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第三章 学園編

第75話 不可解な謎

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 私は学園が休みの日を使って、父親の職場見学のついでにリブロ王子に会うつもりでお城へやって来た。一応婚約者なんだから問題ないでしょ?
 ただ、予想外だったのはモモもついて来た事くらいかしらね。まあ、父親の仕事っぷりを見に来たわけだから問題はないんだけど。
「スーラ、モモの事をお願いね。私はフィレン殿下にお会いしてくるから」
「畏まりました、アンマリアお嬢様。ですが、おひとりで大丈夫でしょうか」
「大丈夫よ。そのために案内役も呼んであるんだから」
 私がスーラに説明すると、父親の働く部署の入口に居る男性へと視線を移した。フィレン王子の側近であるスーペアである。それならばと、スーラは安心したようである。
 というわけで、私はこっそりとスーペアの案内でフィレン王子との面会に臨んだ。
「お久しぶりでございます、フィレン殿下」
 カーテシーで挨拶をする私。私の姿を見たフィレン王子は、安心したような表情を見せていた。いや、世の中のデブには失礼だとは思うけれど、デブを見て安心されるとは正直思ってもみなかった。なんて言ってもフィレン王子の攻略可能体重は40~55kgなんだから、120kgある私はその視野にすら入れないはずなんだもの。
 確かに私はデブだとはいっても、スーラの協力もあってそれなりに見られるデブにはなっている。脂ぎってはいないし、瞳だってつぶらだ。髪の毛も痛まないようには手入れを気を付けているし、とにかくきれいでいるための努力は惜しんでいなかった。だからといっても、フィレン王子に優しい微笑みを向けられるなんて、ちーっとも思っていなかったのだ。
 ……予想に反して、目の前のフィレン王子が私を見る目は優しかった。惚れてるのかと尋ねてもいいくらいの優しい微笑みである。嬉しい誤算ではあるけれども、今日の用事はとりあえずそれじゃない。
「フィレン殿下、質問よろしいでしょうか」
「なんだい、アンマリア」
「殿下の弟のリブロ殿下の事でございます」
 私がこう言葉を発すると、フィレン王子の表情が曇ったようにも見えた。しかし、私とサキは、フィレン王子とリブロ王子の婚約者。まだどちらがどちらとは決定されていないのである。それに、サキはゲームと同じようにちゃんとフィレン王子の攻略対象となる体重をキープしている。私の方からだって、お世話かも知れないけれど、きれいに体を整えるための石けんを送っておいた。
 ええ、そうなのよ。魔道具は作っていないとは言ったけれど、それ以外のものを作っていないとは言ってないわ。材料こそ集めるのは大変だったけれど、私の魔法を使えばそんなの余裕よ。これがあるからこそ、私はこれだけ太っていながらも美貌を保っていられるのよ。ちなみにサキだって学園で見かけるたびにきれいになっていた気がするわ。素材がいいものね。
 っと、話が脱線してしまったわね。
「フィレン殿下の誕生パーティーは行われているというのに、リブロ殿下の誕生パーティはどういうわけか開かれたという話を聞いた事がございません。第二王子だからといってもこれはあまりにも不自然ですし、婚約者である私やサキにもそういった案内がない事は、さすがにおかしいと思います」
 私は、フィレン王子に半ば愚痴のような言葉をぶつけた。
 これに対して、フィレン王子は黙り込んでいる。答えられないのか、答えると不都合があるのかは分からない。それでも一言も発する事がないのだ。
 だけれでも、これに関してははっきりさせなければならないと私は思っている。だって、婚約者を決める時などにはリブロ王子は顔を出していたのだ。誕生パーティーを開かないというのは不自然極まりない話なのだ。これはまるで、ゲームで学園2年目になるまで一切顔を出す事がなかった状況の再現のようで気持ちが悪いのである。しかも、2年目になっても登場するのは確率なのだから、それこそ現実世界となれば最悪の事すら想定せざるを得ない。そのせいで私は必死になってしまっていた。
「アンマリア!」
 フィレン王子が突然叫ぶ。その大声に、私は体をびくっと震わせた。
「君はそんなにあいつの事が気になるのかい?」
「当たり前ではありませんか。私たちはまだどちらがどちらというのではなく、2対2という浮動的な婚約者の状態です。でしたら、そのお相手を気に掛けるというのは当然ではございませんか?」
 フィレン王子の剣幕が鋭いものの、私だって負けてはいない。このままではリブロ王子は秘匿された王子扱いとなってしまうのだ。私はとにかくフィレン王子の脅しには屈しなかった。
 それにしても、ここまで感情的になったフィレン王子というのは初めて見る。普段は温厚なフィレン王子がここまで豹変する、リブロ王子を取り巻く環境とは一体どういうものなのだろうか。こうなってくると、怖いというよりもなんかこう、正義感じみた何かといった感じである。
 こうして始まった私とフィレン王子との間の会話である。
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