122 / 485
第三章 学園編
第122話 結果はどうなるのかしらね
しおりを挟む
モモの放ったパペットに着弾したところで試験官に止められる。
それにしても驚いたわね。モモにこんな才能があっただなんて。魔力のマーキングとは予想外過ぎる。ただこの魔法は、気の持ち方次第ではいくらでも悪用できる魔法なものだから、これは正直言って要注意ね。
「えへへへ、どうですか、お姉様」
「ええ、なかなか素晴らしい魔法でしたわ」
にっこりとして話し掛けてくるモモ。あまりにいい顔だったものだから、私は素直にモモを褒めておいた。
「それにしても、魔法を発動させる陣をあんな風に設置していくなんて、よく思いつきましたわね」
私はストレートにモモにその辺りを確認する。すると、モモから返ってきた答えが意外だった。
「はい、お姉様にさせて頂いた魔石への魔法の定着、あれを応用させてもらいました。魔石に魔法を込める事を、地面に応用したんですよ。どうですか、お姉様!」
ものすごく明瞭快活に説明してくるモモ。
あー、そっか。ストーブやコンロ作るためにさせてたあの作業が原因か……。でも、それを地面にやっちゃうあたりは、モモにも魔法の才能がそれだけあるって事ね。これは、将来どんな風に育つのか楽しみだわね。
しかし、その一方で会場の学生たちはぽかーんと、何を見せつけられたのか分からないといった表情をしていた。試験官も沈黙している。
「……っと、これは失礼。まあ、なかなか素晴らしかったのではないですかね。公平に成績はつけますので、結果は後日発表させてもらいます」
なんとか言葉を発した試験官だったけれど、なんか言葉の中身が負け惜しみっぽいのはどういう事なのかしらね。私は訝しみながらも、平静を装いながら試験官の事を見ていた。
さて、モモの次に出てきたのは、攻略対象の中で唯一の魔法型のタカーか。父親が宰相を務めているから、完全に文官タイプだから仕方がない。
(彼の属性は風だっけか。さて、どんな魔法を見せてくれるのかしらね)
宰相である父親を受け継ぐはずである彼だ。あのモモの直後だからやりづらいとは思うけれど、きっとタカーは頭脳派プレイを見せてくれるはずだと、私は勝手に期待をしている。
彼もまた、魔法制御のための道具は杖だった。よく授業では見ていたけれど、タカーの実践の動きは地味に初めて見る事になる。
「始め」
試験官の合図とともに、タカーは杖を振るっている。魔法を当てられまいとパペットは動く。よく見るとタカーの放つ魔法は大したものではない。だけれども、私は何とも言えない違和感を持っていた。
「同じ……」
私の隣に居るモモがぽつりとこぼす。
「私と同じ事をしてる」
「……まさか……ね」
モモの言葉に、私はどういうわけか動揺している。
だけれども、地面を見ると確かに、モモと同じような魔法の紋が刻み込まれている。
「かかりましたね!」
タカーのこの声で、パペットは周りをつむじ風に囲まれてしまう。どの方向も囲まれてしまい、唯一開いている方向はタカーが立っている。逃げ場は完全に無くなっていた。
「これで終わりです!」
タカーがそう言って魔法を放つと、パペットはあっけなく風魔法に切り刻まれていってしまったのだった。
試験が終わると、タカーは私たちの方へと歩いてくる。そして、モモの前に立っていた。
「申し訳ありません、レディ。あなたの使った魔法を真似させて頂きました」
「あっいえ。別に構いませんけれど、驚きました。あんなに簡単に真似されてしまうなんて……」
タカーの謝罪に対して、モモはものすごく声も態度も戸惑っている。あれを思いつくまでモモも相当に苦労してきたろうに、それを一瞬で、目の前で見ただけで完コピされてしまったのだ。ショックを受けない方が嘘だろう。
いくら婚約者とはいっても、さすがに大人げなさすぎたわね。私はタカーを睨み付けておいた。
そんなこんなで、あっという間に魔法の実技試験が終了する。結構魔法をぶつけられたパペットは、それはかなりボロボロになっていて、試験官に泣きつくように飛びついていた。ただの道具かと思ったけれど、感情のようなものがあるのだろうか。
「それでは、結果は明日にでも分かりますので、楽しみにしておいて下さい。アンマリア・ファッティ、あなたは評価できませんからね。規格外すぎるんですから」
ちょっと試験官、最後に酷い事言わないでくれる? 私はついつい試験官に対してジト目を向けてしまう。すると、試験官は罰が悪そうにそそくさと試験会場を後にしたのだった。
試験会場から教室に戻った私たち。みんなが帰り支度を始める中、一人の教官が教室に入ってきた。
「夏休みの前半に行われる合宿の参加希望者を募ります。参加希望者は今週中に提出するように!」
あー、ゲームでもあった合宿イベントか。ゲームの中だと結構イベント起きるのよね。そういえば、スタンピードはこの年だったけか。そう思いながら、私は教官が語った言葉をはたと思い出す。
(って、夏休み前半とか、帰省予定とかぶるじゃないのよ!)
私はここに来て、大問題をぶつけられてしまったのだった。
「はあ、合宿の場所を確認しておきましょうかね」
私は仕方なく、渡された用紙に記載された合宿の開催場所の確認を行うのだった。
それにしても驚いたわね。モモにこんな才能があっただなんて。魔力のマーキングとは予想外過ぎる。ただこの魔法は、気の持ち方次第ではいくらでも悪用できる魔法なものだから、これは正直言って要注意ね。
「えへへへ、どうですか、お姉様」
「ええ、なかなか素晴らしい魔法でしたわ」
にっこりとして話し掛けてくるモモ。あまりにいい顔だったものだから、私は素直にモモを褒めておいた。
「それにしても、魔法を発動させる陣をあんな風に設置していくなんて、よく思いつきましたわね」
私はストレートにモモにその辺りを確認する。すると、モモから返ってきた答えが意外だった。
「はい、お姉様にさせて頂いた魔石への魔法の定着、あれを応用させてもらいました。魔石に魔法を込める事を、地面に応用したんですよ。どうですか、お姉様!」
ものすごく明瞭快活に説明してくるモモ。
あー、そっか。ストーブやコンロ作るためにさせてたあの作業が原因か……。でも、それを地面にやっちゃうあたりは、モモにも魔法の才能がそれだけあるって事ね。これは、将来どんな風に育つのか楽しみだわね。
しかし、その一方で会場の学生たちはぽかーんと、何を見せつけられたのか分からないといった表情をしていた。試験官も沈黙している。
「……っと、これは失礼。まあ、なかなか素晴らしかったのではないですかね。公平に成績はつけますので、結果は後日発表させてもらいます」
なんとか言葉を発した試験官だったけれど、なんか言葉の中身が負け惜しみっぽいのはどういう事なのかしらね。私は訝しみながらも、平静を装いながら試験官の事を見ていた。
さて、モモの次に出てきたのは、攻略対象の中で唯一の魔法型のタカーか。父親が宰相を務めているから、完全に文官タイプだから仕方がない。
(彼の属性は風だっけか。さて、どんな魔法を見せてくれるのかしらね)
宰相である父親を受け継ぐはずである彼だ。あのモモの直後だからやりづらいとは思うけれど、きっとタカーは頭脳派プレイを見せてくれるはずだと、私は勝手に期待をしている。
彼もまた、魔法制御のための道具は杖だった。よく授業では見ていたけれど、タカーの実践の動きは地味に初めて見る事になる。
「始め」
試験官の合図とともに、タカーは杖を振るっている。魔法を当てられまいとパペットは動く。よく見るとタカーの放つ魔法は大したものではない。だけれども、私は何とも言えない違和感を持っていた。
「同じ……」
私の隣に居るモモがぽつりとこぼす。
「私と同じ事をしてる」
「……まさか……ね」
モモの言葉に、私はどういうわけか動揺している。
だけれども、地面を見ると確かに、モモと同じような魔法の紋が刻み込まれている。
「かかりましたね!」
タカーのこの声で、パペットは周りをつむじ風に囲まれてしまう。どの方向も囲まれてしまい、唯一開いている方向はタカーが立っている。逃げ場は完全に無くなっていた。
「これで終わりです!」
タカーがそう言って魔法を放つと、パペットはあっけなく風魔法に切り刻まれていってしまったのだった。
試験が終わると、タカーは私たちの方へと歩いてくる。そして、モモの前に立っていた。
「申し訳ありません、レディ。あなたの使った魔法を真似させて頂きました」
「あっいえ。別に構いませんけれど、驚きました。あんなに簡単に真似されてしまうなんて……」
タカーの謝罪に対して、モモはものすごく声も態度も戸惑っている。あれを思いつくまでモモも相当に苦労してきたろうに、それを一瞬で、目の前で見ただけで完コピされてしまったのだ。ショックを受けない方が嘘だろう。
いくら婚約者とはいっても、さすがに大人げなさすぎたわね。私はタカーを睨み付けておいた。
そんなこんなで、あっという間に魔法の実技試験が終了する。結構魔法をぶつけられたパペットは、それはかなりボロボロになっていて、試験官に泣きつくように飛びついていた。ただの道具かと思ったけれど、感情のようなものがあるのだろうか。
「それでは、結果は明日にでも分かりますので、楽しみにしておいて下さい。アンマリア・ファッティ、あなたは評価できませんからね。規格外すぎるんですから」
ちょっと試験官、最後に酷い事言わないでくれる? 私はついつい試験官に対してジト目を向けてしまう。すると、試験官は罰が悪そうにそそくさと試験会場を後にしたのだった。
試験会場から教室に戻った私たち。みんなが帰り支度を始める中、一人の教官が教室に入ってきた。
「夏休みの前半に行われる合宿の参加希望者を募ります。参加希望者は今週中に提出するように!」
あー、ゲームでもあった合宿イベントか。ゲームの中だと結構イベント起きるのよね。そういえば、スタンピードはこの年だったけか。そう思いながら、私は教官が語った言葉をはたと思い出す。
(って、夏休み前半とか、帰省予定とかぶるじゃないのよ!)
私はここに来て、大問題をぶつけられてしまったのだった。
「はあ、合宿の場所を確認しておきましょうかね」
私は仕方なく、渡された用紙に記載された合宿の開催場所の確認を行うのだった。
7
お気に入りに追加
249
あなたにおすすめの小説
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
勝手にしなさいよ
棗
恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる