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第一章 転生アンマリア

第48話 忘れるならばメモしちゃえ

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 というわけで、私は必死にメモを書き留めていく。

 まずは私、アンマリア・ファッティよね。
 父親はお城で要職に就く伯爵ゼニーク・ファッティ。ゲームでは姿も名前も出てこなかったけれど、『アンマリアの父親』という形での出演はあった。
 意外かも知れないけれど、色素の抜けたような金髪している青眼の少女、それが主人公アンマリアよ。髪はヒロインらしく胸まであるストレートだけど、私は庭いじりに行くせいでポニーテールとかサイドテールとか、とにかく髪を結んでいる事が多いわね。
 大まかなイベントはここでは省略するけれど、とにかく太りやすく体重が増えやすい体質が難点。これは転生して分かったけれど、恩恵を溜め込みやすいという性質が原因。それがそのままその後も太りやすい体質として定着してしまったのが、ゲームのアンマリアというわけ。男女誰とでも仲良くできるのはヒロインの特権だけど、フィレン王子ルートは本当に要注意。劇薬イベントを踏まないように注意ね。最悪処刑だものねぇ、絶対嫌。
 父親の髪色は私と同じで、母親はどっちかいうと赤みの強い色。瞳の色は両親ともに一緒なので、私はどちらかといえば父親の血の方が濃いというわけらしい。ヒロインなのに髪色がピンクじゃないのは珍しいかしらね。まあ、戦隊ものや魔法少女ものじゃないんだから、別にいいんじゃないのかしらね。

 そのピンクの髪色を持つのは、養女として迎え入れたモモ・ハーツ。ちなみに、名前の由来はピンと来てるでしょうけど、肉の部位であるモモ心臓ハツ。どっちもイメージピンク。そのせいで肩ほどまで長さの髪はストレートで毛先が内側にくるりと巻いている形で、瞳の色は赤みが強いものだった。
 ゲーム本編では私と一番仲の良かった子で、お助けキャラのようにアンマリアの手助けをしてくれていた。そんな彼女が唯一敵に回るのが、宰相の息子タカー・ブロックを攻略対象に選んだ時。それでも攻略成功時には、最後はちゃんと身を引いてくれるので、両親とは違って本当にいい子なのだろう。ちなみに、彼女と間違って百合ルートに入ると姉妹の契りを交わすようなイベントがあったような気がする。……まるで今みたいな感じじゃないのよぉっ!
 そんな感じなので、女性同士のイラストではアンマリアと一緒に描かれる事が多く、内容はそのなんというか濃いイラストが多かったわね……。

 フィレン王子攻略時に最大の敵となるのは、サキ・テトリバー男爵令嬢。名前の由来は手羽先と鶏。
 劇中には家族の描写はなかったのだけれど、男爵らしく貧乏な一面は描かれていた。実家の特産の小麦をパンにして焼いては売っていた。献身的なのはそもそものようだった。だからこそ、聖女の恩恵を得たのだろう。
 サキはモモとは違い、明るいオレンジの髪の毛先が逆の外に跳ねている。長さは同じく肩くらいまでだ。瞳は対照的に緑色である。
 フィレン王子ルートでの最後の断罪の印象が強いので、人によってはトラウマな存在だったわね。

 サクラ・バッサーシ辺境伯令嬢。
 彼女は全員の中では一番髪が短い。ボブよりも短いショートというのがぴったりである。まあ、子どもである今は普通に髪の毛は長いようだけれども。髪色は茶髪で瞳の色も茶色。言わずもがな、名前の由来は馬、しかも馬肉だ。
 脳筋な彼女は、同じ脳筋族であるタンとはしょっちゅうセットになって出てくる。とはいっても別に恋仲ではなく、脳筋族という親近感から一緒に居るだけの存在だった。彼女が本格的にライバルとなるのは、アンマリアによる攻略がかなり進んでからだった。本当に鈍い娘なだけに、イラストは失恋モードかプロテインやトレーニングをしているものばかりだった。他の作品の筋肉女子と描かれる事もしばしば。
 彼女絡みのイベントは先日起きたクッケン湖のスタンピードなので、彼女とは筋肉なお付き合いをしていれば大丈夫だろう、うん。
 サクラとの百合エンドでは、アンマリアと魔物の群れを倒して微笑んでるものねぇ……。

 最後の令嬢はラム・マートン公爵令嬢。名前の由来は羊肉。どのキャラ見ても、本当にこれは酷い由来ばかりである。
 髪の毛は最も長く、腰辺りまである軽いウェーブのかかった髪型である。その癖毛が分かりにくいように、大概は結った状態で登場している。一応、公式サイトには素の状態も載せられていた。紫の髪色に黒い瞳と、アンマリア並みのパワフルボディである彼女は初見ラスボスである。
 しかし、その実はものすごく公爵令嬢らしく物腰が柔らかく、優しく面倒見のいい女性なのである。
 カービルルートのエンディングでは、ラムは無事に別の男性と結婚できたらしいのだけれど、その相手は誰か分からなかったな。

 ちなみに女性陣の身長は、高い方からサクラ、アンマリア、モモ、サキ、ラムである。
 ……アンマリアは高い方から二番目かよっ! もはやその威圧感は説明不要だろう。その巨体が華麗に動くんだから絵面として怖すぎた。しかもアニメーションありでね!
 私は思い出して、思いっきりため息を吐いた。
 まあさて、女性陣の情報はこれくらいかしらね。百合エンドがあるからといっても、基本的には基本の恋愛シミュレーションのイベントの寄り道みたいなのだから、細かいイベントがあった気はするけれど、覚えている限りはメモしておきましょう。
 ここまでライバル令嬢たちの情報をメモしたところで、いよいよ大事な攻略者対象たちの情報のメモに入る私だった。
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