伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊

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第四章 学園編・1年後半

第173話 学園祭初日を終えた我が家

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 あっという間に初日を終えてしまう学園祭。剣術大会に出たせいか、余計の事早かった気がするわ。とりあえず明日は2回戦8試合と3回戦8試合が行われる。だが、学園祭の日程は6日間だ。3日目4日目は試合がなく、5日目に決勝まで一気に消化してしまい、その日のうちに表彰式と後夜祭が行われ、6日目は後片付け。片付けが終わるまでお祭りですか?! 何とも不思議な感覚よね。
 でも、実はこの片付けというのも重要で、貴族社会ならではのものと言える。片付けの最中にもいろいろな人が集まっているので、そこで商談だったり縁談だったり、何かと話が行われるわけなのだった。まあ、学生の年齢ってば13~15歳だものね。婚約が決まっていない学生たちにとってはいいチャンスというわけなのである。そういう事を聞いた私は、なるほどと思ったのだった。
 まあそれはともかくとして、初日を終えて家に戻った私は、ひと風呂浴びてくつろいでいた。
 ようやく100kgを切った私の体は、まだまだ子豚さんである。お世辞にも動きが機敏とは言えない状態だけれども、アーサリー相手にあれだけ動けたのである。できればこのまま決勝まで行ってサクラと戦いたいと思った。だけども、それには大問題があった。
「よりにもよって、私の方にはフィレン殿下もタン様もいらっしゃるのよね。その二人に勝たないと、決勝までは進めない。無理ゲーすぎるわ……」
 椅子に寄り掛かって天井を見上げる私である。何と言っても二人とも剣の腕前が凄いのだ。騎士団の若手とは互角にやり合うというし、子豚令嬢の私ではとても相手になりそうではないのである。
 しばらく自室で悶々としていた私だったけれど、スーラが食事だと呼びに来たので、私は部屋を出て食堂に向かった。
 その後の夕食では、今日の私の剣術大会の事と、ボンジール商会の話で盛り上がっていた。
「お姉様の試合、見たかったですぅっ!!」
 モモが喚いている。ずっとボンジール商会のお手伝いをしていたせいで、剣術大会の事を完全に失念していたらしいのだ。
「ふふん、私は見ていたぞ」
 ドヤ顔を決める父親。どうやらあの席のどこかに居たらしい。それどころじゃなかったから気付かなかったわ。
「いや、アーサリー殿下もそんなに悪いわけじゃないんだが、うちのマリーが相手だったのは運の尽きだね。エスカ王女殿下の言われていた通りだよ」
 父親が自慢げに吹いている。ちなみに話題に出たエスカは、今はお城の方で泊まっている。王族だから城に泊まりなさいと説得されたらしいのだ。同じ転生者である私と話がしたかったのだろうけど、まあ、来年の留学に向けての話もあるし、こればかりは仕方がなかった。それにしても、エスカの奴は一体父親にどんな風に語ったのだろうか。ちょっと気になってしまった。
「まあ、私の試合の事はいいじゃないですか。明日は2回ありますから、次も勝てばどちらか見れる可能性がありますわよ。次勝つ事ができれば、私はフィレン殿下と当たります」
 父親の話はとりあえずスルーしておき、私はモモにそう言っておいた。次勝つ事ができれば、確実にフィレン王子と当たる。それというのも、フィレン王子は2回戦はシードになっているからだ。ちなみにサクラもシードになっている。タンがシードになっていないのは謎だけれども、フィレンは忖度でサクラは実力的に間違いないという事なのだろう。大番狂わせが起きていたら、相手がその恩恵を受けていた。ちなみに残り2つのシードは上級生で、昨年もベスト4に残った実力者である。こういった事情で2回戦は12試合ではなく8試合なのだ。
「フィレン殿下と戦うのですか? お姉様、婚約者とそんな事ができますか?」
「いや、試合なんですし仕方ないと思いますわよ。むしろ私は燃えてきますわ」
 心配そうに私の気持ちを聞いてくるモモだったが、はっきりと言い切ってしまう私である。婚約者だからこそ、手加減なしだと。
 その私の言葉を聞いて、どういうわけか父親は顔を青ざめさせていた。はてさて、どっちの意味で青ざめているのやら。私はあえて聞かない事にした。だって、どう転んだってやめとけっていうのが目に浮かぶんだもの。ただでさえ私が剣術大会に参加すると言ったら、顔を真っ青にして反対してきたんだもの。それを必死に説得して出たんだから、どこまでやれるか試してみたいじゃないのよ。だったら聞くような野暮な事はしないのが吉というものよ。
「とりあえず、お父様がどう思われようとも、私はやれるところまでやるつもりですから。お父様は黙って見ていて下さいませ」
 私はそう言い切っておいた。
「それよりも、モモの手伝っていたボンジール商会の話でも聞いてみて下さいませ。かなり盛り上がっていたようですから、いいお話が聞けると思います」
 私は強引に話を打ち切って、モモの方へと話をぶん投げた。さすがにモモはちょっと戸惑っていたようだ。
「モモ、ボンジール商会はどうだったんだい?」
 父親が聞くと、母親も同じように興味津々の表情を向けていた。
「あの、えと、その……。わ、私が製作を担当した懐炉が結構売れていました」
「ほう、懐炉とは何かな?」
「はい、服の中に入れてその中を暖かくするという魔道具です。燃えたり火傷したりしないようにするのが大変でした」
 父親の言葉に、モモは一生懸命応えていた。
「ふむ、冬は寒いからどうにも苦手だが、そういうのがあれば動きやすそうだな。そのものはあるかな?」
「は、はい。こちらに」
 そう言ってモモは、自分の持っていた懐炉を父親に差し出した。見たところ小さな板に魔石がちょこんとくっ付いたもののようである。
「その魔石に魔力を通すと熱を発生させて、もう一度通すと熱の発生を止められます。熱を発生させたものを服に入れて使うのですが、魔石の魔力が尽きるまでは何度でも使う事ができます」
 モモが練習したのか、ちょっとつまりながらも見事に説明を終えていた。
「ふむ、これはなかなかによさそうだね」
 試しに使ってみた父親はそんな事を言っていた。それを聞いたモモは安心したような顔をしていた。
「ふふっ、それは私も使ってみたいですね」
 母親もこんな事を言っているので、なかなかに好評なようだ。
 とまあ、こんな感じに家族で団らんは、なかなか和やかなうちに終わる事ができたのだった。
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