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第一章 転生アンマリア
第39話 誕生日プレゼントを渡す
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フィレン殿下を交えて話をしているものの、よく見ると王妃はまだ居なかった。どうやら、ご婦人方とのお話からまだ解放されないらしい。本当にすごい人である。
まあ、戻ってこないのは仕方ないので、こちらは男性陣と私とサキという二人の令嬢という、若干むさくるしい面々の中で話をさせてもらいますか。
大体は国王と父親たちが話をしていて、それを黙って聞いている状態だ。私たちは私たちで話題がないのである。たまに話があったかと思っても、一言二言で話が終わってしまう。なんという話し下手なのさ。サキは緊張のせいだろうし、私だってそんなにコミュニケーションできる方じゃなかったものね。
そんな中、父親が急にこっちを向いてきた。
「そいういえばマリー、殿下に誕生日のプレゼントがあると言っていたね」
(急に話を振らないでくれませんか、お父様)
話を振られた私は、ここの中でそう叫んだ。しかし、せっかく振られたのだ。ここは意を決して話を始めるべきだろう。
「はい、今年は婚約者候補に選ばれた事でございますし、せっかくですから、お近付きの印にとプレゼントをご用意させて頂きました」
私はスーラを読んでもらう。だって、スーラに預けたまま来ちゃったんだもの。
「スーラでございます。お呼びでございますでしょうか、アンマリアお嬢様」
国王の執務室とあって、普段通りに話すスーラの表情がいくばくか硬かった。そりゃもう、一介の使用人が入れるような場所じゃないものね。
「スーラ、渡しておいた包みを出してくれないかしら」
「あっはい。これでございますね」
スーラのポケットから、細長い四角い箱が出てきた。ご丁寧に王家の色のリボンが巻かれている。私はそれを自分で渡すためにスーラのところまで取りに行く。緊張も相まって、歩くたびに床がどしんどしんと震えている。そして、スーラから受け取った箱を持って、フィレン王子の前まで行った私は、
「お誕生日おめでとうございます、フィレン殿下。こちら、私からの誕生日プレゼントでございますわ」
私は殿下に箱を差し出した。うーん、私。ちゃんと笑顔になっているかしらね。大太りと緊張で、怖い顔になってないか心配になってくる。
フィレン王子はちょっと驚いていたけれど、それを手に取ってくれた。そして、
「開けてみてもいいかい?」
「はい、もちろんでございます」
フィレン王子は椅子に座ったまま、テーブルの上で包みを開け、中身を確認する。すると、中から出てきたのは円筒状の物体だった。
「これは?」
「伝手があって手に入った魔石を使った魔法のペンでございます。魔石を使った筆記具ゆえに、安直ながらも『魔石ペン』と名付けさせて頂きました」
そう言って私は、紙と自分の魔石ペンを出す。
「今から使い方を実演致しますわ」
私はペンのお尻にあたる出っ張りを自分の手で押すと、反対側からペン先のように尖った魔石が顔を覗かせた。そして、紙の上で走らせると、そこにはペンが走った後に黒い線が残ったのである。
「おおっ!」
実物を見せてもらった父親以外が声を上げる。インクも無しに文字が書ければ、それは驚きの現象だから仕方がなかった。
それから私は、お行儀悪いにもほどがあるように、ペン尻を机に押し当てて魔石を引っ込めさせる。実はこれも調整が難航した場所なのだ。ペン先の方の筒の内側にも魔石が取り付けてあり、これが圧力を受ける事でペン用の魔石を押し返しているのである。この反発の魔法が意外にも苦戦した。勢い良すぎてペン尻から飛び出してしまう事もあったからだ。まともに当たっていれば大怪我も避けられなかったのである。
(何とか成功してよかったわ。自分の手で押しても物で押しても、ちゃんとペン先が引っ込むようにするのは、本当に骨が折れたもの)
私はしみじみ思いながらも、再び机でペン先を出現させる。そして、同じようにペンを走らせるが、今度は文字が書けなかった。これにもまた、驚きの声が上がったのである。
「誤ってペン先が出た時に、服を汚さない工夫をさせて頂きました。これで常日頃から持ち歩いていても、服を汚す事はありませんよ」
「これは素晴らしいな。私もぜひとも欲しいぞ」
「ふふふっ、私はマリーから先に一本貰いましたぞ」
「ええい、羨ましいな」
「父親特権ですから」
私がペンの紹介を終えると、国王と父親が大騒ぎしていた。案の定とはいえ、ちょっと見苦しいかなぁ。
「素晴らしいですね、アンマリア。ありがたく頂戴するよ」
一方の王子は、とんでもない爽やか笑顔で私にお礼を言ってきたのである。
うおっ、王子の笑顔が眩しいぜ。
「うう、いいなぁ……」
そしたらば、サキも欲しそうにペンを眺めている。もしかして、これは仲良くなるチャンス?
「今後我が家から売り出すつもりですので、ついでとはなってしまいますが、その中からサキ様にも一本プレゼントさせて頂きますよ」
「本当?! やったあ」
私がそう言うと、サキはとても顔を明るくしていた。とにかく、無事にペンが渡せたので、この場は成功かしらね。ついでにライバル令嬢と仲良くなるチャンスもゲットだぜ!
まあ、戻ってこないのは仕方ないので、こちらは男性陣と私とサキという二人の令嬢という、若干むさくるしい面々の中で話をさせてもらいますか。
大体は国王と父親たちが話をしていて、それを黙って聞いている状態だ。私たちは私たちで話題がないのである。たまに話があったかと思っても、一言二言で話が終わってしまう。なんという話し下手なのさ。サキは緊張のせいだろうし、私だってそんなにコミュニケーションできる方じゃなかったものね。
そんな中、父親が急にこっちを向いてきた。
「そいういえばマリー、殿下に誕生日のプレゼントがあると言っていたね」
(急に話を振らないでくれませんか、お父様)
話を振られた私は、ここの中でそう叫んだ。しかし、せっかく振られたのだ。ここは意を決して話を始めるべきだろう。
「はい、今年は婚約者候補に選ばれた事でございますし、せっかくですから、お近付きの印にとプレゼントをご用意させて頂きました」
私はスーラを読んでもらう。だって、スーラに預けたまま来ちゃったんだもの。
「スーラでございます。お呼びでございますでしょうか、アンマリアお嬢様」
国王の執務室とあって、普段通りに話すスーラの表情がいくばくか硬かった。そりゃもう、一介の使用人が入れるような場所じゃないものね。
「スーラ、渡しておいた包みを出してくれないかしら」
「あっはい。これでございますね」
スーラのポケットから、細長い四角い箱が出てきた。ご丁寧に王家の色のリボンが巻かれている。私はそれを自分で渡すためにスーラのところまで取りに行く。緊張も相まって、歩くたびに床がどしんどしんと震えている。そして、スーラから受け取った箱を持って、フィレン王子の前まで行った私は、
「お誕生日おめでとうございます、フィレン殿下。こちら、私からの誕生日プレゼントでございますわ」
私は殿下に箱を差し出した。うーん、私。ちゃんと笑顔になっているかしらね。大太りと緊張で、怖い顔になってないか心配になってくる。
フィレン王子はちょっと驚いていたけれど、それを手に取ってくれた。そして、
「開けてみてもいいかい?」
「はい、もちろんでございます」
フィレン王子は椅子に座ったまま、テーブルの上で包みを開け、中身を確認する。すると、中から出てきたのは円筒状の物体だった。
「これは?」
「伝手があって手に入った魔石を使った魔法のペンでございます。魔石を使った筆記具ゆえに、安直ながらも『魔石ペン』と名付けさせて頂きました」
そう言って私は、紙と自分の魔石ペンを出す。
「今から使い方を実演致しますわ」
私はペンのお尻にあたる出っ張りを自分の手で押すと、反対側からペン先のように尖った魔石が顔を覗かせた。そして、紙の上で走らせると、そこにはペンが走った後に黒い線が残ったのである。
「おおっ!」
実物を見せてもらった父親以外が声を上げる。インクも無しに文字が書ければ、それは驚きの現象だから仕方がなかった。
それから私は、お行儀悪いにもほどがあるように、ペン尻を机に押し当てて魔石を引っ込めさせる。実はこれも調整が難航した場所なのだ。ペン先の方の筒の内側にも魔石が取り付けてあり、これが圧力を受ける事でペン用の魔石を押し返しているのである。この反発の魔法が意外にも苦戦した。勢い良すぎてペン尻から飛び出してしまう事もあったからだ。まともに当たっていれば大怪我も避けられなかったのである。
(何とか成功してよかったわ。自分の手で押しても物で押しても、ちゃんとペン先が引っ込むようにするのは、本当に骨が折れたもの)
私はしみじみ思いながらも、再び机でペン先を出現させる。そして、同じようにペンを走らせるが、今度は文字が書けなかった。これにもまた、驚きの声が上がったのである。
「誤ってペン先が出た時に、服を汚さない工夫をさせて頂きました。これで常日頃から持ち歩いていても、服を汚す事はありませんよ」
「これは素晴らしいな。私もぜひとも欲しいぞ」
「ふふふっ、私はマリーから先に一本貰いましたぞ」
「ええい、羨ましいな」
「父親特権ですから」
私がペンの紹介を終えると、国王と父親が大騒ぎしていた。案の定とはいえ、ちょっと見苦しいかなぁ。
「素晴らしいですね、アンマリア。ありがたく頂戴するよ」
一方の王子は、とんでもない爽やか笑顔で私にお礼を言ってきたのである。
うおっ、王子の笑顔が眩しいぜ。
「うう、いいなぁ……」
そしたらば、サキも欲しそうにペンを眺めている。もしかして、これは仲良くなるチャンス?
「今後我が家から売り出すつもりですので、ついでとはなってしまいますが、その中からサキ様にも一本プレゼントさせて頂きますよ」
「本当?! やったあ」
私がそう言うと、サキはとても顔を明るくしていた。とにかく、無事にペンが渡せたので、この場は成功かしらね。ついでにライバル令嬢と仲良くなるチャンスもゲットだぜ!
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