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第四章 学園編・1年後半

第198話 後期末試験を迎えて

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 後期末試験、モモは燃え尽きていた。やっぱり座学はかなり苦手なようである。私はかなり余裕をもって済ませていたので、ずっとモモの様子を見ていたのだけど、魔石ペンをトントンと机に叩きつけたり、頭を抱え込むような仕草を見せたり、相当に苦戦していたみたい。
 どうにか座学の試験を乗り切ったモモは、前期同様に魔法試験に賭ける事にしたようだ。
「座学、もっと頑張らなくちゃ……」
 試験直後はそんな事を言って項垂れていたモモも、魔法試験となると気合いが入りまくっていた。前期でもかなりいい成績を残していので、挽回は十分にあり得る話だものね。
 前期の魔法試験は動き回るパペットだったけど、今回はどんな試験を課してくるのかしらね。
 試験官が現れると、会場のざわめきが一瞬で静まり返る。
「よし、後期の試験内容を発表する」
 試験官の言葉に、学生たちがごくりと息を飲む。
「アンマリア・ファッティ。前に出てきなさい」
「はい」
 私の名前を呼ぶので、私は前に出ていく。
「今回の試験の対戦相手は、アンマリア・ファッティだ。彼女に魔法を当ててみなさい」
 試験官の言葉に私は目が点になるし、学生たちは悲鳴を上げる。
 それもそうだろう。私は王子たちの婚約者よ。その人物に傷を負わせようものなら、一大事だという事を知っているのだから。
 というか、なんで私が対戦相手にならなきゃいけないのよ。抗議してやるわ。
「すまないな。今回の提案はミスミ・バッサーシ教官からの提案なんだ。この学園で彼女に逆らえるのは学園長くらいだ。すまないが堪えてくれ」
 私が抗議の視線を向けた瞬間に、試験官はそんな言い訳をしてきた。ミスミ教官が原因かい。
 でもまあ、不満があるけれどもミスミ教官がそう言うのなら、私も受けざるを得ない。はっきり言って売られたけんかだもの。
 というわけで、私はずかずかと試験会場となる訓練場のど真ん中で歩み出ていく。実はあれから10数kg痩せたんだけど、まだ学生たちにとっては迫力があるようで、ものすごく怖がられていた。失礼しちゃうわ。
「さて、指名を受けたからには、しっかりと努めさせて頂きますわ」
 私はどっしりと構えて学生たちを見る。学生たちはその視線にものすごくびびっている。
 私はため息ひとつ吐くと、
「さあ、誰からでもいらっしゃい。試験を任されたからには遠慮は要りませんわ」
 学生たちに呼びかける。しかし、これには誰もすぐに試験に向かおうとはしなかった。
「これじゃ、みんな追試だな。私はそれでも構わないが、君たちの家はどう思うだろうかね」
 教官が半ば脅し気味に言う。みんなが戸惑って騒めく中、一人、手を上げて前に歩み出てきた。サキだった。
「私が参ります!」
「サキ・テトリバーか。いいだろう、好きなタイミングで始めてくれ」
「はいっ!」
 サキは元気よく返事をして、私と向き合う。友人であるがために、ちょっと及び腰ではあるものの、視線はしっかり私を見ている。
「普段の訓練の成果を、しっかりと見せて下さいませ、サキ様」
 私が静かに言うと、サキは口をしっかりと結んで頷いた。
 後期は回復魔法を重点的に特訓したので、魔法の精度は上がっているはずである。回復魔法ほどイメージのしづらいものはないのだから。さて、早速見せてもらおうじゃないの。
「さあ、サキ様。遠慮なさらずに来て下さい」
 私は防護壁を展開して、見た目通りにどっしりと構える。さあ、どう来るかしらね。
 対するサキは、杖を取り出して構える。この様子を見る限り、前期と同じパターンかしらね。ただ、人間である私に対して光の剣が使えるかしら?
「アンマリア様、本気で行かせて頂きます!」
「どうぞ、いらして下さいな」
 ようやく態勢を整えたサキを、私は平然と煽る。それと同時に、前期と同じようにサキの無詠唱魔法が発動される。
 私が展開した防護壁の中が一瞬で凍り付く。その威力は前期の時とは格段に違っており、スタンピードや私による特訓の成果がよく出ている。でも、それだけじゃ、私の魔力には到底及ばない。
「相殺!」
 私がそう叫ぶと、私の前方に突如として真っ黒な塊が浮かぶ。どうやら牽制用に放った光の剣のようだ。それを私の闇魔法によって潰したのである。
「えっ!?」
 サキが驚くけれど、この程度で驚いてもらっちゃ困るわね。
 次の瞬間、私が展開した防護壁の中が水蒸気で曇っていく。
「なんて魔力とセンスなんだ。サキ・テトリバーの使った魔法の真逆の属性を使って打ち消しているではないか」
 そう、試験官の言う通りである。
 私は光属性に対して闇属性、氷属性に対して火属性をぶつけてその魔法を相殺したのよ。
 さすがに水蒸気で曇っていく視界に、サキは慌てふためいていた。
「ちょっと?! 何も見えません!」
 だが、そうやって騒いだのが運の尽き。たとえ見えなくても、声さえ聞こえればそれで場所を特定できてしまうのだ。
「きゃあっ!」
 サキの悲鳴が聞こえたかと思うと、防護壁が消えて、水蒸気が一気に風によって払われる。
 そこに浮かび上がってきたのは、地面に倒れて氷の棒を突き付けられているサキの姿だった。よく見ると、周りの地面にも氷の棒が何本か突き刺さっていた。
「ふふっ、あれだけの魔法を一瞬で、しかも前期よりも強力に展開できたのはさすがですわね」
 私はサキを褒める。
「ですが、私の方が上手だったようですわね」
 その言葉を私から突きつけられたサキは、涙目になって下を向いてしまったのだった。
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