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第一章 転生アンマリア
第26話 テッテイ滞在・初日
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ようやくやって来ましたバッサーシ辺境伯領の領都テッテイ。さすがは辺境伯領の領都だけあって、建物一つ一つががっしりとした造りになっている。なんでもバッサーシ領内では土魔法の使い手が多く生まれるのだそうで、その土魔法を駆使して頑丈な街づくりをしているらしい。まぁ魔物や他国の襲撃もある国家防衛の最前線なので、これくらいの堅強さがどうしても必要になってしまうのだ。
私が乗るマートン公爵家の馬車の中には、サクラも同乗している。そして、バッサーシ家の歴史やら何やらを事細かに説明してきてくれた。そしたらば、その内容は秘密にするような事でも何でもなく、ただ単に力でねじ伏せる脳筋戦法だったのだ。防衛機能とは一体……。
バッサーシ辺境伯本邸は、見た目自体は王都と大して変わらない佇まいとなっていた。もっとごてごてに武器だとか置いてあるのかと思ったら、普通の領主邸でした。うーん残念。だけども、領主邸に着いた私たちを出迎えた人物たちを見て、私は目を丸めてしまった。
「お帰りなさいませ、旦那様、奥様、お嬢様!」
バッサーシ辺境伯たちを出迎えた使用人たちが、みんなポージングを決めていたのだ。普通揃って頭を下げるものなんじゃないの?!
辺境伯邸の使用人たちは男女問わずにみんな筋肉ムキムキで、笑うと白い歯がきらりんと光輝いている。ここは筋トレジムか何かですか?!
(辺境伯と夫人は普通に見えるのに、どういった魔境なのかしらね、ここは……)
私がちらりとみんなを見ると、タンだけが目を輝かせているものの、他のみんなはあまりの光景に言葉を失っていた。まあそうでしょうね。
「うむ、皆、出迎えご苦労。今回は領の視察をしてもらうとの話で客人たちが来ている。しっかりおもてなしをするように」
「はっ、畏まりました。ささっ、皆様、荷物をお持ちします」
バッサーシ辺境伯が使用人たちに呼びかけると、使用人たちはささっとそれぞれに動いた。筋肉の割に素早い。
こうして呆気に取られているうちに、私たちはバッサーシ辺境伯邸に招き入れられたのだった。
バッサーシ辺境伯邸の中も、外観同様に割と普通の屋敷だった。異様なのは使用人たちだけ。このギャップもまた異様だった。私は思わず笑いたくなってきた。だけど、その辺境伯たちの居る前で笑うわけにもいかない。私はとにかく部屋で落ち着くまで我慢をしていた。
客室に案内された私たち。組み合わせとしてはラムと私、タンとタカーという感じに性別によって分けられた。夫婦できているのは屋敷の主人であるバッサーシ辺境伯夫妻と、ラムの両親であるマートン公爵夫妻だけだ。ブロック侯爵とミノレバー男爵は妻を王都に残してきている。
それにしても、客室内もいたって普通。使用人たちが筋肉だからといっても、それは屋敷のどこにも影響しなかったようだった。ちょっと残念。
やたらと筋肉と言うけれど、使用人の肉体が主張し過ぎるんだから仕方ないじゃないの。腕も足もそりゃあムッキムキよ。馬車すら持ち上げそうで怖かったわね。でも、あれだけ筋肉だと、水に浮かないんじゃないかしらね。
移動中にサクラに確認したら、領主邸からそれほど遠くない場所に湖があるらしい。馬車でそれほど遠くない場所だし、なんでも水着も売っているらしいとか。視察は大人たちに任せて、私たちはせっかくの辺境伯領を堪能させてもらおうかしら。
そうは言ったものの、到着した日はすでに日が暮れてしまっていた。そんなわけで湯浴みを楽しんだ後は、歓迎の晩餐会となった。湯浴みの最中は、私とラムの二人でかなりお湯を零してしまっていた。背はまだ小さいからって子ども用にしてくれたのはいいけど、同い年に比べれば太っているものね、私たち。ちょっと反省もしたし、意見もさせてもらったわ。翌日は気を付けるとの返答を貰ったのでとりあえず満足。
晩餐会に出てきた料理は筋肉の割には繊細。野菜はスティックにしたものとサラダの二種類が出てきた。肉はステーキとシチューの二種類。主食は全粒粉のパンかしらね、これは。表面にぶつぶつした物が見えるもの。
しかしまあ、よく見てみれば量が多かった。どう考えても子どもに食べ切れる量ではない。私とラムは二種類あるものは片方に絞らさせてもらった。だって、どう考えても食べ切れないもの。
公爵たちは出されたものは食べなければ失礼と、時間が掛かりながらもなんとか食べ切っていた。貴族の意地ってすごい。
「いかがでしたかな、我が領の食事は」
バッサーシ辺境伯が私たちに聞いてくる。
「いやはや、何とも濃い味付けでしたな。正直申しまして、私どもの口にはちょっと合わぬかと思います」
「そうか。私には普通の味付けなのだが、やっぱり王都は薄かったのか。分かった、翌朝からは王都風の味付けをするように伝えておこう」
二人の会話を聞いていた私はふと思った。これって味付けが濃かったのかと。どちらかというと、前世で馴染んでいた味だったので、私はこういうのが好みだ。そこでピンときた。
(ここなら、前世で馴染みのある調味料があるかも知れない!)
痩せなきゃと思う一方で、相反するもう一つの欲望が、私の中で目覚めてしまった。
はてさて、バッサーシ領での滞在の間、私はおとなしくしていられるのかしらね。
私が乗るマートン公爵家の馬車の中には、サクラも同乗している。そして、バッサーシ家の歴史やら何やらを事細かに説明してきてくれた。そしたらば、その内容は秘密にするような事でも何でもなく、ただ単に力でねじ伏せる脳筋戦法だったのだ。防衛機能とは一体……。
バッサーシ辺境伯本邸は、見た目自体は王都と大して変わらない佇まいとなっていた。もっとごてごてに武器だとか置いてあるのかと思ったら、普通の領主邸でした。うーん残念。だけども、領主邸に着いた私たちを出迎えた人物たちを見て、私は目を丸めてしまった。
「お帰りなさいませ、旦那様、奥様、お嬢様!」
バッサーシ辺境伯たちを出迎えた使用人たちが、みんなポージングを決めていたのだ。普通揃って頭を下げるものなんじゃないの?!
辺境伯邸の使用人たちは男女問わずにみんな筋肉ムキムキで、笑うと白い歯がきらりんと光輝いている。ここは筋トレジムか何かですか?!
(辺境伯と夫人は普通に見えるのに、どういった魔境なのかしらね、ここは……)
私がちらりとみんなを見ると、タンだけが目を輝かせているものの、他のみんなはあまりの光景に言葉を失っていた。まあそうでしょうね。
「うむ、皆、出迎えご苦労。今回は領の視察をしてもらうとの話で客人たちが来ている。しっかりおもてなしをするように」
「はっ、畏まりました。ささっ、皆様、荷物をお持ちします」
バッサーシ辺境伯が使用人たちに呼びかけると、使用人たちはささっとそれぞれに動いた。筋肉の割に素早い。
こうして呆気に取られているうちに、私たちはバッサーシ辺境伯邸に招き入れられたのだった。
バッサーシ辺境伯邸の中も、外観同様に割と普通の屋敷だった。異様なのは使用人たちだけ。このギャップもまた異様だった。私は思わず笑いたくなってきた。だけど、その辺境伯たちの居る前で笑うわけにもいかない。私はとにかく部屋で落ち着くまで我慢をしていた。
客室に案内された私たち。組み合わせとしてはラムと私、タンとタカーという感じに性別によって分けられた。夫婦できているのは屋敷の主人であるバッサーシ辺境伯夫妻と、ラムの両親であるマートン公爵夫妻だけだ。ブロック侯爵とミノレバー男爵は妻を王都に残してきている。
それにしても、客室内もいたって普通。使用人たちが筋肉だからといっても、それは屋敷のどこにも影響しなかったようだった。ちょっと残念。
やたらと筋肉と言うけれど、使用人の肉体が主張し過ぎるんだから仕方ないじゃないの。腕も足もそりゃあムッキムキよ。馬車すら持ち上げそうで怖かったわね。でも、あれだけ筋肉だと、水に浮かないんじゃないかしらね。
移動中にサクラに確認したら、領主邸からそれほど遠くない場所に湖があるらしい。馬車でそれほど遠くない場所だし、なんでも水着も売っているらしいとか。視察は大人たちに任せて、私たちはせっかくの辺境伯領を堪能させてもらおうかしら。
そうは言ったものの、到着した日はすでに日が暮れてしまっていた。そんなわけで湯浴みを楽しんだ後は、歓迎の晩餐会となった。湯浴みの最中は、私とラムの二人でかなりお湯を零してしまっていた。背はまだ小さいからって子ども用にしてくれたのはいいけど、同い年に比べれば太っているものね、私たち。ちょっと反省もしたし、意見もさせてもらったわ。翌日は気を付けるとの返答を貰ったのでとりあえず満足。
晩餐会に出てきた料理は筋肉の割には繊細。野菜はスティックにしたものとサラダの二種類が出てきた。肉はステーキとシチューの二種類。主食は全粒粉のパンかしらね、これは。表面にぶつぶつした物が見えるもの。
しかしまあ、よく見てみれば量が多かった。どう考えても子どもに食べ切れる量ではない。私とラムは二種類あるものは片方に絞らさせてもらった。だって、どう考えても食べ切れないもの。
公爵たちは出されたものは食べなければ失礼と、時間が掛かりながらもなんとか食べ切っていた。貴族の意地ってすごい。
「いかがでしたかな、我が領の食事は」
バッサーシ辺境伯が私たちに聞いてくる。
「いやはや、何とも濃い味付けでしたな。正直申しまして、私どもの口にはちょっと合わぬかと思います」
「そうか。私には普通の味付けなのだが、やっぱり王都は薄かったのか。分かった、翌朝からは王都風の味付けをするように伝えておこう」
二人の会話を聞いていた私はふと思った。これって味付けが濃かったのかと。どちらかというと、前世で馴染んでいた味だったので、私はこういうのが好みだ。そこでピンときた。
(ここなら、前世で馴染みのある調味料があるかも知れない!)
痩せなきゃと思う一方で、相反するもう一つの欲望が、私の中で目覚めてしまった。
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