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第一章 転生アンマリア
第20話 実は意外なヒロイン(私)ちゃん
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私たちと王子たちの二組のペアによるダンスが終わる。踊り終えた私とサキは国王たちに挨拶をすると、それぞれの両親の元へと戻っていった。
「た、ただいま戻りました。お父様、お母様」
「お帰り、マリー」
私が声を掛けると、両親ともに優しく私を迎えてくれた。
「ど、どうでしたでしょうか。私はちゃんと踊れていましたか?」
とにかく私は踊りの評価が気になって仕方なかった。王子と踊るにあたって、とにかく全神経を集中させていた。自分の体格の事もあって、とにかく王子二人に負担を掛けまいと、それはとても必死だったのだ。なにせ体重は珍しく維持の54kgなのだ。同い年からしたらとにかく持ち上げられるわけがないもの。間違いなく腰か膝が逝く。
それにしても、周りの貴族たちはまだ動く気配がない。どういう事だろうかと思えば、国王たちがグラスを持っていた。よく見れば貴族たちもグラスを持っている。ああ、これはそうか。そういう事なのかと私は納得した。
最後に、親元へ戻ってきた私とサキにもグラスが手渡される。
「皆にグラスが行き渡ったようだな」
国王の声が響き渡る。
「洗礼式を終えた子どもたちよ、己が前に道が示された事にいろいろ思うところはあるだろう。だが、恐れる事はない。皆には頼れる先人たちが居るのだ。必ずや、大いなる手助けとなる事だろう」
堅苦しい国王の挨拶が始まる。とはいえ、こういうのはゲームでもスキップできるようなものじゃないし、散々長ったらしい校長やら社長の挨拶を聞かされてきたのだ。私は耐えられる。
「若き者たちの行く道に、大いなる幸あれ! 乾杯っ!」
「乾杯っ!」
思ったより短かった国王の挨拶。最後に乾杯の音頭をとれば、夜会に集まった貴族たちもそれに応えていた。
何にしても、これでようやく夜会の本番が始まる。
すると、早速私たちファッティ伯爵家やテトリバー男爵家の周りには、すぐさま取り入ろうとする連中が群がってきた。長い物には巻かれろとは言うけれど、貴族社会はそういうのが顕著なのだ。
それにしても、私のような太り気味の令嬢というのは、基本的に侮辱される傾向にある。だけど、私にはそういった事がほとんどない。それというのも理由がある。
まず、公爵令嬢ラム・マートンの存在。彼女も私ほどではないものの太っている。太っているという事で侮辱するという事は、間接的に公爵令嬢をも侮辱する事になってしまうのだ。とはいえ、私の方が二回りくらい太っているんだけど。
そして、父親の存在。父親であるゼニーク・ファッティ伯爵は、意外にも王宮では大臣職を務めている。しかも有能との話なので、けんかを売りにくいというわけだ。
そこに今回の王子の婚約者候補というのが加わった。元々能力や恩恵も反則気味な私だというのに、立場的にも恵まれてしまっているというわけ。
(あれっ? 私ってこんなに恵まれていていいのかしら。)
ふと私は思った。
基本的にこういうゲームのヒロインってシンデレラストーリーを歩むものだと思ったけれど、どうやらそうでもないみたい。まあ、あのゲームはあくまでダイエットしながら攻略対象と恋愛をしようってゲームだったから、主人公の環境はそれほど重視されてなかったのかも知れない。とはいえ、ふたを開けるとこんなにいい立場のお嬢様だなんて思ってもみなかった。
「はっはっはっ、ご冗談を。私は何も陛下に媚びてはおりませんよ。ただ国のためを思って自分の役割を果たしておるだけですからな。それに、娘が婚約者候補になったのは、フィレン殿下からのお言葉があったとの事です。私がどうこうしたわけではありませんよ」
父親は取り入ろうとする貴族を牽制していた。実に堅実なタイプだし、頭もよく回る。私もそういう父親の堅実さは受け継いでいるみたいだ。
そうやって、私が父親の側で様子を窺っていると、思いも寄らない人物が近付いてきていた。
「やぁ、アンマリア嬢」
「あら、フィレン殿下ではございませんか。いかがされたのですか?」
なんとフィレン殿下だった。てっきり親子で話をしていると思ったのに、まさか一人で近付いてくるなんて思わなかった。
「先程のダンスは実に見事だったよ。いや、実に予想外だったね。私の”先見の目”でも君があれほど踊れるとは見抜けなかったようだ」
フィレン殿下が笑っていた。別に嫌味などない、本当に楽しそうな笑顔だ。
「淑女たる者、いかような場合でもあっても、ダンスとあれば踊れるようにしているものですわ。殿方にリードを任せるとはいえ、それについていけなくては話になりません」
私は落ち着いて、フィレン殿下の言葉にきちんと応対する。
「あはははっ、実に興味深いね、アンマリア嬢。やっぱり君を婚約者候補に推して正解だったよ」
思い切り笑うフィレン殿下。私はついカチンときてしまったが、ここで怒鳴ってはいけないとぐっと堪えた。
「いや、すまない。不快に思ったのなら謝罪するよ。君とはまた個別に話をする機会を設けたい。その時はよろしく頼むよ」
フィレン殿下はこうだけ言い残すと、もう一人の婚約者候補のサキの所まで歩いていったのだった。まったく、一体何のつもりなんだか……。
私が殿下の行動の理解に苦しむ中、私の後ろでは父親や話をしに来ていた貴族たちが驚きのあまり固まっていた。だが、私がそれに気付く事はなかったのだった。
「た、ただいま戻りました。お父様、お母様」
「お帰り、マリー」
私が声を掛けると、両親ともに優しく私を迎えてくれた。
「ど、どうでしたでしょうか。私はちゃんと踊れていましたか?」
とにかく私は踊りの評価が気になって仕方なかった。王子と踊るにあたって、とにかく全神経を集中させていた。自分の体格の事もあって、とにかく王子二人に負担を掛けまいと、それはとても必死だったのだ。なにせ体重は珍しく維持の54kgなのだ。同い年からしたらとにかく持ち上げられるわけがないもの。間違いなく腰か膝が逝く。
それにしても、周りの貴族たちはまだ動く気配がない。どういう事だろうかと思えば、国王たちがグラスを持っていた。よく見れば貴族たちもグラスを持っている。ああ、これはそうか。そういう事なのかと私は納得した。
最後に、親元へ戻ってきた私とサキにもグラスが手渡される。
「皆にグラスが行き渡ったようだな」
国王の声が響き渡る。
「洗礼式を終えた子どもたちよ、己が前に道が示された事にいろいろ思うところはあるだろう。だが、恐れる事はない。皆には頼れる先人たちが居るのだ。必ずや、大いなる手助けとなる事だろう」
堅苦しい国王の挨拶が始まる。とはいえ、こういうのはゲームでもスキップできるようなものじゃないし、散々長ったらしい校長やら社長の挨拶を聞かされてきたのだ。私は耐えられる。
「若き者たちの行く道に、大いなる幸あれ! 乾杯っ!」
「乾杯っ!」
思ったより短かった国王の挨拶。最後に乾杯の音頭をとれば、夜会に集まった貴族たちもそれに応えていた。
何にしても、これでようやく夜会の本番が始まる。
すると、早速私たちファッティ伯爵家やテトリバー男爵家の周りには、すぐさま取り入ろうとする連中が群がってきた。長い物には巻かれろとは言うけれど、貴族社会はそういうのが顕著なのだ。
それにしても、私のような太り気味の令嬢というのは、基本的に侮辱される傾向にある。だけど、私にはそういった事がほとんどない。それというのも理由がある。
まず、公爵令嬢ラム・マートンの存在。彼女も私ほどではないものの太っている。太っているという事で侮辱するという事は、間接的に公爵令嬢をも侮辱する事になってしまうのだ。とはいえ、私の方が二回りくらい太っているんだけど。
そして、父親の存在。父親であるゼニーク・ファッティ伯爵は、意外にも王宮では大臣職を務めている。しかも有能との話なので、けんかを売りにくいというわけだ。
そこに今回の王子の婚約者候補というのが加わった。元々能力や恩恵も反則気味な私だというのに、立場的にも恵まれてしまっているというわけ。
(あれっ? 私ってこんなに恵まれていていいのかしら。)
ふと私は思った。
基本的にこういうゲームのヒロインってシンデレラストーリーを歩むものだと思ったけれど、どうやらそうでもないみたい。まあ、あのゲームはあくまでダイエットしながら攻略対象と恋愛をしようってゲームだったから、主人公の環境はそれほど重視されてなかったのかも知れない。とはいえ、ふたを開けるとこんなにいい立場のお嬢様だなんて思ってもみなかった。
「はっはっはっ、ご冗談を。私は何も陛下に媚びてはおりませんよ。ただ国のためを思って自分の役割を果たしておるだけですからな。それに、娘が婚約者候補になったのは、フィレン殿下からのお言葉があったとの事です。私がどうこうしたわけではありませんよ」
父親は取り入ろうとする貴族を牽制していた。実に堅実なタイプだし、頭もよく回る。私もそういう父親の堅実さは受け継いでいるみたいだ。
そうやって、私が父親の側で様子を窺っていると、思いも寄らない人物が近付いてきていた。
「やぁ、アンマリア嬢」
「あら、フィレン殿下ではございませんか。いかがされたのですか?」
なんとフィレン殿下だった。てっきり親子で話をしていると思ったのに、まさか一人で近付いてくるなんて思わなかった。
「先程のダンスは実に見事だったよ。いや、実に予想外だったね。私の”先見の目”でも君があれほど踊れるとは見抜けなかったようだ」
フィレン殿下が笑っていた。別に嫌味などない、本当に楽しそうな笑顔だ。
「淑女たる者、いかような場合でもあっても、ダンスとあれば踊れるようにしているものですわ。殿方にリードを任せるとはいえ、それについていけなくては話になりません」
私は落ち着いて、フィレン殿下の言葉にきちんと応対する。
「あはははっ、実に興味深いね、アンマリア嬢。やっぱり君を婚約者候補に推して正解だったよ」
思い切り笑うフィレン殿下。私はついカチンときてしまったが、ここで怒鳴ってはいけないとぐっと堪えた。
「いや、すまない。不快に思ったのなら謝罪するよ。君とはまた個別に話をする機会を設けたい。その時はよろしく頼むよ」
フィレン殿下はこうだけ言い残すと、もう一人の婚約者候補のサキの所まで歩いていったのだった。まったく、一体何のつもりなんだか……。
私が殿下の行動の理解に苦しむ中、私の後ろでは父親や話をしに来ていた貴族たちが驚きのあまり固まっていた。だが、私がそれに気付く事はなかったのだった。
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