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第四章 学園編・1年後半
第186話 熱戦を終えて
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「ぐわっ!」
「きゃあっ!」
剣と剣、意地と意地がぶつかり合い、大きな衝撃波が生まれる。こうなると立っている方よりもしゃがんでいる方が有利で、立って剣を振り下ろしたタンの方が勢いよく吹き飛んでしまった。結果……、
「勝者、サクラ・バッサーシ!」
サクラの勝利となった。地面の抵抗があった分、サクラの方があまり吹き飛ばなかったのだ。うまく立ち回って結界の中央付近をキープし続けたサクラの作戦勝ちである。しかし、剣をぶつけ合っただけで10数メートルも吹き飛ぶとは、どれだけ強い衝撃波が生まれたのやら。結界の仕様上魔法が使えないのだから、恐るべし脳筋たちである。
「くっそ、負けたーっ!」
地団太を踏んで悔しがるタン。いくらバッサーシ辺境伯の血筋相手とはいえ、婚約者に負けたのは相当に悔しいのである。
「タン様、いい試合でした。もっと楽に勝てるかと思いましたけれど、ここまで苦戦させられたのはひとえにタン様の頑張りがあってこそです」
ものすごく真っすぐな瞳でタンを見つめるサクラ。その顔に思わずドキッとして赤面してしまうタンだった。
それにしても、この決勝戦の戦いは、今までのどの試合と見比べてもレベルが高いものだった。1年生とはいえども実力は確かにあるタンと互角レベルの打ち合いをして、体力で負けたとはいっても知恵で逆転してみせたサクラ。見ていた観客誰もが、その戦いを固唾を飲んで見守っていたのである。それは、勝者の名前を出しても静まり返っていた事からもよく分かる。会場が沸き上がったのはタンの悔しそうな叫び声が響いた後からだった。
「本当にすごい戦いでした。あれを私たちと同い年がしているのだと思うと信じられませんね」
「見てて心臓が止まる思いでしたよ。お姉様、本当に同級生なのですかね」
「モモ、間違いなく同級生よ」
サキもモモも心臓をバクバク言わせっぱなしである。そのくらいに緊張感のある戦いだったのだ。
「うーん、私はさすがにあそこまでは無理かしらね。あと4~50kgは痩せなきゃ」
「お姉様、さすがに危険ですからやめて下さい」
私が来年に向けていけて抱負めいた事を言うと、モモから全力で止められた。私だって参加してたんですけど?
まったく困った子だことね。将来的にはこのままなら王妃か公爵夫人なのだから、自分の身くらい自分で守れた方がいいに決まっている。ただ、体重が100kgに戻ってしまったので、かなり困っている。うどんがダメだったかしらね。さすがは水でも太ると(設定で)言われた私だわ。まあ痩せる努力しなきゃいけないわね。
とりあえず1年目の学園祭の剣術大会は、サクラ・バッサーシの優勝で幕を閉じた。会場からは惜しみない拍手がサクラへと送られている。
この剣術大会はもちろんゲームでも存在していたわ。リズムゲームみたいな感じだったっけかな。どちらが攻撃か防御かはランダムで割り当てられるものの、タイミングよくボタンを押すと攻撃と防御ができて、ジャストタイミングならクリティカルと完全ガードになるってやつだったはず。魔法が使えないイベントだからこんな仕様になったのかも知れない。それ以外の戦闘はちゃんとRPG風のコマンド選択式だったのにね。うん、謎。
試合を見終わった私たちは、控室に移動してサクラと落ち合う。
「サクラ様、優勝おめでとうございますわ」
「ありがとうございます、アンマリア様」
私たちが祝福すると、サクラは笑顔で言葉を返してくれた。
戦いになると脳筋的になるはずだけど、思ったよりもサクラは頭を使って動いていた。あれだけ攻められればずるずると後退しそうなものなのに、中央付近をずっとキープしていた事が証左のひとつだ。もしかしたら、攻められてしゃがみ込んだのも作戦だったのかも知れない。どういう事であれ、ゲームのサクラとはだいぶ印象が違うようだった。
「表彰式も終わりましたし、後は後夜祭を残すだけですね」
「そうですね。皆さんはどうされますか?」
私が言うと、サクラからどうするのか聞かれてしまう。
「やはり、ダンスの行われる講堂に向かおうと思いますわ。殿下もいらっしゃるでしょうし、お相手が居なくてはいけませんわ」
「それでしたら、私もですね」
「わ、私も行きます!」
サクラの質問にはそれぞれこのように答えた。それを聞いてサクラは笑っている。
「ふふふ、そうですね。私もそうしましょうか」
「おい、何の冗談だ。戦った後で踊るとか、本気なのか?」
サクラがそう言っていると、後ろから大きな声が響いてきた。タンの登場である。
「あら、タン様。私は本気ですよ。むしろ、婚約者なのですから、そうなるのではございませんか?」
「うっ、まあ、そうだな……」
サクラに真顔で返されると、タンはしどろもどろになっていた。これはあれだ、完全にほの字だわ。私は心の中でにんまりと笑っておく。
何はともあれ、この学園祭も残すは後夜祭のみである。とはいっても、ほぼダンスパーティーみたいなものなので、みんな講堂に集まる流れとなる。婚約者が居れば一緒に踊るし、居なければ探しにやって来るし、思いは人それぞれなのだ。
ドレスに着替えたサクラを交えて、私たちは揃って講堂へと移動する。
この学園祭2つ目のリズムゲーム。後夜祭ダンスパーティーの始まりですわよ!
「きゃあっ!」
剣と剣、意地と意地がぶつかり合い、大きな衝撃波が生まれる。こうなると立っている方よりもしゃがんでいる方が有利で、立って剣を振り下ろしたタンの方が勢いよく吹き飛んでしまった。結果……、
「勝者、サクラ・バッサーシ!」
サクラの勝利となった。地面の抵抗があった分、サクラの方があまり吹き飛ばなかったのだ。うまく立ち回って結界の中央付近をキープし続けたサクラの作戦勝ちである。しかし、剣をぶつけ合っただけで10数メートルも吹き飛ぶとは、どれだけ強い衝撃波が生まれたのやら。結界の仕様上魔法が使えないのだから、恐るべし脳筋たちである。
「くっそ、負けたーっ!」
地団太を踏んで悔しがるタン。いくらバッサーシ辺境伯の血筋相手とはいえ、婚約者に負けたのは相当に悔しいのである。
「タン様、いい試合でした。もっと楽に勝てるかと思いましたけれど、ここまで苦戦させられたのはひとえにタン様の頑張りがあってこそです」
ものすごく真っすぐな瞳でタンを見つめるサクラ。その顔に思わずドキッとして赤面してしまうタンだった。
それにしても、この決勝戦の戦いは、今までのどの試合と見比べてもレベルが高いものだった。1年生とはいえども実力は確かにあるタンと互角レベルの打ち合いをして、体力で負けたとはいっても知恵で逆転してみせたサクラ。見ていた観客誰もが、その戦いを固唾を飲んで見守っていたのである。それは、勝者の名前を出しても静まり返っていた事からもよく分かる。会場が沸き上がったのはタンの悔しそうな叫び声が響いた後からだった。
「本当にすごい戦いでした。あれを私たちと同い年がしているのだと思うと信じられませんね」
「見てて心臓が止まる思いでしたよ。お姉様、本当に同級生なのですかね」
「モモ、間違いなく同級生よ」
サキもモモも心臓をバクバク言わせっぱなしである。そのくらいに緊張感のある戦いだったのだ。
「うーん、私はさすがにあそこまでは無理かしらね。あと4~50kgは痩せなきゃ」
「お姉様、さすがに危険ですからやめて下さい」
私が来年に向けていけて抱負めいた事を言うと、モモから全力で止められた。私だって参加してたんですけど?
まったく困った子だことね。将来的にはこのままなら王妃か公爵夫人なのだから、自分の身くらい自分で守れた方がいいに決まっている。ただ、体重が100kgに戻ってしまったので、かなり困っている。うどんがダメだったかしらね。さすがは水でも太ると(設定で)言われた私だわ。まあ痩せる努力しなきゃいけないわね。
とりあえず1年目の学園祭の剣術大会は、サクラ・バッサーシの優勝で幕を閉じた。会場からは惜しみない拍手がサクラへと送られている。
この剣術大会はもちろんゲームでも存在していたわ。リズムゲームみたいな感じだったっけかな。どちらが攻撃か防御かはランダムで割り当てられるものの、タイミングよくボタンを押すと攻撃と防御ができて、ジャストタイミングならクリティカルと完全ガードになるってやつだったはず。魔法が使えないイベントだからこんな仕様になったのかも知れない。それ以外の戦闘はちゃんとRPG風のコマンド選択式だったのにね。うん、謎。
試合を見終わった私たちは、控室に移動してサクラと落ち合う。
「サクラ様、優勝おめでとうございますわ」
「ありがとうございます、アンマリア様」
私たちが祝福すると、サクラは笑顔で言葉を返してくれた。
戦いになると脳筋的になるはずだけど、思ったよりもサクラは頭を使って動いていた。あれだけ攻められればずるずると後退しそうなものなのに、中央付近をずっとキープしていた事が証左のひとつだ。もしかしたら、攻められてしゃがみ込んだのも作戦だったのかも知れない。どういう事であれ、ゲームのサクラとはだいぶ印象が違うようだった。
「表彰式も終わりましたし、後は後夜祭を残すだけですね」
「そうですね。皆さんはどうされますか?」
私が言うと、サクラからどうするのか聞かれてしまう。
「やはり、ダンスの行われる講堂に向かおうと思いますわ。殿下もいらっしゃるでしょうし、お相手が居なくてはいけませんわ」
「それでしたら、私もですね」
「わ、私も行きます!」
サクラの質問にはそれぞれこのように答えた。それを聞いてサクラは笑っている。
「ふふふ、そうですね。私もそうしましょうか」
「おい、何の冗談だ。戦った後で踊るとか、本気なのか?」
サクラがそう言っていると、後ろから大きな声が響いてきた。タンの登場である。
「あら、タン様。私は本気ですよ。むしろ、婚約者なのですから、そうなるのではございませんか?」
「うっ、まあ、そうだな……」
サクラに真顔で返されると、タンはしどろもどろになっていた。これはあれだ、完全にほの字だわ。私は心の中でにんまりと笑っておく。
何はともあれ、この学園祭も残すは後夜祭のみである。とはいっても、ほぼダンスパーティーみたいなものなので、みんな講堂に集まる流れとなる。婚約者が居れば一緒に踊るし、居なければ探しにやって来るし、思いは人それぞれなのだ。
ドレスに着替えたサクラを交えて、私たちは揃って講堂へと移動する。
この学園祭2つ目のリズムゲーム。後夜祭ダンスパーティーの始まりですわよ!
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