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第四章 学園編・1年後半
第184話 剣術大会・準決勝
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そして、午後を迎える。
いよいよ剣術大会も準決勝と決勝が行われる。
準決勝の第1試合はフィレン王子対タン、第2試合はサクラが登場する。なんと、四人中三人が今年入ったばかりの新入生である。だが、この結果に不満を言うような人物はいなかった。むしろ順当とも言える結果なのである。
まずはフィレン王子とタンが登場する。私はエスカの誘いを断って、モモとサキを連れて試合の観戦を一般客席から見守っている。
「うう、フィレン殿下、大丈夫かしら……」
サキが不安そうに見守っている。それも無理のない話だろう。相手は騎士団を目指す実力者のタンである。いくら夏合宿で魔物であるギガンテスと戦った経験があるとはいっても、今回は対人戦なのでいろいろと違った緊張があるのだ。なにせあの結界の中では魔法が一切発動できないのだから。
「フィレン殿下とお手合わせ頂けるとは、俺としても光栄ですよ」
「そうだね。将来的には近衛騎士になってくれるだろう君との戦い、私も楽しみにしていたから……」
フィレン王子はこう言いながら自分の持つ模擬剣を構えると、タンをさらに強く睨み付けるような視線を送る。
「実に楽しみだね!」
そして、笑みを浮かべるフィレン王子。まるでその表情は戦闘狂のようである。
「俺も方もな!」
タンもその挑発に乗って構える。
会場の全観客が見守る中、ついに準決勝第1試合であるフィレン王子とタンの戦いが始まる。ぶっちゃけて言ってしまえば、この戦いは剛のタンと柔のフィレン王子という戦いである。だからといって、どのような戦いになるのかのはまったく読めなかった。
開始の合図とともに、意外な事に両者どもが動いた。真っすぐ剣をぶつけに行ったのである。剣がぶつかり合うと、刃を潰した模擬剣とはいえどもいい音が闘技場内に響き渡る。ギリギリと歯を食いしばりながら、両者睨み合っている。
「どうしたのかな、殿下。先程の試合のように剣をいなさないんですかね」
「それをしたところで、タンの攻撃を潰せるとは思いませんよ。あれは不意打ちだから効いたようなものだからね」
「でしたら、どう出るおつもりなんですかね!」
タンは強引に剣を押し上げて、フィレン王子の姿勢を崩す。弾かれて前方が無防備になったフィレン王子だが、そこはさすがというかすぐさま繰り出されたタンの追撃を躱して体勢を立て直していた。
この戦況に会場は大いに盛り上がる。さすがは準決勝まで来た二人だ。簡単には終わらなかった。
「ひゅー、さすがですねえ。殿下がここまでおやりになるとは思いませんでしたよ」
「そう簡単に負けていられないからね。これでもいずれ国を背負わなければならない立場なんだ。リブロには悪いけど、私が王位を継ぐ」
「なるほどね。その覚悟があるから騎士団の訓練に参加されているのですか。さすがは殿下ですな」
そう言いながら、タンは再び構えを取る。
「ですが、近衛騎士を目指すのですから、殿下には勝っておきませんとね!」
タンは再びフィレン王子目がけて突進する。フィレン王子も身構えて迎え撃つ。
「はああっ!」
タンの剣が振り下ろされる。
「ぐっ!」
フィレン王子が防ぐ。
だが、タンの攻撃はこれだけでは終わらなかった。フィレン王子が構える剣に、左右から次々と攻撃を叩き込んでいく。その勢いに、じわじわと押され始めるフィレン王子。いなすなり躱すなりして、この攻撃から逃れたいところだが、タンの攻撃が思った以上に強烈なために、フィレン王子の腕が痺れてしまっていたのだ。これでは思うように剣を振れない。
「殿下、いい試合でしたよ」
「ふっ、そう言ってもらえて嬉しい……かな」
タンが大きく剣を振り抜くと、フィレン王子はそのまま結界の外へと吹き飛ばされてしまった。だが、そこはさすがフィレン王子というか、ちゃんと受け身を取っていたようだった。
「勝者、タン・ミノレバー!」
決着がついた事で、会場からは大きな歓声と拍手が巻き起こったのだった。
「殿下、大丈夫ですか?」
「ちょっと両手が痺れてしまっただけだよ。特に問題はないさ」
そう言いながらフィレン王子は剣を収めると、タンと熱い握手を交わしたのだった。
「さすがですわね、殿下もタン様も」
「ああ、スマホがあれば写真撮ったのに!」
「お姉様、何を仰ってらっしゃるんですか?」
サキが感動して涙する横で、この世界ではよく分からない事を発してしまう私。冷静にモモからツッコミを受けてしまっていた。いけないわね。どうしても前世の癖がまだ抜けないところがあるわ。
だが、会場ではその感動をよそに、準決勝第2試合、サクラの試合が行われようとしていた。
相手は多分上級生なのだが、1年生であるサクラはその上級性がビビるほどのオーラを放っていた。これがバッサーシのちょっとした本気というやつなのだろうか。
結果は一瞬だった。寸止めしたサクラの剣が相手の腹にダメージを与えて、倒れ込んだ相手はそのまま剣を突きつけられていたのだった。一瞬過ぎない?!
そんなわけで、相手はあっさりと降参してしまい、決勝戦のカードはタン・ミノレバー男爵令息対サクラ・バッサーシ辺境伯令嬢という婚約者対決となったのだった。
……これは目が離せないわ。私、わくわくしましてよ!
いよいよ剣術大会も準決勝と決勝が行われる。
準決勝の第1試合はフィレン王子対タン、第2試合はサクラが登場する。なんと、四人中三人が今年入ったばかりの新入生である。だが、この結果に不満を言うような人物はいなかった。むしろ順当とも言える結果なのである。
まずはフィレン王子とタンが登場する。私はエスカの誘いを断って、モモとサキを連れて試合の観戦を一般客席から見守っている。
「うう、フィレン殿下、大丈夫かしら……」
サキが不安そうに見守っている。それも無理のない話だろう。相手は騎士団を目指す実力者のタンである。いくら夏合宿で魔物であるギガンテスと戦った経験があるとはいっても、今回は対人戦なのでいろいろと違った緊張があるのだ。なにせあの結界の中では魔法が一切発動できないのだから。
「フィレン殿下とお手合わせ頂けるとは、俺としても光栄ですよ」
「そうだね。将来的には近衛騎士になってくれるだろう君との戦い、私も楽しみにしていたから……」
フィレン王子はこう言いながら自分の持つ模擬剣を構えると、タンをさらに強く睨み付けるような視線を送る。
「実に楽しみだね!」
そして、笑みを浮かべるフィレン王子。まるでその表情は戦闘狂のようである。
「俺も方もな!」
タンもその挑発に乗って構える。
会場の全観客が見守る中、ついに準決勝第1試合であるフィレン王子とタンの戦いが始まる。ぶっちゃけて言ってしまえば、この戦いは剛のタンと柔のフィレン王子という戦いである。だからといって、どのような戦いになるのかのはまったく読めなかった。
開始の合図とともに、意外な事に両者どもが動いた。真っすぐ剣をぶつけに行ったのである。剣がぶつかり合うと、刃を潰した模擬剣とはいえどもいい音が闘技場内に響き渡る。ギリギリと歯を食いしばりながら、両者睨み合っている。
「どうしたのかな、殿下。先程の試合のように剣をいなさないんですかね」
「それをしたところで、タンの攻撃を潰せるとは思いませんよ。あれは不意打ちだから効いたようなものだからね」
「でしたら、どう出るおつもりなんですかね!」
タンは強引に剣を押し上げて、フィレン王子の姿勢を崩す。弾かれて前方が無防備になったフィレン王子だが、そこはさすがというかすぐさま繰り出されたタンの追撃を躱して体勢を立て直していた。
この戦況に会場は大いに盛り上がる。さすがは準決勝まで来た二人だ。簡単には終わらなかった。
「ひゅー、さすがですねえ。殿下がここまでおやりになるとは思いませんでしたよ」
「そう簡単に負けていられないからね。これでもいずれ国を背負わなければならない立場なんだ。リブロには悪いけど、私が王位を継ぐ」
「なるほどね。その覚悟があるから騎士団の訓練に参加されているのですか。さすがは殿下ですな」
そう言いながら、タンは再び構えを取る。
「ですが、近衛騎士を目指すのですから、殿下には勝っておきませんとね!」
タンは再びフィレン王子目がけて突進する。フィレン王子も身構えて迎え撃つ。
「はああっ!」
タンの剣が振り下ろされる。
「ぐっ!」
フィレン王子が防ぐ。
だが、タンの攻撃はこれだけでは終わらなかった。フィレン王子が構える剣に、左右から次々と攻撃を叩き込んでいく。その勢いに、じわじわと押され始めるフィレン王子。いなすなり躱すなりして、この攻撃から逃れたいところだが、タンの攻撃が思った以上に強烈なために、フィレン王子の腕が痺れてしまっていたのだ。これでは思うように剣を振れない。
「殿下、いい試合でしたよ」
「ふっ、そう言ってもらえて嬉しい……かな」
タンが大きく剣を振り抜くと、フィレン王子はそのまま結界の外へと吹き飛ばされてしまった。だが、そこはさすがフィレン王子というか、ちゃんと受け身を取っていたようだった。
「勝者、タン・ミノレバー!」
決着がついた事で、会場からは大きな歓声と拍手が巻き起こったのだった。
「殿下、大丈夫ですか?」
「ちょっと両手が痺れてしまっただけだよ。特に問題はないさ」
そう言いながらフィレン王子は剣を収めると、タンと熱い握手を交わしたのだった。
「さすがですわね、殿下もタン様も」
「ああ、スマホがあれば写真撮ったのに!」
「お姉様、何を仰ってらっしゃるんですか?」
サキが感動して涙する横で、この世界ではよく分からない事を発してしまう私。冷静にモモからツッコミを受けてしまっていた。いけないわね。どうしても前世の癖がまだ抜けないところがあるわ。
だが、会場ではその感動をよそに、準決勝第2試合、サクラの試合が行われようとしていた。
相手は多分上級生なのだが、1年生であるサクラはその上級性がビビるほどのオーラを放っていた。これがバッサーシのちょっとした本気というやつなのだろうか。
結果は一瞬だった。寸止めしたサクラの剣が相手の腹にダメージを与えて、倒れ込んだ相手はそのまま剣を突きつけられていたのだった。一瞬過ぎない?!
そんなわけで、相手はあっさりと降参してしまい、決勝戦のカードはタン・ミノレバー男爵令息対サクラ・バッサーシ辺境伯令嬢という婚約者対決となったのだった。
……これは目が離せないわ。私、わくわくしましてよ!
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