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第三章 学園編
第124話 1年目の夏休みへ
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大体の方針が決まった事で、まずはその前日にあるモモの誕生日かしらね。私が年始すぎて誕生日パーティーをしてもらった覚えがないんだけどね。新年のお祝いと一緒に大体済まされちゃうの。年末年始生まれあるあるね。
モモの誕生日もよりにもよって学園の前期最終日付近にあるとは大変よね。だって、普通なら前期終了翌日に学園に出向いて、そのままクッケン湖とか合宿場所に向かうんだから。まあ、合宿は強制じゃないからパスしてもいいんだけどね。でも、大体はいい成績を取りたがるし、鍛錬にもなるからパスしないわね。それこそ箱入りのお嬢さんくらいなものよ、合宿を敬遠するのって。
ちなみに、モモだって乗り気満々である。試験であれだけの魔法を見せながらも向上心が絶えない、やる気があるのはいい事ね。これは私だって負けていられないわ。
モモと話をした翌日に、私たちは教官に合宿の参加希望を記した書類を提出する。その際に私はちょっとした事を伝えておいた。
「なに? 学園の馬車で合宿の場所まで向かわない?」
「はい。ちょっと領地の方に顔を出そうと考えておりますので、そちらを経由して向かう事になります。問題ございませんでしょうか」
「うーん、そういう学生が居なかったわけではないが、さすがに令嬢二人を独自に行動させるのは気が引けるな」
私が意見を述べると、教官はさすがに今までの事例に照らし合わせている。私たちが女性という点でものすごく悩んでいるようだ。
「あらやだですわ、先生。私の実力のほどをご存じでしょう? 魔物にも盗賊にも後れなど取りませんですわよ?」
私は自信たっぷりに言い切ってやった。だって、私の魔力で防御を張れば、象が踏んだって潰れませんもの。それに、瞬間移動なのだから、移動時間なんて0だもの。そもそもそういう存在と遭遇する事なんてあり得なかった。
教官はたくさん悩んだものの、私の申し出を了承してくれた。これで合宿の前後数日間ずつ、領地で過ごす暇ができた。せっかく領地に行くのだから、少しくらい手を加えてみたいものね。
父親は相変わらず忙しくて、領地に赴く暇がほとんどない。なので、領地経営は信用する部下に任せっきりになっている。私だって領地については経営とかを学んできた。だって、子どもは私しか居ないんだもの。最悪爵位と領地を継ぐ可能性だってあるわけだから、努力はしちゃうものでしょう?
でも、よく思えば魔物を狩りに行く事はあっても、まともな用事で領地に赴くのも何年ぶりになるのだろうか。モモにいたっては多分初めてなはずである。ゲームではなんともなかった領地経営だけれど、これだけその設定とは外れた状態になっている以上、本当に無事かどうかなんて分かるわけがない。帳簿自体は届いているけれど、実態を見たわけではないから何とも言えないのよね。帳簿なんて、その気になればいくらでも改ざんができるのだから。
というわけで、今回領地に赴く予定を放り込んだのは、忙しい父親に代わって領地の状態を確認するためなのよ。本気でただ単に領地に遊びに行くだけだと思った?
モモの誕生日までに、しっかり準備しておかなくてはね。私はそれからというもの、こっそりと瞬間移動で家を抜け出しては、夜の領地を空から観察しておいた。前世のイメージのおかげで空は余裕で飛べるし、姿を隠す事だってできる。暗闇の中でもものをはっきり見る事もできるし、自分の膨大な魔力と共に至れり尽くせるといったところだった。
(んー、これといって問題があるわけでもなさそうね。夜だから変な動きでもあるかとは思ったんだけど、杞憂だったかしらね)
私は、早々に偵察を終わらせて切り上げる事にした。あまり遅くなるとモモへの誕生日プレゼントを作れなくなっちゃうものね。時期が時期だけに、私は瞬間移動で屋敷に戻ると、自室でモモへのプレゼントをこつこつと用意するのだった。
そして、迎えたモモの誕生日パーティー。当日は午前中は学園で前期の終業式が行われた。明日から休みだという事やら色々伝えるために、わざわざ行っているのだそうだ。つまるところ、学生一人一人伝達するのが面倒なわけである。
それにしても、大した行事もなかった割に、いろいろと濃い半年だったように思う。主に王子とか王子とか王女とか。リブロ王子の病気とエスカの暴走には本当に困ったものだったわ。あれでいてエスカはまたリブロ王子の誕生日の際に来るんでしょうね、はあ……。
一方で、モモには怪しい動きはまったくなかったわね。仕掛けておいた隠しカメラにも普通の生活しか映ってなかったし。少し引っ掛かった気がしたけれど、やっぱり気のせいだったみたいね。
私はモモに渡す誕生日プレゼントを手に持つと、スーラと一緒に食堂へと向かう。
今日の誕生日パーティーは身内だけのささやかなものだ。学園の前期が終わって、翌日から夏休み合宿が始まるタイミングなのだ。学園には入ってしまったせいで、簡素にせざるを得なかったのだ。
食堂に着いたところで、今日の主役のモモとばったりと出くわしてしまったわ。だけれども、そこはお互いにっこりと微笑み合って、食堂の中へと入っていったのだった。
モモの誕生日もよりにもよって学園の前期最終日付近にあるとは大変よね。だって、普通なら前期終了翌日に学園に出向いて、そのままクッケン湖とか合宿場所に向かうんだから。まあ、合宿は強制じゃないからパスしてもいいんだけどね。でも、大体はいい成績を取りたがるし、鍛錬にもなるからパスしないわね。それこそ箱入りのお嬢さんくらいなものよ、合宿を敬遠するのって。
ちなみに、モモだって乗り気満々である。試験であれだけの魔法を見せながらも向上心が絶えない、やる気があるのはいい事ね。これは私だって負けていられないわ。
モモと話をした翌日に、私たちは教官に合宿の参加希望を記した書類を提出する。その際に私はちょっとした事を伝えておいた。
「なに? 学園の馬車で合宿の場所まで向かわない?」
「はい。ちょっと領地の方に顔を出そうと考えておりますので、そちらを経由して向かう事になります。問題ございませんでしょうか」
「うーん、そういう学生が居なかったわけではないが、さすがに令嬢二人を独自に行動させるのは気が引けるな」
私が意見を述べると、教官はさすがに今までの事例に照らし合わせている。私たちが女性という点でものすごく悩んでいるようだ。
「あらやだですわ、先生。私の実力のほどをご存じでしょう? 魔物にも盗賊にも後れなど取りませんですわよ?」
私は自信たっぷりに言い切ってやった。だって、私の魔力で防御を張れば、象が踏んだって潰れませんもの。それに、瞬間移動なのだから、移動時間なんて0だもの。そもそもそういう存在と遭遇する事なんてあり得なかった。
教官はたくさん悩んだものの、私の申し出を了承してくれた。これで合宿の前後数日間ずつ、領地で過ごす暇ができた。せっかく領地に行くのだから、少しくらい手を加えてみたいものね。
父親は相変わらず忙しくて、領地に赴く暇がほとんどない。なので、領地経営は信用する部下に任せっきりになっている。私だって領地については経営とかを学んできた。だって、子どもは私しか居ないんだもの。最悪爵位と領地を継ぐ可能性だってあるわけだから、努力はしちゃうものでしょう?
でも、よく思えば魔物を狩りに行く事はあっても、まともな用事で領地に赴くのも何年ぶりになるのだろうか。モモにいたっては多分初めてなはずである。ゲームではなんともなかった領地経営だけれど、これだけその設定とは外れた状態になっている以上、本当に無事かどうかなんて分かるわけがない。帳簿自体は届いているけれど、実態を見たわけではないから何とも言えないのよね。帳簿なんて、その気になればいくらでも改ざんができるのだから。
というわけで、今回領地に赴く予定を放り込んだのは、忙しい父親に代わって領地の状態を確認するためなのよ。本気でただ単に領地に遊びに行くだけだと思った?
モモの誕生日までに、しっかり準備しておかなくてはね。私はそれからというもの、こっそりと瞬間移動で家を抜け出しては、夜の領地を空から観察しておいた。前世のイメージのおかげで空は余裕で飛べるし、姿を隠す事だってできる。暗闇の中でもものをはっきり見る事もできるし、自分の膨大な魔力と共に至れり尽くせるといったところだった。
(んー、これといって問題があるわけでもなさそうね。夜だから変な動きでもあるかとは思ったんだけど、杞憂だったかしらね)
私は、早々に偵察を終わらせて切り上げる事にした。あまり遅くなるとモモへの誕生日プレゼントを作れなくなっちゃうものね。時期が時期だけに、私は瞬間移動で屋敷に戻ると、自室でモモへのプレゼントをこつこつと用意するのだった。
そして、迎えたモモの誕生日パーティー。当日は午前中は学園で前期の終業式が行われた。明日から休みだという事やら色々伝えるために、わざわざ行っているのだそうだ。つまるところ、学生一人一人伝達するのが面倒なわけである。
それにしても、大した行事もなかった割に、いろいろと濃い半年だったように思う。主に王子とか王子とか王女とか。リブロ王子の病気とエスカの暴走には本当に困ったものだったわ。あれでいてエスカはまたリブロ王子の誕生日の際に来るんでしょうね、はあ……。
一方で、モモには怪しい動きはまったくなかったわね。仕掛けておいた隠しカメラにも普通の生活しか映ってなかったし。少し引っ掛かった気がしたけれど、やっぱり気のせいだったみたいね。
私はモモに渡す誕生日プレゼントを手に持つと、スーラと一緒に食堂へと向かう。
今日の誕生日パーティーは身内だけのささやかなものだ。学園の前期が終わって、翌日から夏休み合宿が始まるタイミングなのだ。学園には入ってしまったせいで、簡素にせざるを得なかったのだ。
食堂に着いたところで、今日の主役のモモとばったりと出くわしてしまったわ。だけれども、そこはお互いにっこりと微笑み合って、食堂の中へと入っていったのだった。
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