伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊

文字の大きさ
上 下
138 / 500
第三章 学園編

第138話 食える野菜か食えない野菜か

しおりを挟む
 私の質問に目をぎょっとさせているサクラ。どうやら、思いもよらない質問だったようである。
 ベジタリウス王国は、8歳の時に訪れた時に話していた、バッサーシ辺境伯領から伸びる峠道を抜けた先にある王国なのである。
 サクラからの感想は、「油断ならない国」との事らしい。実際、ベジタリウス王国方面への軍備の充実具合は目を見張るものがあるそうだ。バッサーシ辺境伯の私兵でこれだけ充実させているとなれば、おそらくサーロイン王国から見ても油断ならない国なのだろう。国境警備にこれだけ兵士を出すだけの事はあるというわけだ。
「それにしても、アンマリア様」
「何でしょうか、サクラ様」
「一度もお話しした事がありませんのに、どうしてベジタリウス王国の名をご存じなのですか?」
 サクラからのこの質問に、私は答えを窮してしまう。うん、どうしてと聞かれると、何とも答えづらいのだ。
「いえ、ですね。将来的に王妃になるにしても公爵夫人になるにしても、外交に力を入れておいた方がいいと思いましてね。勉強していたら出てきたので、気になった次第なのです」
 私はそれっぽい理由を言っておく。そしたら、サクラはそれに納得したのか、
「分かりました。それでしたら、夕食後にでもアンマリア様の部屋を訪ねさせて頂きます」
 そんな約束をしてくれたのだった。
 こうして、私たちは一度型ごとに分かれて、宿舎へと戻っていった。
 だが、戻ってすぐの事、問題が起きた。
「アンマリア、私も同じ部屋に泊めて下さいな!」
 お風呂に入ってさっぱりした私の元に、エスカが飛びついてきたのである。あー忘れてましたわ、この問題児……。
 それにしても、拡張版のライバル令嬢として登場した割には、ずいぶんと整った容姿をしている。
 まあ、モモやサキたち、元から居るライバル令嬢たちも普通に付き合っていれば美少女であるので、これは別に納得のいく話だ。原作ならでぶっちょであるラムだって、太っていながらも美しかったものね。ただ、痩せたら痩せたで反則的な美しさになっているけれどね。あれでいて、ゲーム通りにカービルの婚約者になってるんだから訳が分からない。まあ、確かにラムは痩せていても包容力がもの凄くあるものね。
 私はエスカを連れて、宿舎の自室へと向かう。ちなみにモモも居るんだけど、どういうわけかエスカとは意気投合をしていた。うーん、この間の時に何かあったのかしらね。まったく、訳が分からないわ。そして、そのわいわいとした様子は、食事の時もずっと続いていた。
 いや、合宿参加者であるフィレン王子やアーサリー王子ならともかくとして、飛び込みでやって来た部外者のエスカがどうして同じ場所でご飯食べてるんですかね?!
 私はその時の目の前で起きている光景が信じられなかった。あとでこっそり教官に確認を取ってみたけれど、一人分くらいヘーキヘーキみたいな事を言っていた。さすがだわ……。まあ、隣国のとはいっても王族ですものね。無下にできるわけないわよね……。
 いろいろと思うところはあるのだけれど、この後はサクラとの約束がある。なので、私はモモとエスカと一緒に宿舎の自室へと戻っていく。すると、そこにはすでにサクラが立っていた。
「お戻りをお待ちしていましたわ、アンマリア様」
 私に挨拶をするだけなら頭を下げるだけでいいのだろうけれど、隣に隣国ミール王国の王女エスカが居るせいでカーテシーになってしまっている。それにしても、さすがの体幹の持ち主であるサクラ。その姿勢が恐ろしいまでにぶれていないのである。まあ、別なところで違和感が拭い切れないのだけれどね……。大体筋肉のせい。
「廊下で立ち話するわけにもいきませんから、部屋に入りましょう」
「はい、失礼致します」
 私たちは部屋へと入っていく。それにしても、私の体格がでかいものだから、毎度この扉をくぐるのが大変だわ。思わず服を引っ掛けそうになっちゃうもの。まあ、破けたところで私の魔法でさっくり直せちゃうけれどね。それでも、服が破けたら一瞬でも誰かの目に留まっちゃうから、恥ずかしくて仕方ないじゃないのよ。
 っと、今はそれどころじゃなかったわね。サクラからベジタリウス王国の話を聞かなくっちゃ。レッタス王子やミズーナ王女の話は出てこなくても、ベジタリウス王国がどういった国なのかという情報が手に入るだけでも十分よ。
 部屋に入った私たち。そこで見たのは、いつにも増して硬い表情のサクラである。
「正直、ベジタリウス王国の話は気が進まないですね」
 サクラの声もどことなく重苦しい。一体何があるというのだろうか。
「しかし、アンマリア様が情報を持ってられないのは意外でしたね。一応、そこの王子王女が来年から学園に通う事になっていますのに、国の大臣を務められるお父様がいらして、どうしてご存じないのでしょうか」
「うっ……」
 サクラからズバッと指摘をされて、私は思わず言葉を失ってしまう。
「サクラ様。それでしたら、私も知りませんのでお姉様ばかりを責めるのはおやめ下さい」
 モモが反論していた。うう、モモは本当にいい妹だわ。
 モモからの反論を受けて一時的に黙り込んだサクラだったけれど、エスカも興味ありげにずっと見ているものだから、ついに覚悟を決めて話す事にしたようだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

処理中です...