24 / 313
第一章 転生アンマリア
第24話 ぜい肉をバッサーシ
しおりを挟む
初めての主催となったお茶会では、ライバル令嬢のうち、ラムとサクラの二人と思いの外仲良くなってしまった私。その席で私は、サクラから体を鍛える方法をいろいろと教えてもらう事ができた。
サクラ・バッサーシは辺境伯令嬢だ。国境を警備する辺境伯の娘として、幼少時から鍛え抜かれた体は8歳とは思えないくらいにバッキバキの筋肉を持っていた。ドレスの上からでも分かる上腕二頭筋はたくましかった。あれなら木の板程度なら真っ二つにできるのではないのだろうか。
ちなみにどうでもいい話だけれども、『アンマリアの恋愛ダイエット大作戦』のマルチエンディングの中には、攻略対象と恋愛を成就させるエンディング以外にも、なぜかライバル令嬢と仲良くなって攻略対象をそっちのけにするエンディングも存在している。いわゆる百合エンドである。ちなみにこの百合エンドも、隠しキャラのリブロ殿下と同じように体重を問わないもので、ライバル令嬢の好感度が一定以上あって、攻略対象の好感度が足りない時に発生するという。ええ、もちろん私は全部見ましたよ。
その中の一つには、サクラ・バッサーシと仲良くなって一緒に辺境で伝説を作り上げるというものもありましたわ。いやまあ、エンディングスチルを思い出したら今でも笑えるわね。体重差分がないけれども、サクラと一緒に倒した魔物の上で互いに拳を突き上げて笑顔で立っているシーンは本当に笑えたわ。画面の上半分は実にさわやかなのに、下半分は魔物の死屍累々というこの温度差は、本当に風邪を引きそうなレベルのスチルだったわね……。まあ、アルバム画面で見直さない限りはメッセージウィンドウで隠れているから気にはならないだろうけど。本編中は一応ユーザーに配慮したって事かな。ちなみにそのスチルでの私たちは、それはもう見事にムキムキマッチョでしたよ……。絵師さん、だいぶ拗らせてたわね。
そんな事を思い出しながら、私は各種勉強や庭の手入れの合間にサクラに教えてもらった鍛錬法を実践している。なるほど、かなり体に負荷を掛ける運動のようで、太った私の体にはなかなかな難易度のもののようである。
でも、数日繰り返しているうちに、私のパラメータには変化が訪れた。
(あっ、体力と耐久力が上がってる。あと体力の減少度も軽減されてるわね。……体重はお察しかぁ……)
フィジカル面の強化が確認された。ところが、私の体重はむしろ徐々に増えつつあった。恩恵をぜい肉として溜め込むという今の性質が変わらない限り、私が筋肉を付ければその分体重が増えるという笑えないジョークである。運動しているのに、見た目が変わらない上に体重+0.1kgは相当にショックだった。それでも、将来のダイエット貯金として、私は毎日とはいかなくても続けられるだけ続けた。
ラムの方とも交流ができて、たまにお互いの屋敷に遊びに行っては料理をするようになっていた。ヘルシーメニューで健康に痩せるためよ。
ゲーム内のラムも相当に太っている事を気にしていたけれど、攻略対象の一人カービルに口説かれて最終的には諦めたっぽかった。こんな私でも好いてくれるのならというところね。ちなみにカービルが太った女性を好むのは、母親イボーチ・バラロースが太っているからである。敬愛する母親のような体型を持つ女性が好みというわけだ。この世界線じゃ、ラムとカービルが結ばれる可能性は低そうね……。
「そういえば、失礼だとは思いますが、アンマリア様は全然変わりませんのね」
料理をしている最中に、こんなに風にラムにストレートに聞かれた時があった。
「うんまあ、ちょっと理由があって痩せられないのです。でも、努力をする事はやめません。いつか痩せられるその時のためにも」
私は笑顔でそう返しておいたので、おそらくラムもあまり気に病まなくて済むと思う。失礼なのは自覚していたみたいだけれど、私は割り切っているから。
「それにしても、アンマリア様はいろいろご存じですのね。こんな調理法があるだなんて、知りませんでしたわ」
今日教えているのは、私が転生に気が付いた時から続けている高タンパク低カロリーの食事。ラムの侍女と料理人にも付き添ってもらった上で作っている。私が作り上げた料理は、おいしくてさっぱりしているのに見た目には華やかで、公爵家の品位を傷つけるようなものでなかった。味見もしてもらったものの、料理人からしっかりお墨付きをもらえたので私は正直安心したものだ。公爵家の料理人に認められるなんて、それは名誉と言ってもいいものよ。
とはいえ、これでラムが痩せてしまえば、けた違いの体格を持つ私はなおさら目立ってしまう。だけども友人からの相談を無下に断るわけにもいかないので、私は自分を犠牲にしてそれに付き合う事にしたのだ。
両親もラムと友人になったと話したらとても喜んでいた。王子の婚約者候補にはなったし、その上で公爵家ともコネができるとなれば、それは手放しに喜んでしまうわよね。
それにしても、公爵家のラムが将来的に痩せてしまえば、ゲームとしてはそもそも破綻するし、現実においても私やサキに割り込んで王子たちの婚約者になるかも知れない。まあ、私はゲームの通りになるのなんてまっぴらごめんだから、正直いってそんな所にこだわりはない。そんなわけで、13歳になって学園に入るまでの間は、自由に過ごさせてもらう事にした。
この判断が間違っていたかどうかなんて、その時にならなければ分からないもの。どうなってもいいように、交友関係も広げておいた方がいいかしらね。私は学園に入るまでにやれる事を次々と洗い出しては書き留めていった。
サクラ・バッサーシは辺境伯令嬢だ。国境を警備する辺境伯の娘として、幼少時から鍛え抜かれた体は8歳とは思えないくらいにバッキバキの筋肉を持っていた。ドレスの上からでも分かる上腕二頭筋はたくましかった。あれなら木の板程度なら真っ二つにできるのではないのだろうか。
ちなみにどうでもいい話だけれども、『アンマリアの恋愛ダイエット大作戦』のマルチエンディングの中には、攻略対象と恋愛を成就させるエンディング以外にも、なぜかライバル令嬢と仲良くなって攻略対象をそっちのけにするエンディングも存在している。いわゆる百合エンドである。ちなみにこの百合エンドも、隠しキャラのリブロ殿下と同じように体重を問わないもので、ライバル令嬢の好感度が一定以上あって、攻略対象の好感度が足りない時に発生するという。ええ、もちろん私は全部見ましたよ。
その中の一つには、サクラ・バッサーシと仲良くなって一緒に辺境で伝説を作り上げるというものもありましたわ。いやまあ、エンディングスチルを思い出したら今でも笑えるわね。体重差分がないけれども、サクラと一緒に倒した魔物の上で互いに拳を突き上げて笑顔で立っているシーンは本当に笑えたわ。画面の上半分は実にさわやかなのに、下半分は魔物の死屍累々というこの温度差は、本当に風邪を引きそうなレベルのスチルだったわね……。まあ、アルバム画面で見直さない限りはメッセージウィンドウで隠れているから気にはならないだろうけど。本編中は一応ユーザーに配慮したって事かな。ちなみにそのスチルでの私たちは、それはもう見事にムキムキマッチョでしたよ……。絵師さん、だいぶ拗らせてたわね。
そんな事を思い出しながら、私は各種勉強や庭の手入れの合間にサクラに教えてもらった鍛錬法を実践している。なるほど、かなり体に負荷を掛ける運動のようで、太った私の体にはなかなかな難易度のもののようである。
でも、数日繰り返しているうちに、私のパラメータには変化が訪れた。
(あっ、体力と耐久力が上がってる。あと体力の減少度も軽減されてるわね。……体重はお察しかぁ……)
フィジカル面の強化が確認された。ところが、私の体重はむしろ徐々に増えつつあった。恩恵をぜい肉として溜め込むという今の性質が変わらない限り、私が筋肉を付ければその分体重が増えるという笑えないジョークである。運動しているのに、見た目が変わらない上に体重+0.1kgは相当にショックだった。それでも、将来のダイエット貯金として、私は毎日とはいかなくても続けられるだけ続けた。
ラムの方とも交流ができて、たまにお互いの屋敷に遊びに行っては料理をするようになっていた。ヘルシーメニューで健康に痩せるためよ。
ゲーム内のラムも相当に太っている事を気にしていたけれど、攻略対象の一人カービルに口説かれて最終的には諦めたっぽかった。こんな私でも好いてくれるのならというところね。ちなみにカービルが太った女性を好むのは、母親イボーチ・バラロースが太っているからである。敬愛する母親のような体型を持つ女性が好みというわけだ。この世界線じゃ、ラムとカービルが結ばれる可能性は低そうね……。
「そういえば、失礼だとは思いますが、アンマリア様は全然変わりませんのね」
料理をしている最中に、こんなに風にラムにストレートに聞かれた時があった。
「うんまあ、ちょっと理由があって痩せられないのです。でも、努力をする事はやめません。いつか痩せられるその時のためにも」
私は笑顔でそう返しておいたので、おそらくラムもあまり気に病まなくて済むと思う。失礼なのは自覚していたみたいだけれど、私は割り切っているから。
「それにしても、アンマリア様はいろいろご存じですのね。こんな調理法があるだなんて、知りませんでしたわ」
今日教えているのは、私が転生に気が付いた時から続けている高タンパク低カロリーの食事。ラムの侍女と料理人にも付き添ってもらった上で作っている。私が作り上げた料理は、おいしくてさっぱりしているのに見た目には華やかで、公爵家の品位を傷つけるようなものでなかった。味見もしてもらったものの、料理人からしっかりお墨付きをもらえたので私は正直安心したものだ。公爵家の料理人に認められるなんて、それは名誉と言ってもいいものよ。
とはいえ、これでラムが痩せてしまえば、けた違いの体格を持つ私はなおさら目立ってしまう。だけども友人からの相談を無下に断るわけにもいかないので、私は自分を犠牲にしてそれに付き合う事にしたのだ。
両親もラムと友人になったと話したらとても喜んでいた。王子の婚約者候補にはなったし、その上で公爵家ともコネができるとなれば、それは手放しに喜んでしまうわよね。
それにしても、公爵家のラムが将来的に痩せてしまえば、ゲームとしてはそもそも破綻するし、現実においても私やサキに割り込んで王子たちの婚約者になるかも知れない。まあ、私はゲームの通りになるのなんてまっぴらごめんだから、正直いってそんな所にこだわりはない。そんなわけで、13歳になって学園に入るまでの間は、自由に過ごさせてもらう事にした。
この判断が間違っていたかどうかなんて、その時にならなければ分からないもの。どうなってもいいように、交友関係も広げておいた方がいいかしらね。私は学園に入るまでにやれる事を次々と洗い出しては書き留めていった。
応援ありがとうございます!
2
お気に入りに追加
230
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる