伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊

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第三章 学園編

第97話 転生者は不用意です

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 魔石剣は見事に国王からも禁止令が出てしまい、私は護身用の武器すら作れなくなってしまった。そのショックに呆然としながら、私は家へと戻ってきた。
 国王に言われてからの私はショックで放心していたのだけれど、サクラが一生懸命励ましてくれていた。立派な剣を贈ってくれたお礼なのだろう。
 ちなみにこの席では、リブロに会っていくかどうかという事を聞かれたような気がしたのだけれど、魔石剣を禁止されたショックが大きすぎて、まったくその辺りの事を覚えていない。それくらいに私は大いに傷付いたのだ。どうやって家まで戻ってきたのすら覚えていない。多分、王家の馬車に乗せられてきたんだと思うけど、私は何も覚えていなかった。
 その数日後の事、学園に登校した私のところに、フィレン王子がやって来た。そして、お昼休みになるとモモとサキも呼び寄せて、フィレン王子が話を始めた。
「ミール王国から手紙が届いた。この分だと、こちらから手紙を出す頃には向こうからも手紙を出していたのだろう」
 フィレン王子が何を言っているのか分からないかも知れないが、これは2週間後に迫ったフィレン王子の誕生日の話である。どうやら、ほぼ1週間くらい前、つまりサクラ(とその父親)の誕生日パーティーがあった日あたりに、エスカ王女宛てに招待状を出したらしい。国王の誕生日ではないので、ミール王国の国王夫妻への招待状は見送られたのだけれども、エスカ王女はこちらの学園に通う意欲があるという事が、兄であるアーサリー王子から散々伝えられていたのだ。だからこそ、一度王国の雰囲気を味わってもらうために、ご足労頂くという事で招待状を出したらしい。
 ところが、その招待状が届くだろう頃に、向こうから参加の意思を示した手紙が届いたらしいのだ。
(あー、エスカもこのゲームやり込んでたみたいな事言ってたものね。だったらフィレン殿下の誕生日を把握していても不思議じゃないか。去年までは何もなかったのは、多分ゲーム開始前だったからでしょうね)
 私は半ば呆れたような顔でそんな風に考えていた。
「国同士の関わりがある以上、王族の誕生日を把握していてもおかしくはないだろうけれど、去年までは私やリブロの誕生日に対して何も行動を起こしてなかった。さすがにこれは、父上たちも怪しんでいる。なにせ、私たちの誕生日の事は、一切外部に漏らした事はないのだからな。国内向けには貴族や商人に対して招待状を送らせてもらってはいるが、商人が漏らすとも考えにくい」
 ずいぶんと話すフィレン王子。これは結構フィレン王子から嫌われたぞ、エスカ。
「ですよね。いくらスマホ……、通信の魔道具があるからといっても、そんな簡単に漏らすわけがないですし。どこから情報がいったのやら……」
 私もエスカにはフィレン王子の誕生日は話した事がない。普通に考えれば知っているわけがない。
「ですが、フィレン殿下。アーサリー殿下には確認はされましたか? 手紙くらいのやり取りはしているはずですし、その線はなくはないですか?」
 私は考えうる原因をあえてぶつけてみる。しかし、フィレン王子は首を横に振った。
「いくら彼でも、その話はしていない。私の誕生日パーティーはあくまで国内だけの話だ。よって、アーサリーの線もあり得ない」
 私の推理は真っ向から否定された。うん、これはやっちまったなぁ。エスカ、好感度最悪よ。
「まあどうであれ、誕生日パーティーに出てきた時に話を聞いてみるつもりだ。どこから仕入れた情報か、しっかり吐かせてやる」
 あー、これは拷問ルートね。まったく、不用意な事をやらかすのはこういう転生ものでよく見た光景ね……。同郷のよしみとしてフォローしてあげたいけれど、これはどこまで助けられるかしら。下手をすると私まで間者の疑いが掛けられてしまうわ。
 私は正直、頭を抱えた。
 しばらく考えて出した結論。それは……。
「フィレン殿下」
「なんだ、アンマリア」
「私からお話があります。放課後、お城に伺ってもよろしいでしょうか」
 私は、必死にフィレン王子に頼み込む。下手をすると国家間の問題になりそうなので、私はやむを得ず動く事にしたのだ。これまでもとんでも発明をいろいろしているだろうし、多少の突拍子な話でも説得力を持つはずだ。
 あまりにも私が食い下がるので、フィレン王子は根負けをして私が登城する事を許可してくれた。
「できれば、国王陛下にも同席して頂く存じます。それも構いませんか?」
「ああ、それなら父上の執務室に突撃するから大丈夫だろう」
 突撃って……。フィレン王子もずいぶんと過激な言葉を使ってくれる。
「ありがとうございます、フィレン殿下」
 私はくすっとしながらも、頭を下げる。体格のせいでよくは曲がらないけれど、十分頭下がってるわよね?
 モモとサキはこの光景に、なんで自分たちが同席しているのか分からずにぽかんとしていた。婚約者とその家族というだけで呼ばれたんだろうけど、今の二人の気持ちは分かるわよ。
 よく分からないうちに話がまとまったようなので、食事を終えた私たちは普通に午後の授業を受けたのだった。
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