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第三章 学園編
第145話 主役は負けない
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「やあああっ!!」
サクラがギガンテスへと斬り掛かる。だが、相手が巨体すぎてこのままでは足元しか斬る事ができない。
「カービル様!」
その時に動いたのが、ラムだった。
「そうか、私たちの風なら」
カービルも感じ取ったらしく、すぐに風魔法を発動させる。
「サクラ様、私たちが風魔法で上空へ飛ばします。一気に上からギガンテスを叩いて下さい!」
「分かりました!」
次の瞬間、ラムとカービルが一緒になって風魔法で足場を作る。そして、
「跳べ!」
と叫ぶと、足場に乗ったサクラを一気に上空へと跳ね上げた。ギガンテスの頭よりも高い位置まで跳び上がると、
「はああっ!!」
サクラは手に握る剣に一杯の力を込める。そして、凍て付くギガンテス目がけて、自身の火と土の魔力がこもって輝く魔石剣を思いっきり振り下ろした。
一方のギガンテスも凍り付きながらそれに抗おうとするものの、思った以上に氷がしっかりとしており、動く事ができない。これは単純に氷を作っているエスカの魔力のせいである。ヒロインたるアンマリアの魔力には及ばないものの、そこは転生者の魔力だもの。簡単に破れるものなら破ってみなさいというくらいにガッチガチに固めてあるのである。
それに加えて、凝固点降下で凍り付く前にかなりの冷気にさらされた事で、ギガンテスの体力はかなり奪われていた。だからこそ、この危機的状況下にあってもギガンテスは抵抗できなくなっているというわけよ。
「辺境を護り続けたバッサーシの血脈の力、思い知りなさい!」
サクラはそう叫んで、ギガンテスへと魔石剣を思い切り叩きつけた。
ギガンテスに当たった部分には激しいスパークが発生している。これはサクラが無意識に放出した魔力が、魔石剣に集まって集中的に放出されているためだ。だが、それでもギガンテスは斬れない。いくらサクラの脳筋パワーをもってしても、ギガンテスが規格外すぎて通じていないのである。
「ぐぎぎぎぎ……っ! 硬い、このくらいでぇっ!!」
サクラが力さらに込めている。
この様子を見たフィレン王子たちはようやくギガンテスの咆哮の痺れから回復する。
「くそっ、アンマリアがっ!」
「殿下、お気持ちは察しますが、今はあれを倒す事が先決です」
「ああ、そうだなっ……」
フィレン王子たちは剣を構える。
「行くぞ、タン」
「はっ、殿下!」
走り出すフィレン王子とタン。負けじと動けるようになったタカーも魔法で援護する。
「殿下、タン。私の魔法で強化します!」
文官らしく、後方支援職であるバフを使うタカー。身体能力などが一時的に上昇する。
「俺が氷を一部分削りますので、殿下はそこを狙って下さい!」
「分かった。頼むぞ!」
タンはバリバリと剣に雷を集中させる。
「ライトニングピアー!」
そして、剣にまとわせた雷を、一気にギガンテスに向かって突き出した。
バリバリという轟音と共に打ち出された雷は、ギガンテスの胸部に命中する。そして、エスカとサキの協力技でできた氷を胸板の一部ごと削り取ってしまった。
「殿下、今です!」
タカーとタンが同時に叫ぶ。
「うおおおおっ!!」
フィレン王子の持つ剣に、フィレン王子の属性である雷と光の両方の属性が生み出す神々しい電撃がまとわりついていく。
「よくもアンマリアを!」
フィレン王子は力の限り、剣を突き出して電撃を放った。
いや、気合いを入れる王子はかっこいいんですけれど、私を死んだ前提で進めないでもらいたいわね。
私は穴から顔を出して戦いを見守っている。なんか出て行きづらいので、私はそのまま穴の中でおとなしくしている。それにしても、あれだけの威力の雷魔法が使えるなんて思わなかったわね。いくらタカーの強化があるとはいえども、今のフィレン王子たちに扱える威力を超えている気がするわ。……私が死んだと思っているから出せているのかしらね。感情が爆発した事で、リミッターが外れるってやつなのかしら。
さて、フィレン王子から放たれた電撃は、タンが削り取った氷の部分に見事に命中している。飛び道具が放てるあたりは魔法も使える王子っぽくていいわね。
私が感動している中、冷気で耐久力を失ったギガンテスは、フィレン王子の電撃によって鋭く胸部を撃ち抜かれてしまった。
「ガ……ア……」
うめき声はわずかに漏れる。そして、
「だっりゃああああっ!!」
胸部を貫かれて、さらに耐久度の落ちたギガンテスは、サクラの手によって、頭部から見事真っ二つにされてしまったのだった。哀れギガンテス。ゲームの主役たちを敵に回したのが運の尽きだったわね。
真っ二つになったギガンテスが、ズズーンという大きな音を立てて崩れ落ちた。そして、魔石を残して魔力の灰となって崩れ去ってしまった。
死力を尽くして戦って勝利したというのに、誰の顔にも笑顔なんてものはなかった。それもそうだろう。私が死んだものだと思ってるんだから。さてさて、せっかく戦いも終わった事だし、私は姿を現しましょうかね。
私は泣き崩れているエスカたちの姿を見ながら、タイミングを見ながらこっそりと穴から脱出する。そして、そろりそろりと足音を立てないようにしながら、みんなに近付いていったのだった。
サクラがギガンテスへと斬り掛かる。だが、相手が巨体すぎてこのままでは足元しか斬る事ができない。
「カービル様!」
その時に動いたのが、ラムだった。
「そうか、私たちの風なら」
カービルも感じ取ったらしく、すぐに風魔法を発動させる。
「サクラ様、私たちが風魔法で上空へ飛ばします。一気に上からギガンテスを叩いて下さい!」
「分かりました!」
次の瞬間、ラムとカービルが一緒になって風魔法で足場を作る。そして、
「跳べ!」
と叫ぶと、足場に乗ったサクラを一気に上空へと跳ね上げた。ギガンテスの頭よりも高い位置まで跳び上がると、
「はああっ!!」
サクラは手に握る剣に一杯の力を込める。そして、凍て付くギガンテス目がけて、自身の火と土の魔力がこもって輝く魔石剣を思いっきり振り下ろした。
一方のギガンテスも凍り付きながらそれに抗おうとするものの、思った以上に氷がしっかりとしており、動く事ができない。これは単純に氷を作っているエスカの魔力のせいである。ヒロインたるアンマリアの魔力には及ばないものの、そこは転生者の魔力だもの。簡単に破れるものなら破ってみなさいというくらいにガッチガチに固めてあるのである。
それに加えて、凝固点降下で凍り付く前にかなりの冷気にさらされた事で、ギガンテスの体力はかなり奪われていた。だからこそ、この危機的状況下にあってもギガンテスは抵抗できなくなっているというわけよ。
「辺境を護り続けたバッサーシの血脈の力、思い知りなさい!」
サクラはそう叫んで、ギガンテスへと魔石剣を思い切り叩きつけた。
ギガンテスに当たった部分には激しいスパークが発生している。これはサクラが無意識に放出した魔力が、魔石剣に集まって集中的に放出されているためだ。だが、それでもギガンテスは斬れない。いくらサクラの脳筋パワーをもってしても、ギガンテスが規格外すぎて通じていないのである。
「ぐぎぎぎぎ……っ! 硬い、このくらいでぇっ!!」
サクラが力さらに込めている。
この様子を見たフィレン王子たちはようやくギガンテスの咆哮の痺れから回復する。
「くそっ、アンマリアがっ!」
「殿下、お気持ちは察しますが、今はあれを倒す事が先決です」
「ああ、そうだなっ……」
フィレン王子たちは剣を構える。
「行くぞ、タン」
「はっ、殿下!」
走り出すフィレン王子とタン。負けじと動けるようになったタカーも魔法で援護する。
「殿下、タン。私の魔法で強化します!」
文官らしく、後方支援職であるバフを使うタカー。身体能力などが一時的に上昇する。
「俺が氷を一部分削りますので、殿下はそこを狙って下さい!」
「分かった。頼むぞ!」
タンはバリバリと剣に雷を集中させる。
「ライトニングピアー!」
そして、剣にまとわせた雷を、一気にギガンテスに向かって突き出した。
バリバリという轟音と共に打ち出された雷は、ギガンテスの胸部に命中する。そして、エスカとサキの協力技でできた氷を胸板の一部ごと削り取ってしまった。
「殿下、今です!」
タカーとタンが同時に叫ぶ。
「うおおおおっ!!」
フィレン王子の持つ剣に、フィレン王子の属性である雷と光の両方の属性が生み出す神々しい電撃がまとわりついていく。
「よくもアンマリアを!」
フィレン王子は力の限り、剣を突き出して電撃を放った。
いや、気合いを入れる王子はかっこいいんですけれど、私を死んだ前提で進めないでもらいたいわね。
私は穴から顔を出して戦いを見守っている。なんか出て行きづらいので、私はそのまま穴の中でおとなしくしている。それにしても、あれだけの威力の雷魔法が使えるなんて思わなかったわね。いくらタカーの強化があるとはいえども、今のフィレン王子たちに扱える威力を超えている気がするわ。……私が死んだと思っているから出せているのかしらね。感情が爆発した事で、リミッターが外れるってやつなのかしら。
さて、フィレン王子から放たれた電撃は、タンが削り取った氷の部分に見事に命中している。飛び道具が放てるあたりは魔法も使える王子っぽくていいわね。
私が感動している中、冷気で耐久力を失ったギガンテスは、フィレン王子の電撃によって鋭く胸部を撃ち抜かれてしまった。
「ガ……ア……」
うめき声はわずかに漏れる。そして、
「だっりゃああああっ!!」
胸部を貫かれて、さらに耐久度の落ちたギガンテスは、サクラの手によって、頭部から見事真っ二つにされてしまったのだった。哀れギガンテス。ゲームの主役たちを敵に回したのが運の尽きだったわね。
真っ二つになったギガンテスが、ズズーンという大きな音を立てて崩れ落ちた。そして、魔石を残して魔力の灰となって崩れ去ってしまった。
死力を尽くして戦って勝利したというのに、誰の顔にも笑顔なんてものはなかった。それもそうだろう。私が死んだものだと思ってるんだから。さてさて、せっかく戦いも終わった事だし、私は姿を現しましょうかね。
私は泣き崩れているエスカたちの姿を見ながら、タイミングを見ながらこっそりと穴から脱出する。そして、そろりそろりと足音を立てないようにしながら、みんなに近付いていったのだった。
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