98 / 500
第三章 学園編
第98話 打ち明けざるを得ませんでした
しおりを挟む
さて、放課後になった。
予定通り、私はフィレン王子と一緒に城へと向かう。今回は自分で決めた事なので、私の覚悟はいつもより決まっていた。
それというのも、エスカのやらかしをどうにかして帳消しにしないと正直、彼女の立ち位置はやばい状況に陥っているのだもの。
(招待状を受け取ってからスマホで連絡を入れればよかったものを……。何こんな致命的なアホをやらかしてくれてんのよ……)
正直、馬車の中で私のため息は途切れる事がなかった。そのくらいには呆れ返っているのだ。
そんなこんなで、国王の執務室に到着した私とフィレン王子。やっぱりこの部屋の前に来ると、ものすごく緊張してしまう。まあ、それが国王という存在だものね。
「失礼致します、父上」
フィレン王子がノックをして扉を開ける。
「おお、フィレンか、どうした?」
「アンマリアがお話があるそうです」
「うん? アンマリアが?」
フィレン王子が事情を説明するが、国王は首を傾げまくっている。
「話とは何だ。魔石剣の事ではあるまい?」
「はい、もっと荒唐無稽な事でございます」
国王の質問に私がこう返すと、国王とフィレン王子が互いの顔を見合わせていた。うん、実に訳が分からないっていう感じね。まあ、仕方ないけど。
「これから私がお話しする事を、どうかお聞き願えると幸いだと思います」
私は腹をくくって、国王とフィレン王子に自分には別の世界の別人の記憶がある事を話す。エスカの事は話さないけれど、二人の勘がいいならば、ここからきっと勘付いてくれるはずである。
魔石ペンやコンロやストーブ、それに車椅子を思いついたのも、その別世界の記憶からだという事を話すと、国王もフィレン王子もものすごい顔をしていた。あれ、これって失敗しちゃったかしら?
とりあえず、自分語りを終えた私は、静かに国王とフィレン王子の顔を見る。正直どんな反応をされるかドキドキである。最悪、悪魔憑きとして牢屋なんて事もあり得るから、そりゃもう緊張しまくりなのよ。
「ふむ、荒唐無稽で突拍子もない話というのは非常に納得ができるな」
あ、なんか言葉を付け加えられてる。それでも私は、静かに構えている。
「だが、魔道具の事といい、リブロの状態を回復させた術といい、納得せざるを得ない事象はたくさんあるな。これだけ私どもに貢献してくれている娘を、どうしてそれだけで牢屋に放り込む事ができよう?」
これを聞いた私は、実にあちゃーと思った。牢屋に放り込まれると警戒していた心をしっかりと読まれてしまっていた。
私の話に納得してくれた事に安心した私だったけれど、この時、フィレン王子が何かに気が付いて口を開く。
「ちょっと待って下さい。という事は、このエスカ王女から贈られてきた魔道具というのも……」
「はい、お察しの通り、私の前世の世界にあったスマートフォン、通称スマホを元にしたものでございます」
「という事は、エスカ王女も、アンマリアと同じという事か!」
はい、フィレン王子が真実にたどり着きました。これだけ聡い王子が居るのなら、サーロイン王国は安泰かしらね。
「その通りでございます、フィレン殿下。隣国ミール王国のエスカ王女。彼女もまた、私と同じ転生者なのです。そして、この世界とよく似たゲームを遊んだ事のある人物のようでして、だからこそ、フィレン殿下の誕生日をご存じだったというわけです」
国王やフィレン王子からすれば、衝撃の事実だった。
「ですので、間者などは居ないのです。ただ、このエスカ王女のやらかしで、私がどれだけ焦ったかはご理解頂けると思います。同郷のよしみとしてとても悩みましたわよ」
私は頬に手を当てて盛大にため息を吐いた。
「とはいえど、私もまだ腹の虫がおさまりませんので、ちょっと今から直接文句を言ってやりますわ」
そう言って私は、スマホを取り出した。向こうが登録して連絡してきたおかげで、こちらからも連絡ができるようになっていたのだ。
「陛下や殿下も文句がございましたら、ついでにどうぞですわ」
私はスマホに魔力を流してエスカと通話をできるようにする。しばらくすると、エスカが電話口に出た。
『アンマリア? どうしたの?』
エスカののんきな声が聞こえてくる。そこで私は開口一番、
「お・ば・かぁっ!!」
と叫んでおいた。
「まったく、招待状を受け取る前にフィレン殿下の誕生パーティーに参加するなんて手紙寄こすから、あらぬ疑いを掛けられてましてよ? こちらから招待状を送ってますので、それまで待ってからスマホで連絡入れればよろしかったですのに。なんで私がフォローしなければなりませんの?」
『えっ、えっ、えっ、アンマリア?!?!』
私が一気にぶちまけると、エスカはものすごく混乱していたようだった。
この後、国王やフィレン王子から代わる代わる諭されると、ようやくエスカは事の重大さを知ったのだった。
『も、申し訳ございませんでした。まさかそんな事情があるだなんて思ってもみませんでしたので』
エスカはひたすら謝罪しっぱなしである。私のフォローもあってか、無事に国賓として招かれる状態に収まったのである。はあ、疲れたわ。
やらかす転生者はもうこりごりよ……。
予定通り、私はフィレン王子と一緒に城へと向かう。今回は自分で決めた事なので、私の覚悟はいつもより決まっていた。
それというのも、エスカのやらかしをどうにかして帳消しにしないと正直、彼女の立ち位置はやばい状況に陥っているのだもの。
(招待状を受け取ってからスマホで連絡を入れればよかったものを……。何こんな致命的なアホをやらかしてくれてんのよ……)
正直、馬車の中で私のため息は途切れる事がなかった。そのくらいには呆れ返っているのだ。
そんなこんなで、国王の執務室に到着した私とフィレン王子。やっぱりこの部屋の前に来ると、ものすごく緊張してしまう。まあ、それが国王という存在だものね。
「失礼致します、父上」
フィレン王子がノックをして扉を開ける。
「おお、フィレンか、どうした?」
「アンマリアがお話があるそうです」
「うん? アンマリアが?」
フィレン王子が事情を説明するが、国王は首を傾げまくっている。
「話とは何だ。魔石剣の事ではあるまい?」
「はい、もっと荒唐無稽な事でございます」
国王の質問に私がこう返すと、国王とフィレン王子が互いの顔を見合わせていた。うん、実に訳が分からないっていう感じね。まあ、仕方ないけど。
「これから私がお話しする事を、どうかお聞き願えると幸いだと思います」
私は腹をくくって、国王とフィレン王子に自分には別の世界の別人の記憶がある事を話す。エスカの事は話さないけれど、二人の勘がいいならば、ここからきっと勘付いてくれるはずである。
魔石ペンやコンロやストーブ、それに車椅子を思いついたのも、その別世界の記憶からだという事を話すと、国王もフィレン王子もものすごい顔をしていた。あれ、これって失敗しちゃったかしら?
とりあえず、自分語りを終えた私は、静かに国王とフィレン王子の顔を見る。正直どんな反応をされるかドキドキである。最悪、悪魔憑きとして牢屋なんて事もあり得るから、そりゃもう緊張しまくりなのよ。
「ふむ、荒唐無稽で突拍子もない話というのは非常に納得ができるな」
あ、なんか言葉を付け加えられてる。それでも私は、静かに構えている。
「だが、魔道具の事といい、リブロの状態を回復させた術といい、納得せざるを得ない事象はたくさんあるな。これだけ私どもに貢献してくれている娘を、どうしてそれだけで牢屋に放り込む事ができよう?」
これを聞いた私は、実にあちゃーと思った。牢屋に放り込まれると警戒していた心をしっかりと読まれてしまっていた。
私の話に納得してくれた事に安心した私だったけれど、この時、フィレン王子が何かに気が付いて口を開く。
「ちょっと待って下さい。という事は、このエスカ王女から贈られてきた魔道具というのも……」
「はい、お察しの通り、私の前世の世界にあったスマートフォン、通称スマホを元にしたものでございます」
「という事は、エスカ王女も、アンマリアと同じという事か!」
はい、フィレン王子が真実にたどり着きました。これだけ聡い王子が居るのなら、サーロイン王国は安泰かしらね。
「その通りでございます、フィレン殿下。隣国ミール王国のエスカ王女。彼女もまた、私と同じ転生者なのです。そして、この世界とよく似たゲームを遊んだ事のある人物のようでして、だからこそ、フィレン殿下の誕生日をご存じだったというわけです」
国王やフィレン王子からすれば、衝撃の事実だった。
「ですので、間者などは居ないのです。ただ、このエスカ王女のやらかしで、私がどれだけ焦ったかはご理解頂けると思います。同郷のよしみとしてとても悩みましたわよ」
私は頬に手を当てて盛大にため息を吐いた。
「とはいえど、私もまだ腹の虫がおさまりませんので、ちょっと今から直接文句を言ってやりますわ」
そう言って私は、スマホを取り出した。向こうが登録して連絡してきたおかげで、こちらからも連絡ができるようになっていたのだ。
「陛下や殿下も文句がございましたら、ついでにどうぞですわ」
私はスマホに魔力を流してエスカと通話をできるようにする。しばらくすると、エスカが電話口に出た。
『アンマリア? どうしたの?』
エスカののんきな声が聞こえてくる。そこで私は開口一番、
「お・ば・かぁっ!!」
と叫んでおいた。
「まったく、招待状を受け取る前にフィレン殿下の誕生パーティーに参加するなんて手紙寄こすから、あらぬ疑いを掛けられてましてよ? こちらから招待状を送ってますので、それまで待ってからスマホで連絡入れればよろしかったですのに。なんで私がフォローしなければなりませんの?」
『えっ、えっ、えっ、アンマリア?!?!』
私が一気にぶちまけると、エスカはものすごく混乱していたようだった。
この後、国王やフィレン王子から代わる代わる諭されると、ようやくエスカは事の重大さを知ったのだった。
『も、申し訳ございませんでした。まさかそんな事情があるだなんて思ってもみませんでしたので』
エスカはひたすら謝罪しっぱなしである。私のフォローもあってか、無事に国賓として招かれる状態に収まったのである。はあ、疲れたわ。
やらかす転生者はもうこりごりよ……。
8
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

ポンコツ錬金術師、魔剣のレプリカを拾って魔改造したら最強に
椎名 富比路
ファンタジー
錬金術師を目指す主人公キャルは、卒業試験の魔剣探しに成功した。
キャルは、戦闘力皆無。おまけに錬金術師は非戦闘職なため、素材採取は人頼み。
ポンコツな上に極度のコミュ障で人と話せないキャルは、途方に暮れていた。
意思疎通できる魔剣【レーヴァテイン】も、「実験用・訓練用」のサンプル品だった。
しかしレーヴァテインには、どれだけの実験や創意工夫にも対応できる頑丈さがあった。
キャルは魔剣から身体強化をしてもらい、戦闘技術も学ぶ。
魔剣の方も自身のタフさを活かして、最強の魔剣へと進化していく。
キャルは剣にレベッカ(レーヴァテイン・レプリカ)と名付け、大切に育成することにした。
クラスの代表生徒で姫君であるクレアも、主人公に一目置く。
彼女は伝説の聖剣を
「人の作ったもので喜んでいては、一人前になれない」
と、へし折った。
自分だけの聖剣を自力で作ることこそ、クレアの目的だったのである。
その過程で、着実に自身の持つ夢に無自覚で一歩ずつ近づいているキャルに興味を持つ。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる