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第一章 転生アンマリア

第37話 8歳の誕生日パーティ―

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 というわけで、迎えたフィレン殿下の誕生日パーティー。さすがに8歳の子どもが主役とあって、まだ十分に明るい時間帯から行われる。これでも貴族たちの一部は夜まで話しているんだろうな。
 貴族というのは基本的に自分たちの持つ領地の事で頭が一杯なので、交渉は大体妻である夫人の仕事になる。爵位持ちの男性陣はなかなか交渉はしても雑談はしないので、こういうパーティーで集まる機会というのは重宝されるのだ。そのせいで朝からパーティーをしてもお開きは夜中なんていうのはざらである。今回もそうなりそうな感じである。
 朝から城にぞろぞろと馬車の大群が押し寄せている。さすがは誕生日パーティーである。どの貴族も贈り物を用意しているのか、その確認のせいで入場に時間が掛かっているようだ。なかなか進まないんだから、どんだけ用意してきてるっていうのさ。
(待ち時間は退屈ね。そういえばこういう時のために暇つぶしを作っている異世界ものってのもあったっけか……)
 今回の魔石ペンの製作は特殊だったとはいえ、普段はダイエット貯金のために運動やら庭いじりに精を出していたので、そういう方向にはまったく意識が向いていなかった。ちょっと失敗だったかなとは思いながらも、私は馬車の列の中でひたすら待ち続けていた。……うん、眠い。
 結局、私のファッティ伯爵家の馬車が城に入れたのは、並び始めてから3時間後の事だった。出遅れたのもあるけれど、これ程待たされるとは思ってみなかったわね。さすがにおねむよ。
 しかしまぁ、城に入場際には兵士から謝罪を受けた。正式な婚約者ではないけれど、候補というだけでも結構扱いは変わってくるようだった。ちなみにこれはテトリバー男爵家も同じようである。
(そうとはいっても、事前に殿下に会えるとかそういう事はないのよね。ただ優先的に入れるってだけで。結局はパーティー開始まで待たされるのよ)
 私は控室で家族一緒にひたすら待ちぼうけをしていた。
 その間に改めて家族を見てみるけれど、両親ともに順調に痩せてきている。使用人たちも肌の状態が良くなってきているから、私が勧めた運動や食生活の改善は、着実に成果を出してきているみたい。スーラも同じように肌の張りが回復してきている。若いから本当にもっちりした感じになってきている。これはきっともてるわよね。
 で、肝心の私だけど、相変わらずの太り気味である。この間にまた体重が1kg増えてたわよ。どうやら、徳を積めばその分太るみたいな状態って事よね。とはいっても8歳だからまだ順調に成長してるので、成長太りを考慮に入れたらこの程度ならまだ普通かなとは思う。筋トレで筋肉がついて体重が増えてるってのもあるだろうし。
「……、筋肉ついてるのかなぁ……」
 自分のぽよんぽよんの体を見ながら呟く。ついつい口に出てしまったが、小さすぎてスーラにも気付かれなかったみたい。うん、セーフセーフ。
 しばらく家族で雑談をしていると、ようやく会場の準備ができたという事で私たちは移動する。城に入ってから1時間後の事だった。こうなると別室待ちだった貴族が他にも居るわけで、こういう不手際も実に珍しい話だ。それも一貴族ならまだしも王家でこれなのだから。
 だが、会場にやって来た私たちは、その内装に声を失ってしまった。これならば別室待ちになってしまったのも納得できてしまうくらいに。
 どうやら、フィレン王子が洗礼式を終えて、婚約者が候補ながらに決定して、そうした中で迎える最初の誕生日とあって、国王たちが力を入れ過ぎてしまったようなのだ。大規模過ぎて飾り付けが終わらなかったらしい。そうした内装の中には、近隣諸国からのものもあったようで、急遽加える事になったという事情があった模様。後で知った事だけどね。ただの誕生日パーティーという規模じゃないわ。
 とはいえ、驚きが落ち着いてくるとさすがは貴族というところだった。いつも通りに雑談に興じ始めた。
 内装に時間が掛かった事で料理が運ばれてくるのも遅くはなったが、ちょうど昼食の時間という事もあって、雑談に興じながらもついつい食事に手が伸びてしまっていた。
 ちなみに私も慎ましながらも王家のパーティー用の食事に手が伸びてましたわ。腕前も味付けもさすがは王家なんですからね。ダイエットの小休止と言わんばかりにこつこつと食べていた。
 そうこうしているうちに、どうやら到着していた貴族たちが全員会場に入ったらしい。元々今日の誕生日パーティーは午後からだ。言ってしまえば予定通りである。これも後から聞いた話だけど、貴族たちからの贈り物で客室が一室埋め尽くされたらしい。一体何を送ったんだろうね、貴族たちは。
 歓談に興じる貴族たちだったが、宰相であるバラクーダ・ブロック侯爵が出てくると、一気にしんと静まり返った。そう、つまりはこの後に王族が出てくるのである。だからこそ、貴族たちは子どもも含めて静かになったのだ。
 程よい緊張感に包まれた会場に、王族の入場を告げる宰相の声が響き渡る。
 こうして、いよいよフィレン王子の8歳の誕生日パーティーが幕を開けたのであった。
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