伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊

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第三章 学園編

第91話 魔石の剣

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「できたーっ!」
 デザインなどを悩んだ結果、3日後の放課後、サクラに贈る誕生日プレゼントができた。
 正直、女性の誕生日に贈るものとしてはどうかと思うけれど、辺境伯令嬢だし、なにせ脳筋的な考え方があるので、剣という選択肢は間違っていないと思う。その剣というのはブロードソードとまではいかなくても、サーベルに比べれば剣の幅は広いものだった。刃物の部分は魔石数個を魔力で変形硬質化させたものだし、柄の部分も同じように魔力で変形硬質化させたものだ。生半可な剣と比べても遜色ないほどの仕上がりである。
「これをベースにして、フィレン殿下の誕生日に贈る剣も作っちゃいましょう」
 私はノリノリだった。
「っと、その前にお父様や伯爵家の護衛さんたちにこの剣を見せてみようかしら」
 というわけで、夕食の席に合わせて、私は剣を父親に見せる事にしたのだった。
 食事が終わるタイミングで父親を呼び止める私。そして、収納空間から先程作った剣を取り出すと、父親にそれを見せてみた。
「これは……、変わった剣だね」
 父親の第一声はそれだった。まあ、父親は文官なので、剣は持っていたとしても飾りだから関心が薄いのである。
「それにしても、これの材質は何なのかな? どうにも見当がつかない。マリー、教えてくれるかい?」
 父親は早々に考えるのを放棄した。文官だから考えるのは得意だが、無駄と判断したら放棄するのも早かった。
「はい、剣の材質は魔石です。柄と鍔はトレント木材を使っています。それを私の魔力で変形加工して、強度を持たせるように魔力を込めました」
「……相変わらず、マリーはとんでもない事をさらっとやってのけるね」
 私の説明を聞いた父親は、感心しているのか呆れているのか、剣を見ながらそんな事を漏らしていた。
「これなら、普通に売られている鋼の剣よりも丈夫そうだ。さすがに魔法銀や魔鉄鋼には劣るけれど、量産できるのなら王宮の騎士団に支給してもいいレベルだよ」
 べた褒めとまではいかないものの、騎士の剣として使えそうだと言われて私はほっと胸をなでおろした。しかし、それだけの材質になるとは、私の魔力はやっぱり規格外のようだった。
 じろじろと剣を見ていた父親だったが、不意に私の方に顔を向けてきた。
「ところで、この剣は一本だけかな?」
「あっ、はい。試行錯誤で作ったのでその一本だけです」
 父親の質問に私は素直に答えておく。すると、父親は再び剣をじっと眺めながらこう言った。
「うん、明日、これを城に持って行くよ。騎士団に使ってみてもらおう」
「ふぁっ?!」
 父親が言った事に、私は変な声が出た。やばいやばいやばい、これは絶対あかん案件になる!
 私は内心とても慌てたのだが、あまりにもニコニコとする父親の顔を見ていると、どうにも断れない雰囲気になってきた。なので、仕方なく私はその剣を父親に預けたのだった。

 食事と父親との会話を終えた私は、ちょっと落ち込むようにして部屋に戻ってきた。部屋までついて来たスーラにも、寝間着に着替えたところで退室してもらった。
「はあ、せっかく作ったのに、また作り直しじゃないのよ……」
 スーラが退室した事を見届けた私は、盛大にため息を吐いた。あれ一本作るのにすごく苦労したのだもの。理由はどうあれ、それをああもあっさり取り上げられてしまうとショックは計り知れないんだからね。
 気を取り直して、私はすぐさま机に向かって魔石数個とトレント木材を取り出す。そして、魔力で変形圧縮しながらさっきと同じ剣と鞘を再び作り出した。作った時の感覚は覚えていたので、思いの外早くできあがった。さすがに二度目ともなれば、あっという間だった。
「ふう、なんとか寝るまでにはできたわね。本当に見ている限り、ガラスというか水晶の剣って感じよね。キラキラしていてきれいだわ……」
 本当に見ていてうっとりするくらいの美しい剣なのである。これでいて金属も宝石も使っていないのだから妙な話なのだ。部屋の明かりにかざせば、その光を反射してキラキラと輝いている。剣を覗き込めば、しっかりと自分の姿が映り込んでいる。本当に美しい剣なのである。(大事なので二度言いました)
「フィレン殿下にお贈りする剣の方は、もう少し幅広の方がいいかしらね」
 いろいろと思いを巡らせている私だけれども、さすがに時間が時間なのでそろそろ眠る事にした。フィレン王子用の剣の製作は、また明日にでもする事としましょう。
 私はそう思って、サクラ用の剣を収納空間へとしまい込むと、ベッドに入って眠りに就いたのだった。

 翌朝、父親は私の作った剣を大事そうに抱えて、王宮へと向かっていった。布でぐるぐる巻きにして傷付かないように大事に抱えていた。いや、そこまで大事にしなくていいんだけどね。別に床に落としたって剣は壊れないし……
 ともかく、学園に向かう前に、私はすごく冷めた表情で父親の登城を見送ったのだった。
 だけれども、私はここでまったく予想していなかった。この剣がこの後王宮で騒ぎを起こす事になろうとは……。
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