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第三章 学園編

第132話 夏合宿、みんなと合流の初日

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 昼を過ぎると、ずらずらとたくさんの馬車がクッケン湖にたどり着いていた。
 王都からこのクッケン湖まで、馬車でせいぜい3日の距離だ。王都を発ったのは夏休みの初日であるにもかかわらず、クッケン湖に到着したのはその4日後。3日間の距離を5日間も掛けて来たのだから、一体途中で何をしていたのだろうか。私は頭を捻るばかりである。
「あら、アンマリア様。もういらしていたのですね」
 ラムが颯爽と登場する。相変わらずすらっとしたお美しいお姿で……。私には眩しすぎるわ。
「お久しぶりでございます、ラム様」
 私とモモが一緒に挨拶をする。
「それにしても、ずいぶんとここに来られるまで時間が掛かっていましたね。すんなり来られれば、2日前には着いていましたでしょうに」
 私は素直に疑問を呈しておく。
「それでしたら、いろいろ事情がございますのよ」
 その私の疑問にラムはしっかりと答えてくれた。
 その話によれば、来る時からすでに合宿は始まっていたらしい。学生たちで野営の準備や食事の用意などなど、いろいろとさせていたようなのだ。その準備や後片付けに手間取っていたから、これだけやって来るのが遅れたらしい。ものすごく納得のいく話だった。
「あはは、それは移動時間が削られますね」
 私は苦笑いしかできなかった。前世でぼっちキャンプの経験があるもの。初体験の時にものすごく手間取った覚えがあるので、学生たちが悪戦苦闘する姿が目に浮かんで仕方なかった。
「ちょっと、アンマリア様。さすがにそれは笑い過ぎですわよ」
「そ、そうよ、お姉様。さすがに堪えて下さい」
 ラムは呆れているし、モモは慌てている。だけれども、私の笑いはしばらく収まりそうもなかった。いや、本気で何がツボに入るか分かったものではないわね。私はみんなが荷物を置いてくる間、まったくもって笑いが止まらなかったのだった。

「おほん、失礼致しました」
 気を取り直して私はラムたちに向き合う。
「まったく、驚かされましたわよ、アンマリア様」
 ラムに怒られる私は、しっかりと反省モードだった。
「それよりも、私たちより早く到着されているとは、一体どうやってここまで来られたのです?」
 サキやサクラも揃った状態で、私はラムから追及を受ける。
「おほほほ、それはさすがに教えられませんわ。秘密ですわよ、ひ・み・つ」
 私は笑ってごまかしておく。すると、ラムたちはモモに突っ掛かっていった。ところがどっこい、
「わ、私も教えられません。お姉様に口止めされてますので……!」
 モモは必死に目を回しながらも両手を左右に激しく振って抵抗していた。偉いわね、モモ。私の言いつけを守ってくれるなんて。
「そんな事よりも、この後の予定を教えて下さらない事? 一応冊子には目を通しましたけれど、もしかしたら、途中で変更になっているかも知れませんからね」
「そ、そうですわね……」
 私がうまく話題を切り替えると、ラムがそれに乗ってくれた。自分にみんなが詰め寄ってこなくなると、モモは安心したようにほっとしていた。
 それはそれとして、合宿中の予定を確認する私。冊子の内容は頭に入っているので、ラムたちから聞いた内容とそれをすり合わせていく。
「それほどというかほぼ変更有りませんのね」
「はい、アンマリア様同様に別の用事を済ませてから直行という方が他にもいらっしゃいましたので、あまり変更は加えなかったようです」
「それを聞いて安心しましたわ」
 どうやら無難に済みそうである。
 むしろ問題は、突如発生するスタンピードの方だろう。学園もどうして過去何度もスタンピードの報告が上がっているクッケン湖で合宿をするのか。それがまったく理解できないわね。
 それはそうと、クッケン湖でのスタンピードの発生のタイミングはちょうど中日となる4日目、つまりは3日後である。ケルピーは以前私が倒したからもう出てこないだろうけれど、これだけの学生が居て守り切れるかは規模次第ってところかしらね。起こらなければそれが一番いいんだけど、変なところで強制力を働かせるのがこういう転生もののお約束なのよね……。警戒する事に越した事はないわ。
「アンマリア様? どうかなされましたか?」
 私の顔を見たサキが不思議そうに問い掛けてくる。
「あっ、いえ。なんでもありませんわ」
 そう返す私の反応を見て、サキはきょとんとした顔でこてんと首を傾げていた。
 だけれども、私はそれに構ってられないわ。正直言って、私は今、2つの気持ちの間で揺れ動いているからだ。学生たちを危険な目に遭わせたくないからスタンビートは起きて欲しくないという気持ちと、魔石大漁ゲットじゃ、ヒャッハーという強欲な気持ちである。正直両方とも本心から思っているのだから悩ましい。とはいえど、今の私に言える事はこれだけかしら。
「みなさん、この夏合宿頑張りましょう」
 両手のひらを合わせて、私はモモやサキたちににっこりと呼び掛けるのだった。
 これに元気な返事をくれたのはモモだけで、他のみんなは何か怪しむような表情で私の事を眺めていたのだった。……本心、ばれてないわよね?
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