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第四章 学園編・1年後半
第174話 2回戦、張り切って行こーっ!
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「さあ、今日も張り切っていくわよ」
目が覚めてベッドから起き上がった私は、気合いを十分に入れておいた。何と言っても今日は剣術大会2回戦と3回戦が行われる。フィレン王子には勝てなくても、剣は交えてみたいというのが私の願望である。
今日のモモは母親を伴って、昨日同様にボンジール商会のお手伝いとなっている。
ここでふと思ったのが、ラムたちは一体どうしているのかという事だった。ラムはモモとサキも巻き込んで何かをするつもりだったはずなのだけど、まったく姿を見ていないのだ。
「モモ、ラム様やサキ様の事、何か聞いているかしら」
朝の馬車の中でモモに確認を取る私。だけども、モモは内緒だと言って何も教えてくれなかった。まあまあ、だいぶ生意気に育ってくれましたわね。とはいえども、そこは姉としての貫禄で怒らずに流しておいた。なにせボンジール商会からの誘いを断った時点で一切関与していないのだから。それこそ剣術大会のない3日目と4日目で驚かせてもらおうじゃないかしらね。私はそういう構えでいる事にした。
学園に着いたところで、私は母親やモモ、それとスーラたち侍女たちとも別れて、一人で武術型の講義棟へと向かう。学園内はまだ早い時間とあって、それほどの人の混雑は見られなかった。
道行く中で、すれ違う学生たちから視線を送られる私。その目はどことなく私を怖がっていたように見えた。
(多分、昨日の試合のせいよね。アーサリーを簡単にのしちゃったものだから、それで怖がられてるんだわ)
そういう風に理解した私は、堂々と大手を振って武術型の講義棟へと歩いていったのだった。
講義棟へやって来た私は、今日もミスミ教官の部屋を訪れる。すると、そこにはサクラもやって来ていたようだった。
「これはミスミ教官、サクラ様、おはようございます」
ぺこりとお辞儀をする私。
「うむ、おはよう、アンマリア」
「おはようございます、アンマリア様」
それに対して、ミスミ教官とサクラが挨拶を返してくる。
「それにしても、アンマリア。アーサリー殿下に勝ってしまうとは、正直驚いたぞ」
「それは、アーサリー殿下の思考が単純だったからですよ」
「はははっ、はっきりと言ってくれるな」
アーサリーの事を言ってきたので私がすっぱり答えると、ミスミ教官はものすごく大声で笑っていた。
「まあ、サクラは午後の3回戦まで試合がないが、アンマリアは午前にあるから早く準備しなさい。勝ったところで、次はフィレン殿下だからな。さすがのアンマリアもそこまでだろう。秘策とかはあるかい?」
笑い終えたミスミ教官は、私にフィレン王子の対策を尋ねてきた。
「小細工が通じるとは思いませんので、全力で当たるだけですわ」
「……そうか。ならば、次の2回戦は突破してくれ」
「そのつもりですわよ」
私はミスミ教官に強気に答えると、サクラも一緒に見送る中、一人で闘技場へと向かったのだった。
闘技場にある女性用の更衣室でパンツスタイルに着替えた私は、静かに出番を待つ。なにせ2回戦最初の試合が私の試合だ。地味にちょっと緊張している。
「アンマリア・ファッティ、時間です」
対して休む事もできずに、私の試合の時間がやって来た。こうなったらやってやるわよ。
私の2回戦の相手は、マーク・サンチュール伯爵令息だ。タンのミノレバー男爵家と同じように、代々騎士を輩出してきた名門貴族である。
「フィレン殿下の婚約者だからといっても、手加減はしないぞ。昨日のように勝てると思うな?」
「望むところですわよ」
思いっきり宣戦布告をしてきたので、私もそれに応えるべきだろう。
「始め!」
さて、今回は私から動いてあげましょうか。子豚だからといって、走れないなんて思わないでよね。
ドスンドスンという音を立てて私が走り出すと、予想外だったのか、マークの動きが悪い。ここでは身体強化とか使えないから、私の実際の筋力と体力でこの動きをしている。だから、驚いているのだろう。それこそ先入観、思い込みですわね。
私が剣を持ち上げずに引きずるようにしていたのも、相手の油断を誘うための作戦。剣術大会に出てきた時点でそんなわけがないでしょうが。ご令嬢の戯れだと思っていたのなら、この一撃で粉砕して差し上げますわ!
「はあっ!」
私は剣を振り上げて、上からマークへと剣で斬り掛かる。だけども、マークはその攻撃を躱していた。さすがは騎士を目指す貴族令息だわね。
地面に当たった剣は地面を軽く抉り取った。刃を潰した模擬剣とはいえ、これにはマークも顔色が青ざめた。そう、彼は見てしまったのだ。目の前の子豚令嬢は、ただの太った令嬢ではないというところを。
「あっぶねえ……。なんて重い一撃なんだ。見た目と違って機敏だし、こいつは普通に戦わないと勝てないな」
「そう、本気になって下さいますねの」
「そりゃな。次の対戦相手はなんと言ってもフィレン殿下だ。僕だって殿下の胸を借りてみたいからな」
「だったら、まずは婚約者たる私を倒しませんとね」
お互いに睨み合う私とマーク。じりじりとお互い様子を見合っている。
「フィレン殿下と戦うのは……」
「この僕だ!」
「私ですわ!」
意を決したのか、お互いが一気に踏み込んで剣を振りかざす。意地と意地のぶつかり合い。勝ったのはどっちだ?!
目が覚めてベッドから起き上がった私は、気合いを十分に入れておいた。何と言っても今日は剣術大会2回戦と3回戦が行われる。フィレン王子には勝てなくても、剣は交えてみたいというのが私の願望である。
今日のモモは母親を伴って、昨日同様にボンジール商会のお手伝いとなっている。
ここでふと思ったのが、ラムたちは一体どうしているのかという事だった。ラムはモモとサキも巻き込んで何かをするつもりだったはずなのだけど、まったく姿を見ていないのだ。
「モモ、ラム様やサキ様の事、何か聞いているかしら」
朝の馬車の中でモモに確認を取る私。だけども、モモは内緒だと言って何も教えてくれなかった。まあまあ、だいぶ生意気に育ってくれましたわね。とはいえども、そこは姉としての貫禄で怒らずに流しておいた。なにせボンジール商会からの誘いを断った時点で一切関与していないのだから。それこそ剣術大会のない3日目と4日目で驚かせてもらおうじゃないかしらね。私はそういう構えでいる事にした。
学園に着いたところで、私は母親やモモ、それとスーラたち侍女たちとも別れて、一人で武術型の講義棟へと向かう。学園内はまだ早い時間とあって、それほどの人の混雑は見られなかった。
道行く中で、すれ違う学生たちから視線を送られる私。その目はどことなく私を怖がっていたように見えた。
(多分、昨日の試合のせいよね。アーサリーを簡単にのしちゃったものだから、それで怖がられてるんだわ)
そういう風に理解した私は、堂々と大手を振って武術型の講義棟へと歩いていったのだった。
講義棟へやって来た私は、今日もミスミ教官の部屋を訪れる。すると、そこにはサクラもやって来ていたようだった。
「これはミスミ教官、サクラ様、おはようございます」
ぺこりとお辞儀をする私。
「うむ、おはよう、アンマリア」
「おはようございます、アンマリア様」
それに対して、ミスミ教官とサクラが挨拶を返してくる。
「それにしても、アンマリア。アーサリー殿下に勝ってしまうとは、正直驚いたぞ」
「それは、アーサリー殿下の思考が単純だったからですよ」
「はははっ、はっきりと言ってくれるな」
アーサリーの事を言ってきたので私がすっぱり答えると、ミスミ教官はものすごく大声で笑っていた。
「まあ、サクラは午後の3回戦まで試合がないが、アンマリアは午前にあるから早く準備しなさい。勝ったところで、次はフィレン殿下だからな。さすがのアンマリアもそこまでだろう。秘策とかはあるかい?」
笑い終えたミスミ教官は、私にフィレン王子の対策を尋ねてきた。
「小細工が通じるとは思いませんので、全力で当たるだけですわ」
「……そうか。ならば、次の2回戦は突破してくれ」
「そのつもりですわよ」
私はミスミ教官に強気に答えると、サクラも一緒に見送る中、一人で闘技場へと向かったのだった。
闘技場にある女性用の更衣室でパンツスタイルに着替えた私は、静かに出番を待つ。なにせ2回戦最初の試合が私の試合だ。地味にちょっと緊張している。
「アンマリア・ファッティ、時間です」
対して休む事もできずに、私の試合の時間がやって来た。こうなったらやってやるわよ。
私の2回戦の相手は、マーク・サンチュール伯爵令息だ。タンのミノレバー男爵家と同じように、代々騎士を輩出してきた名門貴族である。
「フィレン殿下の婚約者だからといっても、手加減はしないぞ。昨日のように勝てると思うな?」
「望むところですわよ」
思いっきり宣戦布告をしてきたので、私もそれに応えるべきだろう。
「始め!」
さて、今回は私から動いてあげましょうか。子豚だからといって、走れないなんて思わないでよね。
ドスンドスンという音を立てて私が走り出すと、予想外だったのか、マークの動きが悪い。ここでは身体強化とか使えないから、私の実際の筋力と体力でこの動きをしている。だから、驚いているのだろう。それこそ先入観、思い込みですわね。
私が剣を持ち上げずに引きずるようにしていたのも、相手の油断を誘うための作戦。剣術大会に出てきた時点でそんなわけがないでしょうが。ご令嬢の戯れだと思っていたのなら、この一撃で粉砕して差し上げますわ!
「はあっ!」
私は剣を振り上げて、上からマークへと剣で斬り掛かる。だけども、マークはその攻撃を躱していた。さすがは騎士を目指す貴族令息だわね。
地面に当たった剣は地面を軽く抉り取った。刃を潰した模擬剣とはいえ、これにはマークも顔色が青ざめた。そう、彼は見てしまったのだ。目の前の子豚令嬢は、ただの太った令嬢ではないというところを。
「あっぶねえ……。なんて重い一撃なんだ。見た目と違って機敏だし、こいつは普通に戦わないと勝てないな」
「そう、本気になって下さいますねの」
「そりゃな。次の対戦相手はなんと言ってもフィレン殿下だ。僕だって殿下の胸を借りてみたいからな」
「だったら、まずは婚約者たる私を倒しませんとね」
お互いに睨み合う私とマーク。じりじりとお互い様子を見合っている。
「フィレン殿下と戦うのは……」
「この僕だ!」
「私ですわ!」
意を決したのか、お互いが一気に踏み込んで剣を振りかざす。意地と意地のぶつかり合い。勝ったのはどっちだ?!
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