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第三章 学園編
第101話 魔法を使いこなそう(後編)
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モモは父親からもらった杖を手に、的に向かって腕を差し出す。そして、モモは火の玉をイメージして魔力を杖へと伝えていく。すると、杖の先からじわじわと火の塊が現れ始めた。
「ファイアバレット!」
モモの杖から火の玉が飛び出す。それは真っすぐ的へと向かっていき、的に着弾すると、私ほどではないもののしばらく的を焼き続けた。
「こんな感じですわ、お姉様」
モモはくるっと振り向くと、嬉しそうににっこりと笑っていた。本当に可愛い妹だよ、モモ。
本当に、いろいろとやらかしてくれたハーツ子爵の娘とは思えないくらい、モモはずっと素直でかわいい少女だった。私もこの体格ながら、根気よくモモと接していたので、今では立派なお姉ちゃんっ子なのよ。
こほん、それはともかくとして、モモの使った魔法を見て、ラムもサキもおおっと感動していた。モモの実演は魔力から魔法への変換がとてもよく分かる、実に素晴らしい魔法だったのだから。他人の事を思いやれる、素晴らしい人格を持った自慢の妹だわ。
たいていの小説や漫画の場合、ここで出てくる主人公の義理の妹ってろくでもない性格ばかりなんだけれど、モモにはそういった点が見当たらないのよね。普段の生活を見ていても、全然猫かぶりをしている様子はないし、ゲームと同様にブロック子爵家との間で婚約者の取り決めも成されたものね。今は文官としての仕事の勉強もしているみたいだし、ゆくゆくは宰相夫人かしらね。ふふっ、キャリアウーマンとなったモモの姿を早く見てみたいものだわ。
とと……、妄想している場合じゃなかったわ。ラムとサキのために解説しなくちゃ。
「モモ、今の魔法の使い方を、お二人に説明して下さるかしら」
「はい、お姉様」
モモに解説を振ると、私はまだ燃えている的の火を水魔法で消しておく。確かこの的って、壊れないように特殊な古代の魔法が使われているはずなのだけど、モモの魔法でも火が消える事なく燃え続けていたわね。的自体は燃えずに焦げた跡はあるけれど、それにしても魔法をあれだけの時間掛かっても相殺できなかったって、やっぱりモモの魔法も、レベルが高いって事かしらね。さすが私の妹。
私が再びモモたちの方を見ると、ちょうど説明が終わったところのようである。
「それじゃ、次はサキ様が試してみましょうか。先日、私が直々に教えたのですから、今のモモの説明も踏まえれば十分できると思いますからね」
「分かりました。やってみます」
サキが持つのは杖だった。やっぱり魔法っていったら、杖が一般的よね。
サキはモモと同じように、的の方に手を伸ばして杖を構えると、魔力を練り始めていた。
彼女の属性は光と氷。それ以外も使えるとは思うけれど、先の杖の先に現れた色は紫。間違いなく氷属性である。
「アイシクルショット!」
サキの構えた杖の先から、氷のつぶてが飛び出していく。演習場内だから、かなり丸い形の氷のつぶてである。その氷のつぶてが的へ向かって飛んでいき、ぼこぼこと的に当たって地面に落ちていた。正確に真ん中に当てているあたり、あれからも練習をしていたのがよく分かる。
「いかがでしょうか、アンマリア様」
どこかドヤ顔のような表情のサキである。まあ、魔法を教えたのが私なのだから、私に対してその表情を見せるのは、間違ってはいないわね。
「ええ、サキ様。見事な魔法制御でした。しばらく見ないうちに腕をだいぶ上げられたのでは?」
私の言葉に、サキは照れた様子を見せている。私たちは二人の王子の婚約者で、まだ正式にどちらと婚約になるのか決まっていない、まだライバルの状態である。だというのに、こうも馴れ馴れしくしていていいのか思う人も居るだろう。だけれども、そのライバルが未熟な状態では、はっきり言って勝負としては面白くない。実力が伯仲してこそ、本番だと思う。そう思えば、サキの成長ぶりには、私はとても満足しているのである。
さて、モモ、サキと終わったので、いよいよラムの出番である。ラムの属性は水と風。一体何を使うのだろうか。
ラムが取り出したのは扇。さすが公爵令嬢ともなれば、使うものが違うようである。
二人の魔法を目の当たりにしていたラムは、その感覚を参考に、扇に魔力を集中させていく。どうやら杖のように使うらしく、扇はたたんだままである。
「エアロボール!」
扇の先が緑色に光り、空気弾が発射される。そして、ものすごいスピードで的に当たると、そこで魔法は霧散していた。だが、的にはものすごく凹んだ跡が付いていて、ラムの魔法の凄まじさを物語っていた。
「や、やりましたわ」
自分の魔法の威力を見て、ラムは驚いた様子で呟いていた。うん、私もそこまでやれるとは思ってもみなかった。単純にすごいとしか言いようがない。だって、私がした講釈も今さっきのだけだもの。という事は、ラムにそれだけの才能が元々あるという事なのよ。さすがですわ。
「ふふっ、ラム様も魔力の扱いというのがよく理解できたかと思います。自分の体内の魔力の流れを把握して、イメージをすんなりと浮かべられるようになれば、そのうち瞬間的に魔法も撃てるようになりますわよ」
私もにっこにこだった。ただ、最後の言葉が三人には理解できなかったようなので、私は実演してみせる。
「よく見ておいて下さいね」
私は的に向かってまっすぐに立つ。すると次の瞬間、的が燃え上がったのだった。これには、モモたちは何が起こったのか分からなかった。
「視線だけで魔法を発動したのですよ。まあ、下手にこんな事をすると味方も巻き込んでしまいますから、1対1だとか、絶体絶命の時とか、最終手段って感じですけれどね」
そう説明した私は、右の人差し指を的に向けて、水魔法を使って火を消し止めたのだった。
こうして、私の圧倒的な魔法の才を見せつけて、初めての魔法の実技の授業は終わりを迎えたのだった。
「ファイアバレット!」
モモの杖から火の玉が飛び出す。それは真っすぐ的へと向かっていき、的に着弾すると、私ほどではないもののしばらく的を焼き続けた。
「こんな感じですわ、お姉様」
モモはくるっと振り向くと、嬉しそうににっこりと笑っていた。本当に可愛い妹だよ、モモ。
本当に、いろいろとやらかしてくれたハーツ子爵の娘とは思えないくらい、モモはずっと素直でかわいい少女だった。私もこの体格ながら、根気よくモモと接していたので、今では立派なお姉ちゃんっ子なのよ。
こほん、それはともかくとして、モモの使った魔法を見て、ラムもサキもおおっと感動していた。モモの実演は魔力から魔法への変換がとてもよく分かる、実に素晴らしい魔法だったのだから。他人の事を思いやれる、素晴らしい人格を持った自慢の妹だわ。
たいていの小説や漫画の場合、ここで出てくる主人公の義理の妹ってろくでもない性格ばかりなんだけれど、モモにはそういった点が見当たらないのよね。普段の生活を見ていても、全然猫かぶりをしている様子はないし、ゲームと同様にブロック子爵家との間で婚約者の取り決めも成されたものね。今は文官としての仕事の勉強もしているみたいだし、ゆくゆくは宰相夫人かしらね。ふふっ、キャリアウーマンとなったモモの姿を早く見てみたいものだわ。
とと……、妄想している場合じゃなかったわ。ラムとサキのために解説しなくちゃ。
「モモ、今の魔法の使い方を、お二人に説明して下さるかしら」
「はい、お姉様」
モモに解説を振ると、私はまだ燃えている的の火を水魔法で消しておく。確かこの的って、壊れないように特殊な古代の魔法が使われているはずなのだけど、モモの魔法でも火が消える事なく燃え続けていたわね。的自体は燃えずに焦げた跡はあるけれど、それにしても魔法をあれだけの時間掛かっても相殺できなかったって、やっぱりモモの魔法も、レベルが高いって事かしらね。さすが私の妹。
私が再びモモたちの方を見ると、ちょうど説明が終わったところのようである。
「それじゃ、次はサキ様が試してみましょうか。先日、私が直々に教えたのですから、今のモモの説明も踏まえれば十分できると思いますからね」
「分かりました。やってみます」
サキが持つのは杖だった。やっぱり魔法っていったら、杖が一般的よね。
サキはモモと同じように、的の方に手を伸ばして杖を構えると、魔力を練り始めていた。
彼女の属性は光と氷。それ以外も使えるとは思うけれど、先の杖の先に現れた色は紫。間違いなく氷属性である。
「アイシクルショット!」
サキの構えた杖の先から、氷のつぶてが飛び出していく。演習場内だから、かなり丸い形の氷のつぶてである。その氷のつぶてが的へ向かって飛んでいき、ぼこぼこと的に当たって地面に落ちていた。正確に真ん中に当てているあたり、あれからも練習をしていたのがよく分かる。
「いかがでしょうか、アンマリア様」
どこかドヤ顔のような表情のサキである。まあ、魔法を教えたのが私なのだから、私に対してその表情を見せるのは、間違ってはいないわね。
「ええ、サキ様。見事な魔法制御でした。しばらく見ないうちに腕をだいぶ上げられたのでは?」
私の言葉に、サキは照れた様子を見せている。私たちは二人の王子の婚約者で、まだ正式にどちらと婚約になるのか決まっていない、まだライバルの状態である。だというのに、こうも馴れ馴れしくしていていいのか思う人も居るだろう。だけれども、そのライバルが未熟な状態では、はっきり言って勝負としては面白くない。実力が伯仲してこそ、本番だと思う。そう思えば、サキの成長ぶりには、私はとても満足しているのである。
さて、モモ、サキと終わったので、いよいよラムの出番である。ラムの属性は水と風。一体何を使うのだろうか。
ラムが取り出したのは扇。さすが公爵令嬢ともなれば、使うものが違うようである。
二人の魔法を目の当たりにしていたラムは、その感覚を参考に、扇に魔力を集中させていく。どうやら杖のように使うらしく、扇はたたんだままである。
「エアロボール!」
扇の先が緑色に光り、空気弾が発射される。そして、ものすごいスピードで的に当たると、そこで魔法は霧散していた。だが、的にはものすごく凹んだ跡が付いていて、ラムの魔法の凄まじさを物語っていた。
「や、やりましたわ」
自分の魔法の威力を見て、ラムは驚いた様子で呟いていた。うん、私もそこまでやれるとは思ってもみなかった。単純にすごいとしか言いようがない。だって、私がした講釈も今さっきのだけだもの。という事は、ラムにそれだけの才能が元々あるという事なのよ。さすがですわ。
「ふふっ、ラム様も魔力の扱いというのがよく理解できたかと思います。自分の体内の魔力の流れを把握して、イメージをすんなりと浮かべられるようになれば、そのうち瞬間的に魔法も撃てるようになりますわよ」
私もにっこにこだった。ただ、最後の言葉が三人には理解できなかったようなので、私は実演してみせる。
「よく見ておいて下さいね」
私は的に向かってまっすぐに立つ。すると次の瞬間、的が燃え上がったのだった。これには、モモたちは何が起こったのか分からなかった。
「視線だけで魔法を発動したのですよ。まあ、下手にこんな事をすると味方も巻き込んでしまいますから、1対1だとか、絶体絶命の時とか、最終手段って感じですけれどね」
そう説明した私は、右の人差し指を的に向けて、水魔法を使って火を消し止めたのだった。
こうして、私の圧倒的な魔法の才を見せつけて、初めての魔法の実技の授業は終わりを迎えたのだった。
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