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第三章 学園編

第153話 夏休み特別講習ですよ

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 なんだかんだと無事にリブロ王子のパーティーが終わったものの、その翌日、早速私は城に出向いていた。そして、城門のところでサキとばったり出くわしたのだ。
「おはようございます、アンマリア様」
「おはようございますわ、サキ様」
 お互いに従者を伴って挨拶をし合う。
「本日からよろしくお願い致します」
 サキは魔法を習うために、私に勢い良く頭を下げてきた。私はその勢いに押されてしまって、ちょっとどう反応していいのか分からなくなってしまった。なので、とりあえず笑っておいた。
 落ち着いたところで門番に話を伝えると、どうやら話は来ているらしいので、そのまま案内してもらえる事になった。
 案内されたのは城の庭園。魔法を使うので屋外がいいと判断されたためなのだ。兵士の訓練場は使えないそうだ。
「さすが王城の庭園。すごくきれい……」
 色とりどりの花が咲く庭園に佇む太った私。やめて、絵にならないわ。
「本当ですね。こういうきれいなお庭って憧れてしまいます」
 サキはこんな事を言っている。まあ彼女は男爵令嬢で家が貧乏だったから、庭師も雇えなかったのだろう。今はだいぶ持ち直してきているから、雇ってもいいんじゃないのかしらね。
 ちなみに私の家、ファッティ伯爵邸の庭も結構見ごたえのある庭よ。なにせ私も関わっているからね。男性のセンマイと女性の私とで意見を出し合って庭を作ってるんだから、ふふん。
 私たちが庭園を堪能していると、
「すみません、お待たせしてしまいましたね」
 その声と共にリブロ王子が現れた。アーサリーとエスカも居る。
「アンマリア、私には瞬間移動魔法を教えてちょうだいよ」
 うわー、いきなり何を言うんですかね、この転生者。
「瞬間移動魔法?」
「そうよ。何日も掛けて馬車で移動なんて退屈で仕方ありませんわ。瞬間移動魔法というのは、文字通り遠くの二点を一瞬で移動してしまう魔法なのですわよ!」
 エスカが興奮気味に言っているのだが、アーサリーは冗談だと思って本気にしていない。
「きいいっ! アンマリア、見せておあげなさい!」
 いや、いくら態度が気に食わないからって、私を巻き込まないでほしいわね。とはいえ、さすがに兄妹げんかをこれ以上見せつけられるのも面倒なので、私はため息ひとつ、その要求を呑む事にした。
「はあ、仕方ありませんわね。一瞬ですから見ていて下さいよ」
 私は魔法を使う。すると、私の姿が目の前から一瞬でかき消えた。
「なっ、どこに行った?!」
 アーサリーがきょろきょろとあたりを見回している。すると、意外なところでその姿を見つけた。
「はい、ここですよ」
 リブロ王子の車椅子の後ろだった。いやー、車椅子は押した事あるからね。背後に立っているイメージができてよかったわ。
「なあ、いつの間にっ!?」
 いちいちうるさいアーサリーである。
「エスカ王女殿下の魔力なら、すぐに覚えて使えるようになると思うんですけどね。ただ、この魔法ってものすごく魔力を消費するので、多分サキ様でも厳しいと思いますのでご注意下さい」
「そんなに消費するものなのか?」
「そうですよ。自分の存在を一瞬で別の場所に移動させるのですからね。魔力量の多い私でも、1回で半分近く持っていかれますから、一般人ではまず使えないでしょう」
 アーサリーが食いついてくるので、私は消費魔力量について言及しておいた。すると、さすがのアーサリーでも考え込んでしまったようである。
「まあ、エスカ王女殿下はちょっと特殊ですから、コツを掴めば使えると思いますよ。アーサリー殿下は絶対に無理です」
「なんだとっ!?」
 私がきっぱり言い切ると、アーサリーは怒っていた。
「だって、リブロ殿下でも無理だと思いますもの。相当に集中力が必要な魔法ですから、アーサリー殿下は性格的にも向いていません」
 しかし、私は遠慮なくそれを一刀両断しておいた。
 ここまで言っておけば、さすがのアーサリーも諦めるだろう。そう思っていた。
「言ってくれたな! 絶対にいつか使えるようになってやるからな! 瞬間移動とかカッコ良すぎだろ!」
 あっ、そういう事ですか。こっちの世界でも男の子の傾向って変わりませんのね。なるほど勉強になりましたわ。
 こうなってしまえばもう何も言うまい。私は魔法の勉強を始める事にした。
「魔法の基本的な点については、すでに履修済みとして話を進めますよ。リブロ殿下、エスカ王女殿下、よろしいですね?」
 私は授業に入る前に確認を取っておく。実技の授業が始まる前に、座学で散々教えられる魔法の基本的な仕組みの話である。これがないと、魔法の実技の訓練には入れない。ましてや一週間という短い期間だと、基本から入るとそれだけで結構時間を取ってしまうのだ。感覚だけで扱えちゃう天才的な人もいるけれど、そんなのは一握りなので、基本は押さえておくのは重要なのである。
 ちなみに、確認を取った二人とも、基本は大丈夫と言って首を縦に振った。だったら、さっさと本題へと入る事にしましょう。
 さーて、誰が最初に音を上げるかしらね。
 こうして、一週間にも及ぶ私によるスパルタ教室が幕を上げたのだった。
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