173 / 500
第四章 学園編・1年後半
第173話 学園祭初日を終えた我が家
しおりを挟む
あっという間に初日を終えてしまう学園祭。剣術大会に出たせいか、余計の事早かった気がするわ。とりあえず明日は2回戦8試合と3回戦8試合が行われる。だが、学園祭の日程は6日間だ。3日目4日目は試合がなく、5日目に決勝まで一気に消化してしまい、その日のうちに表彰式と後夜祭が行われ、6日目は後片付け。片付けが終わるまでお祭りですか?! 何とも不思議な感覚よね。
でも、実はこの片付けというのも重要で、貴族社会ならではのものと言える。片付けの最中にもいろいろな人が集まっているので、そこで商談だったり縁談だったり、何かと話が行われるわけなのだった。まあ、学生の年齢ってば13~15歳だものね。婚約が決まっていない学生たちにとってはいいチャンスというわけなのである。そういう事を聞いた私は、なるほどと思ったのだった。
まあそれはともかくとして、初日を終えて家に戻った私は、ひと風呂浴びてくつろいでいた。
ようやく100kgを切った私の体は、まだまだ子豚さんである。お世辞にも動きが機敏とは言えない状態だけれども、アーサリー相手にあれだけ動けたのである。できればこのまま決勝まで行ってサクラと戦いたいと思った。だけども、それには大問題があった。
「よりにもよって、私の方にはフィレン殿下もタン様もいらっしゃるのよね。その二人に勝たないと、決勝までは進めない。無理ゲーすぎるわ……」
椅子に寄り掛かって天井を見上げる私である。何と言っても二人とも剣の腕前が凄いのだ。騎士団の若手とは互角にやり合うというし、子豚令嬢の私ではとても相手になりそうではないのである。
しばらく自室で悶々としていた私だったけれど、スーラが食事だと呼びに来たので、私は部屋を出て食堂に向かった。
その後の夕食では、今日の私の剣術大会の事と、ボンジール商会の話で盛り上がっていた。
「お姉様の試合、見たかったですぅっ!!」
モモが喚いている。ずっとボンジール商会のお手伝いをしていたせいで、剣術大会の事を完全に失念していたらしいのだ。
「ふふん、私は見ていたぞ」
ドヤ顔を決める父親。どうやらあの席のどこかに居たらしい。それどころじゃなかったから気付かなかったわ。
「いや、アーサリー殿下もそんなに悪いわけじゃないんだが、うちのマリーが相手だったのは運の尽きだね。エスカ王女殿下の言われていた通りだよ」
父親が自慢げに吹いている。ちなみに話題に出たエスカは、今はお城の方で泊まっている。王族だから城に泊まりなさいと説得されたらしいのだ。同じ転生者である私と話がしたかったのだろうけど、まあ、来年の留学に向けての話もあるし、こればかりは仕方がなかった。それにしても、エスカの奴は一体父親にどんな風に語ったのだろうか。ちょっと気になってしまった。
「まあ、私の試合の事はいいじゃないですか。明日は2回ありますから、次も勝てばどちらか見れる可能性がありますわよ。次勝つ事ができれば、私はフィレン殿下と当たります」
父親の話はとりあえずスルーしておき、私はモモにそう言っておいた。次勝つ事ができれば、確実にフィレン王子と当たる。それというのも、フィレン王子は2回戦はシードになっているからだ。ちなみにサクラもシードになっている。タンがシードになっていないのは謎だけれども、フィレンは忖度でサクラは実力的に間違いないという事なのだろう。大番狂わせが起きていたら、相手がその恩恵を受けていた。ちなみに残り2つのシードは上級生で、昨年もベスト4に残った実力者である。こういった事情で2回戦は12試合ではなく8試合なのだ。
「フィレン殿下と戦うのですか? お姉様、婚約者とそんな事ができますか?」
「いや、試合なんですし仕方ないと思いますわよ。むしろ私は燃えてきますわ」
心配そうに私の気持ちを聞いてくるモモだったが、はっきりと言い切ってしまう私である。婚約者だからこそ、手加減なしだと。
その私の言葉を聞いて、どういうわけか父親は顔を青ざめさせていた。はてさて、どっちの意味で青ざめているのやら。私はあえて聞かない事にした。だって、どう転んだってやめとけっていうのが目に浮かぶんだもの。ただでさえ私が剣術大会に参加すると言ったら、顔を真っ青にして反対してきたんだもの。それを必死に説得して出たんだから、どこまでやれるか試してみたいじゃないのよ。だったら聞くような野暮な事はしないのが吉というものよ。
「とりあえず、お父様がどう思われようとも、私はやれるところまでやるつもりですから。お父様は黙って見ていて下さいませ」
私はそう言い切っておいた。
「それよりも、モモの手伝っていたボンジール商会の話でも聞いてみて下さいませ。かなり盛り上がっていたようですから、いいお話が聞けると思います」
私は強引に話を打ち切って、モモの方へと話をぶん投げた。さすがにモモはちょっと戸惑っていたようだ。
「モモ、ボンジール商会はどうだったんだい?」
父親が聞くと、母親も同じように興味津々の表情を向けていた。
「あの、えと、その……。わ、私が製作を担当した懐炉が結構売れていました」
「ほう、懐炉とは何かな?」
「はい、服の中に入れてその中を暖かくするという魔道具です。燃えたり火傷したりしないようにするのが大変でした」
父親の言葉に、モモは一生懸命応えていた。
「ふむ、冬は寒いからどうにも苦手だが、そういうのがあれば動きやすそうだな。そのものはあるかな?」
「は、はい。こちらに」
そう言ってモモは、自分の持っていた懐炉を父親に差し出した。見たところ小さな板に魔石がちょこんとくっ付いたもののようである。
「その魔石に魔力を通すと熱を発生させて、もう一度通すと熱の発生を止められます。熱を発生させたものを服に入れて使うのですが、魔石の魔力が尽きるまでは何度でも使う事ができます」
モモが練習したのか、ちょっとつまりながらも見事に説明を終えていた。
「ふむ、これはなかなかによさそうだね」
試しに使ってみた父親はそんな事を言っていた。それを聞いたモモは安心したような顔をしていた。
「ふふっ、それは私も使ってみたいですね」
母親もこんな事を言っているので、なかなかに好評なようだ。
とまあ、こんな感じに家族で団らんは、なかなか和やかなうちに終わる事ができたのだった。
でも、実はこの片付けというのも重要で、貴族社会ならではのものと言える。片付けの最中にもいろいろな人が集まっているので、そこで商談だったり縁談だったり、何かと話が行われるわけなのだった。まあ、学生の年齢ってば13~15歳だものね。婚約が決まっていない学生たちにとってはいいチャンスというわけなのである。そういう事を聞いた私は、なるほどと思ったのだった。
まあそれはともかくとして、初日を終えて家に戻った私は、ひと風呂浴びてくつろいでいた。
ようやく100kgを切った私の体は、まだまだ子豚さんである。お世辞にも動きが機敏とは言えない状態だけれども、アーサリー相手にあれだけ動けたのである。できればこのまま決勝まで行ってサクラと戦いたいと思った。だけども、それには大問題があった。
「よりにもよって、私の方にはフィレン殿下もタン様もいらっしゃるのよね。その二人に勝たないと、決勝までは進めない。無理ゲーすぎるわ……」
椅子に寄り掛かって天井を見上げる私である。何と言っても二人とも剣の腕前が凄いのだ。騎士団の若手とは互角にやり合うというし、子豚令嬢の私ではとても相手になりそうではないのである。
しばらく自室で悶々としていた私だったけれど、スーラが食事だと呼びに来たので、私は部屋を出て食堂に向かった。
その後の夕食では、今日の私の剣術大会の事と、ボンジール商会の話で盛り上がっていた。
「お姉様の試合、見たかったですぅっ!!」
モモが喚いている。ずっとボンジール商会のお手伝いをしていたせいで、剣術大会の事を完全に失念していたらしいのだ。
「ふふん、私は見ていたぞ」
ドヤ顔を決める父親。どうやらあの席のどこかに居たらしい。それどころじゃなかったから気付かなかったわ。
「いや、アーサリー殿下もそんなに悪いわけじゃないんだが、うちのマリーが相手だったのは運の尽きだね。エスカ王女殿下の言われていた通りだよ」
父親が自慢げに吹いている。ちなみに話題に出たエスカは、今はお城の方で泊まっている。王族だから城に泊まりなさいと説得されたらしいのだ。同じ転生者である私と話がしたかったのだろうけど、まあ、来年の留学に向けての話もあるし、こればかりは仕方がなかった。それにしても、エスカの奴は一体父親にどんな風に語ったのだろうか。ちょっと気になってしまった。
「まあ、私の試合の事はいいじゃないですか。明日は2回ありますから、次も勝てばどちらか見れる可能性がありますわよ。次勝つ事ができれば、私はフィレン殿下と当たります」
父親の話はとりあえずスルーしておき、私はモモにそう言っておいた。次勝つ事ができれば、確実にフィレン王子と当たる。それというのも、フィレン王子は2回戦はシードになっているからだ。ちなみにサクラもシードになっている。タンがシードになっていないのは謎だけれども、フィレンは忖度でサクラは実力的に間違いないという事なのだろう。大番狂わせが起きていたら、相手がその恩恵を受けていた。ちなみに残り2つのシードは上級生で、昨年もベスト4に残った実力者である。こういった事情で2回戦は12試合ではなく8試合なのだ。
「フィレン殿下と戦うのですか? お姉様、婚約者とそんな事ができますか?」
「いや、試合なんですし仕方ないと思いますわよ。むしろ私は燃えてきますわ」
心配そうに私の気持ちを聞いてくるモモだったが、はっきりと言い切ってしまう私である。婚約者だからこそ、手加減なしだと。
その私の言葉を聞いて、どういうわけか父親は顔を青ざめさせていた。はてさて、どっちの意味で青ざめているのやら。私はあえて聞かない事にした。だって、どう転んだってやめとけっていうのが目に浮かぶんだもの。ただでさえ私が剣術大会に参加すると言ったら、顔を真っ青にして反対してきたんだもの。それを必死に説得して出たんだから、どこまでやれるか試してみたいじゃないのよ。だったら聞くような野暮な事はしないのが吉というものよ。
「とりあえず、お父様がどう思われようとも、私はやれるところまでやるつもりですから。お父様は黙って見ていて下さいませ」
私はそう言い切っておいた。
「それよりも、モモの手伝っていたボンジール商会の話でも聞いてみて下さいませ。かなり盛り上がっていたようですから、いいお話が聞けると思います」
私は強引に話を打ち切って、モモの方へと話をぶん投げた。さすがにモモはちょっと戸惑っていたようだ。
「モモ、ボンジール商会はどうだったんだい?」
父親が聞くと、母親も同じように興味津々の表情を向けていた。
「あの、えと、その……。わ、私が製作を担当した懐炉が結構売れていました」
「ほう、懐炉とは何かな?」
「はい、服の中に入れてその中を暖かくするという魔道具です。燃えたり火傷したりしないようにするのが大変でした」
父親の言葉に、モモは一生懸命応えていた。
「ふむ、冬は寒いからどうにも苦手だが、そういうのがあれば動きやすそうだな。そのものはあるかな?」
「は、はい。こちらに」
そう言ってモモは、自分の持っていた懐炉を父親に差し出した。見たところ小さな板に魔石がちょこんとくっ付いたもののようである。
「その魔石に魔力を通すと熱を発生させて、もう一度通すと熱の発生を止められます。熱を発生させたものを服に入れて使うのですが、魔石の魔力が尽きるまでは何度でも使う事ができます」
モモが練習したのか、ちょっとつまりながらも見事に説明を終えていた。
「ふむ、これはなかなかによさそうだね」
試しに使ってみた父親はそんな事を言っていた。それを聞いたモモは安心したような顔をしていた。
「ふふっ、それは私も使ってみたいですね」
母親もこんな事を言っているので、なかなかに好評なようだ。
とまあ、こんな感じに家族で団らんは、なかなか和やかなうちに終わる事ができたのだった。
17
お気に入りに追加
258
あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!
鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……!
前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。
正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。
そして、気づけば違う世界に転生!
けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ!
私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……?
前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー!
※第15回恋愛大賞にエントリーしてます!
開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!!

婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います
ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」
公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。
本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか?
義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。
不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます!
この作品は小説家になろうでも掲載しています

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

貴方がLv1から2に上がるまでに必要な経験値は【6億4873万5213】だと宣言されたけどレベル1の状態でも実は最強な村娘!!
ルシェ(Twitter名はカイトGT)
ファンタジー
この世界の勇者達に道案内をして欲しいと言われ素直に従う村娘のケロナ。
その道中で【戦闘レベル】なる物の存在を知った彼女は教会でレベルアップに必要な経験値量を言われて唖然とする。
ケロナがたった1レベル上昇する為に必要な経験値は...なんと億越えだったのだ!!。
それを勇者パーティの面々に鼻で笑われてしまうケロナだったが彼女はめげない!!。
そもそも今の彼女は村娘で戦う必要がないから安心だよね?。
※1話1話が物凄く短く500文字から1000文字程度で書かせていただくつもりです。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる