151 / 500
第三章 学園編
第151話 褒められるのは悪くはないけど
しおりを挟む
宰相の言葉が会場に響き渡ると、厳かな音楽が始まる。言わずと知れた王族たちの登場である。
バルコニーから登場する国王、王妃、フィレン王子、リブロ王子。それにミール王国のアーサリーとエスカ。実にそうそうたる顔ぶれね。特にエスカ。着飾って黙っていれば、ちゃんと王女に見えるんだからすごいわね。
檀上まで降りてきた王族が横一列に並ぶ。そして、主役となるリブロ王子が、車椅子のまま少し前に出てきた。
「本日は僕の誕生日を祝うためにお集まり頂き、実に嬉しく思う。しかし、その場にこんな姿をさらす事になってしまったのは少々残念だ。来年こそは自分の足でちゃんと立つ姿を見せられるようにしようと思う」
リブロ王子はこんな事を言っているけれど、死の淵まで行きかけていた事を知る私からすれば、それだけ立派に喋れるだけでも感動ものなのよね。ああ、いけない。前世と合わせて多分アラフォーの私にはけなげすぎる姿だわ。
だが、そんな事情を知らない貴族たちは騒めいている。まったく、好き勝手なものだわね。
「そんな僕の誕生日に、バッサーシ辺境伯からとんでもない贈り物が届いた」
リブロ王子がそう言うと、会場の後方の扉が開き、何やら布に覆われた大きな物体が運び込まれてきた。うん、これはあれだわね。
当然ながら、大きな物体がいきなり運び込まれたとあって、会場はどよどよと大騒ぎになっている。
国王から合図が送られると、覆っていた布が取り払われ、中からは光り輝く大きな宝石のような物体が出てきた。言わずと知れた魔石と呼ばれる物体である。
「な、何なんだ、この大きさは!」
「なんてきれいなのでしょうか」
会場からは様々な声が飛び出している。
「なあ、マリー。あれが例のギガンテスの魔石なのかい?」
父親がこそこそと私に確認をしてくる。
「はい、モモも必死に戦っていた相手の魔石です」
私だけが戦ったかのように聞いてこないで下さいね、お父様。モモだって頑張って戦ったんですからね。まあ、結果的には塩湖の水をぶちまけただけだったので、やらかした感はあるんだけどね。言わぬが花よ。
そんな中、国王による説明が始まる。
「この魔石は、バッサーシ領で倒されたとある魔物の魔石だ」
会場からは「おおっ……」という驚嘆の声が聞こえてくる。まず見る事のない大きさの魔石だから、無理もない。
「先日、クッケン湖でスタンピードが起きた。よりにもよって、学園の生徒たちが合宿している場でだ」
これにはさすがに会場が騒めいた。
「だが、知っての通り、合宿に参加していた学生たちは、全員無事に戻ってきている。そう、そのスタンピードは王国とバッサーシの兵、そして学生たちの手によって制圧されたのだ」
会場からは拍手が起きる。
「その場に居合わせた上に、その魔石の主を倒してくれた者たちを紹介しよう。呼ばれたら前に出てくるように」
宰相が出てきてそのように述べると、会場は一気にしんと静まり返った。
「フィレン・サーロイン、アーサリー・ミール、エスカ・ミール」
王族三人の名前が並んで出てきて、一同にはどよめきが起きている。そりゃねえ、王家を継ぐ人間だから、騒ぎにもなるってものよ。
「ラム・マートン、タカー・ブロック、サクラ・バッサーシ」
公爵、侯爵、辺境伯と、どうやら身分の高い方から順番に呼んでいるようだ。まあ、当たり前か。
「アンマリア・ファッティ、モモ・ファッティ、カービル・バラロース、サキ・テトリバー、タン・ミノレバー、以上だ」
単純な話、ゲームにおける主人公と攻略対象とライバル令嬢全員である。とはいえ、参加していなかったリブロ王子を含めた全員が一堂に並ぶとは、なかなかない状況だった。てかさ、ギガンテス戦はほとんど戦力外だったんだけどね、私とアーサリーって。居ていいのかしら。
「伝説の魔物、ギガンテスを打ち倒した勇者たちだ。皆の者、盛大な拍手を送るがよいぞ!」
「ギガンテスだって?!」
「まあ、なんて素晴らしいのかしら」
ギガンテスを知る知らないで貴族たちの反応は分かれていたのだけど、ほぼ全員から惜しみない賞賛の拍手が送られていた。まっ、褒められるのは悪くないわよね。
「それでは、ギガンテスを打ち倒した勇者たちに褒美を与える」
宰相の宣言に、ぞろぞろと城で働く使用人たちが出てくる。その手には何かを置いた盆を持っているようだった。うん、勲章みたいだわ。
使用人たちと共に出てきた城の役人たちが、私たちの胸に勲章をつけてくれる。ドレスに勲章ってどうかとは思うんだけど、まあ仕方ないか。そして、勲章をつけ終わると役人と使用人たちは一斉にはけていった。
「それでは、この者たちにもう一度盛大な拍手を!」
大きな拍手を送られて、これで終わりかと思った私だったが、
「では、せっかくのパーティーなので、1曲踊ってもらおうか」
うん、そうなるわよね。私たちはみんなの注目を浴びる中、ダンスを披露する事になったのだった。私は太っている事もあるし、あまり活躍してなかったので辞退させてもらったけれどね。
こうして、リブロ王子の誕生日パーティーは始まったのだった。
バルコニーから登場する国王、王妃、フィレン王子、リブロ王子。それにミール王国のアーサリーとエスカ。実にそうそうたる顔ぶれね。特にエスカ。着飾って黙っていれば、ちゃんと王女に見えるんだからすごいわね。
檀上まで降りてきた王族が横一列に並ぶ。そして、主役となるリブロ王子が、車椅子のまま少し前に出てきた。
「本日は僕の誕生日を祝うためにお集まり頂き、実に嬉しく思う。しかし、その場にこんな姿をさらす事になってしまったのは少々残念だ。来年こそは自分の足でちゃんと立つ姿を見せられるようにしようと思う」
リブロ王子はこんな事を言っているけれど、死の淵まで行きかけていた事を知る私からすれば、それだけ立派に喋れるだけでも感動ものなのよね。ああ、いけない。前世と合わせて多分アラフォーの私にはけなげすぎる姿だわ。
だが、そんな事情を知らない貴族たちは騒めいている。まったく、好き勝手なものだわね。
「そんな僕の誕生日に、バッサーシ辺境伯からとんでもない贈り物が届いた」
リブロ王子がそう言うと、会場の後方の扉が開き、何やら布に覆われた大きな物体が運び込まれてきた。うん、これはあれだわね。
当然ながら、大きな物体がいきなり運び込まれたとあって、会場はどよどよと大騒ぎになっている。
国王から合図が送られると、覆っていた布が取り払われ、中からは光り輝く大きな宝石のような物体が出てきた。言わずと知れた魔石と呼ばれる物体である。
「な、何なんだ、この大きさは!」
「なんてきれいなのでしょうか」
会場からは様々な声が飛び出している。
「なあ、マリー。あれが例のギガンテスの魔石なのかい?」
父親がこそこそと私に確認をしてくる。
「はい、モモも必死に戦っていた相手の魔石です」
私だけが戦ったかのように聞いてこないで下さいね、お父様。モモだって頑張って戦ったんですからね。まあ、結果的には塩湖の水をぶちまけただけだったので、やらかした感はあるんだけどね。言わぬが花よ。
そんな中、国王による説明が始まる。
「この魔石は、バッサーシ領で倒されたとある魔物の魔石だ」
会場からは「おおっ……」という驚嘆の声が聞こえてくる。まず見る事のない大きさの魔石だから、無理もない。
「先日、クッケン湖でスタンピードが起きた。よりにもよって、学園の生徒たちが合宿している場でだ」
これにはさすがに会場が騒めいた。
「だが、知っての通り、合宿に参加していた学生たちは、全員無事に戻ってきている。そう、そのスタンピードは王国とバッサーシの兵、そして学生たちの手によって制圧されたのだ」
会場からは拍手が起きる。
「その場に居合わせた上に、その魔石の主を倒してくれた者たちを紹介しよう。呼ばれたら前に出てくるように」
宰相が出てきてそのように述べると、会場は一気にしんと静まり返った。
「フィレン・サーロイン、アーサリー・ミール、エスカ・ミール」
王族三人の名前が並んで出てきて、一同にはどよめきが起きている。そりゃねえ、王家を継ぐ人間だから、騒ぎにもなるってものよ。
「ラム・マートン、タカー・ブロック、サクラ・バッサーシ」
公爵、侯爵、辺境伯と、どうやら身分の高い方から順番に呼んでいるようだ。まあ、当たり前か。
「アンマリア・ファッティ、モモ・ファッティ、カービル・バラロース、サキ・テトリバー、タン・ミノレバー、以上だ」
単純な話、ゲームにおける主人公と攻略対象とライバル令嬢全員である。とはいえ、参加していなかったリブロ王子を含めた全員が一堂に並ぶとは、なかなかない状況だった。てかさ、ギガンテス戦はほとんど戦力外だったんだけどね、私とアーサリーって。居ていいのかしら。
「伝説の魔物、ギガンテスを打ち倒した勇者たちだ。皆の者、盛大な拍手を送るがよいぞ!」
「ギガンテスだって?!」
「まあ、なんて素晴らしいのかしら」
ギガンテスを知る知らないで貴族たちの反応は分かれていたのだけど、ほぼ全員から惜しみない賞賛の拍手が送られていた。まっ、褒められるのは悪くないわよね。
「それでは、ギガンテスを打ち倒した勇者たちに褒美を与える」
宰相の宣言に、ぞろぞろと城で働く使用人たちが出てくる。その手には何かを置いた盆を持っているようだった。うん、勲章みたいだわ。
使用人たちと共に出てきた城の役人たちが、私たちの胸に勲章をつけてくれる。ドレスに勲章ってどうかとは思うんだけど、まあ仕方ないか。そして、勲章をつけ終わると役人と使用人たちは一斉にはけていった。
「それでは、この者たちにもう一度盛大な拍手を!」
大きな拍手を送られて、これで終わりかと思った私だったが、
「では、せっかくのパーティーなので、1曲踊ってもらおうか」
うん、そうなるわよね。私たちはみんなの注目を浴びる中、ダンスを披露する事になったのだった。私は太っている事もあるし、あまり活躍してなかったので辞退させてもらったけれどね。
こうして、リブロ王子の誕生日パーティーは始まったのだった。
7
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。

【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜
naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。
しかし、誰も予想していなかった事があった。
「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」
すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。
「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」
──と、思っていた時期がありましたわ。
orz
これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。
おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる