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第四章 学園編・1年後半
第203話 ベジタリウスの王子と王女
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さて、一方のベジタリウス王国からの留学生であるレッタスとミズーナはというと、ちょうど国境を越えてテッテイに差し掛かろうかとしていた。ベジタリウスの王都からはテッテイまでもかなり遠く、すでに2週間を掛けて移動している。首都イサヤからは馬車での移動に加え、サーロイン王国との国境が山道である事から、どうしても日数が掛かってしまうのだ。
「まったく退屈だな、ミズーナ」
「そうなのですか、兄様」
一番豪奢な馬車に乗るのが、レッタス王子とミズーナ王女である。侍従を連れて乗り込む二人は、あまりの暇加減に会話もほとんどなかった。
「もう2週間だぞ、城を出てから。さすがに退屈してしまうだろうが」
レッタスはだいぶ不機嫌のようだ。それにしても、アーサリーと似た粗暴な口を利いている。まあ、実妹相手というのもあるだろうが、ずいぶんな言葉遣いのようだ。
「確かにさすがに飽きてしまいますね」
そう言いながら、ミズーナは何かを取り出し始めた。
「なんだ、それは」
「ちょっとした暇つぶしのボードゲームですよ。ささっ、パリーセとハクサも一緒に遊びましょう」
ミズーナが出してきたものはいくつもの線が引かれた大きめ木の板と表と裏で色の違う円くて小さな木の板だった。
「ルールは教えますから、暇つぶしに遊びましょう」
にっこりと微笑むミズーナに、パリーセとハクサは首を傾げながらもミズーナの言葉に従った。
「だああっ! また僕の負けかっ!」
「兄様、弱すぎます」
頭を抱えながら叫ぶレッタス。四人の間にはテーブルが置かれているのだが、これは一体どこから出したのだろうか。
テーブルの上に置かれた升目状の線が引かれた板の上には、どういうわけか白一色になっていた。レッタスたちが遊んでいるのはリバーシである。
真っ白になってレッタスが負けたと叫んでいるので、間違いなくレッタスは裏の黒の手番だったのだろう。真っ白になるとはこの上ない潔い負けである。
「一体殿下は何度染められて負けているのですか……。もう少し考えて板を置いて下さい」
「うるさいぞ、ハクサ」
自分の侍従からツッコミを入れられて、涙目になっているレッタス。これが来年13歳になる王子様の姿なのだろうか……。
その時だった、御者台から声が聞こえてくる。
「レッタス殿下、ミズーナ王女殿下、間もなくサーロイン王国に入ります」
「分かった」
どうやら、ようやく国境に到着したようである。
山道はガタガタと道が悪いのだが、リバーシに興じていたために、レッタスたちは無事に山道を登り終えられたようである。
そして、無事に国境の検問を過ぎ、テッテイの街に到着する。このテッテイとはベジタリウス王国もかなり長い付き合いになる。特に高原で採れる野菜と馬はベジタリウス王国の中でも評判が高いのである。
「いやはや、よくお越し下さいましたな、レッタス殿下、ミズーナ王女殿下」
テッテイの領主邸へやって来ると、そこでは辺境伯であるヒーゴ・バッサーシが出迎えていた。
「お初にお目に掛かります、ヒーゴ・バッサーシ辺境伯。我が国が大変お世話になっているようで、その事について感謝申し上げます」
レッタスが挨拶をする。さっきまでとは違い、ちゃんと王子としての丁寧な態度になっている。しっかりとオンオフを切り替えられるタイプのようだ。
「お初にお目に掛かります、ヒーゴ・バッサーシ辺境伯。サキに挨拶したレッタスの双子の妹のミズーナと申します。此度の受け入れを感謝致します」
ミズーナは太った体ながらもしっかりとした姿勢で挨拶をしている。体型が体型だというのに、それはとても美しく見える。さすがは拡張版のダブルヒロインである。
「本当に礼儀正しい王子と王女だな。今まで我が領地と戦いに明け暮れていたとは思えないな」
ヒーゴは大口を開けて笑い出す。その姿を見てレッタスはちょっと引き、ミズーナはつられて笑っていた。
「来年からお二人が通って頂く事になる我が国の学園には、私の妹と娘も在籍しております。妹は教師として、娘はお二方の一つ上の先輩となります。手厚く接するようには言っておりますので、ぜひともご安心下さい」
「そ、それは楽しみですね」
どういうわけか不安を感じたレッタスは、引きつりながらもそう返事をしていた。
その後、客間に通された二人は、それぞれの侍従と一緒に部屋でゆっくりしている。
「パリーセ、私はもう寝るから一人にしてもらっていいでしょうか」
「畏まりました。それではお休みなさいませ、姫様」
ミズーナがこう言うと、パリーセは頭を下げて部屋を出ていった。そして、一人になったミズーナは窓に近付いて外を見る。
「ここからが、いよいよゲーム本番ってわけね。まさか拡張版の追加ヒロインに転生するなんて思ってなかったけれど、しっかりと幸せをつかみ取ってみせるわ」
闇夜に浮かぶ月に向かって誓いを新たにするミズーナ。どうやら彼女もまた、転生者のようである。
「通常版のヒロインであるアンマリアの事も気になるわね。どんな人なのか、早く会ってみたいわ」
ため息を一つ吐いたミズーナは、ベッドに入って眠りに就いたのだった。
「まったく退屈だな、ミズーナ」
「そうなのですか、兄様」
一番豪奢な馬車に乗るのが、レッタス王子とミズーナ王女である。侍従を連れて乗り込む二人は、あまりの暇加減に会話もほとんどなかった。
「もう2週間だぞ、城を出てから。さすがに退屈してしまうだろうが」
レッタスはだいぶ不機嫌のようだ。それにしても、アーサリーと似た粗暴な口を利いている。まあ、実妹相手というのもあるだろうが、ずいぶんな言葉遣いのようだ。
「確かにさすがに飽きてしまいますね」
そう言いながら、ミズーナは何かを取り出し始めた。
「なんだ、それは」
「ちょっとした暇つぶしのボードゲームですよ。ささっ、パリーセとハクサも一緒に遊びましょう」
ミズーナが出してきたものはいくつもの線が引かれた大きめ木の板と表と裏で色の違う円くて小さな木の板だった。
「ルールは教えますから、暇つぶしに遊びましょう」
にっこりと微笑むミズーナに、パリーセとハクサは首を傾げながらもミズーナの言葉に従った。
「だああっ! また僕の負けかっ!」
「兄様、弱すぎます」
頭を抱えながら叫ぶレッタス。四人の間にはテーブルが置かれているのだが、これは一体どこから出したのだろうか。
テーブルの上に置かれた升目状の線が引かれた板の上には、どういうわけか白一色になっていた。レッタスたちが遊んでいるのはリバーシである。
真っ白になってレッタスが負けたと叫んでいるので、間違いなくレッタスは裏の黒の手番だったのだろう。真っ白になるとはこの上ない潔い負けである。
「一体殿下は何度染められて負けているのですか……。もう少し考えて板を置いて下さい」
「うるさいぞ、ハクサ」
自分の侍従からツッコミを入れられて、涙目になっているレッタス。これが来年13歳になる王子様の姿なのだろうか……。
その時だった、御者台から声が聞こえてくる。
「レッタス殿下、ミズーナ王女殿下、間もなくサーロイン王国に入ります」
「分かった」
どうやら、ようやく国境に到着したようである。
山道はガタガタと道が悪いのだが、リバーシに興じていたために、レッタスたちは無事に山道を登り終えられたようである。
そして、無事に国境の検問を過ぎ、テッテイの街に到着する。このテッテイとはベジタリウス王国もかなり長い付き合いになる。特に高原で採れる野菜と馬はベジタリウス王国の中でも評判が高いのである。
「いやはや、よくお越し下さいましたな、レッタス殿下、ミズーナ王女殿下」
テッテイの領主邸へやって来ると、そこでは辺境伯であるヒーゴ・バッサーシが出迎えていた。
「お初にお目に掛かります、ヒーゴ・バッサーシ辺境伯。我が国が大変お世話になっているようで、その事について感謝申し上げます」
レッタスが挨拶をする。さっきまでとは違い、ちゃんと王子としての丁寧な態度になっている。しっかりとオンオフを切り替えられるタイプのようだ。
「お初にお目に掛かります、ヒーゴ・バッサーシ辺境伯。サキに挨拶したレッタスの双子の妹のミズーナと申します。此度の受け入れを感謝致します」
ミズーナは太った体ながらもしっかりとした姿勢で挨拶をしている。体型が体型だというのに、それはとても美しく見える。さすがは拡張版のダブルヒロインである。
「本当に礼儀正しい王子と王女だな。今まで我が領地と戦いに明け暮れていたとは思えないな」
ヒーゴは大口を開けて笑い出す。その姿を見てレッタスはちょっと引き、ミズーナはつられて笑っていた。
「来年からお二人が通って頂く事になる我が国の学園には、私の妹と娘も在籍しております。妹は教師として、娘はお二方の一つ上の先輩となります。手厚く接するようには言っておりますので、ぜひともご安心下さい」
「そ、それは楽しみですね」
どういうわけか不安を感じたレッタスは、引きつりながらもそう返事をしていた。
その後、客間に通された二人は、それぞれの侍従と一緒に部屋でゆっくりしている。
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「畏まりました。それではお休みなさいませ、姫様」
ミズーナがこう言うと、パリーセは頭を下げて部屋を出ていった。そして、一人になったミズーナは窓に近付いて外を見る。
「ここからが、いよいよゲーム本番ってわけね。まさか拡張版の追加ヒロインに転生するなんて思ってなかったけれど、しっかりと幸せをつかみ取ってみせるわ」
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「通常版のヒロインであるアンマリアの事も気になるわね。どんな人なのか、早く会ってみたいわ」
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