーンというものすごく乾いたいい音が響き渡る。
「いったーい! 何をするのです、アンマリア」
「それはこちらのセリフです。モモやスーラに離れるように言われているし、私も嫌がっているというのにいつまでくっ付いているんですか! さっさとモモと一緒に勉強をして下さい。仮にも一国の姫が赤点を取ったなんてなったら、とんだ笑いものですからね!」
頭を擦りながら必死に抗議をしてくるエスカ。だけど、私は王女様相手でも心を鬼にして説教を垂れていた。
「ハリセンなんて引っ張り出すなんて! 暴力反対!」
「嫌がる相手にいつまでもくっ付いているのも暴力です! モモ、スーラ、ネスを呼んで一緒にエスカ王女殿下をお部屋までお連れして。閉じ込めて勉強をさせるのです!」
「分かりましたわ、お姉様。スーラさん、やっちゃいましょう」
私の言葉に、モモとスーラが動く。スーラがエスカを押さえている間にモモがネスを呼ぶ。そして、三人で嫌がるエスカを部屋まで引きずっていった。まったく、いつまでミール王国の品位を下げれば気が済むのかしら、あの王女は。
本当に暴走するエスカの対応は大変だった。私が同じ転生者だからという事で、エスカからすれば接しやすいのだろう。でも、エスカはミール王国の王女であるので、行動にはそれなりの品位というものが求められるのである。ただでさえ家の中であっても私たちの侍女たちの目がある。だというのに、エスカは完全に気が緩んでいるのだ。急遽作り出したこのハリセンは、あの様子を見る限り、今後も活躍の場が多そうである。私は別に関西人でもないし、漫才師でもないのに、どうしてハリセンなんか作ったのかしらね。やっぱりツッコミといったらというイメージなのかしら……。
それにしても、トレント木材が紙に変わるとは予想外だった。確かにパルプ製紙は材料が木の繊維だけども、なんで作れてしまったのか私にはさっぱり分からなかった。エスカを黙らせるのに必死だったからなのだろうか。もはや永遠の謎となってしまった。
……この魔法を確立させれば、紙の生産に革命を起こせないかしらね。私はふとそんな事を思ってしまった。
現状この世界の紙は、羊皮紙に代表される獣の皮を使ったものが中心なのよ。倒した魔物の皮を使う事もあるけれど、それでも絶対量としてはそんなに多いわけでもなかった。となれば、この木を紙に作り変えてしまう魔法を確立できれば、世界を一変できてしまいそうなのだ。なんとも夢の広がる話である。
まあ、そのためには、木から紙を作るという工程を完全にとはいかなくてもそれなりに理解する必要があった。残念ながら、私にはそういう知識はない。漠然と分かっているだけでは完全な紙を作る事ができなかったのだ。実際、木を数回無駄にしてしまった。でき上がったのはただの板となったトレント木材だった。まっ、これはこれで使い道があるのでそこまで気にしなくてもいいかしらね。魔法を掛けて汚れないまな板とかにできるだろうし。私は失敗して板となってしまったトレント木材を収納魔法へとしまい込んでいった。
紙の生成に失敗した私だけれども、この程度ではめげなかった。魔法も私も万能ではない事が分かったのだから、それはそれで収穫のある事なのだ。
その日の私は、モモたちのおかげでエスカから解放されて、優雅に一日を過ごしたのだった。
普段ならモモとこの雰囲気を味わっているんだけど、エスカ一人居るだけでこんなに雰囲気が変わるだなんて、どんだけ鬱陶しく絡んできているのかがよく分かる。正直、これが3年間続くとなると気分が鬱屈としてきてしまう。
なんかこうなってくると、同郷のよしみだとして仲良くしようとした事を後悔してきてしまう。どうしてこうなった。状況を分析する限り、エスカは前世の調子で接しているような感覚すら覚える。一応王女としての立ち振る舞いをしてはいるものの、私の前での振る舞いに関してはそうとしか思えない。
(はあ、これはこっちの世界に合わせてガツンとお説教するしかないわよね。このままじゃ、こっちの世界じゃ致命的な嫁ぎ遅れにつながりかねないもの)
まったく、何だって私が異国の王女の心配をしなきゃいけないのかしら。
そんなわけで、あまりにスキンシップの激しいエスカに、私は説教をする覚悟を決めたのだった。
「もう、お姫様がそんな風にべたべたくっ付くんじゃありません!!」
「いいではないですか。この3年間は家族なのですから。固い事を仰らないで下さい」
あまりにエスカが私にくっ付くので、モモが複雑な表情を浮かべてその様子を見ている。それは私の侍女のスーラも同じである。相手が一国の王女でなければ、多分二人とも殴るか叩くかしていたと思われる。そのくらいにエスカのべったり具合は酷かったのである。
「まったく、エスカ王女殿下。アンマリアお嬢様から離れて下さい。王族というものは、むやみやたらとスキンシップをしたりしないものですよ!」
スーラが本気で怒っている。それでもエスカの行為は止まる事がなかった。いい加減にしてくれないかしらね。
私はそこで考えた。手元にトレント木材を取り出すと、魔力で変形させていく。その変形させたものを手に、私はエスカへと思い切り振り抜いた。
スパーンというものすごく乾いたいい音が響き渡る。
「いったーい! 何をするのです、アンマリア」
「それはこちらのセリフです。モモやスーラに離れるように言われているし、私も嫌がっているというのにいつまでくっ付いているんですか! さっさとモモと一緒に勉強をして下さい。仮にも一国の姫が赤点を取ったなんてなったら、とんだ笑いものですからね!」
頭を擦りながら必死に抗議をしてくるエスカ。だけど、私は王女様相手でも心を鬼にして説教を垂れていた。
「ハリセンなんて引っ張り出すなんて! 暴力反対!」
「嫌がる相手にいつまでもくっ付いているのも暴力です! モモ、スーラ、ネスを呼んで一緒にエスカ王女殿下をお部屋までお連れして。閉じ込めて勉強をさせるのです!」
「分かりましたわ、お姉様。スーラさん、やっちゃいましょう」
私の言葉に、モモとスーラが動く。スーラがエスカを押さえている間にモモがネスを呼ぶ。そして、三人で嫌がるエスカを部屋まで引きずっていった。まったく、いつまでミール王国の品位を下げれば気が済むのかしら、あの王女は。
本当に暴走するエスカの対応は大変だった。私が同じ転生者だからという事で、エスカからすれば接しやすいのだろう。でも、エスカはミール王国の王女であるので、行動にはそれなりの品位というものが求められるのである。ただでさえ家の中であっても私たちの侍女たちの目がある。だというのに、エスカは完全に気が緩んでいるのだ。急遽作り出したこのハリセンは、あの様子を見る限り、今後も活躍の場が多そうである。私は別に関西人でもないし、漫才師でもないのに、どうしてハリセンなんか作ったのかしらね。やっぱりツッコミといったらというイメージなのかしら……。
それにしても、トレント木材が紙に変わるとは予想外だった。確かにパルプ製紙は材料が木の繊維だけども、なんで作れてしまったのか私にはさっぱり分からなかった。エスカを黙らせるのに必死だったからなのだろうか。もはや永遠の謎となってしまった。
……この魔法を確立させれば、紙の生産に革命を起こせないかしらね。私はふとそんな事を思ってしまった。
現状この世界の紙は、羊皮紙に代表される獣の皮を使ったものが中心なのよ。倒した魔物の皮を使う事もあるけれど、それでも絶対量としてはそんなに多いわけでもなかった。となれば、この木を紙に作り変えてしまう魔法を確立できれば、世界を一変できてしまいそうなのだ。なんとも夢の広がる話である。
まあ、そのためには、木から紙を作るという工程を完全にとはいかなくてもそれなりに理解する必要があった。残念ながら、私にはそういう知識はない。漠然と分かっているだけでは完全な紙を作る事ができなかったのだ。実際、木を数回無駄にしてしまった。でき上がったのはただの板となったトレント木材だった。まっ、これはこれで使い道があるのでそこまで気にしなくてもいいかしらね。魔法を掛けて汚れないまな板とかにできるだろうし。私は失敗して板となってしまったトレント木材を収納魔法へとしまい込んでいった。
紙の生成に失敗した私だけれども、この程度ではめげなかった。魔法も私も万能ではない事が分かったのだから、それはそれで収穫のある事なのだ。
その日の私は、モモたちのおかげでエスカから解放されて、優雅に一日を過ごしたのだった。
普段ならモモとこの雰囲気を味わっているんだけど、エスカ一人居るだけでこんなに雰囲気が変わるだなんて、どんだけ鬱陶しく絡んできているのかがよく分かる。正直、これが3年間続くとなると気分が鬱屈としてきてしまう。
なんかこうなってくると、同郷のよしみだとして仲良くしようとした事を後悔してきてしまう。どうしてこうなった。状況を分析する限り、エスカは前世の調子で接しているような感覚すら覚える。一応王女としての立ち振る舞いをしてはいるものの、私の前での振る舞いに関してはそうとしか思えない。
(はあ、これはこっちの世界に合わせてガツンとお説教するしかないわよね。このままじゃ、こっちの世界じゃ致命的な嫁ぎ遅れにつながりかねないもの)
まったく、何だって私が異国の王女の心配をしなきゃいけないのかしら。
そんなわけで、あまりにスキンシップの激しいエスカに、私は説教をする覚悟を決めたのだった。
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