伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊

文字の大きさ
上 下
158 / 500
第四章 学園編・1年後半

第158話 仲良しは集まるものよ

しおりを挟む
 お昼休み、私はモモたち魔法型のライバル令嬢たちと合流して一緒に食事を食べている。ビュッフェスタイルの食堂を使うのもなかなかいいものだ。
 私はモモと話をしながら、お皿に料理を取って席へと移動していく。この食事の席には、武術型であるサクラを除くライバル令嬢が勢ぞろいしているのである。私の隣にはモモが座っているのだけれど、正直言って狭くないだろうか。どうしても心配になってしまうのである。うん、早く痩せたいわね。
「あら、アンマリア様って思ったより小食でらっしゃいますのね」
 そういうのはラムである。私はそういうラムのお皿を見る。思ったよりも結構食べているのが意外だった。それだというのに、ラムの体はすっかりほっそりとしている。この子、ゲームの中だと常に90kgくらいの巨体だったんですけどね?!
 それに比べて私は、ようやく100kgまで体重を落としたぶよんぶよんの体である。それもこれも、すべては子どもの頃に授かった恩恵のせいである。家族などが幸せになれるのはいいのだけれど、それが体の脂肪として蓄えられたのが問題なのである。そのせいで、水だけでも太るという異常事態に陥ってたんだから、本当に悩ましい生活を送ってきたものよ。いくらサクラから教えられた鍛錬法があるとはいっても羨ましい限りね!
「アンマリア様? ずいぶんと睨まれてますわね。わたくしに何かついていますでしょうか」
 私の視線が集中していたせいか、ラムが気になってしまったようだった。
「いえ、ラム様が痩せられていて羨ましいなと、私ってばこんな体形じゃないですか。ですから、どうしても気になってしまうのですよ」
「ふふっ、そうですのね。確かに私も昔は太ってましたからね」
 精一杯の私の本音を、ラムは怒る事なく笑顔で聞き入れてくれた。そのせいか余計にどうしても羨ましくなってしまうのである。乙女心ってそんなものじゃありません?
「大丈夫ですよ。お姉様は太られていても素晴らしいお姉様です」
 それを聞いたモモがフォローを入れてくれる。でもね、今の私にはちょっと響かないのよね。100kgというのは例の断罪ルートの発生条件だからね。
「そうです。アンマリア様は私の魔法の先生ですもの。十分憧れの対象だと思います」
 サキもフォローをしてくれるので、私は心の中で泣いた。嬉しさ半分悲しさ半分である。
「でも、お姉様。もう少し食べられた方がいいかと思います。家でも食事は少なめにされていますし、私は体調が気になってしまいますよ」
 モモが改めて心配してくれる。本当にいい妹になってくれたわね、モモ。
 はあ、これだけ言われちゃうと、あんまりふて腐れてもいられないわね。私は気持ちを切り替える事にしたのだった。
「アンマリア様。やっぱり筋トレにご興味がおありなのですね」
 私たちが食事をしながら談笑していると、残りライバル令嬢の一人が颯爽と現れたのだ。
「これはサクラ様。ええ、使用人たちの負担を考えますと、やはり痩せている方がよろしいと思いますので」
「素晴らしいお心遣いですね。ではやはり、ラム様にもお教えしましたバッサーシ流筋肉トレーニングがおすすめですよ」
 私が作り笑いをしながら答えると、サクラはものすごく目を輝かせながら私に詰め寄り、さりげなく隣の席に座った。私と正面のラムとの間に挟まるような形である。
「バッサーシ流筋肉トレーニング……。ものすごく、興味があります」
 これに反応したのがなぜかモモである。
(やめて、あなたまで筋肉もりもりにならないで。頼むから可愛い妹でいてちょうだい!)
 私は平静を装いながら、心の中で思いっきり叫んだ。あのトレーニングをした者がどうなるか。その答えラムは目の前に居るのだから。
「あははは、いいですよ。魔法を使うとはいっても、やはり健康的な肉体があってこそです。鍛えれば、きっと今より素晴らしい魔法使いになれますよ」
 サクラがまるで商品を売り込む営業のようにぐいぐいとモモにトークをしている。その勢いに、モモはうーんと唸り始めてしまった。これは完全に受け入れてしまいそうだ。
 ……となれば私にできる事はひとつ。
 話題を変える事だった。
 この手の乙女ゲームとなると、秋の時期になると学園でイベントが発生するのだ。この『アンマリアの恋愛ダイエット大作戦』にも、やっぱりそういうイベントが存在しているのである。
 お約束というかワンパターンというか……。まあ、日本で作ってるゲームなんてものは、日本のカリキュラムに完全に支配されちゃってるものね。秋にあたる時期に体育祭だの文化祭だのが、この手の創作物でも当たり前のように組み込まれているのである。
 ちなみにこのゲームの場合、いわゆる晩秋の頃である33ターン目がまるまるそれに当てはまる。今は25ターン目であるので、少々早いかも知れないけれど、話題としては出しておいて大丈夫だろう。
 そんなわけで、私は可愛い妹を筋肉だるまの悪夢から救うべく、学園祭の話題を出す事にしたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。 死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

ポンコツ錬金術師、魔剣のレプリカを拾って魔改造したら最強に

椎名 富比路
ファンタジー
 錬金術師を目指す主人公キャルは、卒業試験の魔剣探しに成功した。  キャルは、戦闘力皆無。おまけに錬金術師は非戦闘職なため、素材採取は人頼み。  ポンコツな上に極度のコミュ障で人と話せないキャルは、途方に暮れていた。  意思疎通できる魔剣【レーヴァテイン】も、「実験用・訓練用」のサンプル品だった。  しかしレーヴァテインには、どれだけの実験や創意工夫にも対応できる頑丈さがあった。    キャルは魔剣から身体強化をしてもらい、戦闘技術も学ぶ。  魔剣の方も自身のタフさを活かして、最強の魔剣へと進化していく。  キャルは剣にレベッカ(レーヴァテイン・レプリカ)と名付け、大切に育成することにした。  クラスの代表生徒で姫君であるクレアも、主人公に一目置く。  彼女は伝説の聖剣を 「人の作ったもので喜んでいては、一人前になれない」  と、へし折った。  自分だけの聖剣を自力で作ることこそ、クレアの目的だったのである。  その過程で、着実に自身の持つ夢に無自覚で一歩ずつ近づいているキャルに興味を持つ。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

処理中です...