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第三章 学園編

第71話 恨みますわよ

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 学園が始まってから10日ほどが経過したけれど、とりあえず問題は起きていない。でも、相変わらずアーサリーがうざくて仕方なかった。
 そして、その日の帰宅後、私宛てに手紙が来ていた。差出人はエスカで、先日送った私の返事に対する返事が届いたのだ。そこにはこう書いてあった。

『アンマリア様へ
 私の考えが至らずに申し訳ございませんでした。メールと通話機能をつけたスマホ改を、サーロイン王国の国王陛下とフィレン殿下とその弟君にお送り致しました。この手紙とほぼ同時に着くと思いますが、中身に関してはアンマリア様同席のもとで確認頂くように手紙を添えております。お呼ばれしましたら、どうか私に代わってご説明頂けると嬉しく思います。
 追伸、フィレン殿下のお誕生日のパーティーに参加しようと考えておりますので、その時はぜひともご案内頂けると嬉しく思います
 エスカ』

 手紙を読んだ私は頭を抱えた。スマホの説明を丸投げされてしまったのである。物理的に距離があるとはいえ、自分で出向いて説明すればいいじゃないかと思った私だったけれど、そういえばエスカはミール王国の王女でしたね。自由に動けないのは私以上なので、私はため息を吐きながらも代理による説明を了承するのだった。
 しかし、メールと通話機能を付けるとは、実に素早い対応だと思う。あれから10日しか経っていないのにもう付与できるだなんて、相当に頑張ったのでしょうね。
 でもね、私のスマホにはメールと通話の機能はないのよ。いい加減にして下さらないかしら、エスカ王女殿下。
 私は就寝前の水分をスーラに要求して、それを飲み干すとさっさと眠ったのだった。

 翌日、ちゃっかり私は国王から呼び出しを食らった。呼び出しの用件はやっぱり、エスカからの贈り物だった。エスカ、恨むわよ。
 国王はすでに中身を確認しており、取扱説明書にも目を通していた。うん、早いわね。
「一体何なのだ、これは。エスカ王女は一体何を送ってきたというのだ」
 国王が私に早口でまくし立ててくる。怖いからちょっと勘弁してほしい。
「陛下、とりあえず落ち着いて下さい。その板でしたら、私もしばらく前に送って頂いております。ただ、私の板には付いていない機能がございますので、単純にその板の機能の説明ができるか分かりませんので、とりあえずその説明書を読ませて頂いてよろしいでしょうか」
 今日呼び出された場所は国王の執務室である。椅子に座った私は、とにかく国王から説明書を渡してもらう事にした。説明しようにも私のスマホが同じ機能を持っていないと実証できない。リブロ王子を呼んでもいいのだが、今は勉強の最中なので邪魔はしたくないのだ。だからこそ、説明書を元に、まずは私のスマホに同じ機能を持たせるしかなかった。
 どうにか自分の板にメールと通話の機能を加えられた私は、
「大変お待たせ致しました。それでは、使い方の説明を致します」
 ようやく本題に入る。
 メールと通話の相手の登録は、画面上の表示を押しながら魔力を流してもらう事でできるらしい。なので、私は国王と板を交換して、魔力を流し合った。
 メールでの文章の打ち込み方はふたつ。書いた文章を写真機能で取り込むか、メールの作成機能を使い、魔力を流しながら文章を思い浮かべるからしい。私は後者の方法で文章を考えると、確かに考えた通りの文章がメールに表示された。同音異義語とかあるけれど、その辺りも問題なく表示された。漢字みたいなのはないし、組み合わせで音が変化しない言葉だからだ。
 そうやって打ち込んだメールを私は国王に送る。すると、国王の持つ板が私の魔力の色である白色に光る。8属性全部持つがために、その光が真っ白になるのだ。ちょっと待て、相手の魔力の属性が丸分かりじゃないか。
 私がそんな事を思っている中、国王が板を叩くとその画面には私が送った文面が表示される。

『メール送信、テスト』

 それが私が送った文章である。すると、確かに板の画面にはそのように表示されていた。どうやらとりあえずは成功のようである。そこで、国王にはそのメールから返信をしてもらう事にした。表示されているメールの四隅にはボタンが表示されている。
 左上から時計回りに、『削除』『閉じる』『返信』『引用して返信』となっている。エスカったらすごいわね。ここまでの機能を持たせた上にちゃんとデザイン性も備えさせているわ。
 私の操作をちゃんと見ていた国王は、問題なくメール返信もできた。通話に関しては操作が少ないのでより簡単にできた。離れた位置でもちゃんと私と国王の間の会話ができたので、同席していた大臣や私の父親も驚いていた。
「これだけのものが作れるエスカ王女か……。これは来年が楽しみだな」
 どうやらエスカは、国王に興味を持たれてしまったようである。これは一波乱の予感かしらね?
 とりあえず私は、今日の事でエスカに愚痴の一つでも言いたくなった。しかし、メールも通話もまだできない上に愚痴だけで手紙を書くわけにもいかないので、私は仕方なくぐっと堪えたのだった。
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